株式会社OKAN

2022年4月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

時代に向き合ったオフィスを構築。
スペース効率と働き方を大幅に改善した

「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションに掲げ、働きやすい環境づくりをサポートしてきた株式会社OKAN。時代に合ったオフィスを構築するため、2022年2月に本社移転を行った。新オフィスでは、過去から取り組んでいるABWを継承しながら新たなチャレンジを行っている。今回の取材では移転プロジェクトの概要やコンセプト、新設した機能についてお話を伺った。

松谷 加奈子 氏

株式会社OKAN
ヒューマンサクセスグループ
総務担当

松谷 加奈子 氏

Contents

  1. 時代を見据えながらサービスを展開。新たな顧客ニーズに応えてきた
  2. 使用頻度の低いスペースの改善を検討し、同エリア内で本社移転を行った
  3. 新オフィスは3つのテーマを実現させ、従業員の働き方をアップデートさせた
  4. 想定外のことをするためにはオフィスは永続的に必要だと考える

台所全景

台所全景

時代を見据えながらサービスを展開。新たな顧客ニーズに応えてきた

2012年12月に設立した株式会社OKAN。同社のミッションは「働く人のライフスタイルを豊かにする」。言い換えると、働く人にどれだけ「おせっかい」ができるか。そのテーマの一つが「食」となる。それが同社の急成長を支えてきた "法人向け置き型社食®サービス「オフィスおかん」"となる。

「『オフィスおかん』は、健康と味にこだわったお惣菜をお届けすることで、食を通して企業の福利厚生をサポートしてきました。開始までの容易さ、お手頃な価格帯、豊富なラインナップといった部分が注目され、現在、大企業からベンチャーまで全国約3,000拠点で導入されています」

しかし同社の事業は「食」だけにこだわっているわけではない。あくまでも目指しているのは「働きつづけられる社会を実現すること」である。

20197月、人材活性や定着のための組織課題解決サービス『ハタラクカルテ』をリリースしました。51問の質問回答をもとに分析を行い、従業員の健康状態、家庭との両立、組織との関係など、従業員が定着する組織づくりを支援するためのサービスです」

緊急事態宣言下では、新たなニーズに対応するために総菜の定期的な仕送りサービスを始めた。

「『オフィスおかん仕送り便』のネーミングで20205月にスタートしました。これは、オフィスへの出社が難しくなった従業員を想う企業側の声から誕生しました。家庭内での負担を軽減し、健康面をサポートできるものとしてご活用いただいています。今後も、世の中の動向を見ながらサービスを展開していきます」

使用頻度の低いスペースの改善を検討し、同エリア内で本社移転を行った

そんな同社がオフィス移転を検討し始めたのは2020年春先のこと。全国的に新型コロナウイルスの感染者数が急増した時期である。

「当社は2019年に『代々木』に立地するオフィスビルから『池袋』の新築大規模ビルに移転しました。それが旧オフィスとなります。旧オフィスの一番の特長は大規模なオープンスペースを構築したこと。ここでは社内外でのパーティや試食会などのイベント開催を予定していました」

しかしコロナ禍となりイベント開催が困難になった。利用頻度の急激な低下は、オープンスペースの必要意義を再考するきっかけとなった。そこで今後の働き方を見据えながらオフィス移転を検討する。

8路線が乗り入れる交通の利便性、多くの大型商業施設による街の賑わい、多面的に立地する芸術的な側面、次世代カルチャーの発信、スタートアップ企業を中心としたバイタリティなど、池袋のポテンシャルの高さに魅力を感じていました」

具体的に移転を意識したのは2021年に入ってからとなる。旧オフィスの契約期間とのバランスを見ながら入居先探しが始まる。想定していた面積の空室を確保し、約半年かけて内装工事を行う。新オフィスの面積は138坪。旧オフィスの約50%を縮小した。それは旧オフィスに存在していたオープンスペースが不要になったことが大きく影響している。

「前回のオフィス移転では、コンセプトメーキングから行う必要があったため、社内からプロジェクトメンバーを募って時間をかけて納得のいくオフィスづくりを行いました。特に当社にとってリブランディングを実施するタイミングでもあったのと、不完全のままだったITインフラの整備という重大な任務も重なり、一大事業となりました。今回のオフィス計画は、考え方のベースが既にありましたので人事総務グループだけで行うことができました」

新オフィスは3つのテーマを実現させ、従業員の働き方をアップデートさせた

新オフィスのコンセプトは「家」。旧オフィスのコンセプトを引き継ぎながら、オフィスの存在意義を考え直したという。そうして新オフィスの構築に際して3つのテーマが定められた。一つ目が「OKANABW」の採用だ。

「旧オフィスでも緊急事態宣言以降は、かなりテレワーク業務が増えており、オフィス内限定でABWActivity Based Working)を採り入れていました。新オフィスではさらなる働き方のアップデートを目的に、ABWの中に自宅もワークプレイスの一つとして組み入れています。出社日数などは各チームのマネージャーの裁量に任せています」

新オフィスは、目的に沿った6つのゾーンを定義。14のスペースを用意した。働く場の選択肢を整備することで、ダイバーシティや自主性を推進する狙いがある。

6分類のゾーニングと14のスペース


必要な機能の検証は、同社が提供している人事管理サービス「ハタラクカルテ」を活用して行われた。オンライン用の個室や防音スペースの必要数などを割り出し、旧オフィスの17のスペースを精査。新オフィスでは14のスペースとした。

14のスペースは、従業員同士の自然な交流を促す『台所』を中心に構成しました。『麻の葉』『七宝』『紗綾形』はクローズの応接エリア。それぞれ8名、8名、6名が使用できます。『団欒』はファミレス風のミーテイングエリア。『企て』はちゃぶ台や段差を利用し、くつろいだ雰囲気でのミーティングを促す場所です。『緑』は複数での対面会議やブレストの場、『机』はフリーアドレスの執務室エリア。『眺め』は集中作業を行うためのハイカウンター席となっています。今後もハイブリッドの働き方を継続していく予定ですので、110名の従業員の7割の座席数しか用意していません」

エントランス

エントランス

緑

台所

台所

集中

集中

七宝

七宝

電話

電話

団欒

団欒

もう一つのテーマが「環境に配慮したリユース型オフィス移転」となる。

「旧オフィスでは、ストレス軽減、リラックス、集中力アップなどを図るために、ふんだんに木材を使用していました。これら多くの資源は廃棄せずに、再利用を目的としたリユース型オフィス移転を実施しています。その結果、既存木材のリユース率は91.2%の達成となりました」

ちなみに一般的な移転では、新オフィスを構築したのち旧オフィスを解体するものだが、同社では資材を再利用するため、新オフィス完成前に旧オフィスの解体工事に入った。当然、オフィスでの業務ができない期間が生じるため、スケジュール管理は重要だったと語る。

「出社率が2割強でしたので進行できたのだと思います。完成直前の1週間は全員在宅勤務にして一気に内装工事を行いました」

そして3つ目のテーマが、「複数のコミュニケーションハブ」の採用となる。

「当社はオフィスの役割にクリエイティビティやチームビルディングの実現をあげています。そのため、旧オフィスでも採り入れていたコミュニケーションハブの機能を複数用意しました。そこは、誰もが、いつでも、偶発的に集まれる場になっています」

想定外のことをするためにはオフィスは永続的に必要だと考える

新オフィス移転を機に就業ルールの変更も行ったという。コロナ禍で暫定運用をしていたテレワークの運用も、社内規定を整備し、規定に沿って運用を開始しました。また、在宅勤務が日常的になり、朝の家族が起きていない時間に一仕事をする、保育園の送り迎えなどで途中抜けてまた業務に戻るような、仕事と生活が一体となった勤務スタイルが増えてきました。当社ではコロナ前からフレックスタイム制を導入していましたが、オフィス出社を前提としたものでした。オフィス移転を機に、在宅勤務のスタイルにも適するようフレキシブルタイムの範囲を拡大しました。私生活との両立については、従業員の満足度にも高い数値が出ています」

会社に対する満足度も、同社のサーベイ「ハタラクカルテ」を活用。毎月、従業員全員で実施している。

「心身ともに従業員の状態を確かめるのが目的です。働く上での優先項目などの設問によって、個々の働きやすさや人間関係、メンタルヘルスなどを確認しています。アンケートの分析結果は人事部が管理して、必要と判断された方には専門家のアドバイスが行われます」

同社では、オンラインでのサポートも充実させている。

「『新人さん歓迎ランチ』といった社内イベントを定期的に開催しています。あえて強制参加にはしていません。参加者全員が交流を深めている場になっています」

リモートワークでの業務遂行が可能になり、北陸地方のエンジニアを採用したという。今まで不可能だった遠方の優秀な人材の確保も増やしていく考えだ。今後も時代に合わせて働く人のためのアップデートを続けていく。

最後にオフィスの必要性についてお聞きした。

「『オフィス=作業をする場所』でしたら、自宅でもコワーキングスペースでも十分に役目を果たすと思います。オンラインでの打ち合わせもITの技術革新によって、昔に比べるとスムーズな進行が可能になりました。しかし、それはあくまでも想定内の業務を行った場合の話です。画面上で、決められた時間で、あらかじめ参加者が決まっている中での打ち合わせ。当社は、それよりも偶発的な出会いで創出される思いがけなかったアイデアや発想を求めています。そのためには誰もが集まれるリアルな空間は必要だと考えています」


株式会社OKAN
株式会社OKANが唱える「ワーク・ライフ・バリュー」。それは長時間労働の是正から生まれた「ワーク・ライフ・バランス」を進化させたものだ。単なる就業時間の調整ではなく、個人が大切にしたいと考える生活観や価値観を重視する。その考えは多様な働き方の実現のための不可欠な要因となり、その取り組みが同社のミッションの実現を可能にする。