株式会社jig.jp

2024年12月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

魅力ある働く環境を構築するためにオフィスの拡張移転を行った

創業以来、「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」を企業理念に、モバイルソフトウェアの企画・開発・提供を続けている株式会社jig.jp。東京証券取引所グロース市場への上場後も、新たなコミュニケーションインフラの分野で事業拡大を行っている。それに伴う増員計画が順調な一方で、働く環境の向上が重要なテーマになっていたという。今回の取材では、その課題解決のために実施したオフィス拡張移転の背景やコンセプト、オフィスの必要性などをお聞きした。

田中 雄一郎 氏

株式会社jig.jp
取締役 CFO


田中 雄一郎 氏

大谷 涼 氏

株式会社jig.jp
執行役員 管理本部長


大谷 涼 氏

Contents

  1. 「より豊かな社会を実現する」をビジョンにさまざまなソフトウェアを開発してきた
  2. 数年前から「働く環境の整備」が経営課題の一つになっていた
  3. 移転先の要望を明確にして関係各社に希望条件を伝えた
  4. ON/OFFの切り替えがスムーズにできるオフィスとなった
  5. 新オフィスの一番のポイントはオフィス全体の配置と動線
  6. 対面での効果を考えると出社するためのオフィスが必要だった

カフェスペース

カフェスペース

「より豊かな社会を実現する」をビジョンに
さまざまなソフトウェアを開発してきた

2003年5月、株式会社jig.jpはモバイルを中心としたソフトウェアの企画・開発・提供を目的に設立された。その翌年には福井県鯖江市内に開発センターを開設。携帯電話用PCサイト閲覧ブラウザ「jigブラウザ」をリリースするなど、利用者側の視点に立ったツールを提供してきた。

現在の主力はライブ配信サービスだ。これは、特別な登録を必要とせず、誰もが気軽にリアルタイムで配信・視聴ができる仕様となっている。

「当社のライブ配信サービスはコロナ禍で一気に知名度を上げました。利用者の多くは一般の方で、飾らないありのままの姿で配信しています。そこが他社のプラットフォームとの大きな違いかもしれません。そうした配信に対して視聴者が自由にコメントし、配信者がリアルタイムで答える。そうした双方向の会話に楽しみを見出している方が多いのが特長の一つです」(大谷氏)

その他、子供や初心者向けのプログラミング教育「IchigoJam」、自治体を支援する「オープンデータプラットフォーム」などの社会課題へのソリューションの浸透をはじめ、バーチャル配信やVTuber領域での積極的な取り組み等、さまざまな成長領域でチャレンジしている。

数年前から「働く環境の整備」が経営課題の一つになっていた

2022年、創業の地である福井県鯖江市内に自社ビル『鯖江開発センター』が完成しました。そこには開発を担うエンジニア社員を中心に70人弱が在籍しています。当社の強みはサービス開発力であり、その強みを支え、持続的なエンジニアリソースを獲得するための独自の環境を構築していく必要がありました。それがゆえに、働く従業員への投資「人的資本の拡充」の一つとして、鯖江オフィスへの投資を行っていました。その分、あまり手を加えてこなかった東京本社への投資は遅れていくばかりで人員増員によるキャパシティが手狭になってきたこともあり、東京本社の『働く環境の整備』は経営課題の一つとなっていました」(田中氏)

移転前、東京本社はJR代々木駅から徒歩圏内に立地するオフィスビルに入居していた。約77坪の面積にプランナーやデザイナー、バックオフィス部門の30名超が在籍。開設当初は余裕のある空間だったが、既存事業の拡大に加え、新規事業の推進と共にプランナーやデザイナーも増員する必要が出てきた。採用を続ける中で次第にオフィスは手狭になっていったという。

「ただ机が並んでいるだけのオフィスでした。会議室も3室だけ。当然、カフェスペースを設ける余裕などありません。業務全般に支障が出ていましたね。声が響いてしまうため、同じ部署内であっても自由な会話がしにくい環境でした」(大谷氏)

「東京本社の移転プロジェクトは2022年の東京証券取引所グロース市場への上場をきっかけに検討が始まりました。ライブ配信サービスを主とした既存事業のさらなる成長や新規事業の企画・開発を継続的に行っていくためには優秀な人材を採用していく必要があります。人的資本の拡充を考えると、オフィス移転を実施して働く環境を改善することが最善の方法だったのです」(田中氏)

移転先の要望を明確にして関係各社に希望条件を伝えた

2023年9月、移転先の希望条件を取りまとめ、不動産会社・金融機関等の複数社に物件資料の提出を依頼した。数多くのビル情報から物件を比較検討していく。移転先の条件は、従業員の働きやすさを第一に考え、「利便性の高さ」「安心・安全」を大前提とした。そこから具体的に、「フラッパーゲートの有無」「従業員の通勤アクセス」に加え、「財務インパクト」「面積は最低でも旧オフィスの2倍程度」といった部分で絞り込んでいったという。

「その結果、現在のオフィスビルに入居を決めました。当社にとっての条件が揃ったベストな移転先だったのです」(田中氏)

ON/OFFの切り替えがスムーズにできるオフィスとなった

同社は、「人×人」「部署×部署」「サービス×サービス」「経験×アイデア」など、オフィスにいるからこそ垣根を越えて創出できるものがあり、それがオフィスの存在意義だと考えている。

「せっかく移転するのですから、抜本的に変えていかなければ意味がありません。そのためには、同じベクトルを持つ『人材』が集まり、『人』と『jig.jp』が共に成長し、より楽しい未来を創り続けられる空間の構築が必要と考えました。そこから『自然にコミュニケーションが生まれるオフィス』をオフィスコンセプトとして導き出したのです」(田中氏)

その後、デザインコンペで複数社の中から1社を選定した。その理由は、単に人が集まる空間を考えるだけではなく、「どうすれば人が集まるか」の提案も含まれていたからだという。

「こちらからの要件に対して、当社が課題としていた働き方の提案をしていただきました。まさに、『ONOFF』の切り替えがスムーズにできるオフィスです。これこそ我々が求めていた発想でした」(田中氏)

新オフィスの一番のポイントはオフィス全体の配置と動線

それでは東京本社新オフィスを具体的に紹介していこう。

エレベーターホールから、自動受付システムを介してエントランスに入る。エントランス正面には、同社が運営するサービスのマスコットキャラクターが置かれている。その周辺一体が応接エリアとなる。旧オフィスには応接室が3室だけだったが、新オフィスでは5室に増やしている。各応接室にWeb会議システムを整備させたことで、リモートでの打ち合わせも増えているという。通路壁には「ドレミファソラシド」の音階を記し、ドレミの歌になぞらえて「Donuts(ドーナツ)」「Lemon(レモン)」「Minna(みんな)」といった単語を各部屋の名前に採用している。

エントランス

エントランス

応接室

応接室

Web会議システム

Web会議システム

通路壁

通路壁

扉の内側が執務エリアだ。ここには50名弱が出社しており、固定席で運用している。そのため、鯖江開発センターのメンバーが立ち寄った場合は、エントランス手前に広がるカフェスペースを使用することになる。

「カフェスペースは、業務はもちろん、雑談、休憩、ランチと、さまざまな用途で使用可能です。おかげで、閉鎖的だったオフィスに広がりが感じられるようになりました。今後ますます多様化していく働き方に対応するためにも、このような空間は必要だと思っています」(大谷氏)

執務エリア

執務エリア

カフェスペース

カフェスペース

カフェスペースの配置場所は、デザイン会社からの提案によるものだという。

「一般的には窓際の眺望が一番見渡せ、陽のあたる場所につくることが多いと思いますが、採用したデザイン会社からのご提案は、エントランス付近に配置するというものでした。人通りの多い動線上に設けることで新たなコミュニケーションを創出するという提案は、我々にとって納得のいくものでした」(田中氏)

カフェスペースと執務エリアの境界はガラスや扉ではなく、あえて網目の大きなフェンスを用いている。

「フェンスを通じて執務エリアの内外から様子を知ることができますし、来客の方々にも当社の雰囲気を感じとってもらえています」(田中氏)

「オフィス内の至るところに『緑』を設けたのですが、それだけでリフレッシュができると好評です。緩やかな仕切りとしての役目も果たしています」(大谷氏)

その他、執務室内の壁際にはWebミーティング用のブースを新設した。ここは、配信機能を有し、VTuber事業におけるオーデション番組の制作にも活用され、番組の質や幅を向上させている。外部スタジオを借りる必要がなくなったことで時間やコストが大幅に削減され、業務効率も良くなっているという。窓際にBOX席やカウンター席といったオープンミーティングを行う場所を配置し、各種イベントで配るノベルティグッズの収納部屋も確保した。

「新オフィスは約140坪なのですが、その中で人の動線を意識しながら必要な機能を配置できました。色々な課題をクリアしながら最適なオフィスができたと思っています。これが新オフィスの一番のポイントといえます」(田中氏)

対面での効果を考えると出社するためのオフィスが必要だった

鯖江開発センターとの打ち合わせは、全てオンラインで行っている。したがってリモートを活用した働き方に抵抗があるわけではない。しかし、全てのオフィス環境のリモートへの移行は考えたことはないという。

「リモートの一番の利点は、『効率性』だと思っています。しかしその一方で、同時に得られる情報の量や質は対面に比べると劣る部分もあると感じています。イノベーティブな発想力といった観点では、やはり対面に勝るものはありません。従業員もそこに意味を感じ、基本的にオフィスに出社しています。今後も多様化する働き方に対応し、共創が生まれるオフィスを維持していく方針です」(田中氏)

オフィス移転後は、二次的な効果が顕著に表れているという。

「最高の立地に最新の大規模オフィスビル。そこにインパクトのあるオフィスを構築しました。これだけでも『急成長している企業』として認識してもらえるのではないでしょうか。これは今後のお客様との取引にもプラスの影響を与えるはずです。加えて、人材採用競争が激しいIT業界において、当社は群を抜いたポジションに立つことが可能になります。実際、オフィスを見た応募者の方が入社意向を示す確率は高いと思われます。今回のオフィス移転による働く環境の整備は、当社にとって大きな転換点となるでしょう」(田中氏)

「移転後のオフィス運営は管理本部が主体となります。さまざまな従業員の声にできるだけ応えていく予定です。そして少しでもストレスフリーの環境につながるようにサポートしていきます」(大谷氏)

「渋谷という情報発信地への移転で、Z世代の若者と接することが増えてきました。それらの接点が刺激を生み、今まで思いつかなかったようなアイデアの創出に期待しています。そして今回のオフィス移転を機に、会社全体がいい方向へ進むと確信しています」(田中氏)


株式会社jig.jp
福井県鯖江市に自社ビルを完成させることで、開発技術者の集積を目指す株式会社jig.jp。最終的には鯖江という土地を技術者の街として認識させ、地方創生に結び付けたいと語る。企業と共に街を成長させる。それが「より豊かな社会を実現する」に取り組んできた同社の矜持となっている。


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