株式会社東京海上日動コミュニケーションズ
2022年9月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
1フロア1,000坪に一気に集約。新時代のコールセンターを構築した
東京海上グループの保険業務をサポートしている株式会社東京海上日動コミュニケーションズ。2021年8月に大々的な移転を行った。移転先の面積は約1,000坪。コロナ禍での働き方を見直しながら近隣に立地していた複数の事業部を集約した。取材では、移転プロジェクトの背景や新オフィスの特長をお聞きした。
株式会社東京海上日動コミュニケーションズ
事業支援ユニット マネージャー
安井 誠 氏
株式会社東京海上日動コミュニケーションズ
経営戦略ユニット 担当マネージャー
吉田 景 氏
Contents
- 保険業務に関する高品質なサービスで東京海上グループを支えてきた
- 数年前のコールセンター移転の成功が今回の集約計画のきっかけに
- ワークショップを何度も重ねて今までにないコールセンターを目指した
- 新オフィスのコンセプトは「WithコロナからAfterコロナまで」
- 新オフィスの最大の特長は執務室とリフレッシュエリア
- ストレスがかかる業務だからこそ「集まれる場」を大事に
エントランス
保険業務に関する高品質なサービスで東京海上グループを支えてきた
1991年、東京海上日動の代理店システムのヘルプデスクとして設立された株式会社東京海上日動コミュニケーションズ。お客様や保険代理店の疑問や質問に答える「コンタクトセンターサービス」、保険代理店の知識向上のためのマニュアル作成や研修を提供する「研修サービス」、事務処理を代行する「BPOサービス」の3つのサービスを主業務とする。
数年前のコールセンター移転の成功が今回の集約計画のきっかけに
同社は数年前にコールセンターの移転を経験している。
「京王永山駅を最寄り駅とするビル内に、当社のコールセンターを設けていました。移転を検討していたときに、三幸エステートさんから移転先の提案をいただきました。同じ沿線でしかも隣駅の駅前のランドマーク的なビルのB1フロア400坪に空きがあるとのことで、多摩エリアを中心に事業展開を行っている当社に相応しいビルでした。いざ入居してみると、とても満足の行く環境でした」(安井氏)
さらなるオフィスの拡張を検討していたところ、同ビルの6階に約1,000坪の空室が出ることがわかった。
「この面積ならば、近隣のビルに入居していた事業部を集約できますし、Withコロナを考えた新たなオフィスの構築も可能です。それで三幸エステートさんに空室を確保していただき、移転プロジェクトを進めることにしました」(安井氏)
ワークショップを何度も重ねて今までにないコールセンターを目指した
約1,000坪という広い面積を有効に活用するために、どのようなレイアウトを組むべきか。必要なオフィス機能は何か?
すぐに社内メンバーでワークショップを立ち上げた。そこでは、「リフレッシュ空間の設置」や「ミーティングエリアの拡充」「女子トイレの増設」といった現実的な要望が多かったという。
「移転プロジェクトが進む2021年は当社の30周年という節目でもあり、ニューノーマルなオフィスの構築を目指しました。そして1フロアが約1,000坪もありますので、単調なレイアウトにせずエリアごとに変化をつけたオフィスにしたいと考えました。さらに働きやすさに加えて今後の採用計画にもプラスになるようなインパクトのあるオフィスづくりを意識しました」(吉田氏)
新オフィスのコンセプトは「WithコロナからAfterコロナまで」
同社の思いをきちんと表現するためには、今回の案件に適した内装デザイン会社を選ぶことが重要になる。
「一般的なコールセンターというと、パーテーションで区切られた机に電話を配置したレイアウトが多いものです。今回はそんな一般的なコールセンターの姿から進化させることを目標に掲げ、『WithコロナからAfterコロナ』をテーマとして3社のコンペを実施しました」(安井氏)
「コンペでは、当社の考えを一番近い形でご提案くださった内装デザイン会社に依頼しました。そしてデザイナーさんを交えて何度も打ち合わせを重ねていきました」(吉田氏)
- 執務室内は開放感を大切にする。そのためなるべく壁はつくらない
- フリーアドレスも採用できるようにする
- コールセンター業務を在宅でも行えるようにインフラを整備する
- 密空間にならないようなスペースを確保する
- Afterコロナを想定して臨機応変に改修が可能な設計にする
試行錯誤を繰り返しながらコンセプトを具体化していった。
「数年先を考えながらのオフィスづくりは私自身も初めての経験です。楽しみながらプロジェクトに参加することができました」(吉田氏)
新オフィスの最大の特長は執務室とリフレッシュエリア
同プロジェクトはスケジュールに時間的余裕がなかったことが最も困難だったと語る。
「契約開始が2021年4月。コンセプトワークが約1ヵ月。その後、6月に工事を完了させ、約2ヵ月かけて引っ越し作業を行いました。当社の場合、コールセンター業務を止めるわけにはいきませんので、平日の夜まで業務を行って、そこから引っ越しをして翌朝から通常業務を行う。決められた期間の中でグループごとにスケジュールを細かく決めて引っ越し作業を繰り返していきました。全体のスケジュールは完了予定日から逆算して決めていくのですが、かなり神経を使いましたね」(安井氏)
それでは具体的に6階フロアの特長を紹介していこう。
「約1,000坪に400名が働いています。新オフィスでは、フリーアドレスを採用し、個人の資料は全てパーソナルロッカーに入れてもらうルールにしています。そのため袖机もありません。ペーパーレスを推進していることもあり、スペース効率は格段と向上しました」(吉田氏)
フロア内に応接室としても利用可能な会議室が1室。応接室としてだけでなく、社内ミーティング、遠隔に所在する拠点間とのオンラインミーティングなど、多様な用途で使用されている。
「ITベンチャー企業などでは、上司と部下とのミーティングを行うために1on1のできる部屋を用意するケースが多いと聞きます。品質を維持するためのコーチングなどを頻度高く行っていることもあり、これを機に弊社でも1on1のための部屋を用意しました。その他、ちょっとした打ち合わせにも使えるファミレスブースも新設しました」(安井氏)
「研修用の部屋が7部屋、1on1用などのコーチング用の部屋が5部屋あります」(吉田氏)
研修室
同オフィスの最大の特長は2つ。一つは執務室のレイアウト、もう一つは広大なリフレッシュエリアである。
「執務室は、パーテーションを立てることなくセパレートかつ斜めに机を並べました。感染予防対策とwithコロナの働き方を実現するためです。一般的なコールセンターにありがちな島型のレイアウトでは、仮に感染者が出た場合に両隣も濃厚接触者に認定されてしまいます。しかし、このレイアウトでしたら業務の継続が可能です。各机も向かい合わせではなく、同じ方向に揃えました。まさに新時代のコールセンターを象徴するようなレイアウトデザインとなりました」(安井氏)
執務室全景
もう一つの特長であるリフレッシュエリアは北側の窓面に合わせて配置をしたという。
「全体をゾーニングする中で最初に決まったのがリフレッシュエリアでした。本来の予定ではもう少し狭い空間でしたが、思い切って160席を配置した広く開放感のある空間としました」(安井氏)
リフレッシュエリア
リフレッシュ カウンター
ストレスがかかる業務だからこそ「集まれる場」を大事に
「新型コロナウイルス発生直後から、出社しなくてもお客様のお問合せにお応えできるように在宅受電ができるインフラを整えました。出社と在宅勤務が混在することで、従来通りのコミュニケーションがとりにくくなってきています。もともとコールセンター業務はストレスがかかりやすい仕事です。在宅勤務であれば、なおさら孤独に感じてしまうときもあります。出社したときにはいろいろなメンバーが集い、コミュニケーションをとりやすい環境をつくりたいと思いました」(安井氏)
「Afterコロナ」での働き方も見据えて、非接触、時間や場所にとらわれないコミュニケーションへのニーズも高まっていると感じます。コールセンター業務も今後どんどん変化していくことが予想されます。事業環境が変化してもレイアウトをフレキシブルに対応できることも、大きな特徴です」(吉田氏)
「どんな環境になっても、人と人の繋がりを大切にする会社でありたいと思っています。
働きやすさを追求することは、社員の採用や定着にも大きく影響します。社員が快適に過ごせるオフィスは、当社が事業を発展させていくうえで不可欠なのです」(安井氏)
「当社は現在、DX(デジタル・トランス・フォーメーション)とCX(カスタマー・エクスペリエンス)に力を入れています。今回のプロジェクトでは、それらをうまく活用した新たな時代に適したオフィスを構築することができました。そして今後も変化する時代やニーズを見据えながら働き方を提供していきたいと思っています」(安井氏)