中之島フェスティバルタワー・ウエスト

2015年11月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

構想10年、"水都"大阪・中之島に文化・情報発信の拠点となるツインタワーを建設

株式会社朝日ビルディングは2007年4月、「中之島を文化・情報発信の一大拠点に」を開発コンセプトに、歴史ある音楽の殿堂・フェスティバルホールを含むビル3棟の跡地にツインタワーを建設する「大阪中之島プロジェクト」をスタートした。同プロジェクトの進捗と今後についてお話を伺った。

清水 直隆氏

株式会社朝日ビルディング
営業部 営業セクション
マネジャー

清水 直隆氏

田能村 明氏

株式会社朝日ビルディング
PM事業部
建設監理セクション
マネジャー

田能村 明氏

三木 直哉氏

株式会社朝日ビルディング
営業部 営業セクション
サブマネジャー

三木 直哉氏

フェスティバルシティ全景イメージ

フェスティバルシティ全景イメージ

歴史ある音楽の殿堂の名を冠したフェスティバルシティ

江戸時代には諸藩の蔵屋敷が建ち並び、経済の中核を担った大阪・中之島。"水都"の名の由来となった旧淀川が、南北2つの流れに分かれた間に位置する東西に細長い中州である。現在は大阪市中央公会堂や国立国際美術館などの文化施設が充実し、大企業のオフィスやホテルなども集積する一大ビジネス・文化ゾーンとして根強い人気を誇る。かつて新朝日ビル内にあったフェスティバルホールは、そんな中之島を代表する文化施設の一つであった。
株式会社朝日ビルディングは現在、「中之島を文化・情報発信の一大拠点に」を開発コンセプトとする再開発プロジェクト(事業主:朝日新聞社、朝日ビルディング、竹中工務店)を進行中だ。同プロジェクトは、老朽化した新朝日ビル・朝日新聞ビル・大阪朝日ビルを取り壊し、その跡地に超高層ツインタワーで構成される「フェスティバルシティ」を築く、大規模都市再開発計画である。

1958年の開業から半世紀にわたり、日本中の音楽ファンから愛され続けてきたフェスティバルホールは、「天井から音が降ってくる」といわれる独特の音響特性を持つ日本有数の音楽の殿堂だ。
カラヤン率いるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ国内外の数多くのアーティストが集い、このホールから生まれた名演奏は数知れない。それ故に、2007年4月に初めてツインタワー構想が発表されたとき、この伝統あるフェスティバルホールの存続は最大の焦点となったという。

「『フェスティバルホールを壊すのは、カーネギーホールを壊すのと同じだ』と訴えるアーティストの声もありました。私たちとしては、そんなふうに仰っていただく皆様の声に可能な限りお応えするため、フェスティバルホールを後世に伝えていくことを念頭に置いて計画に取り組んで参りました」(清水直隆氏)

そこで、最新のシミュレーション技術を駆使してフェスティバルホールの音響特性を継承しつつ、現代にマッチした超一流のホールとして再生するという使命に取り組んだのである。

「新しいホールは、数々の難題をすべて解決し、旧ホールのイメージを損なうことなく、新たな音楽の殿堂を再生させなければなりませんでした。それに加えて、『中之島フェスティバルタワー』はホールの上にオフィス棟を載せる特殊な形状となるため、技術的には非常に困難な工事になりました」(田能村明氏)

メガトラスなど数々の技術により、ホールと1棟目のタワーが完成

「中之島フェスティバルタワー」の中で、新ホールは4階から7階までを2700席の客席が占め、この部分は柱のない大空間となっている。この上に、20階分以上のオフィス棟を積み上げ、安全に支えなければならない。

この難関をクリアしたのが、メガトラスと呼ばれる構造物だ。メガトラスは通常の鉄骨用鋼材の約1.5倍の強度を持ち、東京スカイツリーにも採用されているSA440という鋼材で造られ、13階床から15階床までの高さ約20mを貫く、計24本のブレースと水平材を組み合わせたものである。これにより、15階以上の高層階の重力を受け、下層の外周部に流しているという。さらに、建物外周には1本当たり6000トンの長期荷重を支持する大臣柱という太い柱を16本設けて、メガトラスに集まった巨大な力を支えるようにしている。

「また、ホールなどの低層部の内外装には合計22万個のレンガを使用しています。レンガは安全性を確認するために実物大のモデルで実験を重ね、熟練した10人程度の職人が一つひとつ手作業で積み上げています。このほか、南側のホール壁面には、旧ホールのシンボルだった『牧神、音楽を楽しむの図』と題する巨大な信楽焼のレリーフも再現しています」(三木直哉氏)

こうして2010年1月に着工した先行開発「中之島フェスティバルタワー」は、旧ホールの再生に伴う難題に一つひとつ取り組みながら、2012年10月に予定通り竣工。翌2013年4月には、新生「フェスティバルホール」が開業を迎えた。

「新ホールの開業に先立つ2013年1月には、ツインタワーの2棟目となる『中之島フェスティバルタワー・ウエスト』の建設計画を発表いたしました。翌2014年7月に着工、2017年春の完成を目指して、現在着々と工事が進められております」(清水氏)

低層階イメージ

低層階イメージ

2棟目のタワーもまもなく竣工し、ツインタワーが完成する

「フェスティバルシティ」の計画地は、中之島のほぼ中心に位置し、地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」と京阪中之島線「渡辺橋駅」に地下道で直結されることになる。いずれも大阪のビジネスエリアの大動脈であり、主要オフィス街へのアクセスに便利な交通の要所といえる。

JR大阪駅および梅田周辺までも徒歩圏で、「大阪随一のビジネスゾーン」と称するだけの説得力を持っている。先に竣工した「中之島フェスティバルタワー」は、低層階にフェスティバルホールを擁する独特の構造ながら、オフィスフロアとして15階から36階までの22フロアを有している。一方、「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」は、地上41階、地下4階のうち、6階から31階までの26フロアがオフィスフロアとなる。

「4階の多目的ホールや6階の貸会議室などの共用施設はもちろん、33階から40階までを使用するラグジュアリーホテルは、国内外からの観光客や出張者の皆様のご宿泊にも対応しています。そのほか、テナント様のビジネスをトータルにサポートするさまざまな施設が充実しています」(三木氏)

フロア断面図
フロア断面図

南側鳥瞰イメージ

南側鳥瞰イメージ

ワンフロア820坪の完全無柱空間と、高い快適性の実現

「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」では、一般的なオフィスよりワンランク上の快適性を追求している。オフィスフロアは、テナントによるオフィスレイアウトの自由度を保証する完全無柱空間。フロアの隅々まで一望することができ、近年多くの企業が取り組んでいる「風通しの良いオフィス」の構築が可能だ。ワンフロアの面積は820坪で、これも関西最大級のスケールである。しかも、天井高は3mと余裕のある設計で、オフィスワーカーにストレスを感じさせないつくりになっている。

「地下通路で繋がる『中之島フェスティバルタワー』と共通でテナント様が利用可能なアメニティ施設としては、貸会議室やカンファレンスルーム、多目的ホール、レストランやカフェテリア、さらには美術館や医療モール、保育所などを完備しております。また、商業ゾーン『フェスティバルプラザ』は現在約30店舗が営業中ですが、『中之島フェスティバルタワー・ウエスト』の竣工時には、2棟合わせて約50店舗となる予定です」(清水氏)

また、省CO2推進モデル事業として、LED照明と照度センサーの導入、水辺の立地を活かした河川水利用冷暖房システムの採用、ランニングコストの低減策にもなる持ち時間制の空調スケジュールが可能など、環境面にもさまざまな配慮がなされ、これらの工夫によって、同規模のビルと比較してCO2年間排出40%減を実現している。

中層階平面図

中層階平面図

50年先、100年先を見据えたオフィス環境を目指す

1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災。そして、今後想定される南海トラフ地震―大規模災害はいつ発生するか、まったく予測できない。それだけに、あらゆる事態を想定した万全の備えが必要だ。

「中之島フェスティバルタワー」では、その構造ゆえにホールとオフィスの境界(SRC造からS造に構造が切り替わる部分)に免震層を設置するという「中間免震構造」が採用された。これに対して、比較的シンプルな構造の「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」では、「スーパー制振構造」を採用。各フロアのコアにはブレースと制振ダンパーを設置した上で、最下層部にダンパーを集中させた制振層を設けている。この制振層が地震のエネルギーを吸収し、上部の揺れを軽減する仕組みである。これにより、阪神・淡路大震災級の震度7の地震動でも主要機能を維持でき、国内最高水準の耐震性能を示す「Sグレード」(日建設計基準)を実現している。

「さらに、『中之島フェスティバルタワー・ウエスト』では、災害時には重油利用で72時間、中圧ガス利用で7日間連続の電力供給が可能なデュアルフューエル型非常用発電機を設置します。『中之島フェスティバルタワー』についても、将来的に72時間対応を予定しています。また、オフィステナント全員分の防災備蓄を3日分ビル側で確保し、BCP対応力においても関西トップクラスの基準を満たしております」(田能村氏)

こうした一連の安心・安全への取り組みにより、50年先、100年先を見据えた最新のオフィス環境を目指している。

建物概要

階数

地上41階・地下4階

敷地面積

約8,400㎡

延べ面積

約150,000㎡

高さ

約200m

構造

S造・SRC造・RC造

駐車場

約265台

駐輪場

約200台

貸室概要

基準階1フロア

2,710㎡(820坪)

天井高

3,000㎜

OAフロア

100㎜

床荷重

500kg/㎡・1,000kg/㎡(ヘビーデューティゾーン)

コンセント容量

60VA/㎡(増設可)

照明

600㎜×600㎜ グリッド天井LED照明
昼光利用・照度センサーおよび初期照度補正機能付自動調光システム(750lx)

空調

小型分散空調機(テナントごと1フロア20台、40ゾーン)
Webによる空調温度・運転時間設定

セキュリティ

非接触ICカードによる入退室管理

※記載内容は2015年11月取材時のもので、今後、変更になる場合があります。

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