4 駅7 路線のターミナル駅に直結した大阪の南の玄関「あべの・天王寺」
「大阪では、大阪と梅田を合わせて「キタ」と一つにくくった呼び方をしています。難波と心斎橋は合わせて「ミナミ」と言われています。ここ「あべの・天王寺」は、「ミナミ」よりさらに南側に位置しており、特に名称もなく並列にしてそのまま呼ばれています。それは、駅の南側が阿倍野区、北側が天王寺区となっているのと関係しているのかもしれません」(米田真幸氏)
大阪のターミナル駅の乗降客数は、梅田、難波、あべの・天王寺の順となっている。
「他の主要ターミナル駅と違う部分は、駅の機能がコンパクトに集約されていることだと思います。主要4 駅7 路線が、大体300m以内に入っているため、一番遠い路線同士でも2 ~ 3 分あれば乗換可能です。確か、梅田駅は7 駅10 路線ありますが、一番離れている路線間では乗換に10 分くらい要すると思います」(中之坊 健介氏)
ただ、ターミナルとして乗降客数自体は多いが、乗客を留めるための機能が少なかった。そのため乗換駅でしかなかったという悩みが続いていたという。
「もちろん商業施設が全くないわけではありません。しかし、まだまだ魅力が足りない。オフィスビルに至ってはその存在自体が非常に少ないエリアです。それならばオフィスの機能を備えた複合ビルをつくることで、商業も活性化でき、ポテンシャルが上がるのではないかと考えたのです」
梅田エリアのオフィスの供給量はおよそ45万坪。それに比べて「あべの・天王寺」エリア内のオフィスの供給床は3万坪程度のため大量に床面積が新規供給されるといっても全く問題はない。
「オフィス需要に関しては、「キタ」からの移転はあまり考えていません。大阪東南部や奈良、和歌山といったエリアで事業をしている企業を対象にしたいですね。また、大阪はモノづくりの街ですからメーカーが多い。その中で工場をアジア圏に移したため、本社機能だけをロケーションの良いところに求めている企業なども対象になるでしょう。」(米田氏)
立地を活かしたテナント戦略歴史と学校が新しいランドマークをつくる
「あべのハルカス」。ハルカスとは、「晴れ晴れとさせる」を意味する古語で、「晴るかす」からきている。「晴るかす」の言葉は万葉集でも使われており、まさに寺社仏閣が多い歴史の街「あべの・天王寺」にふさわしいネーミングである。
あらためて地図を見ると「あべの・天王寺」エリアは、寺院のほかに学校が多いことがわかる。聞くと大阪市内で一番学校が多いのが天王寺区、次いで多いのが阿倍野区だという。学生や若年層が多いというのは大きな地域特性の一つと言える。
「トータルで1,000 坪くらいですが、4 校の大学のサテライト教室の入居が決定しています。竣工前の段階で契約ができたのは、学校が多い立地というのが関係しているように思います。その用途は、入学説明会の対応や学生の就職活動の前線基地となる相談室などの使用を考えていただいています。そのほか社会人相手のセミナーなどの使い方を検討している大学もあります」(米田氏)