凸版印刷株式会社

2021年3月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「直接会って対話する価値」を最大化するオフィスを構築した

凸版印刷株式会社は創業以来、その時代ごとに取得してきた印刷テクノロジーを基盤に業務を拡大してきた。今では世界最大規模の総合印刷会社として、その地位を確立している。現在、「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」の分野を中心にコラボレーションによるトータルソリューションを提供。社会的価値の創造を行っている。
2020年11月、新たな働き方を実現するために新オフィスを開設。多様で柔軟な働き方を促進している。今回の取材では、新オフィス構築の背景や目的についてプロジェクトメンバーの方々にお話を伺った。

林﨑 大輔 氏

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部
総務部 課長

林﨑 大輔 氏

小田原 遼 氏

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部
マーケティング事業部 エクスペリエンスデザイン本部
スペースプロデュース部 2チーム
小田原 遼 氏

行廣 巧 氏

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部
マーケティング事業部 エクスペリエンスデザイン本部
プロデュース部 2チーム 担当課長
行廣 巧 氏

谷口 千絢氏

凸版印刷株式会社
情報コミュニケーション事業本部
マーケティング事業部 プロモーションデザイン本部
プロデュース3部 1チーム
谷口 千絢 氏

Contents

  1. 多様化する時代に合わせて社会的価値を創造してきた
  2. 新オフィスのコンセプトは「直接会って対話する価値」を最大化すること
  3. 将来的な働き方を意識して新オフィスをつくった
  4. コロナが収束したとしてもこのオフィスでの取り組みは変わらない

8階コワーキングスペース

8階コワーキングスペース

多様化する時代に合わせて社会的価値を創造してきた

凸版印刷株式会社(創業当時は凸版印刷合資会社)の創業は1900年(明治33年)。日本の近代化が進み始めた時代である。創業後、オフセット印刷などの新技術の導入、大量印刷・低コストの需要、高度経済成長の幕開け、ライフスタイルの多様化、デジタル化とグローバル化といった時代のニーズに応える営業戦略で成長を続けてきた。

現在、2025年に向けて同社が最も社会価値を創出できる領域として「健康・ライフサイエンス」「教育・文化交流」「都市空間・モビリティ」「エネルギー・食料資源」の4つの成長領域を設定。今後もさらなるグローバルビジネス、フロンティアビジネスに挑戦していく。

そんな同社のオフィス戦略はちょうど1年前、組織改編に伴い、文京区小石川にあるトッパン小石川本社ビルの人員増加があり、外部物件も含めたオフィス環境の再編の必要性が出てきたことで始まった。

「小石川本社ビル内の2フロアを空けるために、外部にオフィスを求める必要が出てきました。構築するオフィスは、せっかくならば旧来型のオフィスではなく、当社内でも最先端をいくオフィスにしようという話から構想がスタートしました」(林﨑氏)

創業120年という特別な年と重なったこともあり、大々的な働き方改革を実施することとなった。移転先の最優先条件は交通アクセスの良さだったという。

「新オフィスを構築するにあたっては得意先に出向く社員の利便性を考え、主要駅からの距離を重要視しました」(林崎氏)

いくつかの候補物件を見学したのち、飯田橋駅徒歩4分に立地する大規模オフィスビルの8階と9階の入居を決定した。

「飯田橋駅はJRや東京メトロ、都営地下鉄が乗り入れられており、そのアクセスの良さで営業効率の改善も図れます」(行廣氏)

本プロジェクトは20206月にオフィスを確定させ、7月から設計開始。そして10月末までに入居というタイトなスケジュールで進行した。小田原氏が在籍するスペースプロデュース部とブランド戦略部がコンセプト策定、空間プロデュースなどを手掛けた。

「従来の働き方や固定概念を打破しつつ、今までにないオフィスをつくれるか。今回のプロジェクトではトップが自らイノベーティブな空間づくりに賛同していたのでやりやすかったですね」(林﨑氏)

新オフィスのコンセプトは「直接会って対話する価値」を最大化すること

新オフィスの面積は2フロアの合計約590坪。同事業部に在籍する460名が使用する。

「完全フリーアドレスの導入で執務室に用意した席数は247席。これに8階のコワーキングスペースの87席が加わります」(林﨑氏)

コロナ禍ということもあってオフィスに来ることの意味を再考した。その結果、「リモートの良さ」と「リモートだけではカバーできない業務」の再認識につながったという。

「せっかくオフィスに来るのならば、『人と会う・話す』ことの良さを改めて意識しようと思ったのです。8階と9階の合計フロアの4分の1をコワーキングスペースとしました。当社のブランド戦略部が中心となってネーミングを検討。最終的にAtte(アッテ)という名称となりました。ロゴは『多様な個性が会って、予想外の新しいものが生まれる』というコンセプトから、ロゴ1種に限定するのではなく色や大きさ、フォントをランダムに変えてさまざまな見え方で展開しています」(小田原氏)

「本社での働き方は、どちらかというと時間内での共有が主体になります。一方、新オフィスは好きな時間に、好きな場所で打ち合わせをする。自分のリズムで働くことでモチベーションが高まる空間づくりをテーマにしました。現在出社率はコロナ感染予防の観点から低いですが、それでも考え方のベースは『会う』『対話する』なのです」(林﨑氏)

将来的な働き方を意識して新オフィスをつくった

構築された新オフィスはコロナ禍での設計ということもあって感染防止対策をしながら、ニューノーマルな働き方を実現する仕掛けをいたるところにつくった。

それでは8階フロアから順に説明していこう。

エントランスは8階に設置。陽光が差し込む空間で、来客者の待合所の機能を持つ。入口に足を踏み入れるとすぐ右側にリラクゼーションカフェが置かれている。

8階エントランス

8階エントランス

「オフィス入口すぐ近くにカフェカウンターを備えたことで出社をライフスタイルの延長線上にという考え方のもと緩やかな空間で入りやすいオフィスを目指しました。カウンター真上には本当の自然光が降り注いでいるような日当たりの良い空間を演出する当社商材の照明を設置しています。天窓からの光を浴びながらカウンターで仕事もできて、息抜きでコーヒーを飲みに来た同僚とコミュニケーションも自然と生まれているようです。夜は照明を切り替えてバーカウンター風にフロア全体の表情も変わります」(小田原氏)

8階リラクゼーションカフェ

8階リラクゼーションカフェ

「電子マネー決算ができるので気軽に購入しています。息抜きにもなりますし、何より来社いただいたお客さまに喜んでもらえるのがいいですね。商談時の会話のフックにもなります」(谷口氏)

そしてエリア全面にはコワーキングスペースが広がる。ここでは組織に捉われないコミュニケーションの形成が図られる。

8階コワーキングスペース全景

8階コワーキングスペース全景

「置かれた机・椅子は予約制ではありませんので自由に使えます。飲食や休憩といった禁止ルールも特に決めていません。飛沫防止パネルなどコロナ対策のグッズを十二分に用意しつつ、机や椅子も容易に動かせるように可変性を考えた家具で構成しています。天井には大きく投影できるプロジェクタを。現在は会社の最新トピックを投影していますがコロナ収束後はここでイベントなどを実施した際に活用できるよう設置しました」(小田原氏)

「このような場があるとアイデア出しやそれに伴うディスカッションを自然な流れで行えますね」(谷口氏)

8階フロア最奥にはソファが置かれた。

「ゆったりと雑談ができる空間の必要性を考えて配置しました。ちょうど配置した方角には高層ビルが建っていないこともあって景色を楽しめる場所にもなっています」(林﨑氏)

「家に友人を呼んで会話をするリビングのような空間を、ライフスタイルの延長線上でオフィスにも用意したかったのです。その他、多人数ミーティングも行える卓球台の要素も付加した大テーブル、完全遮蔽ではありませんがWebミーティング用のエリアもつくりました」(小田原氏)

コワーキングスペース内に個室は3室設けた。どの部屋もモニターを付けてリモートミーティングが行えるようにしている。

8階ソファエリア

8階ソファエリア

8階会議室

8階会議室

「最近では、お客さまからの要望もあってWeb会議を使ったプレゼンの機会が増えています。現在、リモートワークと対面を使い分けながらの業務になっているのですが、そんなハイブリッドな働き方を想定した適切なオフィスが完成したと思います」(行廣氏)

フロア内には同社のさまざまな商材が導入されている。中でも一番目を引くのが「オンラインスタジオ」である。

8階オンラインスタジオ

8階オンラインスタジオ

Atteのフロアは当社のショールームのような位置づけにすることも当初の計画でした。8階コワーキングスペースには、ニューノーマル時代のコミュニケーションの拠点となるLIVE配信専用の簡易スタジオを整備しました」(小田原氏)

「ここは方針発表やウェビナー・勉強会、日常的なプレゼンテーションなどで使うことが多く、来社いただいたお客さまとの商談の場としても使用できます。効果的な営業ツールになっていますね。この『スタジオ』では電源の『オン/オフ』で『透明/不透明』が瞬時に切り替わる当社商材の液晶調光フィルム『LC MAGIC』も採用しています」(行廣氏)

「以前のオフィスと比べてとてもゆったりできるというのが率直な感想です。本社は密集していたことに加えて、ミーティングスペース不足という課題を抱えていました。そのためちょっとした打ち合わせをするだけでも会議室を予約する必要があったのです。新オフィスはいつでも集まれる場所がありますので、時間効率も良くストレスなく毎日を過ごせています」(谷口氏)

9階も執務室とコワーキングスペースで構成されている。ただし8階と違って執務スペースが中心のレイアウトとなっている。

9階入口つきあたりには会議室『Our Space』を配置しています。これは窓に見立てた映像や音、香り、照明を複合的に演出する機能を持つ当社の商材の一つです。瞬時に空間や時間を移動して打ち合わせのような疑似的な環境変化でリフレッシュや集中力の維持・向上をサポートする空間です」(小田原氏)

9階会議室「Our Space」

9階会議室「Our Space」

「その他、オンライン対応デスク、ソロ集中ブース、コワーキングスペースなどの多様な機能を用意しています。もちろん完全フリーアドレスでABWを導入していますので、従業員は業務内容に最適な働く場を求めて上下階を自由に行き来しています」(林﨑氏)

「フリーアドレスといっても執務室内のパーティションは低めに設定していますので見晴らしも良く、誰がどこに座っているのかはわかるようになっています」(谷口氏)

9階ソロ集中ブース

9階ソロ集中ブース

9階コワーキングスペース

9階コワーキングスペース

コロナが収束したとしてもこのオフィスでの取り組みは変わらない

同社はコロナに関係なくこの働き方を継続させていくと考えている。

「ここにお客さまをお連れすると、働き方を変えようとしている当社の姿勢が伝わるみたいですね。それだけでもAtteの存在意義があるように思えます」(谷口氏)

「ここで雑談をすることで新たな議論が生まれます。きっとリモートも対面も、どちらにも価値があるのでしょう。あとはどのようにオフィスを使うかだと思います」(行廣氏)

「移転後のオフィスの満足度は概ね好評でした。同時に改善点もあがっていますのでそれらに真剣に向き合っていきたいと思います」(林﨑氏)

Atteの成功事例が徐々に拠点に広がっていけばいいですね。少しずつノウハウを蓄積し、全社的に働く環境を改めて整えていきたいですし、お客さまのオフィス課題解決のサポートもできればと思っています」(小田原氏)

凸版印刷株式会社
凸版印刷は、「印刷技術」にマーケティング・IT・クリエイティブやさまざまな加工技術を融合・進化させた自社独自の印刷テクノロジーでソリューションの提供を行ってきた。今後もそれらに新たなテクノロジーを組み合わせ、新たな社会的課題を解決する企業を目指していく。