D-LIFEPLACE札幌

2022年10月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

エリアマネジメント組織との共創で
地域活性化への貢献を目指す

札幌市を代表するメインストリートで進行している大規模再開発「D-LIFEPLACE札幌」。この地で事業を行っていた「札幌第一生命ビルディング」の建替計画である。完成後は、「札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)」と接続させ、新たな賑わいや憩いの場を提供していくという。今回の取材では、開発事業主である第一生命保険株式会社とリーシングを担当する株式会社第一ビルディングの担当者にお話をお聞きした。

鈴木氏

第一生命保険株式会社
不動産部 不動産開発課
部長兼不動産開発課長

鈴木 雅登 氏

新井氏

第一生命保険株式会社
不動産部 不動産開発課
アシスタントマネジャー

新井 美央 氏

袴田氏

株式会社第一ビルディング
ビル事業部
ラインマネージャー

袴田 優 氏

安田氏

株式会社第一ビルディング
ビル事業部
リーダー

安田 伶 氏

札幌都心のメインストリートに立地していたオフィスビルの建替計画

札幌を代表するメインストリートである「札幌駅前通り」。その地で再開発プロジェクト「D-LIFEPLACE札幌」が進行している。同プロジェクトは「札幌第一生命ビルディング」の建替計画となる。

「札幌第一生命ビルディングは64年間にわたり入居企業や地域の発展を支えてきました。築年数が経っていることから、何度も建替の検討はしてきましたが、その時々の不動産をとりまく環境等から長らく実行できなかったプロジェクトです」(新井氏)

「当社は保険事業において地域社会への貢献は重要、かつ必要な要素の一つと考えています。全国展開を行う中でその拠点ごとに自社ビルを所有して地域の発展を支えてきました。地方都市に関しては大体が県庁所在地を拠点としているのですが、その中でも札幌オフィスは特段に好立地で。社内からも再開発を待ち望む声が多かったのです。ようやく再開発プロジェクトの実施となりました」(鈴木氏)

D-LIFEPLACE札幌 外観完成パース

D-LIFEPLACE札幌 外観完成パース

区画内には、2006年に建替を行った日本生命札幌ビルが立地している。そのタイミングで日本生命側との一体開発という選択肢もあったようだ。しかし少し前に大規模なリニューアル工事を完了していたこともあり、当時は現状のまま継続維持をするとの判断だった。

「旧ビルは9階建。印象的な広告看板を屋上に設置したシンボルタワー的な存在でした。本ビルは市の景観条例もあり広告看板は継承しませんが、地上13階建に規模を拡大して生まれ変わります」(新井氏)

同ビルの竣工は20235月を予定している。竣工後の大きな特徴の一つが、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)と接続されることだ。「チ・カ・ホ」は20113月に開通。以来、歩行者の安全性や快適性を提供してきた。現在、1日に約12万人が往来する札幌市内の大動脈となりつつある。

「旧ビルは、立地の良さはありましたが地下と接続していなかったため、孤立した印象がありました。本ビルの竣工後は、『チ・カ・ホ』とつながることで、来街者の方々の快適性に貢献できるわけですから、我々にも、街にも、プラスの方向に進むことができます」(鈴木氏)

開発コンセプトは地域に根ざした人々のQOL向上と持続可能な街づくり

同ビルの事業コンセプトは「地域に永く根ざした、人々のQOL向上と持続可能なまちづくり(快適・健康、脱炭素、強靭)への貢献」とした。

「サスティナブルな街づくりを提唱します。オープンスペースを創出させ、施設利用者や来街者、札幌市民の方々へ新たな賑わいの場を提供します。さらに、北海道の気候に合わせた建築デザインを通じて、高水準の環境・ウェルネス性能を確保します」(新井氏)

同ビルは「札幌駅前通北街区地区 地区計画」に新設された容積率緩和ルールを適用した最初期の開発案件となる。

「容積率の緩和ルールにも関係するのですが、地域の皆様にビルの一部分を開放します。まさに地域に貢献したいと思っていましたので、ちょうどいいタイミングで我々向けの制度が出来たと思っています」(鈴木氏)

そうして地下1階地上13階建、最高高さ約60m、基準階1フロア面積約280坪、延床面積約4,800坪の新築ビルが誕生することとなる。特徴の一つであるオープンスペースについて説明をしておこう。

「『チ・カ・ホ』と接続し、誰もが利用できるオープンスペースをつくります。街の賑わいを考えたとき、一般的にはビルエントランスの前面部分に広場をつくるというやり方が多いでしょう。しかし我々は地下との連続となる広場をつくることにしました」(新井氏)

札幌は1年の半分近くが雪で覆われる。四季を通じて快適に歩行できるように「チ・カ・ホ」が誕生した。であれば地下空間と連携することが相応しいと考えたという。

「そして事業コンセプトであるQOLの向上を考えたときに、どうすれば地域の皆様にとって生活の質を高められるのか。それを議論する中でオープンスペースというアイデアが生まれたのです」(新井氏)

オープンスペース 内観イメージ 札幌駅前通側より

オープンスペース 内観イメージ 札幌駅前通側より

オープンスペース 内観イメージ B1階レベル

オープンスペース 内観イメージ B1階レベル

「オープンスペース部分は貸室としても成立させることができましたが、本開発の目的の一つは地域貢献にあります。単に『貸床』として考えることはしなかったですね」(鈴木氏)

なお、同スペースは災害時において帰宅困難者の受け入れ場所としても活用される。収容人数は約100名。72時間の非常用電源の使用も可能だ。これらの計画で、札幌市が目指す強靭な地域づくりにも寄与していく。

市内でも希少な高水準の環境性能とウェルネス性能を確保した

もう一つの特徴が、北海道の気候に適する建築デザインと通じた高水準の環境・ウェルネス性能を確保した点だ。

「北海道は、冬期において屋内から屋外への熱のロスを抑制することが環境性能向上の評価基準となります。本ビルでは、高層階の窓は開口面積を抑えつつ、快適な居室環境(自然光・眺望)を確保する縦スリット型の形状としました」(鈴木氏)

「縦スリット型の形状とすることで、熱不可を抑え、省エネへも配慮します。『ZEB-Ready』『BELS★★★★★』の認証を取得し、『CASBEE-スマートウェルネスオフィス(Sランク)』も認証申請予定です。これらは北海道という気候の中ではなかなか達成が難しいとされていますが、何とかクリアできそうです」(新井氏)

「当社は『RE100』加盟企業として再生可能エネルギー由来の電力調達に向けての取り組みを行っており、D-LIFEPLACE札幌についても調達を検討しています。そうすることでテナント企業の皆様のニーズに応えていきます」(鈴木氏)

「リーシングをしていく中で、各企業の皆様の再生可能エネルギーへの関心が上がってきているように感じます。そのため、今後はそうした取り組みを行っているビルが優先して選ばれていくようになると考えております。各企業の皆様も、そういった取り組みを行っているビルに入居していることで、顧客アピールにつなげているようです」(安田氏)

多様な働き方に対応した設計で次世代の働き方をサポートする

同ビルの地下1階と1階は自然光や緑を感じさせるオープンスペースを配するため、店舗数も3区画に限定する。

基準階は3階から13階。1フロア約280坪。4分割対応で最小面積約37坪の使用も可能としている。天井高2,800mm、OAフロア100mm、床荷重300/㎡(ヘビーデューティゾーン500/㎡)、電気容量60VA/㎡、グリッド型システム天井、Low-Eペアガラスを採用。一般的な新築オフィスビルのスペックを備えている。

3~13階平面図

3~13階平面図

オフィス内観イメージ・主な仕様

オフィス内観イメージ・主な仕様

「外側の柱型が出ないようにダブルコラム外殻構造を採用して柱を感じさせない整形なフロアプレートを提供します」(新井氏)

「多様な働き方に対応できるように竹中工務店さんが構造計画を行いました。1階の意匠も柱を束ねることで光の通り道をつくりました。それによって生み出される大きな開口部から光を取り入れる設計になっています」(鈴木氏)

「夜間時は建物そのものをライトアップするのではなく、内部からの光でビルを演出するように考えています」(安田氏)

冬期夕景

冬期夕景

各基準階の共用部には、オープンな階段と一体となった明るく開放的なリフレッシュコーナーを設置する。カウンターやベンチなども配してワーカー同士のコミュニケーションの場をつくりだす。

「あえて特別な設備を構築するのではなく、階段と廊下の一体の空間をごく自然に活用して。居心地の良さだけでなく健康経営にも目を向けています」(新井氏)

「少ないスペースの中でいかに有効なスペースを取り入れられるか。わざわざリフレッシュコーナーに行くのではなく、通り道にあるのがポイントだと思っています」(鈴木氏)

共用部リフレッシュコーナーイメージ

共用部リフレッシュコーナーイメージ

持続的なパートナーシップで共創しながら地域に貢献していく

竣工後は、当社と設計施工者「株式会社竹中工務店」、地元エリアマネジメント組織「札幌駅前通まちづくり株式会社(以降、まち会社)」と共にパートナーシップを取りながら街づくりを継続的に行っていく。

まち会社は豊富な地域ネットワークを持つエリアマネジメント組織だ。今まで「チ・カ・ホ」や札幌駅前通りでイベント運営の実績を有している。

「ビルの竣工後はオープンスペースがあるだけではなく、パートナー同士のリソースを活かしながら多様な地域イベントを開催していく計画です」(鈴木氏)

「四季に合わせて多様な企画をしていきたいですね。継続的に何かを開催できるような運営スキームを確立させたいと思っています」(新井氏)

「ビルの魅力や立地のポテンシャルは十分にあります。それらの価値をより高められるようにマネジメントしていきます。家と会社の往復ではなく、寄り道をしたくなるような楽しそうなプランを考えて。それがプラスの価値につながればいいですね」(袴田氏)

「入居テナントの方々だけではなく、地域の方々にとってもご満足いただけるビルにしていきたいです」(安田氏)

「今までの札幌のオフィスビルには無かった斬新なデザインということもあり、竣工後の皆様の反応が楽しみですね」(新井氏)

「イベントも街を盛り上げる大事な要素だとは思いますが、それ以前に気軽に休憩したり、通り抜けたりして、自由に使ってもらいたいです。単なる便利な通路になってもいいと思っています。それもあっての街への貢献だと思っていますので」(鈴木氏)

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