株式会社じげん

2015年2月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

社内外との交流を高めるためにオフィスの改善は限りなく続く

生活情報を扱う独自のビジネスモデル「ライフメディアプラットフォーム事業」を運営している株式会社じげん。2006年の創業以来、わずか7年で東証マザーズ市場に上場するなど、急激な成長を遂げている。2014年3月、赤坂から東新宿に本社移転を実施。移転後1年が経過した現在も安定したオフィスの維持管理ができているという。今回は、オフィスの特長とともにオフィス運営の秘訣についてお話をお聞きした。

プロジェクト担当

沼尻 佳奈氏

株式会社じげん
経営推進部 広報担当

沼尻 佳奈氏

会議室を配置したバリエーション自在のオープンスペース

会議室を配置したバリエーション自在のオープンスペース

はやわかりメモ

  1. 「生活機会(より良く生きるための選択肢)の最大化」を目指し事業領域を拡大し続けてきた
  2. 立地のこだわりよりも従業員の満足度を優先
  3. 「集」「創」「語」のコンセプトで新オフィスを構築していく
  4. 接客エリアのテーマは理念の表現。執務エリアはコミュニケーションの向上
  5. オフィス創りはいつまでも続く 確立させている維持管理の仕組み

「生活機会(より良く生きるための選択肢)の最大化」
を目指し事業領域を拡大し続けてきた

株式会社じげん。その社名に込められている意味は、同社の経営理念にしっかりと刻まれている。

「経営理念は『OVER the DIMENSION 次元を超えよ!』。圧倒的に突き抜けたサービスや会社を創り、世の中の常識や価値観を覆すことを共通認識として持っています。その他にアルファベットで表記すると『ZIGE×N』としているのですが、これはインターネットを表す『E』×(かける)様々な産業や業界を表す『N』、つまりインターネットの力で様々な産業や業界を変革し、より良い未来を創る、という思いを込めています」

同社が「ライフメディアプラットフォーム事業」を開始したのは2008年のこと。当時は「転職EX」サービスの提供からスタートした。

「就職、結婚、引越しなど人生の大きな転機となるライフイベントを中心とした各領域における有力サイトの情報を統合。利用者がワンストップで検索から問合せまでを容易にできる生活情報のプラットフォームを運営しています。例えば『住まい』領域を一つとっても、ネット上には多数のメディアが存在します。その情報を一元管理して検索可能なシステムとして、『賃貸SMOCCA!-ex』を提供。利用者は、複数サイトを立ち上げることなく一回の操作で閲覧から問い合わせまでできるようになります」

2013年に東証マザーズ市場に上場。そこからは「ライフメディアプラットフォーム事業」を主力事業として据えながらも、事業領域・展開地域・事業モデルのさらなる拡張を目指す成長戦略を掲げ、利用者の「生活機会の最大化」に向けて進化を続けている。

基本理念

ZIGE×Nは、生活機会の最大化を目指し、
インターネットを通じて宇宙(せかい)をつなぐ『場』を提供することで、
社会との調和を図り、共に持続的発展を追求していく。

立地のこだわりよりも従業員の満足度を優先

同社は過去、高田馬場、新宿、赤坂と本社移転を行ってきた。

「場所に依存する事業ではありませんので特にオフィスの立地にはこだわりを持っていません。ただ今回の移転についていえば、いくつかの候補地が出てきた段階で全社員の通勤にかかる時間を調べました。東新宿であれば約7割が通勤時間を短縮できることがわかったことが、今のオフィスを選んだ大きな理由の1つになっています」

「その他の理由としては、やはり東新宿において、象徴的な立ち位置にあるといえる、ビル全体のステータス感。清潔感のある設備や従業員全員が1フロアで収まる広さだった点もこのオフィスを選んだ理由の1つです」

移転先探しは2013年4月から始まる。以下のようなスケジュールで計画は実行された。

2013年4月 移転決定

9月 移転先決定

10月 パートナー会社の決定

12月 レイアウト・デザイン決定

2014年3月 施工会社と調整

3月23日 引越し

3月24日 移転完了

「集」「創」「語」のコンセプトで新オフィスを構築していく

同社にとって上場翌年の2014年から今年にかけては第二創業期という位置づけだ。事業が拡がりを見せ、お取引先や社員数も増えてきた。そのため社内外に対して、企業理念やビジョンを積極的に発信するオフィスの構築が必要だった。加えて、業務で直接関わる機会の少ない事業部・ユニットの異なる社員間のコミュニケーションも希薄になりがちだったという。

「社員の増加やM&Aによるグループの拡大に伴い、今まで敢えて仕掛けをつくらなくても共有できていた経営陣の想いや会社の理念について、社員1人1人が意識することが難しくなっていました。また、当社では、エンジニア、デザイナー、セールス、マーケッターという異なる志向・スキルを持つ4つの職種の社員がいくつかの事業部に分かれて働いていますが、事業部やユニット単位といった縦・横の繋がりに、いかに斜めのラインをつくるかにも課題感がありました。新オフィスではこうした課題を打破していきたいと思いました」

そこで、経営陣の想いをしっかりとヒアリングした上で、従業員アンケートを実施し、社員1人1人の要望にも目を向けるよう努めたという。

「アンケートを実施することで、改めて経営陣側の想いと社員側の要望のズレを認識することができました。オフィス移転プロジェクトは、コミュニケーション課題と向き合う大切な機会になっていたと思います」

「オフィスコンセプトは『次の元が生まれる場所』。『集う空間』『創る空間』『物語る空間』という3つの要素を掛け合わせることによって相乗効果を生むことを目指しています」

同社のオフィスづくりの特長は、パートナー会社に任せきりにするのではなく、同社のプロジェクトチームが各事業者と直接交渉や管理を行ったことにある。また、オフィスの機能として、『集う空間』『創る空間』『物語る空間』を実現するだけでなく、オフィス創りの段階からこの3要素を大切にしていたという。

『集』は集う空間づくり。

「利用頻度の高い機能と滞在時間の長い機能をかけ合わせ、社員同士が出逢う確率を高めることや、リフレッシュルームの設置により仕事以外の場所で新たなコミュニケーションが生まれるようにすることを意識しています。オフィス移転時も社内アンケートや経営陣との定期的なミーティングを行い、プロジェクトチームがみんなの意見が集まるプラットフォームとなることを目指しました」

「創」は文字通り全員で創る作業だ。

「壁面の黒板や社員の動線上にある打ち合わせスペースの設置を通じて、お互いの仕事を極力見える化し、圧倒的なスピードで成長するために、様々な立場の人がコラボレーションしやすくなる環境づくりを心がけました。こういった意識から、オープンスペースの椅子や壁面を飾るアートオブジェの取り付けなどは全員で行っています。協業することの重要性を再認識し、本来の業務でも最大限のパフォーマンスが発揮できることに期待しています」

「語」は物語るを意味する。同社の世界観や理念をいかに感じ取らせることができるか。

「当社を訪れたお客様が利用する会議室は、理念や世界観を体感できるようにデザインされています。理念をオフィスでどう表現していくかについては、社内のデザイナーを中心に移転プロジェクトチーム全員で話し合いを繰り返しました。こうした取り組み自体が理念について理解を深めることに繋がっていたと思います」

空間の使い方には極力こだわった。遊休スペースの見直しを徹底的に行い、空間の有効活用を考えた。結果、オフィスの総面積では以前のオフィスの1.3倍、執務部分に関しては約2倍も広くなったという。

オフィスづくりの方向性

じげんが更なる次元に進むための基盤づくり

社員が増え、新たな成長事業が立ち上がる中で、社会に対してより大きなインパクトを与えながら急成長し、社会・会社・社員がともに持続的に発展できるプラットフォームを創る。

今後、M&Aの加速や更なる戦略子会社の設立も視野に入れ、グループ連結でシナジーを発揮し、最大限の成果を引き出す基盤として、オフィスを再構築する。

接客エリアのテーマは理念の表現 執務エリアはコミュニケーションの向上

それでは実際にエントランスから順に見ていこう。
エントランスを
抜けると、「うみ(海)」→「りく(陸)」→「くも(雲)」 →「そら(空)」→「ほし(宇宙)」とイメージが分けられた会議室が続く。それらの部屋はコーポレートサイトのデザインと連動しており、エントランス側から順に高度が上がっていく。そこから「次元を超えていく」ことを体感させ、社内外の全ての人に同社の経営理念、基本理念を体感させる仕掛けだ。

エントランス

エントランス

「人感センサーによってレーザーとスモークが出てくる仕組みになっています。ここから早速、『じげん』の世界観へと誘われます。お越しいただいたお客様が他の人にこのエントランスの面白さを話したり、もう一度見に来たいと思っていたりと、次のコミュニケーションに繋がっていくような演出効果も意図しています」

会議室(うみ)

会議室(うみ)
「高度-10kmを想定しています。椅子の代わりに海の泡のイメージで半透明のバランスボールを設置しています。自由な発想を求める社内ミーティングで多く使用されています」

会議室(りく)

会議室(りく)
「高度±0km。ここがゼロ地点です。基本の高度ということで、『生活』をイメージできるように、お家のリビングルームのような仕様になっています。ソファにぬいぐるみと、リラックスできる環境が整っていますので、学生の採用面接など打ち解けて話をしたい時などに使われることが多いですね」

会議室(くも)

会議室(くも)
「高度+10km地点。雲の中に浮かんでいるイメージを表現しています。ハイチェアを使用しているので、立っている人と座っている人の目線が同じになります。デスクワークの多い制作職の社員は椅子の高さが変わり気分転換になると好評です」

会議室(そら)

会議室(そら)
「高度+100km地点です。コーポレートサイトに合わせてどうしたら風船を浮かべた部屋にできるかで試行錯誤しました。最終的に萎みにくい塩化ビニールの風船を使用しています。『くも』もそうですが爽やかな青空の背景は取材を受ける際の写真撮影等でも活躍します」

会議室(ほし)

会議室(ほし)
「高度+1000km地点ということでテーマは宇宙。テーブル・椅子も宇宙ステーションをイメージして選びました。理念を描いた黒い壁は重厚感があり、実際、防音性も高い部屋となっていますので、最終面接や役員会議といった重要な場面で使われるケースが多いです」

稼働率は高い。どの部屋もほぼ終日使われているという。さらにオープンスペースはバリエーションも自在だ。

「LED照明の切り替え、椅子・テーブルの配置を組み替えを行うことで目的に応じた空間を創りだすことができます。プロジェクタも投影できるようになっていますので、この場所を使って全体集会や発表会、セミナーを行うことが可能です。移転後、このスペースを活用して社外の方と交流する機会は増えたように思います。ダーツマシン、ビリヤード台も置かれていますが、これは飾りではなく業務時間外に頻繁に使用されています。コミュニケーションが深まってそこから何かが生まれる。そんなツールの一つとして考えています」

オープンスペースを抜けて執務室への扉を開ける。入り口近くに設けられているのがリフレッシュルーム「はざま」だ。

はざま

はざま

「オープンスペースと執務スペースを繋ぐ部屋です。漫画やゲーム機が置いてあり、休憩をとるために誰でも利用できます」

執務室はパーテションがないため見渡しの良いオフィスとなっている。壁一面が黒一色となっているのも特長的だ。

「以前にも増して開放感のあるオフィスになりました。壁は全て黒板です。旧オフィスから『スクラム』という仕事の進め方を採用しているのですが、TODOを誰が見ても分かるように管理するために黒板を活用しています。具体的には、プロジェクトごとに近くの黒板や壁に付箋を貼ってチームごとに毎朝チェックするミーティングを行っています。旧オフィスのころは、この体制を維持するのに、別途ホワイトボードを用意していて手間がかかりましたが、今は壁が使えるので大変便利です」

執務室全景

執務室全景

窓際には様々な形の打合せスペースを用意した。それによってちょっとしたコミュニケーションが生まれやすくなったという。

「通路に沿って設けているため、通りがかった際に、話しかけた人がいつの間にかミーティングに参加していることも。こうしたアンオフィシャルなコミュニケーションが創造性の向上に貢献しています」

全て黒板の壁

全て黒板の壁

打合せスペース

打合せスペース

オフィス創りはいつまでも続く 確立させている維持管理の仕組み

同社では、もともと全員が何らかの委員会に所属して会社運営を行う仕組みがある。

「私たちは、オフィスは全員で創りあげていくという考えのもと、新オフィスの維持管理制度を委員会主導で設けていくようにしました。それは上から押し付けられたものではなく、あくまでも社員目線でお互いに心地よく働けるように、社員全員で決めたルール。だからこそ主体的に『守ろう』という意識が高くなります」

「設備管理委員」は、移転後に新たに創られた委員会で、ダーツ・ビリヤードなどの設備、各会議室の利用ルールなどを定め、管理する役割を持つ。

「レレレ委員会」では、社内清掃の仕組み化と資料管理、デスクの施錠などができているかを管理する委員会。1クオーターの中でデスク周りが汚かった人は「汚シュラン」と認定して掃除当番が課せられるなど、従業員主導でつくられた独自の制度もあり、美化意識が自然に高まる仕組みができている。

「イベント委員会」では、季節行事を中心に、社内イベントの企画・運営を担当。オフィス内で持続的にコミュニケーションを図るための仕組みを考える委員会だ。こうした委員会を通じ、同じ部署・職種の人とは違う従業員同士が交流することが、新たなコミュニケーションを引き起こすきっかけになっているという。

「弊社ではオフィスは単に働く場所というだけでなく、たとえばノベルティやSNSのような、コミュニケーションツールとして捉えています」

「綺麗なオフィスをつくって、居心地が良くなって。オフィス創りがそれで終了という考えはこれからもありません。新しいコミュニケーションや人間関係が継続的に育まれるように、その仕組みを構築し、組織の成長に合わせて、改善を重ねていくことが重要だと思っています」