株式会社サンコーシヤ

2022年5月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新オフィスプロジェクトで多様な働き方の変革が実現できた

創業から一貫して自然災害の一つである「雷」と向き合ってきた株式会社サンコーシヤ。今後の事業展開、働き方の見直し、自社ビルの老朽化といった課題に直面し、オフィス移転プロジェクトがスタートした。新オフィスでは、新たなチャレンジを採用し、働き方の改善を行っている。今回の取材では、プロジェクトの主要メンバーに集まっていただき、移転の背景や概要、新オフィスの特長についてお話を伺った。

三浦 晴彦 氏

株式会社サンコーシヤ
取締役
営業本部 本部長

三浦 晴彦 氏

伊藤 愼司 氏

株式会社サンコーシヤ
営業本部
部長

伊藤 愼司 氏

松井 高広 氏

株式会社サンコーシヤ
管理本部 総務部
部長

松井 高広 氏

杉山 貢市 氏

株式会社サンコーシヤ
管理本部 総務部
担当部長

杉山 貢市 氏

Contents

  1. 雷防護の技術を基軸にしながら事業を拡大してきた
  2. 移転理由は、スペース改善、コスト改善、そしてビル設備の老朽化対策
  3. 数十棟のオフィスビルを見学してやっと条件に合ったビルを探した
  4. 移転を機に今までなかった新たな働き方を採り入れた
  5. 今回のオフィス移転は色々なことを試すいい機会となった
  6. オフィスの役割はシナジーを生み新しい発想を生み出す場であること

リフレッシュエリア

リフレッシュエリア

雷防護の技術を基軸にしながら事業を拡大してきた

1930年の創業から一貫して自然災害の一つである「雷」に向き合い、雷防護技術を基軸に事業を拡大してきた株式会社サンコーシヤ。1932年に品川区大崎で創業。国内外との営業拠点としてサービスを展開してきた。

「雷防護製品ということで、避雷針の製造がメイン業務に見られがちですが、今では鉄道関係のインフラ設備や情報通信ネットワークの技術サポート、再生可能エネルギーの設備・システムの提供といった事業も行っています」(三浦氏)

「家電がネットワークにつながる時代になり、情報通信ネットワークは複雑化してきました。我々の提供するサービスはますます拡大していくと考えています」(伊藤氏)

自社ビル(旧本社)には、営業部門と管理部門が入居。設計・開発部門は神奈川県相模原市の広大な敷地にテクノセンターを設けている。その他、全国7ヵ所に国内拠点、海外8ヵ所にグループ企業を構えています」(杉山氏)

今後も、グループ会社や販売店とのネットワークやサポート内容を強化していく。そして東南アジアを中心としたさらなる海外展開も視野に入れているという。

移転理由は、スペース改善、コスト改善、そしてビル設備の老朽化対策

「旧本社は3階建て。約300坪に営業部門と管理部門が入居していました。新型コロナ感染予防対策で緊急事態宣言が発令され、当社もテレワークを導入しました。出社率も30%程度に。使用されていないスペースを精査する必要がありました」(三浦氏)

加えて自社ビルの老朽化を懸念する声もあった。

「東北大震災でかなりダメージを受けていました。対策を施しながら使用していましたが、次第に『建替』と『移転』との2択が論じられるようになって。決断に迷っていましたが、コロナでの働き方対策が後押しする形で周辺のオフィスビルへの移転を決めたのです」(杉山氏)

スペースの改善、それによるコスト改善、そしてBCP対策を目的としたオフィス移転プロジェクトがスタートした。新オフィスは営業スタッフが主体となるため、プロジェクトは営業本部が牽引し、それを管理部門がサポートすることになる。

「旧本社には60名が勤務していましたが、そこから開発系のスタッフ10名が相模原にあるテクノセンターに移動。管理部門も同様にテクノセンターでの勤務が決まりました。フリーアドレスを導入し、テレワークは引き続き行うことで席数を30席に減らすことができました。今までになかったリフレッシュエリアを設けても約100坪の面積縮小が可能になったのです」(三浦氏)

数十棟のオフィスビルを見学してやっと条件に合ったビルを探した

オフィス移転自体が初めての経験で何から始めていいのか分からない。まずは物件情報の収集から始めることとしました。物件データの提供は三幸エステートが担当した。

「今まで大崎周辺に慣れ親しんでいたこともあり、品川から五反田あたりを候補立地として物件を見ていきました」(三浦氏)

「三幸エステートさんからは相当数の物件情報をいただきました。新幹線品川駅とのアクセスを考えて品川エリアを重点に探しましたが、希望条件にマッチした物件が見つからなくて。そんなとき、大崎駅近くの大規模ビルに発生した空室情報をいち早くいただいたのです。交通アクセス、駅からの距離、賃貸条件と希望通りの物件でした」(杉山氏)

そうして何度も条件や内容の確認を行ったのち正式に契約を締結した。

移転を機に今までなかった新たな働き方を採り入れた

内装デザインに関しては3社コンペを実施する。最終的には、デザイン、アイデア、コンセプト提案の総合力で決定したという。

「新オフィスは使用面積を大幅に縮小したこともあり、初めてフリーアドレスを採用しました。さまざまな働く場を用意してメリハリがつくオフィスにしたのです」(三浦氏)

「特に従業員からの要望を聞いたわけではありませんが、新オフィスではWebミーティング専用の個室ブースをつくりました」(杉山氏)

以前から実施していた働き方の見直しがスムーズな移行を後押しした。

「新型コロナの感染症対策がトリガーにはなっていますが、働き方の見直しは以前から行っていました。外出先からでも仕事ができたほうがいいということでノートパソコンを支給していました。フレックスタイムやテレワークも実施していましたので、新オフィスでの新たな働き方への移行はさほど困難ではありませんでした。この働き方は、たとえコロナが収束したとしても変わることはないですね」(三浦氏)

新たな働き方に合わせた就業規則の改定には時間をかけたという。

「就業規則の見直しを行いました。何度も経営会議で確認をして。半年以上をかけて詳細を決めていきました」(松井氏)

今回のオフィス移転は色々なことを試すいい機会となった

社内で議論を重ね、オフィスコンセプトを「フリーアドレスのある風景」とした。それをデザイン会社が整理して形にしていく。

「たたき台案は当社が出して、それを形にしていくという作業が繰り返し行われました。DXを推し進めるにあたり、ペーパレスも意識しました。ですから新オフィスに書庫は数えるほどしかありません。できるだけ個々でデータ化をしています」(杉山氏)

「データ化に関しては、旧オフィスから始めていましたので従業員からの理解はありました。そうすることによって過去の書類がどこからでも閲覧できますので、テレワーク中でも同じパフォーマンスの業務ができています」(三浦氏)

今回のフリーアドレス化で一番苦労したのは電話だったという。

「誰がどこにいるか不明な状態で内線を繋げなくてはなりません。色々な議論の中で、電話交換機をクラウド化してスマートフォンに繋げるようにしました。これでどこにいても電話を取ることができます」(松井氏)

「これを機に社内の固定電話を廃止しました。今回は本社での運用ですが、順次全国拠点の設備の老朽化を見据えながら展開していきたいと思っています」(杉山氏)

「今回のオフィス移転は、色々なことを試すいい機会になったと思います。当社にとっても転換期でした。移転をしなければ何も変わらなかったかもしれません」(松井氏)

それでは新オフィスを紹介していこう。エレベーターを降りると落ち着いた色調のエントランスが目の前に現れる。社名を象った硝子板の中央に受付の電話機が置かれる。向かって左側が応接エリアへの入口だ。会議室は2室。応接室は1室。予約は個々がPC画面から行うシステムだ。

TV会議システムは全室に備えました。全国、海外とのやり取りがありますので絶対に必要な設備です。かなり稼働率もいいですね」(松井氏)

エントランス

エントランス

応接室

応接室

会議室

会議室

執務室内は働き方の用途に応じて多様な機能を用意した。中央にはフリーアドレスエリア。現在の出社率は約40%前後で推移しており、当初の予定通りに使われている。

「その他、Web会議用のブース、窓際の景観のいい部分につくられたカウンター席、そして今回の特長であるリフレッシュエリアがオフィスの一角にあります」(杉山氏)

「リフレッシュエリアの使い方は、ランチの場、休憩の場、団欒の場とさまざまです。15席くらいを用意しています」(松井氏)

フリーアドレスエリア

フリーアドレスエリア

カウンター席

カウンター席

Web会議用ブース

Web会議用ブース

リフレッシュエリア入口

リフレッシュエリア入口

「植栽や大きなモニタを置いて、終日にわたって自然のヒーリング動画を流しています。少しでもリフレッシュしながら会話を楽しんでほしいという思いでつくりました」(三浦氏)

「フリーアドレスエリアから少し隠れていることが特長です。とはいえ全然見えないと閉塞感を感じてしまうので、そのバランスを考えてレイアウトしました。また入口に段差を付けていますので、特別感を感じるようなつくりになっています」(杉山氏)

オフィスの役割はシナジーを生み新しい発想を生み出す場であること

新オフィスへの移転で気にかけたのはコミュニケーションの向上だった。

「コミュニケーションを低下させないように部門ごとにチャレンジしています。例えば、管理グループは毎朝必ずチャットでの会話を行っています。何かをしないと自分の部署での運営に支障が出てしまいますので」(杉山氏)

「旧オフィスに普通に出社していた時よりも、テレワークとのハイブリッドのほうが、自主的に考えることが多くなりました」(伊藤氏)

ハイブリッドでの働き方になるとしても、オフィスを無くすという選択肢は全くなかったという。

「縮小したとしてもオフィスは絶対に必要だと考えていました。私も毎日来ているわけではありませんが、席に座っていると今まで聞いたことのない会話が聞こえてくるときがあります。これがフリーアドレス効果かもしれませんね。テレワークだけでは絶対に知りえない情報ですから」(杉山氏)

「私も同感ですね。普段会わない社員同士が新たな交流によるシナジーにより新しい発想を生み出す場所になっていますね。オフィスの役割が変わってきているのでしょう。今後もその部分をより活発にしていかなければと思っています」(松井氏)

「仕事以外でのコミュニケーションも大事にしたいですね。個人事業主の集まりではないので色々なことでつながれる場所。そうした場所がオフィスなのだと思います」(三浦氏)

「今回、企画の段階から引っ越しまで担当しましたが、従業員の働き方がどんどん変わっていくのを改めて実感しています。人と人とのつながり。その第一歩はコミュニケーションです。それを移転プロジェクトに参加したことで理解できました」(伊藤氏)


株式会社サンコーシヤ
創業92周年を迎えた株式会社サンコーシヤ。創業以来、雷防護技術でさまざまな場面での安心・安全を提供してきた。今後もこれまで培ってきた経験や実績、技術力を融合させ、多様なニーズに応えていく。そして雷防護事業、情報通信関連事業、エネルギー関連事業を柱にグローバル展開を行っていく。