株式会社オプト

2013年2月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィス移転を機に働き方を改善。インフラを整備し社員の満足度を向上させた。

インターネット広告を核にマーケティングサービスをトータルに展開している株式会社オプト。1994年の設立後、わずかな期間で事業を拡張しその業績は国内トップレベルを誇る。その急激な成長に合わせた積極的な人員計画により、前回の移転から3年足らずで約300人を増員。それに伴い、2012年の3月に大々的な本社オフィスの移転を行った。移転からちょうど1年。その当時のことを振り返りながらお話を伺った。

オプト前編

プロジェクト担当

富川 めぐみ氏

株式会社オプト
富川 めぐみ氏

ビジネスサービス本部 総務人事部

はやわかりメモ

  1. 業務拡張によりオフィスは「手狭」に
    前回の移転からわずか3年足らずで約300名を増員。社内からの「手狭」に対する不満を解消するために移転計画プロジェクトが発足される。
  2. オフィス立地の良さについて検討
    大手町や丸の内にこだわる必要はないことを認識。その分、交通路線が多ければ営業上支障はない。
  3. 働き方の改善から生まれたフリーアドレス
    経営陣から働き方の改善についての課題が。課題をクリアにするために初めて採用したフロアをまたがった全社全席のフリーアドレス。
  4. コミュニケーションを活性化させる機能は必要
    執務室は全て同じレイアウト。その中で全て異なる機能を設置させることでコミュニケーションを高める仕組み。
  5. 社員の満足度を維持しながらの運営
    「きれい」を維持するために社内ルールを一から作成。今後も社員の声を組み取って満足度の高いオフィスを提供していく。

業務拡張による大幅な人員の採用で
オフィスは次第に「手狭」に。

インターネット広告を中心としたトータルなインターネットマーケティングの分野で急激な成長を遂げている株式会社オプト。その成長は業務拡張による急激な人員の採用計画を見れば明らかだ。「2009年4月に前のビルに移転した当時は、700名程度が入居していました。それから、わずか3年足らずで入居人数はオプトだけで600名、グループ会社を入れると900名くらいになったのです。職種問わずに全体的に社員を増やしています」

そうした予想以上の増員によってオフィスの「手狭」が発生していく。「当然、前回の移転時にも人員増加分を想定して予備スペースを用意していましたが、席が増えるごとにバッファとして考えていたスペースが次第に圧縮されていきます。最終的にはオフィス全体が窮屈になり、このままでは業務効率の低下につながると。そんなこともあり、まずは『手狭』問題の解消に取り組まなければならなかったのです」

多くの社員からも不満の声を多く感じるようになったため、2011年に移転計画プロジェクトを発足させる。メンバーは、総務部を中心に経営陣、そして各部署からの有志メンバーで構成された。「各部署からのメンバーには、社員アンケートやヒアリングを通して現場の意見を吸い上げてもらい、その意見を総務で取りまとめていったのです。単純に『狭い』といった不満から、周囲の環境や働き方の提案まで多岐にわたって意見が集まりました」

「オフィス立地の良さ」について再検討。
交通路線の多さがベストだと再認識。

移転計画を進めるにあたって、第一の目的は「手狭」の解消。ある程度予備スペースを計画した上で必要面積を算出した後は、その「広さ」を持つビルをどこのエリアで探すかであった。「今まで当社は、多くの企業と往来するのに便利な場所、具体的には乗り入れ路線の多い大手町や丸の内に本社オフィスを構えてきました」

今回の移転先は市ヶ谷。それは立地の良さについて議論を重ねて再検討した結果であるという。
「当社の営業スタイルの基本は、定期的にお客様や外部スタッフに直接お会いして報告させていただくことです。そんな営業面を考えたときに立地の良さってなんだろうと。改めて交通路線の利便性が営業上の最重要ポイントと再認識したのです」

実際に、市ヶ谷駅はJR線、東京メトロ有楽町線、南北線、都営地下鉄新宿線の4線が利用可能。市ヶ谷駅から新宿駅まで6分、東京駅まで12分と、利便性には全く問題がない。

手狭さと同時にあった経営陣からの課題。
そこで生まれたフリーアドレスの採用。

今回の移転の最大の理由が「手狭さ」の解消であることは間違いのないところではある。しかし、実はその他にも解決すべき大きな課題が経営陣からあがっていたという。「今回の移転を機に、働き方の改善をすることが課題の一つでした。具体的には、業務のスピードアップ、コラボレーションの促進、モチベーションのアップを叶えること。それらの課題をクリアにするための施策としてフリーアドレスについて検討したのです」

全席のフリーアドレスは会社的に初めての試みとなる。実施前に説明会を行った際には社員の大多数から反対の声があがったという。「社員からの疑問はもっともなことだと思います。常に机の上に書類や資料が必要な部署もあるでしょうし、ワンフロアならともかく多層フロアでフリーアドレスを行うとなると誰がどこにいるかがわかりにくくなり業務に支障が出る可能性がありますから」

そうして、社内ルールの見直しをすることになる。大幅なペーパレスの推奨。基本的に書類は手元に置かず、必要な書類は紙で保存するのではなく、PDF化をしてデータ保存とする。その結果、紙の出力枚数は対昨年比4カ月平均で約15%の削減、それに伴いチャージコストも約19%削減できたという。誰がどこに着席しているかは、グーグルのチャット機能を応用することで対処できた。個人ごとにその日はどこのフロアで作業しているかをプロフィール欄に記載する仕組みとなっている。
「当社の場合、営業とコンサルタントが協業しながらクライアントごとにチームを組むスタイルが定着しています。そのやり方を考えたときに固定席よりむしろ自由に移動できる仕組みをつくったほうがいいのではと考えたのです。今回の実施を経て、将来的には在宅勤務も可能かもしれません」

さらにフリーアドレスを促進するために今回導入したものがある。それがシンクライアントだ。端末には必要最小限の機能だけを持たせ、ほとんどの処理はサーバーで行う。端末自身に記憶装置を持たないため、どの端末からでも自分のパソコン環境同様に使うことができるシステムだ。「シンクライアントの導入に踏み切ったからこそ、フリーアドレスやペーパレス化が上手く運用できているのだと思います。今では会議でもシンクライアントを活用してペーパレスの会議を当たり前のように行っています」

フロアごとに異なる機能を持たせることで
コミュニケーションの活性化を図る。

それでは実際に新本社オフィスをフロアごとに紹介していこう。特徴的なのは2階から4階までの執務室は全て同じレイアウトになっていることだ。

2階 執務室、GIM(ジム)

「どのフロアの執務室も約130席が設けられており、集中ブースやファミレス風ミーティングスペース、ロッカールームを同じ位置に備えています。ジムは最近やっと器具が揃ってきましたので、ようやく活用され始めるかなと。講師の先生をお呼びしてヨガを中心とした部活が始まると聞いています」
執務室、GIM(ジム)

3階 執務室、和み(なごみ)

「和みの特徴は何といっても畳を敷いているところ。誰もがゆっくりと休憩できる部屋です。変わった使い方としては、新卒採用のグループ面接や説明会などに使用したこともあります。当社の柔らかい社風を伝えることができたのではないでしょうか」
執務室、和み(なごみ)

4階 執務室、Relax(リラックス)

「カフェ風の休憩室です。落ち着ける場所として結構人気が高いですね」
執務室、Relax(リラックス)

5階 ロビー、応接室、会議室、opt cafe(オプトカフェ)

「大中小揃えた応接室は全部で20室ほどあります。当社はナンバーワンイノベーションカンパニーを目指していることから、部屋の名称は全て過去にイノベーションを起こした偉人の名前を付けています。社内投票を行い上位順に採用しました」

「オプトカフェは100人以上が座れる大きな施設を設けています。以前に比べ飲食店の数が少なくなったので、それを補完するためにお弁当のケータリングや食事の自動販売機を導入しました。日替わりでいろんな種類が用意されていますのでとても好評です。食事をしながら打ち合わせする姿も多く見られるようになりました。また、カフェ内にはテレビやプロジェクタを設置していますので、社内のイベントや外部セミナーなども頻繁に行われるようになりました。コミュニケーションは格段に良くなっています。また、グループ会社と距離が近くなったのもいいですね。以前は同居中のグループ会社も合同で使える共有スペースがなかったのですが、今はカフェで一緒に食事したり自然に顔を合わせることができますから」

そのほか、カフェの壁を取り外して隣接の大会議室とあわせることで、全社員が集まれる巨大な空間をつくることが可能だという。現在、そのスペースで月1回全社会議を実施している。

ロビー

ロビー

オプトに相応しい優しいイメージの空間。グループ会社を含めて、全てのお客様をここでお迎えする。

オプトカフェ

オプトカフェ

ランチからリフレッシュ、日常的な打ち合わせとコミュニケーションの活性化につながる場として多目的に利用されている。

応接室

プロジェクタを使ってのプレゼンテーションが可能な応接室。大・中・小の大きさが用意されている。各室のネーミングが特徴的だ。

移転後、数々の課題がクリアに。同時に満足度を維持させていく。

「移転後のアンケートを見ると、フリーアドレスを実施して良かったという声が圧倒的に多かったですね。そのほか、今回の移転によってミーティングスペースおよび会議室不足に悩まされていたという問題点が解消できました。どこでも働ける環境づくりという課題に対しても、シンクライアントや無線LAN環境の導入によってクリアになっています」

新築のオフィスビルのため、「きれい」なのは当たり前ではある。重要なのは今後もいかに「きれい」を維持していくか、だという。「初めての試みが多いので、社内ルールを一からつくるのが大変でした。これからも社員の声を敏感に感じとりながら満足度の高いオフィスを提供していくのが私たちの使命だと思っています」