うめきた2期地区開発プロジェクト
グラングリーン大阪

2022年10月取材

この記事をダウンロード

※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

大阪・梅田の駅前に広大な緑を整備した
次世代のビジネスエリアが誕生する

大阪・梅田エリアで進行中のうめきた2期地区開発プロジェクト「グラングリーン大阪」。「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」というまちづくり方針の理念を踏まえ、次世代のビジネスエリアの創出を目指す。今回の取材では開発事業主として名を連ねる三菱地所株式会社の担当者にお話を伺った。

土田 拓郎 氏

三菱地所株式会社 関西支店
開発第2ユニット
リーシング担当 主事

土田 拓郎 氏

丸山 愛斗 氏

三菱地所株式会社 関西支店
開発第2ユニット
リーシング担当

丸山 愛斗 氏

和田 毬奈 氏

三菱地所株式会社 関西支店
うめきた開発推進室

和田 毬奈 氏

西日本最大級のターミナルで世界とつながる新しい街が形成される

うめきた再開発はJR大阪駅北側に位置していた梅田貨物駅跡地で展開する大規模プロジェクトだ。総面積は約24haJR大阪駅をはじめ715路線(2023年春時点)が利用できる西日本最大級の交通利便性を誇るエリアである。

さらに、世界主要都市との移動起点となる国際空港とのアクセス性にも優れている。今後もインバウンド需要の増加、大阪万博をはじめとする経済の活性化に寄与できる開発として大きな期待がかかる。

その、うめきたの先行開発区域として2013年にオープンしたのが「グランフロント大阪」である。

南街区オフィスタワー

南街区オフィスタワー

「グランフロント大阪は20134月に開業しました。地区面積約7haの中に、南館(タワーA)と北館(タワーBC)、分譲住宅棟であるオーナーズタワーが配置されています。新しい産業や文化を紡ぐ『知的創造の場』をコンセプトに新たなビジネスやライフスタイルを提供してきました」(土田氏)

うめきた地区開発の沿革

  • 1987年 国鉄改革に伴い梅田貨物駅用地を国鉄清算事業団へ承継
  • 2003年 大阪市が「大阪駅北地区全体構想」を策定
  • 2004年 大阪駅北地区まちづくり推進協議会設立
  • 2006年 先行開発区域都市計画決定
  • 2010年 先行開発区域ABCブロック建物建築着工
  • 2011年 うめきた2期区域都市計画決定
  • 2013年 先行開発区域「グランフロント大阪」まちびらき
  • 2015年 「うめきた2期区域まちづくりの方針」決定
    UR都市機構 Webサイト参照

2期では、「みどり」と「イノベーション」の
融合による豊かな未来生活を目指す

2015年、うめきた2期のまちづくり方針の理念が「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」と決まった。

「その理念をベースにした事業コンペが実施され、2018年に当社含めたJV9社が開発事業者として選定されました。グランフロント大阪を開業した先行開発区域に続くプロジェクトとして、2期地区開発となるグラングリーン大阪を全く別の開発にするのではなく、うめきた全体で一つのブランディングが完成するようなプロジェクトにしていきます」(和田氏)

グラングリーン大阪の地区面積は約9ha。北街区と南街区の間に約4.5haの広大な都市公園が配置される。北街区には新産業創出・産官学交流を促しイノベーションの創出を目指す中核機能やライフスタイルホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」を配置し、隣接するグランフロント大阪のナレッジキャピタルと連携し知的創造拠点を形成する。南街区にオフィス(西棟・東棟)のほか、都市型スパを含む商業施設やMICE施設、スーパーラグジュアリーホテル「ウォルドーフ・アストリア大阪」など多彩な機能で構成する。

「グラングリーン大阪の一番の特長は大規模ターミナル駅直結の都市公園としては世界最大級の規模となる『(仮称)うめきた公園』です。今まで、ターミナル駅前の一等地の新規開発は大規模ビルが集積するものと考えられてきました。今回は、その固定概念を見事に覆す開発になります」(土田氏)

グラングリーン大阪の中核機能として、産・官・学・市民が一体となって共創可能な施設がつくられる予定だ。コワーキングスペースや交流スペース、SOHOなどを整備する。

「新しい製品や技術に触れられるミュージアムや健康に関するプログラムを体験できる施設、企業活動など多目的に利用できるスペースを揃えます」(丸山氏)

北街区はグランフロント大阪ともデッキで接続する。南街区もJR大阪駅(新駅)とデッキでつなぎ、エリア全体の回遊性を高める。

「グランフロント大阪も竣工当時は新たな街づくりとして注目を集めましたが、グラングリーン大阪はそれ以上に進化した街の形成が求められています」(土田氏)

「世界的なランドスケープアーキテクトGGNがランドスケープデザイン全体をリードし、民間宅地を含めた敷地全体を「みどり」の大地と捉えて計画しています。公園には、最大高さ約3mの盛り土を行うことで奥行きや立体感のある空間を創り出します」(和田氏)

公園内には、「うめきたの森」「ステッププラザ」「リフレクション広場」といった多様な空間で、利用者に心地良さを提供する。公園全体には大阪の桜の新名所をつくるほか、古来より親しまれてきた樹木や花類を植栽。年間を通して日本の四季の美しさを演出していく。

グラングリーン大阪全景

グラングリーン大阪全景

南街区に竣工する2棟のオフィスビルで多様化するワーカーのニーズに応える

オフィスは東棟・西棟の2棟。南街区に竣工する。東棟オフィスは5階から17階。下階の3階と4階は都市型スパが入居する。東棟オフィスの1フロア面積は約480坪。整形無柱空間で最大5分割が可能。フレキシブルなオフィスレイアウトが実現可能だ。

「東棟のオフィスロビーは、ホスピタリティーが高く、落ち着きや気品が感じられる空間とします。眺望も公園を一望でき、駅からのアクセスも良好で来客が多いビジネスに適しています」(土田氏)

東棟平面図

東棟平面図

東棟2階のオフィスロビー

東棟2階のオフィスロビー

西棟は6階から27階がオフィスフロアとなる。1フロア面積は約1,250坪だ。

「西棟のオフィスロビーは、目の前に広がる公園と一体となった緑あふれる吹き抜け空間となります。オフィスフロアは関西最大級の広大なフロアプレートで、多種多様な企業や働き方に合わせた多彩なワークプレイスを提供します」(丸山氏)

3階にはワーカーの仕事・育児の両立、早期の職場復帰をサポートするための子育て支援施設を設置します。多様なワークスタイルを受け入れ、ここで働くワーカーのQOL向上も目指します」(土田氏)

西棟平面図

西棟平面図

4階にはMICE施設を整備。1,000人以上のイベント開催も可能なイベントホールを備える。その他、さまざまなワークスタイルに対応するオフィスラウンジが用意される。

「緑豊かなカフェラウンジとテラス、公園を一望できる開放的なダイニングラウンジを用意します。カフェラウンジにつながるテラスは約700㎡を予定しています。入居テナントの皆様にビル内でのABWを実践していただけるスペースとして活用いただきたいですね。公園も含めてワークプレイス環境です。それらは、将来的な多様なワークシーンを見据えて計画しています」(和田氏)

西棟4階テラス

西棟4階テラス

オフィスから見える都市公園

オフィスから見える都市公園

ラウンジに隣接したスペースには、ワーカー専用のワークスペースを配置。ソロブースも用意し、多様なワークシーンに対応する。

「グラングリーン大阪ならではの働き方。それはターミナル駅直結の立地で、広大な都市公園とそこに集まる多彩な機能を享受できることで実現します。オフィスは働くだけの空間ではありません。また、公園は憩うだけが目的ではありません。互いがシナジーを生み出し、新たな発想を創出する。そんな空間がうめきたには広がります」(丸山氏)

そして西棟上層は、「ウォルドーフ・アストリア大阪」が入居する。同社がスーパーラグジュアリーと位置付けるホテルだ。

「今後のインバウンド需要を考えて、今まで大阪にはなかった超高級ホテルを誘致しました」(和田氏)

さらに巨大なフードマーケットの出店も決定している。

「日本初進出のフードマーケット『Time out Market』が出店します。多種多様な料理で世界の食や文化が楽しめる空間となります。市民、商業利用者、ワーカー、観光客、それぞれの方に利用していただくことで、街の賑わいに貢献できるものになるでしょう」(和田氏)

JR大阪駅からつながるデッキ

JR大阪駅からつながるデッキ

イメージ Time out Market フードマーケット

イメージ Time out Market フードマーケット

SDGsやBCPへの取り組みで安心で安全な街づくりを目指す

SDGsも積極的に行う。プロジェクト全体でSDGs17の目標のうち12項目に貢献していく。令和3年度国交省サステナブル建築物等先導事業にも採択された。たとえば公園では、緑や池など豊かな自然物による蒸発散がもたらす微気象調整効果、グリーンインフラ技術を駆使した内水氾濫抑制、雨水の再利用などによる上水利用の低減といった水資源の循環や生物多様性への配慮など、さまざまなアプローチで環境問題に対応する。

また、帯水層蓄熱、下水熱・地中熱利用・地域冷暖房などを導入する。そのどれもが最先端の環境技術や資源循環インフラを活用したものだ。

「開発事業主が一体となってアイデアを出し合い、色々なことにチャレンジしています。バイオガス発電もその一つです」(和田氏)

これらの施策により、標準の建物と比較してCO₂排出量を35%ほど削減可能だという。

BCP対策としては制振構造を採用。対象とする揺れ(地震・風)および荷重レベルに応じて適切な制振装置を選択する。災害時の停電に備えてコージェネレーションや非常用発電機を装備。専用部でも72時間の電力供給を可能にする。

「地域に根づいた街づくりを推進するために帰宅困難者の一時受け入れも行います。ビルの一部を滞在スペースとして開放し、備蓄倉庫などの機能も備えます。また、公園内にはマンホールトイレなども配備する予定です」(和田氏)

竣工後の運営も事業者が担当することで
テナントや市民、来街者のQOLを高めていく

グラングリーン大阪の完成によって、多くの雇用創出にも貢献する。

「グランフロント大阪の竣工後は毎年延べ5,000万人以上の方が訪れるようになりました。グラングリーン大阪の完成後はそれ以上の来街者数になるはずです。また、オフィスの貸室総面積が約34,000坪ですので、就業者数は約11,000人と想定しています。それだけの人が集まるわけですから賑わいに加えて多くの雇用が生まれることになります」(和田氏)

「オフィスの他に店舗やホテルでの就業を考えると、それ以上の雇用を生み出すことになります」(丸山氏)

「公園内の大屋根施設を中心とした『リフレクション広場』では、1万人規模のイベントが可能です。そうした場を利用した情報発信をしながら、市民や来街者のQOLを向上させ、街全体の価値を高めていきたいです」(和田氏)

「竣工後もプログラムの体験や利用者の反応を見ながら、新しいことにチャレンジしていきたいと思います」(土田氏)

この記事をダウンロード