ホシザキグループ

2024年6月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

中長期的なオフィス戦略の中で
「承継」を意識したオフィスを構築

製氷機や冷蔵庫、食器洗浄機をはじめとするフードサービス機器の開発・製造・販売を行ってきたホシザキグループ。以来、同分野のリーディングカンパニーとして業界の発展に寄与してきた。今回の取材では、ホシザキグループが実施したオフィス移転プロジェクトを紹介する。オフィスコンサルティングから移転先探し、オフィス構築までのワンストップサービスを活用した事例となる。

山本 幸司 氏

ホシザキ販売株式会社
法人営業本部
副本部長


山本 幸司 氏

山中 毅彦 氏

ホシザキ販売株式会社
管理本部 管理部
部長補佐

山中 毅彦 氏

松倉 太一 氏

ホシザキ東京株式会社
営業本部 設計積算施工部
部長代理


松倉 太一 氏

浅沼 誕生 氏

ホシザキ東京株式会社
管理部
部長補佐

浅沼 誕生 氏

平原 正和 氏

ホシザキ販売株式会社
管理本部 管理部 管理課 管理係
係長


平原 正和 氏

柿澤 由彦 氏

ホシザキ販売株式会社
法人営業本部 開発営業部 設計課 設計1係
担当係長

柿澤 由彦 氏

稲川 あい

三幸エステート株式会社
ワークプレイスコンサルティング部

稲川 あい

宮本 淳史

三幸エステート株式会社
第二営業部第一室

宮本 淳史

板羽 尚大

三幸エステート株式会社
プロジェクトマネジメント部

板羽 尚大

Contents

  1. 契約終了時期が近づくにあたり2つのシナリオで検討を行った
  2. コスト削減を検証するためにコストシミュレーションを行った
  3. オフィス機能に大幅な追加はせず、旧オフィスの「承継」を優先した
  4. エントランスには、同社のシンボルマークであるペンギンをデザインした
  5. 顔と顔を合わせるという会社の文化をこれからも継続させていく

エントランス

エントランス

契約終了時期が近づくにあたり2つのシナリオで検討を行った

1947年の創業以来、「オリジナル製品を持たない企業に飛躍はない」をモットーに革新的な製品開発を行ってきたホシザキ。現在の製品群は600種類以上で、そのうち製氷機に関しては国内シェアNo.1と、フードサービス業界の発展に大きく寄与している。

今回のオフィス移転は、ホシザキ株式会社とホシザキ販売株式会社とホシザキ東京株式会社のグループ3社の移転となる。

「もともと港区泉岳寺駅周辺に立地していた自社ビルに入居していました。ところが2014年に東京都の『泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』のガイドラインが策定。そのエリア内に位置していた当社ビルは、収用されることになりました。そこで、まずは新社屋竣工までの応急処置として大崎に立地するオフィスビルに移転を行なったのです」(山本氏)

「最終的に大崎のオフィスビルを選んだ理由は『キッチンスタジオの設置が可能』『駐車場の必要台数が確保できる』という条件に合致したからです」(山中氏)

「賃貸借面積は約1,126坪。ホシザキグループ370名で使用していました」(浅沼氏)

入居から数年が経過し、ビルとの契約満了時期が近づいてくる。今後のオフィス戦略を早めに決定しておく必要があった。そうした中で、定期的に情報交換をしていた三幸エステート営業部の宮本淳史に相談をする。

「詳細な状況をお聞きした上で2つのシナリオをご提案しました。一つは『現ビルの再契約』、もう一つが『オフィス移転』です。どちらのシナリオでも、コストを極力抑えるという事を意識しました」(宮本)

コスト削減を検証するためにコストシミュレーションを行った

オフィスコストの削減を検証するためにさまざまなコストシミュレーションを行った。三幸エステート ワークプレイスコンサルティング部の稲川あいが担当する。

「『近隣エリアの空室率と募集賃料の推移』『類似物件の取引賃料相場』『残留と移転の場合のトータルコスト比較』など、さまざまな角度から検証を行いました」(稲川)

それらの検証結果を踏まえた経営判断により、『オフィス移転』の方向で進むことになる。働き方そのものを大きく変える予定はなかったため、基準面積は旧オフィスで使用していた1,100坪とした。

「東京23区内の登録ビル47,000棟の中から、基準面積が確保でき、なおかつ20241月から工事開始が可能な物件は92棟ありました。その中からキッチンスタジオの設置可能な物件に絞り込むと12棟に。それらの物件を見学しながら、さらに絞り込んでいきました」(宮本)

候補物件として残ったのは2棟。どちらも1フロア面積は600坪未満のため希望面積を確保するためには複数のフロアが必要となり、連続階であることも重要なポイントとなった。最終的に、東京臨海高速鉄道「品川シーサイド」駅直結の大規模オフィスビルと契約を締結。3階と4階の各1フロアに、5階の0.5フロアを追加した総面積1,112坪を使用する。

「本来、このビルは1フロア単位での貸し出しが条件でした。しかし、交渉を重ねることで『5階は半フロアのみの使用』を快諾いただきました。ビル側のご対応にも感謝しています」(宮本)

「キッチンスタジオの造作ができるのは4階もしくは5階でした。しかし、5階の残り半フロアにはホシザキ様と関係のないテナントが入居することになります。匂いや音に関する苦情が寄せられる可能性があります。そこで、キッチンスタジオやショールーム、各種会議室など来客用の機能を4階に集積すべく、テストレイアウトで検証を重ねました」(稲川)

オフィス機能に大幅な追加はせず、旧オフィスの「承継」を優先した

その後、プロジェクトチームを構成してデザインやレイアウトの確認をしていく。

「旧オフィスの移転プロジェクトを経験したメンバーを中心に集めました」(山中氏)

「スケジュールはタイトですし、設計・デザイン会社とのやり取りには専門的な知識が必要になります。PM会社のサポートなしではプロジェクトは成立しないことは明らかでした。三幸エステートさんとの契約内容を整理し、発注の準備を進めました」(山中氏)

オフィスづくりのフェーズでは、三幸エステート プロジェクトマネジメント部 板羽尚大がメイン担当としてプロジェクトの指揮をとることになった。

「円滑な進行のためには、個々のタスクに対するスケジュールを調整する必要があります。まずは工程ごとのマイルストーンを作成して共有しました」(板羽)

「家具什器は転用で、島型対向式の固定席。テレワーク制度もありますが、大きな変更はしない中で改善を試みる。それが今回のプロジェクトの目的の一つになります」(山本氏)

「実際の設計に入る前の大事な検証として、ショールーム周りの防火壁や排気ダクト、各階の避難安全のためのラフレイアウトの設計などを行いました」(松倉氏)

エントランスには、同社のシンボルマークであるペンギンをデザインした

デザイン会社からの設計に沿ってレイアウトを組んでいく。執務室は3階と5階に配置した。主に3階はホシザキ東京、5階はホシザキ販売が使用している。

3階と5階の執務エリアは、都度のレイアウト変更を行わなくて済むように今後の採用人数を考慮して机を増やしました。オフィスの総面積は旧オフィスと変わりませんから、会議室のサイズを小規模なものに変更してスペース調整を行いました」(浅沼氏)

「旧オフィスでは、社内用の会議室は数えるほどしかありませんでした。しかし、社内ミーティングの頻度は明らかに増えています。会社として対面でのコミュニケーションを推奨している以上、そのためのスペース整備は必須でした」(山中氏)

大きな改善を行ったのは4階となる。共有のエレベーターホールから足を踏み入れると、床にはペンギンの足跡が描かれ、ファーストペンギンをデザインモチーフにした壁へと続いている。

「ファーストペンギンは、リスクを恐れずに初めてのことに果敢に挑戦するベンチャー精神を持ち続けるという当社の姿勢を具現化しています」(山本氏)

床のペンギンの足跡も含め、これらはデザイナーを交えた打合せで生まれたアイデアだという。

「デザイナーさんには当社の思いを上手にくみ取っていただきました。そこからブラッシュアップを重ね、今の形になりました」(山中氏)

受付は無人での案内システムを採用した。これまでの受付担当者の業務時間だけでなく、スペースやそれに関わるコスト、それら諸々の削減効果を考えてのことだ。

エントランスを抜けるとショールームが広がる。製氷機や業務用冷蔵庫やディスペンサーなどを並べ、幅広い製品ラインナップを紹介する役割も果たしている。

「ショールーム見学後の商談を想定して、打ち合わせエリアを配置しています」(平原氏)

フロアの最奥がキッチンスタジオとなる。

ショールーム

ショールーム

打ち合わせエリア

打ち合わせエリア

キッチンスタジオ

キッチンスタジオ

「キッチンスタジオでは、機器を使ったスタッフへのレクチャーや使い勝手の検証を目的としています。また、料理人の方をお招きしたイベントも定期的に開催して、お客様の満足度を高めています」(柿澤氏)

壁際には来客用会議室を5室、応接室を1室配置した。

「全ての来客用会議室に大型モニターを配置しました。コロナ禍以降はウェブ会議が増えていることを踏まえ、必要な機能として付加したものです」(山中氏)

来客用会議室

来客用会議室

応接室

応接室

旧オフィスにも配していたリフレッシュルームは、4階フロアに配置した。3階と5階の結節点ということを意識してのことだ。

「ソファー席やテーブル席など50席以上を設け、移転にあわせて席数も増やしました。ランチ時には部署を超えて会話を楽しんでいます」(平原氏)

その他、100名以上が使用できる大会議室を用意している。プロジェクターの投影も可能で、社内会議や外部セミナーなどで活用されている。

リフレッシュルーム1

リフレッシュルーム1

リフレッシュルーム2

リフレッシュルーム2

社内会議室

社内会議室

社内ミーティングスペース

社内ミーティングスペース

顔と顔を合わせるという会社の文化をこれからも継続させていく

「移転プロジェクトの全フェーズを三幸エステートさんにお任せしたのですが、どのフェーズであっても担当者同士で情報が共有されているので進行がスムーズでした。コスト検証では分析からレポートの提出までがとてもスピーディで、オフィス探しでは絞り込み作業がロジカルに展開されて、オフィス構築では期限ギリギリまで対応いただきました」(山本氏)

「設計全体の検証や見積り確認に時間を割く必要があったので、時には催促をしながら進めさせていただきました」(板羽)

「移転することで、より多くのポジティブ要因を生み出せるように意識しました。私が担当したキッチンスタジオは、旧オフィスよりもバージョンアップできてとても満足しています」(柿澤氏)

「オフィス周辺の飲食店が種類・数ともに豊富なのもいいですね。色々な方と食事をする機会が増えています。オフィス内だけではなく、それ以外でも新たなコミュニケーションが生まれています」(松倉氏)

「ホシザキ販売は会社設立が2023年の1月でしたので、私たち管理部は移転プロジェクトと並行して会社の管理体制を作りあげなければいけませんでした。いくつもの基幹となる業務を抱えている中、三幸エステートさんに伴走いただいたおかげで無事移転プロジェクトが完了できました」(平原氏)

「当社は、リモートワークを前提にしたオフィスづくりは行っていません。営業・サービスの担当者は、何度もお客様のもとに訪問することで販売実績を伸ばしています。もちろんテレワークを行うインフラや制度は整っていますが、社員同士が自然な形で顔と顔を合わせてコミュニケーションをとっています。それが当社の文化でもあり、そのことはいつまでも変わらないと思っています」(山中氏)

「家具メーカーさんのオフィス見学に行ったことがありますが、どのメーカーさんのオフィスも趣向を凝らされていました。それだけ企業ごとのオフィスに対する考えが多様になっているということかもしれません。何が正解かがわからない中で、私どもはコミュニケーションを深めてきました。それを考えるとオフィスの役割は『会話』ではないかと感じています」(山本氏)

ホシザキグループ
「食」に対する多様なニーズに対応し、独自の技術に基づくオリジナル製品を創造し、迅速かつ高品質なサービスを提供してきたホシザキグループ。常に「進化」を求める姿勢は、国内だけにとどまらず、さまざまな国の人々からも高く評価されている。そして今後もグローバルブランド「ホシザキ」はさらなる躍進を目指していく。


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