ITbookホールディングス株式会社

2022年9月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

グループ各社がスムーズに連携できるオフィスを構築した

ITコンサルティング、システム開発、システム機器の販売から人材紹介や派遣にいたるまで、さまざまな業務メニューを持つITbookホールディングス株式会社。グループの中心を担う株式会社サムシングおよびグループ会社とのスムーズな連携を図るためにオフィス移転を実施したという。新オフィスは一定のルールを保つ中で、運用は従業員に「任せる」方針としている。今回の取材ではその背景を伺った。

野原 良一 氏

株式会社サムシング
総務人事部長


野原 良一 氏

鈴木 美里 氏

株式会社サムシング
経営企画部
経営企画グループリーダー

鈴木 美里 氏

青柳 杏夏 氏

株式会社サムシング
財務法務部


青柳 杏夏 氏

Contents

  1. 経営統合をすることでより付加価値の高いサービスを目指した
  2. グループの主要2社を中心にさらなる融和と融合を図ることが移転の目的だった
  3. 在宅勤務もフリーアドレスも書類の廃棄も、運用は従業員に任せた
  4. オフィスを構築するにあたってコンセプトは「連携」とした
  5. オフィスの快適さは、業務効率の向上に大きな影響を与える

執務室全景

執務室全景

経営統合をすることでより付加価値の高いサービスを目指した

2018年10月にITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社が経営統合を行った。それによって共同持株会社「ITbookホールディングス株式会社」が誕生する。グループ会社の事業は多岐にわたり、シナジー効果の創出による付加価値サービスの向上に努めている。

もともとITbook株式会社は、ICTに関するコンサルティング業務、システム開発・保守運営、ソフト及びハードウェアの販売といったIT関連を主体とした業務を行っていた。特長的な事業では、全国の自治体を対象にしたマイナンバー管理のサポート事業などがある。

一方で株式会社サムシングは、地盤調査や地盤改良、地盤保証、液状化判定、土壌汚染調査といった「安心に暮らせる社会の実現」をテーマとした業務を主力事業としている。

ITbookホールディングス株式会社が設立後も、関連会社の子会社化や新会社設立などを含めて、積極的な事業展開を行っています。地方創生をテーマにしたコンサルティング事業や人材紹介・派遣といったICTからは少し離れた事業も展開しています。着実に幅広いサービスを提供できるグループになりつつありますね」(鈴木氏)

グループの主要2社を中心にさらなる融和と
融合を図ることが移転の目的だった

グループの統合はしたものの主要2社の本社機能は分散されていた。

ITbookの本社所在地は港区虎ノ門のオフィスビルに、サムシングは江東区木場のオフィスビルに入居していました」(鈴木氏)

両社の融和と融合を推進したい。それは経営統合後に掲げていた目標の一つだった。そこで段階的に移転計画を進める。地下鉄「木場」駅近くのオフィスビルに入居していたサムシングを移転させることから計画がスタートした。

20217月、三幸エステートさんに依頼をして移転先探しが始まりました。最初はエリアを限定せずに移転先の候補リストをいただいて。大崎や日本橋の優良ビルも見学しましたね」(野原氏)

検討する際に重視したのは経済的な条件とビルグレード。数多くのオフィスビルを見学していく中で今回の移転先が経営陣の目に留まった。ほぼ即決だった。10月に、サムシングが使用するオフィスとして290坪の契約が正式に締結した。

「契約直後に経営判断によって2社の管理機能の集約が決定。幸いに契約した同フロアには400坪の空室があります。三幸エステートさんに声をかけ、迅速に確保できるように契約の調整が進められたのです」(青柳氏)

在宅勤務もフリーアドレスも書類の廃棄も、運用は従業員に任せた

移転先が決まった段階で、内装デザイン会社との打ち合わせは始まっていた。

9月の段階で依頼するデザイン会社は確定していました。それからプロジェクトチームの参加者を募ったのです。管理部門のメンバーを中心に10名ほど集まりました。ITbookやサムシングだけでなく、グループ会社からの参加もありました」(野原氏)

「段階を踏みながらディスカッションを行っていきました。大枠やコンセプトは大人数で議論をし、細かな部分は少人数で決めていきました」(青柳氏)

「最後の方は、部署関係なく全社一丸となって移転に取り組みました」(野原氏)

「新たな機能やデザイン面に関しては女性の視点も大事にしたいということで、私は部署の一員ということではなく一人の女性社員として参加しました。オフィスデザインの経験も知識も全くなかったのですが、逆にそれが良かったのかもしれません。自由なスタンスで参加できました」(青柳氏)

「新オフィスの総面積は690坪です。290坪と400坪が壁で仕切られていました。そのまま仕切りの壁は残しています。セキュリティを考えてのことでした」(鈴木氏)

「『壁を取り払った大空間でフリーアドレスを採用する』といった考えもありましたが、最後は各社のセキュリティルールを優先しました」(青柳氏)

それを背景にゾーニングを進めていく。

「まるでパズルを組み立てるような作業でした。最後は290坪のエリアはセキュリティを重視している会社、もう一方の400坪のエリアにはコミュニケーションを向上させたい会社。この考え方をベースにレイアウトを配置していきました」(野原氏)

その中で、旧オフィスに不足していた会議室を充実させていった。特に木場にあったサムシングのオフィスには会議室の絶対数が足りていなかったという。

「在宅勤務やフリーアドレスの採用は部署ごとに任せることにしました。部署ごとの環境や考え方を重視したかったからです。ですから『強制』的なルールはつくりませんでした」(鈴木氏)

「管理部門と技術部門でラフなゾーン分けをし、その後の割り振りは部門ごとに任せました」(青柳氏)

「全体の座席数は250席分を用意しています。コロナが収束してもテレワークを継続させる前提で席数を算出しました。仮に8割が出社したとしても席が足りなくなることはありません」(野原氏)

 オフィス移転にあたって書類のデータ化や廃棄に関しても強制はしなかったという。

「個々の判断に任せました。書類を削減したうえで新オフィスに移ってきた部署もあれば、荷物をそのまま移動させてきた部署もあります。全体でのバランスが取れればいいと思ったのです」(鈴木氏)

オフィスを構築するにあたってコンセプトは「連携」とした

内装デザイン会社との打ち合わせでオフィスコンセプトは「連携」と決まった。

「せっかくグループ会社が集まるのですから各社独立した形になるのではなく、『連携』を取りながらの働き方を目指しました」(野原氏)

それでは具体的にオフィスを見ていこう。

「東側が290坪のエリアです。見た目はレンタルオフィスのようなつくりになっています。会社ごとに壁で仕切られていますが、一つの廊下を共有しているので、コミュニケーションはスムーズに行えます」(青柳氏)

「このエリアには、グループで共有する大会議室を設けています。この会議室は30名以上が一堂に会せる広さとなっています。経営会議や全国のグループ会社とのWeb会議などが行われることが多いです」(鈴木氏)

大会議室

大会議室

西側が400坪のエリアとなる。エントランス、応接、コミュニケーションエリア、フリーアドレスエリアなどで構成している。落ち着いた雰囲気のエントランスは、ITbookホールディングスの大きな社名ロゴ。その下には入居しているグループ会社名がモニタで映し出されている。エントランスを進むと応接室が並ぶ。

「応接室が4室、他にも執務室エリアに社内向け会議室3室あります。これらの会議室には『Jupiter』『Mars』といった惑星の名前を付けました。社員の意見を採用しました」(鈴木氏)

エントランス

エントランス

会議室

会議室

「受付と会議室のデザインは優先して確定させました。キーとなる部分ですので、ここのデザインを先に確定させることで全体のデザインがスムーズに進むと思ったのです」(青柳氏)

執務室は見渡しの良い空間となっている。窓際にはカウンター席、日差しのいい場所に4台のテレフォンブースを置いている。ハイテーブル2台。ソロワークをする場として使われることが多く稼働率は高い。

テレフォンブース

テレフォンブース

ハイテーブル

ハイテーブル

窓際のフリー席

窓際のフリー席

窓際のフリー席

窓際のフリー席

「執務室内のキャビネットは1段の高さにして、机と机の間にもパーテーションは入れていません。見晴らしの良い空間にしたかったのです。その開放感は旧オフィスにはなかったものですね」(青柳氏)

「執務室エリアの中央にコミュニケーションエリアを設けました。20人は座れます。ここは部署を越えて自由に集まれる場としてつくりました」(鈴木氏)

コミュニケーションエリア

コミュニケーションエリア

「カウンターやソファ席、丸テーブルなどを配置しています。カウンターに置くコーヒーメーカーは現在選定中です。その他、偶発的なコミュニケーションが生まれるように全エリアで自動販売機を2台、ウォーターサーバーを4ヵ所に設置しています」(青柳氏)

「もっとコミュニケーションエリアを活用してもらうためにコーヒーメーカーだけではなくお菓子などを置くアイデアもあります」(鈴木氏)

「豊洲のランチ事情を考えると、お弁当の販売も従業員の需要がありそうですね。少しでもオフィス内に快適さや賑わいが生まれればいいと思っています」(野原氏)

オフィスの快適さは、業務効率の向上に大きな影響を与える

「内装デザインの打合せをしていく中で、従業員のモチベーションや働きやすさを考えるようになりました。また、本社機能ということもあり多くのお客様もお見えになります。そうしたことから誰に見せても胸を張って自慢できるオフィスをつくりたかったのです」(青柳氏)

「在宅勤務とオフィス勤務を併用していく中で、集中して作業を行いたいときはオフィスに来るようにしています。その方がオンオフの切り替えがしやすいからです。また些細な相談を受けた場合、オンラインでは後回しになってしまいがちですが、オフィスでしたらその場で解決できます。それだけでもオフィスで働くことにはメリットがあると思っています」(鈴木氏)

「オフィスは仕事をする場所です。そこが快適かどうかは生産性や業務効率に影響を与えます。だからこそ新オフィスに連携できる空間をつくりたかったのです」(野原氏)

ITbookホールディングス株式会社
多岐にわたる事業展開で社会問題の解決に取り組んでいるITbookホールディングス株式会社。課題解決には固定概念を見直すことが重要と考える。今後も多角的な視点で物事を捉え、自由な発想で新しい価値を創造していくという。