三浦法律事務所

2022年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

リモートワークを促進しながら
リアルな会話も弾むオフィスを構築した

2019年、新時代のプロフェッショナルファームを目指して三浦法律事務所が設立された。以降、幅広い分野で高品質なリーガルサービスをワンストップで提供し、クライアントのニーズに応えている。メンバーも順調に増加し、現在では弁護士約70名、スタッフ約30名が所属。2021年12月に館内増床により執務フロアを移動させる。2022年3月には、今まで使用していた3階のスペースを会議室専用フロアとしてリニューアルオープンした。今回の取材では、その背景や具体的なオフィス概要についてお聞きした。

大澤 玄 氏

三浦法律事務所
弁護士

大澤 玄 氏
PHOTO : ©SHUHEI SHINE for MIURA & PARTNERS

大村 剛史 氏

三浦法律事務所
弁護士

大村 剛史 氏
PHOTO : ©SHUHEI SHINE for MIURA & PARTNERS

中島 稔雄 氏

三浦法律事務所
弁護士

中島 稔雄 氏
PHOTO : ©KAZUSHI TOYOTA for MIURA & PARTNERS

高山 のぞみ 氏

トレイルヘッズ株式会社
取締役
COO Producer /
Project Manager

高山 のぞみ 氏

Contents

  1. クライアントの選択肢を増やすために幅広い分野を扱う法律事務所が誕生した
  2. ビルグレード、交通アクセス、景観と全てにおいて条件通りのオフィスビルだった
  3. 新たなチャレンジのために増床プロジェクトが始まる
  4. 新オフィスのコンセプト、レイアウトは所員全員の意見を聞いてつくりあげた
  5. オフィスでの業務とリモートでの業務。それぞれの利点を組み合わせて業務を推進する

3階受付

3階受付

クライアントの選択肢を増やすために幅広い分野を扱う法律事務所が誕生した

「幅広い分野を扱う法律事務所を新設することでクライアントの選択肢を一つ増やし、働く弁護士がイチから組織をつくる楽しみを経験してもらえる "場" を作りたい」。発起人である三浦亮太弁護士のそんな思いから三浦法律事務所設立の構想が始まった。弁護士になって20年目の節目を迎えるにあたっての決断だったという。

「この考えに賛同した弁護士が集まり、三浦法律事務所が設立されました。20191月のことです」(大澤氏)

同所は、「Full Coverage & Top Qualityの実現」と「Diversity & Inclusionの実践」を軸に、クライアントの目的に応じて最適なリーガルサービスを提供している。

他の法律事務所との違いも特徴的だ。

「法律事務所業界において、設立当初から30人もの弁護士が所属する企業法務系の法律事務所は過去20年で前例がないようです。今年で4年目を迎えましたが、20227月現在、弁護士数は74名にまで増えています」(大村氏)

こうした急成長ぶりが設立当初から業界内外で注目されているという。

「通常、他の法律事務所はいわゆるシニア層といわれる弁護士が、トップダウンで事務所を運営しているものです。しかし当事務所では中堅世代の弁護士が中心となって運営している。その点は大きな特徴といえますね」(中島氏)

「さらに大手法律事務所出身者だけではなく、海外の法律事務所や官公庁、大手企業の法務部での勤務経験を有する者など、多様なバックグラウンドを持つ弁護士が多数在籍しています。海外の弁護士資格保有者も多数有しており、国内案件だけではなく、国際案件への対応力も備えています」(大澤氏)

ビルグレード、交通アクセス、景観と
全てにおいて条件通りのオフィスビルだった

設立当時からオフィス探しは三幸エステートが担当した。

「希望エリアとして考えたのは、クライアントにとっての利便性を考えて大手町を中心とした日比谷・霞が関周辺。その範囲の中で複数のオフィスビルを見学していきました」(大澤氏)

最終的に選んだのは、大手町を象徴するオフィスビルの一つだった。

「大手町ファーストスクエアはビルグレードも高く、外観・内装ともに品のいいデザインであることが魅力的でした。その他にも、交通アクセスの良さ、ハイレベルのセキュリティ、そして高層ビル群の谷間につくられた『大手町の森』の景観などが良く、検討チームの全員一致での決定となりました」(中島氏)

「三幸エステートさんには、我々のニーズを把握いただいて適切なオフィスをご提案いただきました」(大澤氏)

そうして20187月、3階の100坪の契約を締結した。

新たなチャレンジのために増床プロジェクトが始まる

しばらく3階のオフィスで業務を続けていたが、設立当初の想定を超える増員もあり、あっという間に手狭になってしまった。そこから、ビル内での増床プロジェクトがスタートした。20206月のことだ。

「プロジェクトチームを発足し、どのようなオフィスにしたいかを所内のメンバーにヒアリングを行うところからスタートしました」(大澤氏)

デザイン・レイアウトの打合せだけで約1年を要したという。

「具体的には、20209月から12月にかけてPM設計会社とともに機能・デザインのすり合わせ、20211月から8月には執務室フロアの合議室や本棚の配置など細かい部分の設計を検討、デザインを固めていきました」(大村氏)

デザインの決定にあたり、PM兼デザインディレクションを担当したトレイルヘッズ社も主体的に関与した。

「まず10名ほどのプロジェクトチームが発足しました。そしてメンバーの意見を拾い上げるために、グループインタビューを実施。若手・中堅・リモートワーク多めなど属性の違う方々を選び、三浦亮太弁護士も加わった約20名を対象にしました。もともと、働き方やオフィス空間に対してのコンセプトがなかったので、理想のオフィスについてゼロから考えるために、自社の強みやありたい姿から洗い出していきました」(高山氏)

ヒアリングは主に「自社のユニークなナレッジ・スキル」「業界における自分たちの立ち位置」「顧客や取引先とどのような関係性を築きたいか」「理想的な働き方とは」をベースとして行われた。このようなインタビューは全4回繰り返したという。

「所内でヒアリングを行い、データを集計。その結果、新オフィスに求めることとして、『クライアントからの信頼に応える責任ある業務を行うことをベースとしつつも、多様な価値観を尊重しながら新たなチャレンジを創出する支えとなるオフィス』と具体的に言語化され、それを増床プロジェクトの根底の意識としました」(中島氏)

「こうして話した内容をテキストデータ化し、テキストマイニングの手法で、出現頻度や傾向などを分析していきました。『信頼』『クオリティ』のような法律事務所としてベースの価値観となるワード、『新規』『最先端』『チャレンジ』のような新しい問題に取り組む姿勢を表すもの。他には『風通し』『フラット』『選択肢』など、組織文化に紐づくワードも出てきました。これらを踏まえて、4つのワードをコンセプトとして策定したのです」(高山氏)

「『undefined(確定しきらない)』『challenging(挑戦)』『diversity(多様性)』『communication(コミュニケーション)』という4つのキーワードもコンセプトにしており、レイアウトもその点が活かせるよう意識しました」(大澤氏)

「具体的には、『undefined』のコンセプトは可変性という意味において、フリーアドレス席、コックピット席などに表れているかと思います」(大村氏)

「デスクの配置には『communication』の考えが現れています。執務室フロアには個室がなく、弁護士やスタッフがコミュニケーションを取りやすくなるための工夫を施しました。また、カフェテリアにおいてもコミュニケーションが円滑に行えるような設計になっており、実際に多くのコミュニケーションが生まれています」(中島氏)

新オフィスのコンセプト、レイアウトは所員全員の意見を聞いてつくりあげた

そうして202111月から工事がスタートする。

「何も無かった空間に自分たちの理想とするオフィスができあがっていく。その過程は見ていてとてもワクワクするものでした」(大村氏)

そして202112月に10階の執務室フロア、20223月に3階の会議室フロアがオープン。約2年にわたるプロジェクトは無事に終了した。

それではその概要を具体的に見ていこう。

3階の来客エリアは、木目とコーポレートカラーの緑を基調に素材や形状でコンセプトを表現しています」(高山氏)

「クライアントの層も幅広いため、重厚感のある部屋から、デザイン性の高い部屋まで多様な部屋を用意しました。会議室は弁護士やクライアントのニーズにあわせて選ぶことができます」(大澤氏)

3階会議室

3階会議室

3階会議室

3階会議室

旧オフィスで改善したい点としては会議室の音漏れ対策という課題があったというが、今回のプロジェクトではそのような課題に対してもアプローチした。

「壁面に二重ガラスを使用することで、圧迫感を与えない機能性の高いデザインを意識したことも特徴といえます」(中島氏)

「新オフィスではダブルガラスや天井裏への吸音材の敷き込みなど機能面を徹底的にこだわりました。そして個室ごとに異なる家具や壁面のアートなど、お客様をおもてなしする場として設えました」(高山氏)

10階の執務室フロアは、開放感のあるフロア設計になっている。

「法律事務所の多くは、チームや弁護士ごとに個室が割り当てられており、その部屋の中で業務を行うことが多いものです。しかし、当事務所では個室を設けず、一つの空間に弁護士やスタッフの席を配置しています。フラットな環境となっているため、気軽に声をかけやすく、コミュニケーションがとりやすい環境です。また、弁護士の取扱業務によっても求められる執務環境が異なるため、全ての座席を同じ仕様にするのではなく、数パターンの中から個人の希望に応じて選択できる仕組みとしました」(大澤氏)

10階執務室

10階執務室

10階執務室

10階執務室

「また、法律事務所としては珍しいカフェテリアをつくりました。そこでは気分や用途に応じて使い分けられるように、ソファ席や畳のスペースなどを採り入れて、居心地の良い空間づくりを目指しています」(大村氏)

カフェテリア

カフェテリア

本棚

本棚

その他、「紙の資料が多い」という業務上の特性と「収納による風通しの悪さ」という問題点をバランス良く組み合わせて、以下の施策を行った。

  • デスク周りの収納量にグラデーションをつけた
  • あえて複雑な島配置にし、多くの移動経路をつくった
  • 素早く所内打合せができるスタンディング形式のミーティングスペースを配置した
  • 気兼ねなく休憩できるように、休憩スペースと執務エリアを本棚でゆるく仕切った
  • 広いカフェテリアを構築。業務の効率性、集中とコミュニケーションを目指した
  • カフェテリアは、休憩や食事だけではなく、執務室以外でも仕事ができる場所とした

「プロジェクト開始から、プロジェクトメンバーだけで方針を決定するのではなく、都度所内でアンケートを行うなどして全員の意見を聞くという方針を最後まで貫きました。その結果、弁護士・スタッフ共に満足できるオフィスが完成したものと自負しています」(大澤氏)

オフィスでの業務とリモートでの業務。
それぞれの利点を組み合わせて業務を推進する

「メンバーからは好評ですね。カフェテリアが新設されたことで、メンバー同士のコミュニケーションも間違いなく増加しています」(大村氏)

「取引先からも、会議室のデザインや機能の評判が良いです。新オフィスは、事務所全体のブランドイメージの向上にも寄与していると感じています」(大澤氏)

「仮にコロナが収束した後も、フラットでコミュニケーションをとりやすいオフィスを変わらず運営していきます。そして所内のコミュニケーションがより活発になることに期待しています。例えば、カフェテリアを利用して勉強会以外の楽しいイベントも定期的に開催したいですね」(中島氏)

「リモートワークが増加している中で、オフィスは必要なのか? 当事務所も、リモートワークを促進してきましたが、その一方でオフィスがあるからこそコミュニケーションやアイデアが生まれていることも実感しています。オフィスで業務を行う利点と、リモートで業務を行う利点はそれぞれ異なります。私どもは、それぞれの利点を上手く組み合わせて、今後も業務を推進していければと考えています」(大澤氏)

オフィス写真:©SHUHEI SHINE for MIURA & PARTNERS


三浦法律事務所
互いの考えや立場の違いを受け入れることで化学反応を起こし、それが結果的にクライアントへのアウトプットの質を高められると考える三浦法律事務所。ここに結集した弁護士もバラエティに富み、ジェンダーの面においても多様性を重んじている。そうした既存の枠にとらわれないチーム力で、新時代のプロフェッショナルファームを目指していく。