株式会社ミドリ 本社オフィス

株式会社ミドリ 本社オフィス(恵比寿ビジネスタワー)No.3

2007年2月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

コミュニケーションを活性化するオフィスとは?
そんな課題の追求が先進的デザインにつながった

デザインを武器に、文具・雑貨からWebサイト制作等、多岐にわたる商品・サービスを提供する株式会社ミドリは、2006年7月、錦糸町(墨田区太平)から恵比寿駅近くの恵比寿ビジネスタワー9階に本社機能を移転した。新オフィスは先端的なデザインのコーポレートゾーンと、明るく機能的な業務スペースにより、目的である「コミュニケーションとコラボレーションの活性化」を確実に達成しているだけでなく、社外からも好評で、CI戦略上も大きな効果を発揮している。

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プロジェクト担当
武知慶洋氏

株式会社ミドリ
武知慶洋氏

総合管理部総務課
マネージャー

比企都志絵氏

株式会社ミドリ
比企都志絵氏

マーケティング部

北川原 温氏

株式会社北川原温
建築都市研究所
北川原 温氏

代表

はやわかりメモ

  1. コミュニケーションとコラボレーション
    オフィスの移転を考えるにあたって新しいワークプレイスのコンセプトとなったのはコミュニケーションとコラボレーションの促進。社長の経営方針、社員による検討の結果、他社の先進事例、専門家の意見など、すべてが同じ方向を示していた。
  2. オフィスのイメージを決めるゾーンの設置
    「デザインによる社会と文化への貢献」という企業理念を表現する場として、コーポレートゾーンを中央に配置。デザインを専門家に依頼し、曲線や光による演出で印象的な空間を実現した。社員の交流の場としても活用されている。
  3. 機能別のスペースを効率的に配置
    執務スペース、会議スペース、ライブラリーなどを機能的に配置することで効率を高める。フリーアドレス化により書類を80%カット。
  4. デザインは機能向上につながる
    白を基調にした執務スペースとモダンファニチャー、多様な目的に使える会議室など、デザイン上の工夫をすることで結果的にオフィスの機能は向上する。それにより社員の意識が高まり、コミュニケーションも活発になっていく

コミュニケーションの活性化はすべての企業にとって共通の課題

文具メーカーとして知られ、半世紀以上の歴史を持つ株式会社ミドリは、1974年に建設した錦糸町の自社ビルに本社を置いていた。しかし、デザイン性で差別化を図る製品を扱う企業としてワークスタイルを一新したいとの考えから、オフィスの移転を検討していたという。総合管理部総務課の武知慶洋氏が説明する。

「レターセット、手帳、筆記具からシュレッダー。企業向けプレミアム、ホームページ制作等々で、他のメーカーにない洗練されたデザインの商品・サービスを開発することが、私たちの会社にとってのテーマです。しかし、古いビルでは制作環境を整えるにも限界があるし、営業部門・企画部門のフロアが分かれていると、アイデアの活用化を促進する場も限られてしまいます。このため社長の発案で、新オフィスのプロジェクトが始まったのです」

条件としては、立地と共に「理想のワークプレイスが実現できるビルの仕様」を求めた。

「以前は錦糸町に本社があり、文具関係の取引先が近くに多く、便利なロケーションではありました。しかし今では販売ルートも多様になり、錦糸町にこだわる必要がなくなりました。できればトレンド発信スポットで、ワンフロアに全社員が入れるようなビルであることが理想でした」

この点、恵比寿ビジネスタワーは、まさに希望通りのビルだったという。

「第一に、最近注目されている場所であること。第二に、ワンフロアの面積が約350坪(1156m2)あり、旧本社ビルのときよりは若干狭くなりますが、100人規模のオフィスとしては十分だったこと。あとは、ここにどんなワークプレイスを構築するかでした」

その段階で、ミドリの会田一郎社長は友人を介して東京芸術大学教授の建築家、北川原温氏に相談した。

「街のようなオフィスをつくろうといった北川原先生のアイデアは、従来の日本企業のオフィスしか知らない私たちにとって非常に新鮮でした。そこで、まず自分たちで新しいワークプレイスのコンセプトを考えていこうと、話題のオフィスを見学に行ったりしました」

見学に応じてくれた企業の中には、『オフィスマーケット』2005年6月号で紹介したソニーファシリティマネジメント株式会社のオフィスなどもあったという。

「フリーアドレスオフィスの採用には漠然とした不安があったものの、実際の運用例を拝見すると、コンセプトさえしっかりしていれば社員の方々は抵抗なく受け入れていらっしゃる。これなら、自社でも大胆な改革も可能だと思いました」

多くの社員を交えて検討を重ねた結果、コンセプトとして決まったのは、コミュニケーションとコラボレーションの活性化を徹底的に推進するワークプレイスの実現だった。

「現代は経営環境もマーケットも急激に変化し続けていく時代です。そこにあって社員の意識を変革していくには、やはり人と人の交流を活発にしていくしかない。結論的に多くの企業が目指す方向と一致したのは、この点が共通した課題になっているからではないでしょうか」

新しいオフィスのシンボルとなるコーポレートゾーンの「デザイン」

このような経緯によって生まれたミドリの新本社オフィスは、エントランスから続く広いコーポレートゾーンを設けたのが最大の特徴だ。中央に7メートル半の長いハイカウンターテーブルが置かれ、両脇に商品の展示コーナーを兼ねた商談スペースが並ぶ。

「このゾーンのデザインは北川原先生にお願いしました。周囲を複数の曲面で囲むことにより、動きが感じられるようになっています」(マーケティング部、比企都志絵氏

コーポレートゾーンを囲む壁面は、それぞれ異なる曲線で設計されている。

「先生によると、無限の未来への発展をイメージする放物線と、人と人との対話をイメージした楕円、求心力を意味する真円を組み合わせたそうです。たしかに多様なアールで構成されたことにより視線を動かしただけでいろいろな"顔"が現れ、デザインの効果はすごいと思いましたね」比企氏

もう一つの工夫は、窓のある部分との間にあえて仕切を設けたところだという。

「柔らかな間接照明により、グレアを抑えた落ち着いた印象のエントランスですが、ここでイベントやパーティを行うときには仕切を開放し、奥のラウンジカフェと一つにすると一転して眺望の開けた明るいスペースに変えられます。つまり、同じ場所で雰囲気の異なる空間を演出できる効率的なレイアウトになっているのです」(比企氏

商談スペースの囲いをグリーンに輝くスクリーンで覆ったり、外光を遮ることで、商品にライトをあてて視線を誘導するなどの演出が可能になった。デスクのあるワーキングスペースは外光が入りやすいレイアウトになっているため、このゾーンの雰囲気をあえて変えることで、気分転換にもなるという。

「カウンターにはいつも多くの社員が集まって話をしていますし、そこから続く窓際のラウンジカフェは、集中作業をしたい社員にも好評です。オフィスの中心にこのような場所があるのは、意図しない人の出会いが生まれ、インフォーマルコミュニケーションの活性化に大きく役立っているのではないでしょうか」(比企氏

業務内容とスタイルにより機能と場所を選択する空間

オフィス全体のレイアウトとしては、コーポレートゾーンを挟む形でワーキングスペース(執務室)、フォーマルコミュニケーションスペース(会議室)、作業スペース、ライブラリースペース、収納スペース、ドキュメントスペースなどの機能別のコーナーが効率よく配置されている。

「ワーキングスペースは、一部の管理者を除いてフリーアドレスです。一応、部門ごとに場所は区切ってありますが、仕事の必要に応じてどこで働いてもかまいません」(比企氏

席数は人数分用意してあるため、1人あたりの面積は旧本社より若干小さくなったものの、利用上の問題は一切ないという。

「ただ資料については、それぞれロッカーに入る分以外はライブラリーにしか置けないことになっていますから、移転にあたっては電子化などを進め、80パーセントほどカットしました」(武知氏

大量の書類を整理しなければならないことに、その時点では社員たちから苦情が聞かれたものの、現実には、かえって資料のスリム化が進み、仕事の効率は上がったそうだ。

「新しいオフィスではファックスやプリンターも1カ所に集めたのですが、その結果、私自身、プリントアウトを必要最小限に抑えるようになりました。それでも仕事上はまったく問題ないのですから、前は無駄が多かったのでしょう」(比企氏

一方で、「紙へのこだわり」も強くなったという。

「私たちはレターセットやダイアリーを商品に持っているように、紙の魅力をセールスポイントにしてきました。それは、紙には紙の効果があることをよく知っているからです。ところが、無駄な書類を持つことは、実はこれと相反する行為だったのですね。改めて、価値のある紙の製品をつくろうという気になり、ビジネス上の意識は高まったように思います」(比企氏

オフィスデザインの工夫は機能の向上と直結している

ミドリのオフィスで全体的に受ける印象は、先進的なデザインが見せる明るさだ。基調となる色は「白」で、壁やパーテーションだけでなく、海外メーカーを中心に揃えた家具もほとんどがホワイト系で統一されている。

「このあたりは社長のこだわりでした。清掃の回数は増えますが、社員も自分たちのオフィスを大切に使うようになり、思ったより汚れないものです」(比企氏

もっとも、オフィスのスタイルが変わっても社員たちが不便を感じないように、様々な工夫もしている。

「賃貸ビルでは駐車場を確保できない関係で、営業担当者は電車による移動をするようにルールを変えました。しかしそれだけだと『見本などを持ち運ぶのが大変』という問題もあるので、全員にキャスター付のバッグの支給と、レンタカー会社2社と法人契約を交わしました。ほかにも、個人で書類を持てない分、ライブラリーをワーキングスペースの横に配置するなど、利便性を損なわないようにいろいろ考えました」(武知氏

運用を開始して半年ほど経つが、今のところ特に問題はなく、新オフィスへの社員の評価は非常に高いという。

「高まったデザイン性はもちろん、それに伴う機能面の充実ぶりを皆が楽しんでいるように感じます。たとえば打ち合わせ一つをとっても、前は同じような会議室しかなかったのに、今はブレスト用に全面ホワイトボードを配した部屋から、ソファーの部屋、コーポレートゾーンのカウンター、ラウンジカフェなど、気分を変えられるスペースが多数用意されています。もともと人間関係が作りやすい雰囲気の会社ではありましたが、新たな『場』が与えられたことでもっと多様な交流が生まれる。それだけでも、移転は大成功だったと思いますね」(武知氏

Swingbird

Swingbird先端をヒヨコのくちばしに見立て、握り部をヒヨコの体のふくらみにあてはめた修正テープ。修正テープを送り出す機能と持ちやすく作業しやすい起き上がりこぼし状の握り部にマッチした処理で、ヒヨコをモチーフとする機能性と意味性が合致したデザインとなっている。

2006年Gマーク受賞商品

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