Trip.com Group

2022年12月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

入居ビルを丸ごと「私たちのオフィス」と捉え
高スペック&低コストのレイアウトプランを構築した

全世界38の国・地域において、数億人の会員へ25ヵ国語でサービスを展開する世界最大級のオンライン旅行会社「Trip.com Group」。その日本法人が2022年11月に東京オフィスの移転を実施。ハイブリッド型オフィスを構築した。今回の取材では移転の背景やコンセプトを中心にお話を伺った。

勝瀬 博則 氏

株式会社Trip.com International Travel Japan
代表取締役社長
日本グループ代表

勝瀬 博則 氏

奥田 穣太郎 氏

株式会社Trip.com International Travel Japan
総務部マネージャー

奥田 穣太郎 氏

Contents

  1. 2003年にNASDAQへ上場。グループ創業24年目の世界最大級のオンライン旅行会社
  2. 最適な働き方を模索する。ハイブリッドワークもその一つだった
  3. 多様なメリットを総合的に評価したことで必然的に移転先が決まった
  4. 「来たくなる」や「会話のしやすさ」を感じさせるオフィスを構築した
  5. オフィスは仕事のクオリティを上げるためのオプションの一つと考えればいい

イベントスペース

イベントスペース

2003年にNASDAQへ上場。
グループ創業24年目の世界最大級のオンライン旅行会社

1999年に設立、その後のグローバル展開で世界最大級のオンライン旅行会社となったTrip.comグループ。2003年にNASDAQ上場し、「あらゆる旅を最高に」をミッションに多彩な旅行商品やコンテンツを提供している。

「オンラインサービスではありますが、かなり高額な商品も扱っております。お客様の属性もForbesにランキングされているような富裕層の方が半数以上を占めています。富裕層の中でも女性の方の利用率が高いですね。好奇心が旺盛で、消費意欲も高い。そして何よりもタイムパフォーマンスの意識が強いという特長があります。当社のサービスの特長はスマートフォンだけで航空券から宿泊先までの予約が完結できること。きっとその使いやすさが評価を得ているのだと思っています」(勝瀬氏)

さらに、「カスタマーサポートの充実」も優れているサービスの一つとなる。

24時間365日で、多様な問い合わせに対応しています。メンバーは全て必要なスキルや知識を身につけたバイリンガルスタッフで構成しています」(勝瀬氏)

2014年、日本法人が設立。以来、国内外の航空券、宿泊施設、鉄道などの予約サービスを中心に事業を展開している。現在、日本全国に6拠点を設けるなど、安定した事業展開を続けている。

最適な働き方を模索する。ハイブリッドワークもその一つだった

旧オフィスは出社率100%の完全固定席で、会議室は7室を設けていた。当時の従業員数の比率から考えると、賃貸スペースは十分な面積ではあったものの、会議室の利用が一気に増加していた。顧客との商談のほか、電話会議、WEB会議、Live配信、各従業員の集中作業の場。それ以外にも、自社の採用面談、来客との軽い閑談スペースなど、全て会議室で行っていたため、会議室不足が明白に。業務に大きな支障をきたしていた。

「一方で大型イベントスペース(40名程度収容)などは、利用率が低く、スペース効率の悪さが解決すべき問題となっていました。しかし、完全固定席でしたし、容易にレイアウト変更もできない状況でした」(奥田氏)

そんな中で2019年に新型コロナウイルス感染症が発生する。そこで急遽、在宅勤務を取り入れた。そして近い将来にオフィス移転を控えていたこともあり、東京オフィスで新たな働き方を試すことになった。

「グループ本社でもどういった働き方が最適なのかを模索していました。東京オフィスの移転は、グループ全体にとっても一つのチャレンジでした」(勝瀬氏)

多様なメリットを総合的に評価したことで必然的に移転先が決まった

新オフィスに選ばれたのは、旧オフィスに近い立地に建てられた東京駅至近の新築大規模ビルだった。

JRだけでなくメトロの利便性も良く、新幹線や成田・羽田空港へのアクセス性、企業ブランドにふさわしいビルのグレード感、エリアのポテンシャル、といった多様なメリットを総合的に評価しました」(奥田氏)

加えて、ビルが有する施設も入居を決める決定打となったという。

「ビルには就業者専用の社食『My Shokudo(約450坪)』、フォンブースを整備した無料ワークスペース『就業者専用就業ラウンジ(約200席)』、大小合わせて7室のカンファレンスを持つ『XLink』、管理が容易な『防災備品倉庫』、その他、サーバー室や会員制レストランなど、さまざまな施設が用意されており、それらの施設を最大限に活用することで自社の賃貸スペースを削減できる。それでありながら効率良く働くことが可能になると判断したのです」(勝瀬氏)

ビルグレードを上げることによるコスト面の増加を懸念したが、ビル施設をフル活用することで旧オフィスよりも賃貸スペースの30%削減が可能に。そのためコスト的にはほぼ変わらないことが判明した。それでいて環境は飛躍的に便利になる。もし賃貸スペースのレイアウトだけを考えていたら、ここまで大幅に効率化できなったと語る。

「大手町に誕生したハイグレードビルへの入居ですから、今後の採用活動にもプラスになるはずです。今回の移転は我々にとって最適解を導き出せたと思っています」(勝瀬氏)

「来たくなる」や「会話のしやすさ」を感じさせるオフィスを構築した

移転プロジェクトは、従業員の声を拾い続けることに時間と苦労を費やしたという。

「当時はこのパンデミックが収束するかどうかも含めて、その後の働き方がどう変化するか本当に手探りでした。だからこそ、工事が進んでいく中でも従業員の皆さんのオフィスづくりの具体的なアイデアを積極的に取り入れました。そのため決めかけたレイアウトの変更や微調整の提案の度に、デザイン会社様を困らせたことも。しかし関係者の方々の熱意やご協力のおかげもあり、結果として最適解のレイアウトにどんどん近づいていきました」(奥田氏)

移転を機に働き方も柔軟に変えていった。

「世の中を見渡すと働く環境が大きく変化しているのを実感します。我々もそれらの変化に順応していかなければなりません。それどころか積極的に優秀な人材の確保をしていく必要もあります。そのためにはオフィスというハードの面だけに目を向けるのではなく、就業規則のようなソフトの面からも『働きやすさ』をサポートしていくことが大切だと考えました」(勝瀬氏)

在宅ワークやリモートワークの導入はフレキシブルな働き方ができる一方、従業員の帰属意識が薄れてしまうこが懸念された。そこで新オフィスは、「来たくなる」「カッコよさ」「出会い」「会話が生まれる」などをキーワードとした。


それでは新オフィスを具体的に紹介していこう。エレベータを降りると開放的なエントランスが目の前に現れる。旧オフィスでの課題の一つでもあった会議室不足を解消するために、2室の応接会議室が配置されている。

エントランス

エントランス

「ビルの構造として窓側近くには必ず一定間隔で大きな柱がありその周辺がデッドスペースなりがちです。そこで電車内のボックス席のような会議室を、柱と同じ幅で設置しました。さらに全面ガラスばりにしたことで、エントランスからも眺望を楽しめて、且つ広く見えます」(奥田氏)

入室すると入口手前にはイベントスペースが広がる。普段は執務エリアとしているが、家具は可動式であるため容易に移動ができる。50名程度のセミナーも開催可能だという。中央の小上がり部分にはファミレスブースを配置。真上に設置しているスクリーンを下ろせば、セミナーや説明会の壇上となる。もちろんオフィスのフレキシブルさを追求するだけでなくセキュリティ対策も万全に。手前から奥に行くにつれてセキュリティレベルがグラデーション的に上がり、機密性の高い情報や作業内容に対してアクセス制限がかかっていく工夫もされている。

イベントスペース全景

イベントスペース全景

イベントスペースの左側には応接会議室を集めた。社長室兼用のボードルームも合わせると4室が並ぶ。

「全ての会議室のガラス面に声漏れ対策としてサウンドマスキングシステムを導入しています。利用者は安心して会話できます。オフィスの開放感を維持しつつ、情報の機密性を高めました」(奥田氏)

応接会議室「撫子」

応接会議室「撫子」

ボードルーム

ボードルーム

応接会議室の予約は個々のPCから予約が可能となる。執務室内のモニターで予約状況を映し出しているため、部屋の空室状況が一目でわかる仕組みだ。

右側には「桐」と名付けた応接会議室を設置。同社の主要サービスであるホテルの部屋を象ったデザインとなっている。

応接会議室「桐」

応接会議室「桐」

「動画配信の撮影やインタビューなどの利用も想定しています。会議室の目隠しはブラインドやフィルムではなく布カーテンを採用し、雰囲気を柔らかくしました」(奥田氏)

イベントスペースの奥が執務エリアとなる。壁側にフォンブースが2台用意されている。

「フォンブースの導入で会議室を一人で利用することがなくなりました。これによって会議室の過剰予約の問題が解消されています」(奥田氏)

そしてフリーアドレスを採用したデスクが並ぶ。全てのデスクにモニターアームが設置されていて、モニターの高さと位置が自由に調節できる仕様。窓側にはカウンター席やソファ席が置かれ、リフレッシュスペースとして使われている。

フォンブース

フォンブース

フリーアドレス席

フリーアドレス席

「執務エリアの最奥には壁で仕切ったハイセキュリティスペースをつくりました。経理や人事といった機密情報を扱う部署が使用しています。契約書や社外秘資料の保管場所にもなっています」(奥田氏)

移転後、海外拠点のメンバーが頻繁に視察に訪れて、次にオフィスをつくる際の参考にしたいと言われているという。

オフィスは仕事のクオリティを上げるためのオプションの一つと考えればいい

「オフィスは、『洋服』みたいなものと考えています。業界や業務によって、スーツが常識的だったり、ラフなスタイルが当り前だったりします。オフィスにも色々なスタイルがあってもいいわけで、正解はどこにもありません。結局のところは、どのように人に見られたいか、どのように自分を表現したいか、その価値観の違いだけのような気がします」(勝瀬氏)

「お客様も従業員も海外グループの出張者も、シンプルで安全で安心してコミュニケーションできる場所が必要でした。それがこのビルであり、オフィスだったのです」(奥田氏)

「オフィスも旅行も、生活する中で絶対的に必要な要素とはいえません。ただ、せっかくそこで時間を費やすのでしたら多少の遊びを用意してもいいのではないかと思っています。オフィスの『存在理由』を堅苦しく考えるのではなく、『オフィス』は仕事のクオリティを上げるためのオプションの一つ。そんな風に気楽に考えればいいのではないでしょうか」(勝瀬氏)

Trip.com Group

株式会社Trip.com International Travel Japan
株式会社Trip.com Air Ticketing Japan
株式会社Trip.com Japan
Trip.comグループの日本法人は2014年に国内で業務を開始。現在、東京、大阪をはじめとする全国6ヵ所にオフィスを構えている。海外ユーザー向けインバウンド事業、ホテル・宿泊施設の予約、航空券の販売、コールセンターの運営など、グループ内で旅行が完結するワンストップサービスを実現する。