アメニティはオフィスビルの付加価値を向上させるのか?
~データで見るテナント共用ラウンジの設置状況と効果~
2026年7月21日公開
調査の背景と概要
| データ出所 | 三幸エステート株式会社 |
| 対象地域 | 東京都心5区 |
| 対象期間 | 2015年~2025年 |
| 対象ビル | 1フロア面積200坪以上、貸付面積3,000坪以上の一棟貸し、 解体予定等を除く標準的な賃貸オフィスビル436棟 |
| 被説明変数 | 募集賃料(共益費込み) 空室率(年間平均) 募集期間(募集開始から募集終了までの日数) |
| 分析手法 | 差分の差分法 |
テナント共用ラウンジの設置状況
調査の結果、2025年12月末時点で436棟のオフィスビルのうち72棟(16.5%)がテナント共用ラウンジを備えていることがわかりました【図表2】。ラウンジの設置率は2015年以降、増加傾向が続いており、近年は既存ビルでリニューアルの際に併せて後付けする事例が増えています。
このようなラウンジ等のアメニティの充実化は都心の大規模ビルだけでなく、都心の中小ビルや地方都市でも増加しています。都心の中小ビルでは貸室をセットアップオフィスに改修し、共用部も充実させる取組が多く見られます。地方都市においても新築大規模ビルを中心にアメニティの充実したビルが増えており、貸付面積の15%相当を共用部とする事例もあります【図表3】


テナント共用ラウンジの設置効果
テナント共用ラウンジの設置は時間的なラグを伴って、募集賃料、空室率、そして募集期間に有意な影響を与えます。ここでは、差分の差分法という統計的因果推論の方法論を用いてテナント共用ラウンジの設置が募集賃料、空室率、募集期間に与える影響を分析しました。
分析の結果、テナント共用ラウンジの設置後、1年後から5年後までにかけて募集期間は24.2~57.0%短縮します。空室率は設置から2年後以降に有意に低下し、1.2~1.8ポイントほどのマイナス効果が得られます。さらに募集賃料は設置後緩やかに上昇し、5年後に7.6%のプレミアムを発揮します。この結果はテナント共用ラウンジが移転を検討するテナントや既存の入居テナントを引き付け、ダウンタイムの短縮、稼働率の改善、賃料単価の上昇を通じてオフィスビルの付加価値を向上させることを示しています。

今回の調査ではテナント共用ラウンジの設置が広がり、ラウンジの設置が募集賃料、空室率、募集期間を通じて、オフィスビルの付加価値向上に寄与していることを示しました。高品質なオフィスを求める需要が旺盛な中で、
テナント共用ラウンジ等の充実した共用部は視覚的にわかりやすい差別化要因となります。従来、テナントにとってオフィスビル選びは「立地・面積・予算」の3要素で決まるとされてきました。しかし、今後は共用部等の「アメニティ」もオフィス選びの重要項目になることが考えられます。

