- マグネット効果のある広場を
広いフロアを活かすには全体が見通せるだけではなく、社員が自然に集まるスペースも重要。ザッパラスでは立木と周囲の植栽で公園のような空間を実現している。またエレベーターホールから続く動線上に設けたことで日常的に社員が集まり、組織横断的な交流が行われている。 - 情報交換のスタイルを多様に
会議室、打ち合わせスペース、コミュニケーションゾーンと、さまざまな目的や機会によって使い分けられる交流の場をオフィス内に設けることで、組織は活性化していく。会議室は少人数用のものや誰もが発言しやすくなる円卓のものなどバリエーションを増やしている。 - オフィス家具はリサイクルできる
汚れやすい椅子も5分ほどの洗浄で新品に近い状態になる。コストも買い換えの10分の1程度とリーズナブル。ザッパラスではコスト削減、環境負荷削減の両面から検討し実行した。
全体を見通せるオフィスが組織を活性化する切り札に。
2000年3月に会社設立、2005年5月に東京証券取引所マザーズへ上場、2009年2月に東京証券取引所市場第一部へ市場変更。
沿革の一部を見るだけでも株式会社ザッパラスの急成長の軌跡がよく分かる。
「2004年に携帯電話向けのデジタルコンテンツの提供に事業を集中させたことが大きな飛躍を遂げるきっかけになりました。その後、オンラインショッピングやモバイル広告、ソリューション提案など情報ツールとしての携帯電話の可能性を広げていき、新しいビジネスの展開につながったのです」(総務人事部長・江村尚志氏)
そして組織の拡大が続く2006年7月、中目黒(目黒区)のオフィスから移転を決意する。
「そのころは全社で150人ほどの規模でした。ビルの2階と4階を借りていたため、社内のコミュニケーションに大きな問題があったのです」(江村氏)
それほど大きな組織でなくても、事業部門ごとにフロアが分かれると交流の機会はどんどん失われていく。当時の様子を江村氏は「まるで別の会社みたいだった」と語る。
「若くて元気のいい会社のはずなのに、これではいけないと思い、移転による統合を考えました」(江村氏)
立地として候補に上がったのは渋谷か恵比寿だった。
「IT系の企業はこのエリアに集まる傾向があるのですが、ちょうどいい広さのビルが少なかった。幸い、今の恵比寿ビジネスタワーの7階フロアが空くことになり、これは大きなチャンスだと思ったのです」(江村氏)
このとき、新しいオフィスを構築するにあたり、ポイントとなったのは次の3点だった。
- フロア全体を見通せるレイアウトにして交流を促進する。
- 会社のイメージをアピールできるデザインを採用する。
- 今後の増員に対応できる仕組みにする。
1番目の項目は、ワンフロアに統合したメリットを最大限に活かす工夫だ。「内部にパーテーションは設けず、端から端まで見通せるオフィスにする。役員たちの席は窓際にオープンな状態で設置することにより、社員との接点を広げました。またマネージャークラスの席は特別に設けず、島型対向レイアウトの中に組み込むようにしたのです。このような改革を行ったことで、組織のフラット化に大きな効果があったように思います」(江村氏)
続いて2番目の項目は、外に向けたデザイン上のポイントだ。
「ザッパラスは携帯電話の占いサイトの運営で知られていることから、どうしてもエンタメ志向のベンチャー企業だと思われがちです。しかし、実際にはマーケティングデータに基づいた品質の高いサービス企画が当社の強みであるため、エンタメをイメージさせるものではなく、知的で安心感を与えられるイメージで統一しました」(江村氏)
自慢の一つがエントランス正面の社名入りの仕切り壁で、高級感のあるパール仕様を実現するために自動車と同じ塗装を施したという。
「インテリアにそんな塗装をする人はいないようで、自動車修理工場の方に頼み込んでやってもらいました。作業はかなり大変だったのですが、出来映えには非常に満足しています」(江村氏)

エントランス正面の仕切り壁。
会社が訴求したいイメージをオフィスデザインで社外に伝える戦略は、採用にも大きな効果を発揮するという。
「オフィス見学を実施すると、ほぼ全員の方が当社のオープンな社風をすぐに理解します。つまり、オフィスデザインは重要な採用PRツールでもあるのです」(江村氏)
そして3番目の項目については、個人デスクが並ぶ島型対向レイアウトの間に打ち合わせ用のテーブルをいくつか設置しておき、バッファスペースとした。
「この部分はデスクの増設を可能とし最大250人までは対応できるように設計しました。ところが予想より早い段階で組織の拡大が進み、オーバーすることが確実に。同じビルの2階が空いたのを機会に増床に踏み切ったのです」(江村氏)