国際航業株式会社 関西事業所

2024年2月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィス総合コンサルティングを活用して
自社に合ったベストオフィスを構築した

創業時から培ってきた測量・分析などの空間情報技術を活用して、国土保全、防災・減災、社会インフラ整備、環境保全、再生可能エネルギー等の分野でさまざまな社会に役立つサービスを提供している国際航業株式会社。新たな働き方を推進するためにオフィス移転を実施した。今回のプロジェクトは自社ビルの売却からコンサル・移転先探し、オフィス構築までの一連の流れをワンストップサービスで行った事例となる。その全容を紹介する。

日髙 賢治 氏

国際航業株式会社
業務部
関西業務グループ グループ長

日髙 賢治 氏

小栁 貴晟 氏

国際航業株式会社
業務部
関西業務グループ

小栁 貴晟 氏

伊藤 大介 氏

国際航業株式会社
HR・コンプライアンス本部
業務部 部長

伊藤 大介 氏

森山 亮太 氏

国際航業株式会社
HR・コンプライアンス本部
業務部 ファシリティ担当課長
兼 本店業務グループ

森山 亮太 氏

中嶋 美穂

三幸エステート株式会社
ワークプレイスコンサルティング部
コンサルタント

中嶋 美穂

伊藤 幸司

三幸エステート株式会社
大阪支店
営業部

伊藤 幸司

齊藤 勇

三幸エステート株式会社
プロジェクトマネジメント部
プロジェクトマネージャー

齊藤 勇

Contents

  1. 築年数の経過した自社ビルを売却し都心の築浅ビルにオフィスを移転した
  2. 旧オフィスの各種調査を行い移転先に相応しい適正面積を策定した
  3. いくつかの条件を踏まえながら候補ビルの絞り込みを行った
  4. 社内でプロジェクトチームを形成。さまざまな意見を取りまとめていった
  5. コミュニケーションを活発にするいくつかの仕掛けを用意した
  6. 世代や意見が異なる同士が集まる場所。その一番身近な場所がオフィスになる

カフェエリア

カフェエリア

築年数の経過した自社ビルを売却し都心の築浅ビルにオフィスを移転した

1947年に設立した国際航業株式会社(当時は三路興業株式会社)は、航空写真測量をベースにデータの取得から分析・解析等の空間計測と、データの利活用、計画設計等のコンサルティングを両輪に業務を拡大してきた。2003年には国内初のデジタル航空カメラを導入するなど、空間情報のスペシャリストとして「はかる」技術を進化させ続けている。

今回、オフィス移転を行ったのは同社の関西事業所となる。同事業所は兵庫県尼崎市内に立地する自社ビルで業務を行っていた。

「地上7階建のビルで約1,600坪を使用していました。築30年が経過していることもあり、設備面の老朽化が問題になっていました」(伊藤氏)

「それに加えて、運営面での課題もありました。今まではグループ会社の一社にビル管理を委託していたのですが、その部門が閉鎖になりまして。業務部がビル全体の運営を行うには、あまりにも人的なリソースが足りなかったのです」(日髙氏)

「もちろん旧オフィスにも使いやすい部分があったのも事実です。館内細則もありませんし、気兼ねのない自由な使い方が可能でした。しかし私どもには新たな働き方を推進できるオフィスが必要だったのです」(伊藤氏)

今回の移転プロジェクトの事務局は、責任者として東京本社の伊藤大介氏が務め、業務部ファシリティ担当として森山亮太氏、関西業務グループとして日髙賢治氏、山本昌美氏、樋口志保氏、小栁貴晟氏の合計6名のメンバー構成であった。

「最適解を見つけるために数社に相談しました。三幸エステートさんからの提案は、利益の最大化を目指した方法で自社ビルを売却。その後、適正面積を策定したうえで移転先を提案、さらに新オフィスの構築までをワンストップサービスで行うものでした」(伊藤氏)

検討の結果、売却査定額や移転コスト、コンサルティング内容などを比較し、多くの成功実績を持つ三幸エステートが担当することになった。

旧オフィスの各種調査を行い移転先に相応しい適正面積を策定した

オフィスの適正面積策定は、三幸エステート ワークプレイスコンサルティング部の中嶋美穂が担当した。

「現状分析からスタートしました。自社ビルということで通路にも打合せスペースや荷物が置かれていましたので、そこは通路ではなく執務面積としてカウントしました。この面積を曖昧のまま進めてしまうと、最終的に面積不足となってしまう可能性があるからです。同時に出社率を踏まえて算出した必要席数、会議室利用度調査、収納量調査なども行いました」(中嶋)

「面積策定調査によって1,400坪前後に縮小できることがわかりました。しかし旧オフィスの立地である尼崎エリアではまとまった空室を確保できません。そこで移転先の範囲を広げる必要がありました」(中嶋)

「面積策定調査やレイアウト検証と並行して従業員アンケートも実施しました。その結果、従業員の要望が『最寄り駅からの距離』『高速道路へのアクセス』『鉄道路線の乗り入れ数』『BCP環境』『統合できる広さ』といった順であることが明らかになりました」(伊藤氏)

「私どもはオフィス移転に関しては全くの素人です。何から始めればいいのかもわかっていません。今回、コンサルティングから参加いただいたことでやるべきことを理解しました。そして移転計画というレールに乗ることができたのです」(日髙氏)

いくつかの条件を踏まえながら候補ビルの絞り込みを行った

移転先候補ビルの提案は、三幸エステート大阪支店 営業部の伊藤幸司が担当した。

「当社は、大阪エリアだけで約17,000棟ものビル情報をデータベース化しています。そこからエリアと面積で35棟に。さらに賃貸条件や空室時期の条件を加えて絞り込み、移転先の候補として11棟のビルをご提案しました」(伊藤)

11棟のビルを比較表にしていただきました。それらを社内で精査し、8棟に厳選しました」(日髙氏)

それから候補ビルを実際に見て詳細を確かめていくフェーズに入る。見学会は希望者を募って2回に分けて行った。

「最初の見学会は役員や管理職を中心としたグループです。現入居ビルをスタート地点として、8棟のビルを見学するというもの。終了後にアンケートを実施したのですが、JR大阪駅至近の大規模ビルが高い評価でした」(伊藤)

2回目の見学会は若手メンバーを中心に20人超が参加しました。若手メンバーからの評価も高かったですね」(日髙氏)

「築年数が浅い、BCP対応が万全、必要とする駐車台数が確保できる、と好条件が揃っていました。さらに当社が推奨している再生可能エネルギーを導入しているビルだったことも魅力的でした」(森山氏)

「見学会が終わり、評価の高かった3棟から選定することになりました。参加者へアンケートを行い、メンバーの評価が一番高かった現入居ビルへの移転に決まりました」(日髙氏)

「BCP対応の優位性、トイレ、エレベーターなどの設備面、ラウンジや貸会議室といった新しい働き方への対応の可能性、若手メンバーの意見の尊重など、総合的な面から部門間協議を行いました。最善な選択ができたと思います」(伊藤氏)

社内でプロジェクトチームを形成。さまざまな意見を取りまとめていった

移転先が確定したことで、レイアウトデザインを具体化していく。三幸エステートからはプロジェクトマネジメント部の齊藤勇が参加する。

「事務局の下に主要4部門を置き、40名弱のチーム編成をしました」(小栁氏)

「プロジェクトのメンバー構成は、7月にいただいていた記憶があります。この段階で、これだけの体制がつくられていたことに驚きがありましたね」(齊藤)

11月に正式に現入居ビルとの契約が締結。その前から設計会社選定の準備は行われていたという。その後、設計会社が確定してレイアウトデザイン会議へ進んでいく。

「レイアウトデザイン会議は、毎週木曜日午後2時から行いました。その他にも、通信ネットワークや家具選定を目的とした分科会などもありました」(日髙氏)

「メンバーの意見を尊重しながら進めていったため、その取りまとめに時間を要しました。内装工事が始まる直前まで20回ものレイアウトデザイン会議を開催しています」(日髙氏)

「当初は、移転日を202311月末に設定していましたが、諸事情で一部先行部隊を10月末に、本格的な引越しを11月初旬に変更しました」(伊藤氏)

「工事期間が短縮されたとしても、スケジュールだけを優先して仕事が雑になることは許されません。そこで私どもは『万が一』に備えたもう一つのシナリオも用意して進行しました」(齊藤)

コミュニケーションを活発にするいくつかの仕掛けを用意した

新オフィスのデザインコンセプトは「組織と部門相関を重視したレイアウト、社内コミュニケーションを活発にする」とした。

「オフィス全体のデザインは数種類の提案の中から、『ライトナチュラル』が選ばれました。明るい木目を基調にしたカラーで親しみやすさを表現したデザインです」(齊藤)

それでは8階から順にいくつかのポイントを紹介していこう。8階は、一部執務室はあるものの、受付とエントランス、応接、カフェコーナーといったコミュニケーション要素の高い機能を集中させたエリアとなる。

受付は、天然素材の火山噴出物を使ったボード張りの壁に同社のロゴマーク。その下に受付用の電話台を置いたシンプルなデザインとなっている。受付を抜けるとエントランス兼展示スペースが現れる。

展示スペースには、当社がこれまで使用してきた計測機器などを飾り、博物館をイメージしたような造りにしています。当社が積み重ねてきた実績を感じていただける空間になったと感じています」(日髙氏)

受付

受付

展示スペース

展示スペース

「その奥にはカフェエリアを配置しました。初期の設計段階ではフリーアドレスを採用して、フロアのいたるところにABWコーナーを新設するアイデアもありました。しかし、このオフィスは技術者の割合が多いためフリーアドレスは不向きという結論になりました。とはいえコミュニケーションを活性化させるための仕掛けは必要でした。そうして考えられたのが、このカフェエリアになります」(伊藤氏)

「旧オフィスでは大部分の方が自席でランチをとっていました。今ではランチ時間にここに集まり、今までになかったコミュニケーションが生まれています」(日髙氏)

17時半以降は懇親会などでも利用できるルールとしました。カフェテリアの一角には洒落たバーカウンターも設けています」(小栁氏)

バーカウンター

バーカウンター

カフェエリアは50席以上を設けている。気分転換やランチの場だけではなく、無線LANを採用しているためPCを使ったミーティングやコワーキングも行われているという。

そして1213階は執務室専用フロアとなる。技術者が主体となっているため大きなモニタとPCを並べた固定席となっている。

執務室全景

執務室全景

「執務室専用フロアといっても社内用会議室は充実させています。そして簡易的な打ち合わせを行う場所として、座席近くにさまざまなテーブルを配置しました」(日髙氏)

「そのほか12階には大中小あわせて7室ある会議室エリアと、新たな機能としてWeb会議用のブースエリアを設置しています。予約制なのですが、かなり稼働率が高く、これまで懸案だった会議室不足も改善できています」(小栁氏)

打ち合わせエリア

打ち合わせエリア

Web会議用ブース

Web会議用ブース

「ここで働く全員で理想的な働く場をつくりあげました。オフィスに愛着を持つことで、従業員のモチベーションも上がると思っています」(伊藤氏)

世代や意見が異なる同士が集まる場所。その一番身近な場所がオフィスになる

新オフィスの完成後、数ヵ月が経過した。移転目的の一つである「社内コミュニケーション」は間違いなく活発になっているという。

「出社した従業員同士で会話をしている姿を頻繁に目にします。やはり顔を合わせることは何らかのプラスに繋がるものだと感じています」(小栁氏)

「移転後は、セキュリティや通信環境、そして働く機能といった全てが新しくなりました。それにより多くの課題が解消できています。オフィス移転によって会社が前進していることを実感しています」(日髙氏)

2ヵ月にわたって関西に常駐し、移転プロジェクトに参加した森山氏もこう語る。

「関西のプロジェクトメンバーとすぐに意思疎通が出来たのは、対面によって密なコミュニケーションが取れたからだと思います。少なくとも当社にオフィスは必要な存在だと感じています」(森山氏)

「若い従業員の中からはテレワークをもっと活用したいという声も出ています。おそらくオフィスが必要かどうかは世代や業務内容によって変わってくるのでしょう。ですが、世代や意見が異なる者同士でもコミュニケーションが取れる場所を一つは必ず用意するべきだと思っています。その考えはIT技術や通信インフラの発達で変わってくるかもしれません。それらを含めて時代に合わせたオフィス運営をしていきたいと思います」(伊藤氏)

国際航業株式会社
航空写真測量をベースに専門性の高いインフラサービスを提供してきた国際航業株式会社。現在は、我が国の課題であるDX、GXに取り組むべく、ICT、IoT 、AI 技術を用いたサービスの提供にも力を入れている。


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