エニシオ名駅

2023年3月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

地域を、街を、人を。「繋ぐ」をテーマに
先進技術で設計した次世代型オフィスビル

中部圏の中枢都市である「名古屋」。その名古屋を代表するビジネスエリア「名駅」で進行している再開発計画が「エニシオ名駅」だ。今回の取材では、開発計画の中心となった事業会社の担当の皆さまに開発コンセプトや特長的な部分についてお話をお聞きした。

岡村 賢哉 氏

大成建設株式会社
都市開発本部
開発事業部課長

岡村 賢哉 氏

内藤 誠 氏

名鉄都市開発株式会社
まちづくり事業本部まちづくり事業部
企画グループ長

内藤 誠 氏

齋藤 平 氏

オリックス不動産投資顧問株式会社
投資運用第三部 第1グループ

齋藤 平 氏

名古屋を代表するビジネスエリアで進行する
アクセス性の優れた大規模オフィスビル

中部地方の最大都市である「名古屋」。その名古屋の交通アクセスの起点となるのが名古屋駅となる。新幹線をはじめ、JR、私鉄、地下鉄などのさまざまな鉄道が乗り入れ、1日あたりの平均乗降客数は約111万人となっている(参照1)。将来的にはリニア中央新幹線が開業し、開業後は名古屋東京間が最速40分で結ばれる予定だ。

名古屋の利便性は鉄道だけに限ったことではない。年間約600万人超(参照2)が利用する中部国際空港へも30分圏内と良好なアクセスを誇る。

「名古屋を代表するビジネスエリアの一つが『名駅』です。名駅には、1999年にJR名古屋駅ビルと併設された『JRセントラルタワーズ』の開業以降、多くの大規模複合ビルが竣工しました。今では日本屈指の超高層ビルが集積したビジネスエリアを形成しています」(齋藤氏)

「その名駅の一角に『エニシオ名駅』が誕生します。縁(えにし)と繋がりの輪をイメージしたアルファベットの『O』。人・街・世界が有機的にリンクする新しいビジネスの創造を目指して名付けました」(内藤氏)

参照1:平成23年度都市交通年報
参照2:2022年度中部国際空港実績一覧

建物南側外観 完成予想図

建物南側外観 完成予想図

不動産証券化スキームを利用し、大規模再開発が始動した

同ビルの所在地は名古屋市中村区名駅4丁目。名古屋駅前に立地する高層ビル「ミッドランドスクエア豊田・毎日ビル」と「モード学園スパイラルタワーズ」に挟まれた区画である。

「本開発は2019年に大成建設、名古屋鉄道(現在は、名鉄都市開発)などが出資者となり特別目的会社(SPC)を設立し、再開発プロジェクトが始動したのです」(齋藤氏)

設計と施工は大成建設が担当し、20216月に着工。地下2階地上16階建の規模で、20238月の竣工を予定している。

開発地は、ビル群で構成された都市と人が暮らす街が交わる場所

「開発地は大規模な建物群で構成する『メガスケール(都市)』と柳橋中央市場などを中心とした『ヒューマンスケール(街)』の結節点となります」(齋藤氏)

「ビジネス街としての顔だけではなく、近隣には市場や昭和の風情が残る飲食街があります。異なる街並みの両者が見られるエリアです」(内藤氏)

名駅は縦横無尽に広がる地下街が有名である。地下街は多くの周辺ビルとも繋がる。同ビルも完成後は地下街と直結する予定で、天候の悪い日でも快適に通勤できるのが魅力となる。そして、「繋ぐ」のコンセプトは竣工後も継続されていく。

周辺環境との調和と解析技術、そして機能性と意匠性を実現する

ここでは同ビルのスペックや特長について説明していこう。一般的にオフィスビルの窓面は開口を大きくすることで「眺望」のさらなる確保を可能にする。しかし開口を大きくすると、不快に繋がる夏期の「日射量」が増えてしまうトレードオフの関係にある。同ビルでは、そんな両者のオフィスニーズを両立させるためにコンピュテーショナルデザインを導入した。コンピュテーショナルデザインとは、コンピュータシミュレーション等で、ある条件に対し解析、最適化を図る設計手法のことで、今回は計画建物の開口部に着目。

その大きさと角度を操作することで、「眺望」と「日射量」のコントロールを試みた。これによって「眺望の確保」と「窓周り空間の温熱環境の快適化」を両立させることが可能となる。さらに、周囲の建物との関係や、方位・階数によって開口部の大きさや角度に揺らぎのようなばらつきが生まれ、結果として「印象的な外観デザイン」を実現している。

コンピュテーショナルデザインによる外観 完成予想図

コンピュテーショナルデザインによる外観 完成予想図

「大成建設では近年『先端デザイン室|FDL』という部署を新設して、最先端のデータを活用した設計に力を入れています。今回の案件では、窓の形と腰壁の高さを10パターン、さらにそれぞれの組み合わせで約2万パターンについて、光の入り具合や眺望、日射量をシミュレーションして最適なバランスを模索しました」(岡村氏)

FDLFrontier Design Labの頭文字を取ったものだ。建築・都市の設計と計画・調査・研究・開発という2つの役割をこなすため、建築意匠・構造・環境・都市などの専門性を横断したメンバーで構成されている。

「本開発地における過去数年分もの日射量のデータを用い、さまざまな窓のパターンを用意して眺望と日射量のバランスを確認。窓の位置や向きによる最適な窓の形を建物全体で調整しました。その結果、窓面にわずかに角度をつける操作と開口部の大きさの調整をすることで建物全体の空調負荷低減に成功。より快適な内部環境を作り出しながら環境・エネルギー問題にも配慮した設計になりました」(岡村氏)

その他、全熱交換機を使用した換気システムを導入することで、約30分で室内の空気の入れ替えを可能に。加えて、外気を取り入れる換気装置も特長の一つである。

「コロナ禍の影響で換気に対する意識が高まってきました。それら多くの要望に応えるために手動で換気ができるようにしました。安全面も考えつつ、スライドスイッチ操作で簡単に行えるシステムを導入します」(岡村氏)

環境性能の面では、再生素材比率49%を達成し、製造過程でもCO₂排出量を最大61%削減した環境配慮型タイルカーペットを採用。「CASBEE名古屋 Aランク」を取得し、「ZEB Oriented」、「BELS ★★★★★」を取得予定。サステナブル対応型のオフィスビルとなる。

BCP対策としても、間柱型オイルダンパーを採用した制振構造、停電に対応する2回線受電方式の装備、共用部への約24時間の電源供給が可能な非常用発電機の設置、防災備蓄倉庫などの整備など、災害リスクにも正面から向き合う。

室内のオフィスづくりにも基本にこだわった。基準階貸室面積約250坪。最小約30坪から最大4分割での利用が可能で、1フロア14分割の空調制御ができる。天井高2,800mm、OAフロア100mm、コンセント電気容量60VA/㎡、最大床荷重500Kg/㎡など、職場環境を整備する。各階にワークブースを2ヵ所設置し、短時間の集中作業やWeb会議等のニーズに応える。

また、全館LED照明や高性能Low-E複層ガラスを採用、EV車対応急速充電設備を完備することで、エコ環境にも寄与していく。

平面図

平面図

制振構造

制振構造

地域を繋ぎ、人を繋ぐ。開発コンセプトを意識した設計となった

「新たな賑わいの創出」を実現させるために、パブリック空間の設計へもこだわりを見せている。その最たるものが北側広場だ。

「ここは駅方面からビルに訪れる際に最初に視界に入る場所となります。ですからインパクトを考えて、あえて築山のある広場としました」(齋藤氏)。

平坦な地に植栽やオブジェを置くのではなく、あくまでも視線やビジネスパーソンのリフレッシュ効果を考えた環境とした。完成後は、芝生に座って昼食を取るなど日常的な利用の他、イベントスペースとしての活用も検討している。この広場はテナント利用者だけではなく近隣の方々も自由に使える場所となる。

北側広場 完成予想図

北側広場 完成予想図

「計画当初は公開空地にすることも検討したのですが、制度上の条件と建築設計の兼ね合いを考えて断念しました。その点、今回はビル側の自由度が高いので、より幅広い活用を可能にしています」(内藤氏)

「スクランブル交差点で信号待ちをする方や、ビルのエレベーターを待つ方へ視認性を高めるのが狙いでもあります。竣工後は、テナント企業の皆さまと一緒にイベントを企画したり、キッチンカーを呼んだりと、今からさまざまなアイデアが出ています」(齋藤氏)

地域に根ざし、寄りそっていくスタイルは北側メインエントランスの空間設計にも見られる。壁の一部に愛知県産の木材を使用したデザイン壁を設置し、壁の下に設けた坪庭には愛知県出身の硯作家・彫刻家、名倉達了(なぐら・たつのり)氏が手掛けたアート作品が展示される。

「エントランスホールは回廊風の空間ですから、通行する人を飽きさせないものにしたいと考えました。水の循環をメインイメージに、さまざまな種類の石を素材として制作します。そして日常生活の中でささやかな変化やゆったりとした時の流れに思いを馳せる時間を提供したいと計画しました」(岡村氏)

北側エントランスホール 完成予想図

北側エントランスホール 完成予想図

エントランス接続部 完成予想図

エントランス接続部 完成予想図

良好な立地を活かしながら、ビルの魅力を最大限に伝えていく

コロナ禍の影響でオフィス面積が全体的に縮小傾向になっている背景も考え、最小約30坪から分割を可能とする。現在、業種は問わずベンチャー企業やスタートアップ企業からの引き合いや問い合わせが増えているという。

「誘致活動を進めていく中で、多くの企業の皆さまが興味を持たれるのが立地ですね。『名古屋駅から地下街で接続するオフィスビル』。やはりそこが一番の魅力になっていると感じています」(内藤氏)

交通アクセスが至便な立地で、動線がシンプル。そのうえ周辺環境も充実している。そのため、商業や店舗系の企業からも高い評価を得ている。竣工後も、周辺の商業・店舗とのシナジーを活発にし、近隣の方々も気軽に訪れる場所づくりを目指していくと語る。

「もちろんビルが完成してそれで終わりではありません。竣工後も同ビルのテーマは一貫して『繋ぐ』を想定しています。縁を繋ぎ、地域を繋ぐようなエリアマネジメントを展開していく方針です」(齋藤氏)

「このビルから新たな賑わいを発信させたいですね。北側広場を活用して、同ビルが名駅における賑わいと憩いの空間となることを目指していきます」(内藤氏)

※開発中のため掲載の内容及び仕様設備等は、今後変更となる可能性があります

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