マーケットワン・ジャパン合同会社

2023年3月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィスが「仕事をするための場」から
「仕事を生む、価値を創るための場」に生まれ変わった

BtoBマーケティングのアドバイザリーサービスを主軸に事業展開をしているマーケットワン・ジャパン合同会社。さらなる業務拡大を目指し、日本橋エリアから銀座エリアへ本社移転を行った。移転後の新オフィスには、コミュニケーションを生み出すための多様な仕掛けを採用しているという。今回の取材では、移転計画の概要やオフィスに対する考えを中心にお話を伺った。

山田 理英子 氏

マーケットワン・ジャパン合同会社
代表社員

山田 理英子 氏

水野 亮 氏

マーケットワン・ジャパン合同会社
執行役 経営管理兼人事管掌

水野 亮 氏

岡崎 明子 氏

マーケットワン・ジャパン合同会社
ビジネスオペレーション部 アシスタント

岡崎 明子 氏

Contents

  1. 日本市場向けにサービスを開始。段階的に事業を拡大してきた
  2. 周辺環境も「働く」の重要な要素と考えて次のオフィスの移転先を探した
  3. デザインに落とし込む前のフェーズに多くの時間をかけた
  4. 多様な会話が生まれる。そのための環境をつくる必要があった
  5. 働く環境はワンパターンではなくバリエーションを用意するべきと考えた

スタンディングテーブル

スタンディングテーブル

日本市場向けにサービスを開始。段階的に事業を拡大してきた

米国ボストンにグローバル本社を置くMarketOne International 19986月の設立以降、新たなマーケティング手法を開発してサービスを展開してきた。日本市場へのサービス開始は20031月。約3年の営業準備期間を経て東京オフィスが開設された。当時はわずか3名でのスタートだったという。その後、業務拡張に合わせて何度かのオフィス移転を実施。20135月には将来的な人員増を見据えた本格的な「働く場」を構築した。

20217月には日本市場における事業基盤のさらなる強化を目的に、マーケットワン・ジャパン合同会社を設立。「デマンドセンター」といわれる持続的な売上拡大のためのマーケティング手法を軸とする各種のサービスを提供することによって事業を拡大し続けている。

「私どものサービスは、新規市場で売上につながる高精度な情報を収集・提供するところから始まりました。現在では "事業戦略を実現し、売り上げに貢献するBtoBマーケティング" として、『デマンドセンター』と言われる、売り上げを創る機能の設計と実行支援を軸にしたサービスを大手企業様向けに展開しています。最終的なゴールはお客様の成長変革の実現を支えること。そこに特化している点が一般的なマーケティング会社との違いになります」(山田氏)

「具体的には、お客様の商品に対する課題や問題点を洗い出し、そのビジネスシーンに合わせた施策を考えていくというものです。CX(コーポレート・トランスフォーメーション)支援といった大規模な組織変革の中でのコンサルティング業務からはじまり、インサイドセールスの強化を目的としたサポートの依頼もありますし、新規顧客の獲得に特化した要請もあります」(水野氏)

「解決策は中長期的に導き出します。私どもは、そんな手法を伴走型マーケティングと名付けています。社内にはさまざまなシーンに合わせてプロフェッショナルが存在しており、ソリューションごとにチームが組成されます」(山田氏)

周辺環境も「働く」の重要な要素と考えて次のオフィスの移転先を探した

旧オフィスは中央区日本橋に立地していた。オフィスビルの1フロア約160坪を使用。その執務室は、ごく普通に机を並べたレイアウトだったという。

「新型コロナウイルスの感染予防対策として、まん延防止等重点措置が発令されたときはフルリモートを選択しました。20221月からは、在宅と出社を両立させるハイブリッド型の働き方を導入しています。この働き方は現在も続いており、今後の社会情勢の変化に左右することなく継続していく方針になっています」(山田氏)

「今回の移転計画は、入居していたビルの建替えが正式に決定したことでスタートしました。移転先を探すにあたっては、毎年従業員が増えることを見込んで、現状よりもオフィス面積は縮小しないと決めていました」(水野氏)

「働く環境の整備は絶対的に必要ですが、実は "どこで仕事をするか" も重要な要素だと考えています。当社は企業と企業を繋ぐ中間点に位置している会社です。それを考えると、都心のビジネスエリアの中でもさらに中心となっている場所が、新オフィスの立地には最適だと考えました」(山田氏)

そうして面積とエリアを優先条件として候補物件の情報を集めていく。実際に見学したのは、慣れ親しんでいた日本橋で数棟、そのほかには虎ノ門や丸の内、銀座といったビジネスエリアに立地するオフィスビルが中心だった。最後は、候補物件同士を比較することで理想的なオフィスを導き出した。

デザインに落とし込む前のフェーズに多くの時間をかけた

移転先との賃貸借契約を20225月に締結。それからデザインコンペを実施した。コンペの末、選ばれた内装デザイン会社には、「オフィスに対する想い」に対して同じベクトルを感じたからだという。

「プレゼンの中で、出てきたキーワードが『綺麗』や『カッコいい』ではなく、『働きやすさ』や『会話』でした。その部分に共感を覚えたのです」(岡崎氏)

最初の打合せはヒアリングから始まる。デザインに落とし込む前の重要なフェーズである。そこではデザイン要件よりも、「会社の文化」「価値観」「目標」といった項目に多くの時間がかけられたという。それによって同社のありのままの想いが次々に具現化されていった。

「オフィスデザインに関してはプロの考えを尊重すると決めていました。あえて社内からの細かい要望を受け付けなかったのですが、そのことも最後までテーマがぶれなかった要因だと思っています」(水野氏)

土壇場でのやり直しといったこともなく、7月からB工事、8月からC工事がスタート。当初の予定通り10月末に完成し、11月に移転が完了した。

「ボストン本社からの指示もなく、自由につくらせていただきました。当社はグローバルとしての結束が強い中で、拠点ごとに異なるスピリットも尊重されています。その自由度の高さが強みでもあります」(山田氏)

多様な会話が生まれる。そのための環境をつくる必要があった

それでは新オフィスを具体的に紹介していこう。オフィスコンセプトは、「出社したくなる、家よりも会社が仕事しやすい」とした。

エントランスを抜けると執務室に入る手前に「ラウンジ」と名付けたスペースが広がる。誰もが使用できるスペースのため、あえてセキュリティレベルの低い場所に配置している。

「このエリアは二通りの使い方を想定しています。一つはオープンなミーティングをするための場所、そしてもう一つは仕事以外のことをする場所です。ここで見ること、自然に聞こえてきたことなど、想定していなかったことで会話が広がっていく。そんなシーンを求めて構築しました」(山田氏)

「旧オフィスでも会話自体はありましたが、リモートやハイブリッドによってオフィスの使い方が次第に変わっていきました。リモート中心の働き方では、コミュニケーションの現状維持はできても、それ以上にパフォーマンスを向上させることは難しいと判断したのです」(岡崎氏)

「もともとリモートでは、現時点での必要な情報しか入ってきません。我々は『今は不要な情報』にも価値を求めたのです。不要な情報も必要な情報に転化する。そのためには会話ができるたくさんの環境を増やす必要がありました」(水野氏)

ラウンジの中だけでもさまざまな機能を揃えている。「バーカウンター」「のびのびホワイトボード」「ソファエリア」。椅子を並べるとスクール形式で約60席の配置が可能で、顧客を対象にした勉強会の開催も行える。

バーカウンター

バーカウンター

のびのびホワイトボード

のびのびホワイトボード

ソファエリア

ソファエリア

「新オフィスに移ってから、個々の従業員が自分らしくなっているのを感じます。顔つきとか、笑顔とか。仕事に没頭している人は集中エリアで、誰かの意見が欲しいときはオープンスペースで。時にはホワイトボードを活用しながら意見交換を行う。ソファーに座ってゆっくりと資料を読み込んでいる人もいます」(山田氏)

「『開放できる環境』が用意できました。これこそが自分たちに合ったオフィスといえるかもしれません。訪問されるお客さまの数も増えました。反応も上々ですね。ラウンジでミーティングを終えた後に一緒に食事をすることもあります。そんな社外の方とのコミュニケーションにも有効に活用できています」(水野氏)

「業務後に、ラウンジのモニターにテレビ回線を繋いでスポーツ観戦をしたこともあります。本当に色々な発想が実現できていますね。まさにオフィスを使いこなしているという感覚があります」(岡崎氏)

執務室に入るとチームごとに机が並べられている。パーテーションも低く設定しているため視線を遮るものがない。全体の席数は従業員数よりだいぶ多めの150席を用意しており、増員対策も万全だ。

執務室

執務室

「常にチームを超えたプロジェクトが進行していますので、いつでも集まれるように多様なエリアをいたるところに配置しました。例えば『スタンディングテーブル』や『ファミレス風のブース』、『ソロカウンター席』、『Web会議用ブース』などです。それらは、現時点での業務に合わせて自由に使えるエリアになっています」(山田氏)

「執務室内の動線には工夫をしました。『人が交差する』ということも狙いの一つですので、あえて人の流れが重なるようにしています。違うチーム同士のメンバーが会話を楽しんでいる姿を見ると嬉しくなりますね」(岡崎氏)

ファミレス風のブース

ファミレス風のブース

ソロカウンター席

ソロカウンター席

Web会議用ブース

Web会議用ブース

執務室の最奥には、「プレイルーム」と名付けた多目的の部屋。部屋の中央にはリフレッシュ目的の卓球台が置かれている。ここは打ち合わせやブレストルームとして使われることも多いという。

プレイルーム

プレイルーム

働く環境はワンパターンではなくバリエーションを用意するべきと考えた

移転から約4ヵ月が経過した。現時点では従業員からの不満や要望は出ていない。

「実際に在宅でも可能な業務はたくさんあります。毎日、会社に来る必要がないのかもしれません。しかし対面だからこそお互いがわかりあえるのも事実です。今後もエンゲージメントが高まるようなオフィスを維持していきたいです」(岡崎氏)

「旧オフィスは、8時間の『仕事をするための場所』にすぎませんでした。しかし、私たちにとっての仕事は作業ではありません。仕事は新たな何かを価値創出するための行動だと考えています。であれば、会社にはそのための機能を提供する必要があるのです。新オフィスは、『仕事を生みだすための場所』に変わってきたように感じることがあります。これからは、オフィスは使うだけではなく、人を紡ぐ場所、オフィスから新たな価値を創造する、その成果を社会・顧客に還元する。それが可能となることを考えていく必要があるのかもしれませんね」(水野氏)

「私どもの仕事の形は、今後どんどん複雑に枝分かれしていくのでしょう。ですからそれに合わせて働く環境もワンパターンではなく、たくさんのバリエーションを用意すべきだと思っています。一瞬に見せた表情、ふいにつぶやいた言葉、時おり感じる視線など、対面でしかわからないことは、日常業務の中にたくさん見え隠れしています。そしてそこには次の価値創造のヒントがあります。これからも当社の価値を維持し向上させるためには、『人との交わり』が必要なのです」(山田氏)

マーケットワン・ジャパン合同会社

米国ボストンに本社を置き、グローバル30ヵ国以上を対象にサービスを提供するMarketOne Internationalのアジア最初の拠点として2006年に設立。「事業戦略を実現し、売り上げに貢献する」BtoBマーケティングの実現を、アドバイザリーと実行の両面からサポートする「伴走型コンサルティング」を特長としている。