株式会社イスト

2024年6月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新オフィスのコンセプトは「シンプル/居心地の良さ」。
現時点でのベストな空間を構築した

中学受験をメインとした家庭教師サービス「代々木進学会」を設立後、オンラインでの家庭教師システムや私立学校・専門学校・塾・予備校への講師派遣・紹介といった「教育」に特化した事業を展開している株式会社イスト。売上の増加に伴い定期的に人材採用を行ってきたことで、次第にオフィスも手狭に。大きな面積が確保しにくいエリアということもあり、オフィス移転は中長期的な計画であった。そんな中、希望条件にマッチした空室情報を取得。20245月から新オフィスで業務を開始している。今回は、オフィス移転計画の背景と新オフィスの特長についてお話を伺った。

前原 和洋 氏

株式会社イスト
EMPS事業本部 部長

前原 和洋 氏

Contents

  1. 家庭教師サービスを始めとした「教育」に特化した事業を展開している
  2. 強い移転ニーズはあったものの条件に合致する移転先が見つからなかった
  3. まずは移転先を確保。それから面積に合わせてデザインを考えた
  4. 派手にしない。教育機関を意識したオフィスづくりを心掛けた
  5. 顔を合わせるからドラマが生まれる。そのためにオフィスは必要だった

エントランス

エントランス

家庭教師サービスを始めとした「教育」に特化した事業を展開している

株式会社イストは中学受験専門の家庭教師サービス「代々木進学会」を設立後、35年以上にわたって「教育」に特化した事業展開をしている。同社の社名である「IST(イスト)」は、「Specialist(スペシャリスト)」から名付けられているという。

現在、「代々木進学会」のほかに、ハイクオリティな指導をオンラインで提供する「Y-ONLINE」、教育機関に講師派遣や人材紹介を行う「EMPSEducational Man Power Service)」の3つの事業が同社の主軸となっている。

EMPS事業本部は、私立学校や学習塾、予備校、専門学校など2,500社以上の法人や団体からのオファーと登録者をマッチングするサービスです。最近では、私立高校の美術部の指導教員不足を補うために、海外で活躍している芸術家をアテンドしたというケースがありました。限られたメニューの中で事業を行うわけではなく、お客様からのニーズや要望があれば挑戦していく。そんな姿勢で事業を継続してきました。今後も、『教育』という概念の中であれば、新たな事業が創出されるかもしれません」

強い移転ニーズはあったものの条件に合致する移転先が見つからなかった

「代々木は予備校や学校のイメージが強いエリアです。当社も多分に漏れず代々木という地に根ざして事業を展開してきました。この点は今後も変わらないでしょう」

旧オフィスはJR代々木駅から徒歩圏内に立地。その利便性から賃貸借契約を更新しながら事業を行ってきた。しかし、従業員数が増えていく中で、徐々にではあるが「オフィス面積」に対する要望の声は大きくなっていたという。

「応急処置として、社長室を会議室に代用するなどして対応してきましたが、それも限界を超えていました」

従業員の要望は、物理的な「狭さ」だけではない。「社内で打ち合わせをするスペースがない」「来客用会議室が足りない」。業務に必要不可欠な要素が足りなくなっていた。それらを一気に解決する方法はオフィス移転しかなかった。

「経営陣としても『研修施設を充実させたい』という思いは持っていました。オフィス移転を前向きに検討するいいタイミングだったのです」

しかし、同社が長年根ざしてきた代々木エリアに、同社が希望する面積を確保できる物件は見当たらなかった。そんな状況の中で、親会社から三幸エステートを紹介された。親会社のオフィス戦略をサポートしている会社だ。

「三幸エステートさんには、当社のオフィスに対する考え、移転先の必須条件、賃料の目安などをお話ししました。それから定期的に空室情報が届くようになりました。中には希望条件と乖離した物件もありましたが、一つの基準を知る上では参考となる情報でした」

そんなやり取りが一年近く続いた。

「そしてある日、これ以上ない物件を紹介いただいたのです。JR代々木駅徒歩1分、1フロア面積175坪。東京都交通局が所有者のオフィスビルです」

紹介された時点ではテナントが入居中で、一般には公開されていない空室情報だった。旧オフィスよりも50坪広い。増員への対応、会議室やWeb専用ブースの設置を考えても、申し分ない面積だった。絶対に、この物件を逃してはいけない。迅速に社内決裁の手続きを進めた。

「三幸エステートさんの行動も早かったですね。入居中だったにも関わらず、室内の見学をさせていただいて。おかげで役員の説得もスムーズでした」

まずは移転先を確保。それから面積に合わせてデザインを考えた

2023年11月に賃貸借契約を結ぶ。それからオフィスデザインのフェーズに入った。

「各社にレイアウト案と予算、スケジュールを提出いただき3社コンペを行いました。その中から総合的な判断を行い、パートナーとなる会社を決めました」

20243月までに要件定義や設計を終わらせ、4月から工事を開始。5月末の完成を目指した。オフィスコンセプトや細かいデザインの検討に関してはプロジェクトチームが主体となったが、メンバーは主に立候補で集まったという。時折、アンケートも活用しながら要望を聞き出していった。

「自ら進んで集まったメンバーです。常に積極的な意見やアイデアが飛び交うような議論になりました。それだけ新オフィスへの希望が募っていたのかもしれません。通常業務と並行してのプロジェクト参加でしたが、疲れは感じませんでした。『オフィスづくりに関われる』という嬉しさの方が勝っていましたね」

派手にしない。教育機関を意識したオフィスづくりを心掛けた

「プロジェクトチームで自主的に集まり、何度も意見交換を行いました。そこで出た要望をデザイン会社に渡し、デザインしていただいたものを確認。それをもとにさらにチーム内で話し合っていく。そんなやり方でした」

新オフィスのコンセプトは「シンプル/居心地の良さ」とした。

「何をするにも『シンプル/居心地の良さ』が前提になければできないと考えたのです。そして難しい注文ですが、教育機関として『派手』にはしすぎない。その境界線についても議論しました」

執務室内の家具什器は全て買い換えた。家具メーカーのショールームに出向き、実際の質感や座り心地などを確認したという。

「予算もあることなので全て希望通りとはいきませんでしたが、ほぼ思い通りの家具で揃えることができました。また、今まで当社は新入社員が入社するごとにレイアウトを変更していたのですが、その時間や手間を軽減するため、新オフィスでは増員予定分のデスクも一気にレイアウトに組み入れました」

オフィスを検討していく途中で、個々が思い描くオフィスを現実的に捉えるため、親会社であるSAAFホールディングスの本社オフィスを題材に意見交換を行った。

「とても刺激的なオフィスでした。そこで使用されていた電話ボックス型のWebブースやスライディングウォールは新オフィスにも採用しました。親会社の機能性を重視したオフィスに感銘を受けました」

それでは新オフィスの特長的な部分を紹介していこう。エントランスは、木を組み合わせることで柔らかさを感じながらも落ち着いた雰囲気でまとめた。

「このエリアに会議室を集中させています。各会議室の名前は全社員で多数決を行い、星座の名前をつけました」

コンセプト、什器、会議室の名前。こうした一つひとつをプロジェクトメンバーでじっくりと議論し決めていくことで、「自分たちの手でつくり上げたオフィス」という実感が高まったという。

エントランスエリア内の会議室は4室に増室。スライディングウォールを移動させることで大人数での使用が可能となる部屋もつくった。

新オフィスはヘッドオフィスの位置づけではあるが、派遣講師の面談や研修の場といった役割も持たせている。

「旧オフィスにも同様の部屋を設けていましたが、会議室と併用していたため数も広さも十分とは言えませんでした。この機会に念願だった研修スタジオの新設を行うことにしたのです」

研修スタジオ

研修スタジオ

研修スタジオは「模擬授業室」とも呼ばれており、実際の講義同様に机と椅子、ホワイトボードを配置し、講師一人ひとりの講義内容を確認することができる。社内の研修担当者が細かい部分の指摘を行い、どこでも通用する人材を育てていく。そういった若手のスペシャリストの育成にも力を入れている。

「近年の教育現場ではIT化が急激に進んでいます。デジタルツールを使用しての講義はハードルが高いと捉える人も少なくありません。指導する側がデジタルの対応を不安と感じているならば、当然サポートしていきます。そういった『伴走型』の体制づくりが当社の特長の一つです」

研修スタジオの前には、ファミレス風のスペース2室を配している。

ファミレス風スペース

ファミレス風スペース

セキュリティゾーンの奥が執務エリアとなり、固定席が並んでいる。パーテーションなど遮るものがないため開放的な空間だ。執務室エリア内には、ミーティングルーム2室、Webブース3室を配置し、新たな働き方に対応している。

執務室

執務室

ミーティングルーム

ミーティングルーム

Webブース

Webブース

「そのほか、従業員からの要望でつくられたのが『休憩室』になります。ここは多目的な使い方を想定しています。旧オフィスと違って、ここで会話を楽しみながらランチを取っている従業員が増えていますね」

その隣に設けた仮眠室には、ひときわ強いこだわりを持ったプロジェクトメンバーがいたそうだ。

休憩室

休憩室

仮眠室

仮眠室

「壁の色から椅子の選定まで、全てそのメンバーに任せて自由に選んでもらいました。このように今回のプロジェクトは、メンバー全員で楽しみながら進めていきました」

顔を合わせるからドラマが生まれる。そのためにオフィスは必要だった

そうして同社の移転プロジェクトは完結した。今後の運営は管理本部が中心となる。

「三幸エステートさんには、最適なタイミングで最適な移転先を提案いただきました。どこよりも先に情報をいただいたのでスムーズな交渉ができたのだと思います。親会社からの紹介ということで安心感もありました」

「シンプル/居心地の良さ」をコンセプトにした新オフィス。今後は、そこから派生する多くの効果に期待すると語る。

「自然に顔を合わせることで、想像していなかったドラマが生まれると考えています。企業の役割はそういった環境を整備していくこと。もちろん欲をいえばキリがありません。ですから背伸びすることなくベストな働く環境をつくることが重要なのではないでしょうか。今回はそんなオフィスが構築できたと思っています」

株式会社イスト
30年以上にわたって家庭教師事業に携わっているノウハウをもとに、教育研修事業や人材提供など新たな展開を行っている株式会社イスト。これらのノウハウをさらに進化させて、教育業界のリーディングカンパニーを目指していく。


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