多様なコミュニケーションを可能にした共用スペースの拡張と集約レイアウト
執務スペースのレイアウトにおけるもう一つの特色は、共用スペースの充実だ。
「各フロアにテーブルとソファーを配したカフェテリア風のコミュニケーションスペースを設けました。日常的な打ち合わせに使われるだけでなく、ドリンクの自販機や電子レンジも置かれており、ランチやリフレッシュにと多様に利用されています」(藤本氏)
また会議室も以前のオフィスに比べて大幅に増やしたうえ、予約せずに使える「クイックミーティングスペース」を用意した。
「クイックミーティングスペースは背の高いスツールと小さなテーブルによるコーヒーショップのようなスタイルになっています」(高橋氏)
自然に会議時間も短くなるので、社員の評判はかなりいいようだ。ブース式のレイアウトを採用していたころは打ち合せには必ず会議室を使わなければならなかったため、慢性的に不足していたそうだが、新オフィスではその点が大いに解消されただけでなく、コミュニケーションのスタイル自体が変わってきたという。
「多様なスペースがあることで、正式な会議から気軽な打ち合わせまでいろいろな形で従業員が集まり、情報交換ができるようになりました。コミュニケーションスペースやクイックミーティングスペースを活用するだけでなく、相手のデスクのところに椅子を持っていって話し込むケースもあるようで、コミュニケーションの促進が図れたのではないでしょうか」(高橋氏)
また、プリンタなどの設置場所を集約したことも、管理上において良かった点の一つである。以前は部門ごとに設置場所がバラバラだったが、新しいオフィスではコア部分の近くに4ヵ所、コピー・プリンタコーナーを固定したという。
「各種マシンはメンテナンスが必要なため、執務スペースにおいて唯一、社外のスタッフが入ってくる場所です。それだけにコア部分に設置することで、デスクとの距離を保つことができます。また騒音面などの対策上も、このようなレイアウトは効果的だと思いますね」(藤本氏)
ヤフーらしいコミュニケーションスタイルに
ジャストフィットしたオフィスをつくりたい
ミッドタウン・タワーの新オフィスの運用を始めて半年近く経つが、今のところ、社員の満足度はかなり高いという。
「個人的には、ユニバーサルプランによる島型対向レイアウトは、ヤフーという会社に合っていると思います。もともと非常にフラットな組織で、リーダーと部長しかなく、その上は事業部長と役員という構造ですから、デスクやスペースについてもあまり多くの条件は求められていません。一応、部長席は独立して設けてありますが、中には『デスクが並んでいるほうがコミュニケーションがとりやすい』と部長席を嫌う人もいるほど。気軽に他の人と話せるオフィス構造は、ヤフーの雰囲気に合っているのかもしれません」(高橋氏)
今回、ヤフーから提供された写真の中に会議風景を写したものがある。社員だけが参加する打ちあわせの場面で驚くのは、床に座っている人が大勢いることだ。実は高橋氏も藤本氏も、初めてそれを目にしたときには戸惑ったという。
「椅子が足りないなら用意しますと言っても、『いいよ、いいよ。いつもこんな感じだから』と誰も気にしない。役職者であっても平気で床に座ったまま話を続けるのだから、最初は変わった会社だと思いましたね」(藤本氏)
しかしすぐに、それが「ヤフーらしさ」だと実感することになる。
「椅子のあるなしにこだわらず、コミュニケーションが図れればいいというのがこの会社の多くの人の発想なのかもしれません。だからこそ、コミュニケーションスペースを確保できた新しいオフィスはヤフーの方向性に合っていると思います」(高橋氏)
オフィスづくりに絶対的な正解はない。それぞれの企業が自分たちの組織や風土に合わせたスタイルを模索するところからスタイルが確立していく。ミッドタウン・タワーのヤフーのオフィスは、まさにそれを具現化していったものといえるだろう。
11階の来客フロア。エレベーターを降りると受付カウンターまで黄色いラインで誘導。初めての訪問者でも迷わないように工夫されている。
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