株式会社ウェルクス

2018年3月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

機能性にこだわり
新本社オフィスを構築した

「Anyone can be Anything(環境や境遇に左右されず誰もが自己実現のチャンスを持つことができる元気で笑顔あふれる社会の実現)」を自らのミッションとして掲げ、堅実に成長を続けている株式会社ウェルクス。業務拡大にともなう人員増が進む一方で、オフィスの手狭さが課題の一つになっていた。
2017年12月、慣れ親しんだ墨田区・両国を離れ、台東区・御徒町に拡張移転を実施。様々な機能を盛り込んだオフィスを完成させた。今回の取材では、そんなオフィスのコンセプトや目的についてお話を伺った。

三谷 卓也 氏

株式会社ウェルクス
代表取締役社長

三谷 卓也 氏

冨澤 幸平 氏

株式会社ウェルクス
コーポレート本部
総務部

冨澤 幸平 氏

山本 知恵美 氏

株式会社ウェルクス
広報部

山本 知恵美 氏

エントランス

ウェルクスの考えを示したエントランス

Contents

  1. 国内外の社会問題の解決を目指して会社を設立した
  2. 移転理由は、手狭さの解消とコミュニケーションの活性化
  3. タスクフォースが中心となって移転プロジェクトを成功に導いた
  4. 新オフィスのこだわりは「無駄なものはつくらない」こと
  5. 機能性を重視した新本社人が増えても1フロアにはこだわりたい

国内外の社会問題の解決を目指して会社を設立した

株式会社ウェルクスの設立は2013年4月。「プロフェッショナルなスキルを通じて社会の問題を解決し、会社に関係するすべての人々の幸福を追求する」を企業理念に、新たな市場を開拓してきた。同社は、保育士の人材紹介からスタート。以降、保育に限らず、時代における社会問題を解決することを目指して事業を運営してきた。

「前職で、福祉や介護の世界に興味を持ち独立しました。現在、『保育』のほかに、サービスメニューに『介護』『福祉』『学び』が加わっています」(三谷 卓也氏)

「もちろんメニューは今後ますます増やしていく予定です。例えば待機児童問題や高齢化問題など、各時代に応じた社会問題に対するサービスも検討しています」(冨澤 幸平氏)

「社名のWELKS(ウェルクス)は、Welfare(福祉)とWork's(事業・複数)を組合せた造語です。今後、さらに社会福祉事業が増えることを見据えて名付けました」(山本 知恵美氏)

移転理由は、手狭さの解消とコミュニケーションの活性化

墨田区にて創業。以来、今回の移転に至るまで同エリアを離れることはなかった。その理由は月額賃料が比較的安価なこと。そして社員の通勤負担を考えてのことだ。

「ランニングコストも重要ですが、それよりも通勤時間が増えることで社員のモチベーションが下がることを危惧したのです。ですから『同じエリア内で空室のあるビルに移転する』というのが基本的な考えになっていました」(三谷氏)

旧オフィスに入居したのは2015年8月のこと。1フロア面積120坪の割と広いオフィスだった。

「それでも採用が進む中で再び手狭になりました。そのときはタイミングよく同ビル内に空室があり、ビル内での増床ができました」(三谷氏)

「そんな事情で使用フロアが2階と5階に分散していました。2階にはアドバイザーと呼んでいる営業部門、5階には管理部門が入居。正直、行き来も面倒でコミュニケーションがとりにくかったですね」(山本氏)

「日常業務の中で、営業部門と管理部門とのコラボレーションは頻繁にあります。しかし旧オフィスでは会議室は3室しかありませんでした。しかも社内と社外の兼用。空きがないためにミーティングも満足にできません。次第に相手の席に出向いて打ち合わせを行うようになっていました」(冨澤氏)

社員のストレスが大きくなる前に移転計画をスタートさせた。まず候補ビルを探すにあたり移転先の条件設定を行う。同社では「分散フロアを1フロアに集約できる面積であること」「旧オフィスとさほど離れていない立地であること」を条件に設定した。その条件を踏まえて候補ビルを比較していく。

「かなり多くの候補ビルの中から絞り込んでいきました。実際に内見したビルだけでも10棟超あります。錦糸町や秋葉原などのターミナル駅の近くに立地するオフィスビルを中心に見学したのですが、1フロアでここまでの面積を確保できるビルはあまりありませんでした」(三谷氏)

最終的に台東区・御徒町に建築中だった大規模ビルを移転先に選んだ。視認性の高い中央通りに面した複合ビルで下層階には商業店舗、シネマコンプレックスが入居している。注目度も高く、引き合いも多い。竣工はまだ先ではあったが2017年2月に契約を締結する。

「周辺環境や立地環境、どれをとっても満足です。旧オフィスの主要駅から3駅しか離れていないため、社員の通勤時間もさほど変わりません。私たちにとって最適なオフィスビルに入居できたと思っています」(三谷氏)

時代を追い風に事業が拡大している。それに比例して活発な採用活動も必須となる。

「今後の採用活動も意識しました。注目ビルに入居することで当社のブランドイメージも上がりますし、採用にも有利になるのではと思っています。また、今までと違って3路線4駅の使用が可能になりますので営業上のメリットも大きいですね」(冨澤氏)

「ビルの周辺には飲食店もたくさん立地しています。社員同士がプライベートで気軽に交流を深めている会社ですので、今まで以上にコミュニケーションが活性化することにも期待しています」(山本氏)

タスクフォースが中心となって移転プロジェクトを成功に導いた

入居ビル決定後のステップはオフィスをどのように構築するか。オフィスデザインや使い方、機能について整理していかなければならない。この先のステップは経営陣の主導ではなく、社内のタスクフォースチームに委ねられた。

「当社には働く環境を改善するために『タスクフォース』という制度があります。その時々で必要と感じるミッションに対してチームを結成。その解決のために行動を起こすというものです。本社の社員は各タスクフォースのどれかに属しているのですが、今回の移転では『移転準備』と『コスト削減』の2つのチームが中心となりました。社員も自発的にアンケートに協力してくれたのでやりやすかったですね。定期的にミーティングを重ね、そのアンケートを元に要望を取りまとめていく。集計結果はコスト削減チームに引き継いでいきました」(山本氏)

「単純に『コストをかける=反対』ということではありません。その意見を採用することによって『コミュニケーションが活発になるか?』『会議の質が高まるか?』『生産性向上に効果はあるか?』など、意図や目的も含めて精査していきました」(冨澤氏)

「社員からの要望の多くは会議室の不足を訴えるものでしたね」(山本氏)

そのほか、スペース不足によって撤廃されてしまったリフレッシュスペースの復活、スタンディングミーティングデスクの導入などのリクエストも多かったという。

このようなプロセスを通じて機能的かつ現実的な意見に絞る。それを基本として内装デザイン会社と打ち合わせを行う。2017年8月にオフィス全体のレイアウト図が完成。社内確認後、内装工事に入る。細かな修正や打ち合わせを重ねながら進行する。そして12月16日、オフィスが完成した。入居予定日のわずか2日前だった。

「事前の図面開示以外は、特に社員への途中経過報告はしていませんでした。そのためほとんどの社員が移転日に新オフィスを目にすることになります。皆さん、今まで見たこともないような嬉しそうな顔でテンションが高かったのが印象的でしたね」(冨澤氏)

新オフィスのこだわりは「無駄なものはつくらない」こと

それではここから新オフィスを紹介していこう。

エレベーターを降りるとコーポレートカラーであるグリーンを基調とした落ち着いたエントランスが現れる。壁には同社の企業理念とミッション、ビジョンが掲げられている。

「世界中には数多くの社会的課題が溢れています。それは国や時代によって常に変化があるもの。私たちはこれからも社会的課題を解決するために事業を提案していきたいと考えています。そんな私たちの宣言を公開しています」(山本氏)

エントランスを抜けると4席のボックス席が装備された「WelcomeSpace」が設けられている。入社試験の一次面接やパートナーとの打ち合わせに使用されることが多いという。

その奥が来客者用の応接室。新オフィスでは3室が用意されている。

「それぞれ『Water』『Earth』『Sun』と名付けました。当社は保育、福祉、介護など様々な社会の課題に向き合っている会社です。言うなれば『会社の成長』と『社会の成長』が密接に関係しているかなと。そこで『成長』が感じられる言葉を選んだのです」(山本氏)

扉の奥が執務スペースとなる。パーテーションが無く、部屋の奥まで見渡せるのが特長的だ。新オフィスでは、いくつかの新機能が追加されている。

「旧オフィスは本当に手狭で会議室不足が深刻でした。どうせ改善が必要ならば単に会議室を増やすだけではなく、色々なバリエーションに対応できる機能を揃えようと思ったのです」(三谷氏)

新設した集中スペースは、社内ライターやマーケティング部門の資料整理の場などで利用されるケースが多い。かなり稼働率は高いという。加えて、本社内に初めてとなる壁一面ガラス張りの社長室を新設した。

「ここの新設だけは私のこだわりです。旧オフィスでは打合せ場所がないために必要な時に集まることができないことがありました。ですから部屋の真ん中にミーティング用のデスクを配置しています。『必要だからつくる、しかし無駄なものは一切つくらない』。これも今回のオフィスコンセプトの一つです」(三谷氏)

現在、1フロア面積320坪の新オフィスに170名の社員が在籍している。そのほとんどが固定席だ。

「チームでの業務を重視しているので、外資系や一部のIT企業で導入されているようなフリーアドレスを採用する選択肢はありませんでした」(冨澤氏)

「1フロアになったことで、営業部門と管理本部間の会話は増えましたね。遠くからでも在席状況がわかるのもいいです。その他、会議前の待ち時間なども減少し、効率的な時間の使い方ができています」(山本氏)

「1 on 1というマネジャーと部下のミーティングを行っているのですが、音が漏れない環境になったため新オフィスからきちんと取り組めるようになりました。月1回行うルールになっています」(冨澤氏)

エントランス横のWelcome Space

エントランス横のWelcome Space

見通しの良い執務スペース

見通しの良い執務スペース

新設した集中スペース

新設した集中スペース

ガラス張りの社長室

ガラス張りの社長室

「窓際には社内用のミーティングルームが8室あります。それぞれAからHまでの頭文字で始まる植物の名前と花言葉でネーミングしました。一番大きい部屋には12席を用意しています。主にタスクフォースやチームミーティングで使用されることが多いですね」(山本氏)

「人材の採用事業には、やはり営業力がモノを言います。そのためには営業ロールプレイングは効果的なトレーニングの一つだと思っています。今までは部屋がなくて断念していましたが、ようやく開始することができます」(三谷氏)

そして執務室内の各所に、オープンミーティングスペースを充実させた。

「実は個人席に昇降式デスクの採用も検討したのですが、どれだけの人が使いこなせるかということが論点になって。最終的に不採用となりました。その代わりになるかはわかりませんが、スタンディングミーティング用の大きなデスクを設けました。使用頻度も高く、限られた時間内で打ち合わせをしている姿をよく見かけます。また、前面のボードには社員同士のスナップ写真が貼られるなど、以前にも増してコミュニケーションが生まれている感じがしますね。背面壁をホワイトボードにしたのも使い勝手のいい理由の一つかもしれません」(冨澤氏)

その他、予約不要で誰もが使用できる6人座れるファミレス席が6セット。部門を超えたメンバー同士での打ち合わせが増えたという。

全社員が待ち望んでいたリフレッシュルームも復活した。

「社外セミナーやプレゼンテーションを行うための部屋としても使われています。それ以外はリフレッシュルームとして自由に開放しようと。休憩や食事の場としても活用しています。左側の壁一面は本棚になります。今後社員が興味を持つようなビジネス書や参考図書などを取り揃えていく予定で、『社員が自然に集まれる場』になればいいですね」(山本氏)

社内用ミーティングスペース

社内用ミーティングスペース

執務室内のファミレス席

執務室内のファミレス席

多機能のリフレッシュルーム

多機能のリフレッシュルーム

機能性を重視した新本社。人が増えても1フロアにはこだわりたい

「このオフィスにはかっこ良さや流行といった要素は求めていません。機能そのものが重要なのです。今後も、限られたスペースを有効に使うために『機能性』を重視したオフィスづくりを追求していきたいと思っています」(三谷氏)

将来、オフィス移転を行う機会があった場合、その時も可能な限り1フロアにはこだわりたいと語る。

「やはり1フロアのオフィスは使い勝手や作業効率がいいですね。それに草や木、植物といった『緑』が加われば最高のオフィスになると思っています」(三谷氏)