日本風力開発株式会社

2022年5月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィスを「四季」に見立てて
多様な「働きやすい」機能を採り入れた

風力発電所の開発、風力発電による売電事業を目的に1999年に設立した日本風力開発株式会社。創業から一貫して「風」の持つポテンシャルにこだわってきた。今回、入居ビルの建て替えを理由に大規模な本社移転を実施した。新オフィスでは、初めての試みであるフリーアドレスの採用など、多様な働き方の改善を行っている。今回の取材では、移転プロジェクトを担当した総務部副部長の尾川 龍二氏にお話を伺った。

尾川 龍二 氏

日本風力開発株式会社
総務部
副部長

尾川 龍二 氏

Contents

  1. 風を無限の価値に変えるために創業。以降、エネルギー事業を拡大してきた
  2. 移転理由は入居ビルの建て替え。移転先は霞が関を代表するランドマーク
  3. オフィスを構築するにあたって「働く環境」の整備を一番に考えた
  4. オフィスコンセプトは「四季」。多様なオフィス機能を採用した
  5. オフィスはこれからも必要な場所。だから快適を考えたオフィスづくりを行った

エントランス

エントランス

風を無限の価値に変えるために創業。以降、エネルギー事業を拡大してきた

1999年の設立から「風力エネルギーの開発」に取り組んできた日本風力開発株式会社。身近な「風」の力をエネルギー資源として有効に活用する。日本の風力発電事業が本格的に普及する前のことだった。

「今でこそ再生可能エネルギーへの期待は高まりを見せていますが、当時はそこまで活気があったわけではありません。当社は、そんな時代から『風』に特化した発電計画の開発・運営を行ってきました」

事業計画から建設認可の承認までには、風速や風況、騒音や電波障害、環境アセスメントなどの調査が必要となる。その中で、同社の強みは過去からの観測に基づく「独自のシミュレーション力」と蓄積してきた「膨大な風況データ」にある。それらを武器に現時点(202261日)で、国内合計266基、国外合計4基、計270基を開発、496,850kWの発電を行っている。

今後も風力発電事業は、「地球温暖化対策」「新エネルギー政策」「コストパフォーマンス」「電力系統との連携」といった側面から、さらなる拡大が見込まれている。

移転理由は入居ビルの建て替え。移転先は霞が関を代表するランドマーク

同社は19997月に創業。西新橋に立地していたオフィスビルに入居する。その後、人員増加を理由に新橋を中心としたエリアで数度の移転を行っていた。

「今回の移転前は、日比谷に立地する大規模オフィスビルに入居していました。約690坪を使用しており、入居時はスペースに余裕がありました。しかし2年を経過する頃には従業員が1.5倍に増えていまして。ビルの建て替え計画も重なり、移転先を探す必要が出てきたのです。関係省庁との行き来を考えると、オフィス立地は今までと同じ新橋や虎ノ門周辺から離れたくありません。その他、面積や賃料、入居時期などの条件を明確にして、移転先探しをスタートさせました」

前回のオフィス移転同様に、三幸エステートがオフィス探しのサポートをする。

「最初は、とにかくエリア内で条件にマッチする資料をいただくことにしました。そうして少しずつ候補ビルを絞り込んでいったのです」

最終的に選んだビルは霞が関を代表するランドマークだった。移転前よりも広い面積となる810坪を使用する。

1フロアでの契約のほうが制約も少なく交渉がスムーズだったのです。またこの面積なら旧オフィスからの課題だった会議室不足の課題も改善できます」

何度か現地に足を運び、条件や内容の確認を行う。そして202112月に正式に契約を締結した。入居予定は20223月末。非常にタイトなスケジュールだった。

「新オフィスのデザインに関しては10月頃からPM会社に相談を始めていました。コンセプトやレイアウト案を進めていたとはいえ、工事期間はわずか3ヵ月。部分的に変更を重ねながらの進行でした」

オフィスを構築するにあたって「働く環境」の整備を一番に考えた

「旧オフィスの執務室内は完全固定席でした。そして従業員一人ひとりに『幅1,400mmの机+袖机』を与えていました」

増員ごとに机と袖机を購入し、組織変更があれば大幅なレイアウト工事が余儀なくされる。この非効率な運用を再考する必要性を感じていたという。

「会社として、『働き方の見直し』を課題としていました。そして『人的交流が盛んになるオフィスの構築』というもう一つの課題に対する施策として全社フリーアドレスを決定したのです」

本格的なオフィス移転を機にできることとして大々的な書類整理も行った。

「各種法令に基づき作製、保管しなければならない書類が多いのが当社の特長です。しかし書類を置くスペースに掛かるコストも軽視できません。そこで保存が求められる法的書類は外部倉庫に保管したのち、社員の協力も得て、使用していた80本キャビネットは40本にまで削減できたのです。加えて、机幅を1,200mmに変更しました。机幅のサイズを小さくしたことで机と机の通路幅が広がります。加えて、スクウェアタイプにしたことで効率的な机の配置が可能になりました。それらの新たに生まれたスペースで会話を楽しむシーンがいたるところで見られるようになるなど、二次的なプラスの効果も見られます」

コストやスペース削減だけを意識したわけではない。新オフィス構築の目的は「働く環境」の整備。従業員のストレスや疲労の軽減のために、長時間座っていても疲れにくい椅子に全て入れ替えている。

オフィスコンセプトは「四季」。多様なオフィス機能を採用した

オフィスデザインのコンセプトは「四季」。エントランスから順に季節を感じられるつくりになっている。

「エントランスのイメージは『春』です。その他に私どもの業務の象徴である海と山も表現しています。一面の壁には4台のプロジェクタを使って会社紹介のビデオを流しています。受付という企業ブランディングを表現しやすい場で、インパクトのある仕掛けをつくることができました」

エントランス

エントランス

そこから応接エリア方向に進んでいく。応接室8室用意した。うち2室が大会議室だ。このエリアのイメージは『夏』だという。

「旧オフィスでは、来客用応接室と社内打合せ用を共有していたため、思い通りの利用ができていませんでした。そこで新オフィスでは来客専用応接室を用意しました。画面を共有しながらの打ち合わせが多いため、全ての部屋にプロジェクタを設置しています」

応接室

応接室

会議室

会議室

「旧オフィスでは、来客用応接室と社内打合せ用を共有していたため、思い通りの利用ができていませんでした。そこで新オフィスでは来客専用応接室を用意しました。画面を共有しながらの打ち合わせが多いため、全ての部屋にプロジェクタを設置しています」

さらに奥に進むとラウンジが姿を現す。ここが新オフィスの最大の特長となる。他部署のメンバーとのコミュニケーションを促進するためにつくられた。ラウンジのイメージは『秋』。紅葉を意識した色調でまとめている。コーヒーカウンター、ソファ席、多目的な丸テーブル、窓際のカウンター席、横長の打ち合わせテーブル、ファミレス風テーブルで構成している。

ラウンジ全景

ラウンジ全景

カウンターとラウンジ

カウンターとラウンジ

ファミレス風テーブル

ファミレス風テーブル

「多目的なフリースペースで、多様な機能を配しています。外部のシェアオフィスの雰囲気を参考にして構築しました」

そこから右に曲がると執務室エリアが現れる。このエリアのテーマは「冬」となる。全体を静かな色でまとめた。

「フリーアドレスは、横長の机を配置するレイアウトではなく、あえて机を接続させたいくつもの島をつくり、エリア全体に展開させています。パーティションは低く設定しエリア全体を見渡せるようにしました。その他、座った時の視界の高さに植栽を配置したり、透明ガラスを多用したりして、細かい部分で『開放感』を演出しています」

執務室エリア

執務室エリア

「新設した個室も壁で囲むのではなく、中が見えるように工夫しました。これからの働き方を踏まえてWeb会議用のブースも設置しました。これらは従業員の声を参考にしています。その時に気を使ったのは具体的なイメージで伝えることです。ですから3Dパースを作成して説明をしました。後からイメージと違うからと変更の依頼をされるのは避けたかったのです。余分な時間は掛かりましたが、結果的にこの方法がベストだったと思っています」

旧オフィス時代から全員にノートPCを配布し、リモートワークを促進していたため、混乱なくフリーアドレスへの移行はできたという。

Web会議用ブース

Web会議用ブース

「出社に関しては、個々の判断に任せています。ただ開発チームはオフィスに出社するほうがはかどるみたいですね。もう少しバランス良く出社率を考える必要があるのか。それは今後の課題となりそうです」

その他、中期プロジェクトチーム用の部屋を2室用意している。

「他社の専門メンバーと合同のプロジェクトチーム専用の部屋となります。その多くが機密情報を扱う内容のため、あえて動線を分けることにしました」

オフィスはこれからも必要な場所。だから快適を考えたオフィスづくりを行った

「新オフィスでは大きく働き方改善への舵を切りました。確かにフリーアドレスを発表したときに一部の社員から反対意見はありました。しかし入居後は、それを上回る利点がもたらされたこともあり、あえて口にする社員もいなくなりました。やはり実際に体感したことが良かったのでしょう」

新オフィスは社内だけではなく、来客者からも高い評価を得ている。今後もこだわったオフィスをつくっていきたいと語る。

「色々な考え方があるとは思いますが、当社にはオフィスが必要です。オフィスは『働くモード』に切り替えるための場所だと思っています。だからこそ快適性にはこだわっていきたいのです」

今後は、新オフィスの構築から運営のフェーズに入る。

「オフィス運営に関しても私が担当します。新型コロナは収束していませんが、出社人数が増えつつあります。環境を維持するのではなく、改善を重ねながら働きやすい環境を整えていきたいと思っています」

日本風力開発株式会社
独立系のエネルギーベンチャー企業として事業を拡大してきた日本風力開発株式会社。今後も、優良な風力エネルギー資源の発掘、経済性の高い風力発電所の建設など、事業拡大に向けて取り組んでいく。そしてエネルギービジネスのソリューションパートナーとして新たなステージを目指していく。