博多FDビジネスセンター

2022年10月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

福岡の新たなビジネスエリアに誕生する
快適性をコンセプトにした大規模オフィスビル

福岡県博多市「呉服町」で進行している大規模開発が「博多FDビジネスセンター」だ。世界的な建築デザイン会社が手掛ける意匠、入居企業の快適性と健康に配慮した大規模オフィスビルとなる。今回の取材では、主体事業主である福岡地所株式会社の開発担当および営業担当の二人に開発コンセプトや開発全体の概要をお聞きした。

荻野 裕矢 氏

福岡地所株式会社
開発事業二部

荻野 裕矢 氏

玉手 啓介 氏

福岡地所株式会社
賃貸事業一部

玉手 啓介 氏

福岡を代表するビジネスエリアの中間点で進行する大規模再開発

福岡の代表的なオフィスエリアである「博多」と「天神」。各エリアとも福岡市主導で、多くの都市再開発・整備プロジェクトが進行している。

博多の「博多コネクティッド」計画は、2019年から実施されているもので福岡市博多区・博多駅周辺の都市開発計画の総称である。九州の玄関口「博多駅」の活力と賑わいをさらに周囲につなげていくことを目的としている。

福岡では「天神ビッグバン」が進行する。この計画は天神エリアがアジアの拠点都市としての役割となるように街の機能を高め、新たな空間と雇用を創出させることを目指すものだ。2015年から開始し、20225月末時点で竣工棟数は50棟となっている。(参照:福岡市ホームページ)

その二大ビジネスエリアの中間点となる「呉服町エリア」で進められている大規模再開発が「博多FDビジネスセンター」となる。

建物外観

          建物外観

同社は、「福岡第一ビル」を取得し、この場所に新しいオフィスビルの開発を検討していた。計画を進める中で第一生命保険株式会社が保有する「福岡MDビル」との共同事業となることが決定。正式に両ビルの建て替えが決まり、2018年から計画への着手が始まった。

「福岡市内には、『昭和通り』『明治通り』『大博通り』という3つの幹線道路があります。道幅も広く車が多いのは昭和通りですが、オフィスビルが立ち並んでいるのは明治通りとなります。本開発は、その明治通りに面した好立地で進められています」(玉手氏)

「博多にも天神にも容易にアクセスができる。これだけの好立地でありながら、今まで呉服町エリアには大規模なオフィスビルはありませんでした。ですから希少価値の高い開発になると考えています」(荻野氏)

幹線道路が通るエリアではあるが、一本裏通りに入ると歴史を感じさせる観光的な旧市街地となる。区画整備事業を行ったのは豊臣秀吉といわれており、町がきれいな碁盤の目状に配置されている。街並みの整備後は商業政策を導入して商業地としてのエリアを築いた。それが現在まで継続されている。

「このエリアには古くからの製薬会社や問屋が集積しています。また、エリアを代表する観光名所『聖福寺』は日本で最初の禅寺といわれています」(玉手氏)

「高速道路にも近い立地ということもあり、全国的に展開している企業の支店ニーズとして発展してきたエリアでもあります。飲食店なども充実しているので、就業者にとって働きやすいエリアといえるのではないでしょうか」(玉手氏)

「このエリアに無かったものをつくる」。
クリスタルをイメージした象徴的なデザイン

同ビルの規模は地上12階建。延床面積は約6,590坪となる。竣工は20232月末だ。

2階の1フロア面積は約298坪ですが、上層階にいくほどフロア面積が広くなるという特長的なデザインとなっています。したがって1フロアの最大の面積は最上階である12階。面積は約475坪です。ここまでの広さを持つオフィスビルの新規供給は、呉服町エリアでは久しくありませんでした」(玉手氏)

ガラスカーテンウォールを波形に並べ、クリスタルをイメージさせる。外観デザインにもこだわる。

「当社が、同開発で目指したのは『このエリアに無かったものをつくる』という強い思いでした。そこで、国際的な建築デザイン会社であるシュミット・ハマー・ラッセン・アーキテクツに建築デザインを依頼しました。デンマーク王立図書館をはじめ、世界中で多くの実績を持つ会社です。今まで呉服町は落ち着いた街のイメージを持っていました。この開発一つで、大きくイメージが変わるかもしれません」(荻野氏)

同ビルのデザインの実現には「総合設計制度」を採用している。総合設計制度とは、土地の有効利用を図り、あわせて敷地内に公開空地を確保することで容積率制限や高さ制限、斜線制限などを緩和する制度のことである。

「ビルの前面に公開空地を設ける予定ですが、片側の壁を斜めにして徐々に大きくしていくことで、空地を効果的に使えるように意識しました。景観的な圧迫感もありません」(荻野氏)

入居者が心地良く安心して働ける高品質なオフィス環境を実現する

以下の断面図のように特長的な設計である。

断面図

断面図

「各フロアは8区画に分割できます。フロアごとの最小面積も変わるのですが、約30坪での使用も可能です。入居者の多様なニーズに応え、柔軟な面積提案を行っています」(玉手氏)

オフィスフロアは、基準階の天井高2,800mmOAフロア100mm、スラブ床耐荷重が一般荷重ゾーンで500kg/㎡(ヘビーデューティーゾーン1,000kg/㎡)。窓ガラスには優れた遮熱性と断熱性で省エネを実現するLow-eペアガラスを採用。照明は全館LED、とハイグレードオフィスビルと同様のスペックを揃えた。

その他、入居者が安心・安全に働くために多くのスペックを備えていることも同ビルの特長といえる。

12階平面図

      12階平面図

「例えば、感染症対策に繋がる換気・除菌の取り組みです。専有部内の空調機にはフィルターに捕らえられた有害物質を分解・除去する『ストリーマ除菌ユニット』を搭載しています。また、換気システムとして機械換気システムに加えて利用者の方が自由に開閉できる自然換気口をサッシ下部に設置しました」(荻野氏)

オフィススペックイメージ

オフィススペックイメージ

「『機械換気+自然換気』は、当社の物件ではじめて採用する設備です。基本設計が終わるタイミングが新型コロナウイルスの発生と重なったため、機能を追加しました。一人あたりの換気風量は法定換気量の1.75倍である35/hを確保していて、快適なオフィス空間が提供できます」(玉手氏)

5基のエレベーターには、利用者の行先階をIDカードから読み取り誘導するエレナビを採用。共有部の非接触化を図るとともに、エレベーターの渋滞解消も実現します。さらにビル1階にはフラッパーゲートを設置して部外者の不正侵入を防ぎます。福岡市内でフラッパーゲートを付けているオフィスビルはまだ多くありませんので、テナント企業の方々には魅力のある機能といえるかもしれません」(荻野氏)

そして非常時での備えも万全だ。耐震性能はオイルダンパーによる付加制震を採用し、建築基準法で定められた耐震基準の1.25倍の強度を確保する。

「さらに変電所事故を想定して、本線のほかに予備電源線を確保する異変電所2回線受電を採用します。屋上には非常用発電機が設置できるスペースも用意しており、万が一の停電時にも企業活動を止めることなく約24時間の電力供給を行うことができます」(荻野氏)

「帰宅困難者の受け入れ先の指定はされておりませんが、入居テナントの安心・安全を考え、1階と2階には防災備蓄倉庫を設置します」(玉手氏)

異変電所2回線受電

異変電所2回線受電

ウェルビーイングやエコロジーにも配慮する

同ビルは、「CASBEE Wellness Office」のSランクを取得し、「DBJ Green Building★★★★」の取得を見込んでいる。「CASBEE Wellness Office」とは、建物利用者の健康性と快適性の維持・増進を支援する建物を評価する認定制度。対して「DBJ Green Building認証」は、環境・社会への配慮がなされた不動産を支援する認定制度だ。

「福祉条例の基準を満たしながら、多様性やSDGsに対応したビルの設計を行いました。CASBEE Wellness Office Sランクは、福岡市内で竣工する賃貸オフィスビルで初の取得となります」(荻野氏)

ビル1階のエントランスホールは、温かみを感じさせるデザインで構成します。加えて、100%自然素材のアロマがほのかに香る、入居者・来訪者にとっての居心地の良さを提供する。

1階エントランスホール

1階エントランスホール

「入居者の健康を促進する取り組みとして約120台の駐輪スペースを確保しました。またエレベーターホールからアクセスのしやすい場所に屋内階段を設置し、階段利用も促していきます」(玉手氏)

他にも入居者が快適に過ごせるように、緑あふれる外部空間、各階に配置したバリアフリートイレ、ピクトグラムを採用した館内サインをはじめとするユニバーサルデザインなど、さまざまな設備を整えている。そして、SDGsについても、「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」の項目での貢献を意識して取り組んでいく。

「福岡全体を盛り上げたい」という思いを込めたプロジェクトとなる

「竣工後のマネジメントは、社内のプロパティマネジメントの部署やグループ会社が担当します。『ビルを開発・所有するだけでなく運営も行う』というのが我々の基本方針です。マーケットを知っていることで、入居テナントの皆様からの具体的なご相談にも対応できるのが強みです」(玉手氏)

同プロジェクトは「福岡全体を盛り上げたい」という強い思いが根底にあるという。

「同ビルの竣工で少なくとも1,000人程度の就業者が増えることになります。ビル周囲の飲食店も今以上に利用されるでしょう。エリア全体の賑わいにもつながると思っています」(荻野氏)

「このエリアは天神と博多をつなぐエリアです。街の賑わいを創出させることはこの地に根ざして活動をしてきた当社の役割だと思っています。これからも開発を通じて福岡全体を盛り上げていきたいですね」(玉手氏)

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