Hareza Tower

2018年11月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「誰もが輝く劇場都市」をコンセプトにビジネス拠点が誕生する

豊島区役所は2015年5月、東池袋の旧庁舎を閉鎖し南池袋に建設した新庁舎へ移転する。移転完了後、旧庁舎と関連施設は解体され、民間企業による跡地再開発事業が開始された。旧庁舎跡地に建つ地上33階建のオフィス棟を中心に「Hareza池袋」について事業者の皆様からお話を伺った。

半田 士昌 氏

東京建物株式会社
都市開発事業部
事業開発グループ 課長

半田 士昌 氏

遠藤 智久 氏

東京建物株式会社
ビル営業推進部
課長代理

遠藤 智久 氏

小川 耕平 氏

株式会社サンケイビル
ビル事業グループ
資産開発部 チーフ

小川 耕平 氏

君塚 潤一 氏

株式会社サンケイビル
ビル事業グループ
東京ビル営業二部
マネジャー

君塚 潤一 氏

「国際アート・カルチャー都市」を目指す豊島区の旧庁舎跡地再開発

豊島区池袋エリアは、1958年に新宿・渋谷とともに都心の業務機能の分散を目的に三大副都心に指定され、日本有数の商業地として発展してきた。その中心である池袋駅は、山手線・埼京線・湘南新宿ラインなどのJR各線に加え、東武東上線・西武池袋線、さらに東京メトロ丸の内線・有楽町線・副都心線といった路線が乗り入れ、1日平均の乗降客数は約260万人(2017年度)となる。JR線では新宿駅に次ぐ第2位、東京メトロでは第1位となり、世界でもトップクラスに位置づけられる巨大ターミナルである。

一方で、日本創成会議の人口減少問題検討分科会が発表した「消滅可能性都市」(少子化による人口減少で将来の存続が危ぶまれる自治体)で、豊島区は東京23区中で唯一選定されてしまった。これは、20~39歳の女性人口の減少率の予測であるが、この出来事が豊島区の区政に与えた影響は小さくなかったようだ。

「若い女性にとって魅力のない街だといわれたようなものですから、危機感を覚えたのでしょう。これを一つのきっかけとして、豊島区は『女性に優しい街づくり』を掲げ、としまF1会議の立上げや国家戦略特区の指定を受けるなど、積極的に街づくりに取り組むようになってきました」(半田士昌氏)

ちょうどこの時期、豊島区では旧庁舎の老朽化に伴い、全国自治体で初の試みとなる「民間高層マンションとの一体型再開発事業」による新庁舎を南池袋に建設した。新庁舎への移転後、旧庁舎および隣接する豊島公会堂・区民センター・分庁舎などを解体。跡地を一体的に再開発する。具体的なプランは官民一体で推進していくことになった。

2014年末、東京建物、サンケイビル、鹿島建設の3社はコンソーシアムを結成し、2015年1月に豊島区の主催するコンペに提案書を提出する。開発のコンセプトは「誰もが輝く劇場都市」。これが同年3月に正式選定された。

同計画地の名称は一般公募による5千件超の応募から「Hareza(ハレザ)池袋」に決定する。Harezaとは「ハレ(=晴れ)の座」であり、『特別な場所』を表す「ハレ」と『多くの人が集まる場所・劇場』を意味する「座」を合わせた造語。豊島区では「国際アート・カルチャー都市」を目指すという区政方針のシンボルとして、東京オリンピック・パラリンピックが開催する2020年の完成を予定している。

「サンケイビルは、フジサンケイグループというメディアグループに属するデベロッパーとして、グループ各社と連携し賑わい創出をバックアップしていきます。具体的には、グループのポニーキャニオンが運営するライブハウスの出店が決まっております。その他、豊島区旧庁舎、旧公会堂の建物解体イベントとして「としまミュージアム」を開催しました。今後も、グループ各社と連携し、Hareza池袋を盛り上げていきたいと考えております」(小川耕平氏)

池袋のポテンシャルに改めて注目が集まる

「Hareza池袋」は「オフィス棟」と「ホール棟」、「としま区民センター」の3棟の建物と、隣接する中池袋公園によって構成される。オフィス棟の正式名称は「Hareza Tower」と決まった。同ビルは地上33階、地下2階、最高高さ約158mの大規模オフィスビルとなる。

「池袋に新規供給が少なかったのは、まとまった開発用地の確保が困難だったからです。デベロッパー各社は用地取得の関係で品川や汐留、豊洲、あるいは丸の内や六本木、日本橋などの再開発を優先してきたという事情がありました」(半田氏)

しかし、近年はこれらのエリアの再開発もすでに飽和状態となりつつあり、新たなエリアを模索する動きが出てきた。そうした中で、本計画は乗降客数第2位のターミナルである池袋駅近くの大規模再開発ということで改めて注目が集まっているという。

「オフィス需要は間違いなくあります。ただ、企業にとって池袋というエリアは商業地のイメージがあまりにも強すぎました。私たちがリーシング活動を行っていく中で、まず池袋の歴史や街の説明を求められることも少なくありません。そこで、『新築ビルを売り込む』というより、まず、池袋というエリアを紹介していくという形のリーシングアピールに変えました。実際、単なるビルの紹介よりも、今後池袋がどのように変わっていくか、インフラの整備や再開発によって生じる人の流れのなどのお話をすると非常に興味を持っていただくことがわかりました」(遠藤智久氏)

そこで働く人にとって、ビルの中で過ごす時間だけがすべてではない。当然、周辺環境も重要になる。計画地は池袋駅から徒歩4分。近隣には飲食店や物販、金融機関なども多く、ビジネスに居住に便利なインフラが揃っている。

「これだけの大規模な開発になりますので、最終的には池袋という街の魅力を一緒につくりあげていきましょうと。そんな趣旨にご賛同いただける企業様も増えてきています。そうした時流の高まりを、私たちとしてもバックアップしていきたいと考えております」(君塚潤一氏)

エリア内に8つの劇場を展開。日本最大級のハロウィンイベントも

東京建物とサンケイビルが共同で設立した一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメントは、豊島区や地元の町会と連携して協議会を立ち上げ、「Hareza池袋」の運営とエリア内の賑わいの創出に取り組むことになる。「国際アート・カルチャー都市」「誰もが輝く劇場都市」といったコンセプトの通り、「Hareza池袋」の3棟の建物には合計8つの劇場が開設され、多様なプログラムが上演されるという。(写真:商業イメージ)

「Hareza Tower」の2階から6階までの5フロアは、TOHOシネマズが運営するシネコンプレックス『TOHOシネマズ池袋(仮称)』の入居が決定している。同シネコンは10スクリーン、約1,700席を持つ施設で、8つの劇場の一つだ。また、新ホール棟1階ライブ劇場部分にはフジサンケイグループのポニーキャニオンの出店が決まっている。また、同ホール棟1階サテライトスタジオ部分には、『ニコニコ動画』などのエンターテインメントコンテンツを展開するドワンゴの出店も決まっている。

このTOHOシネマズ、ポニーキャニオン、ドワンゴの3社は、事業責任者である東京建物・サンケイビルとともに、2017年、2018年と2年連続して、池袋駅東口エリア全体を使った日本最大級のコスプレイベントである「池袋ハロウィンコスプレフェス」と連携。建設現場および隣接する中池袋公園を舞台とした「Hareza 池袋」ハロウィンイベントを実施した。このイベントは豊島区が2014年から毎年開催している10月の風物詩で、2018年には来場者数10万5,000人と大きな盛り上がりを見せている。

全体イメージ

全体イメージ / Hareza Tower イメージ


地域を代表するランドマークとしてテナントにさまざまなメリットを提供

豊島区での大規模新規供給は数年前までは皆無で、この周辺でオフィス開設を考えていた企業にとっては、今回の再開発は待ち望まれるものとなる。

また豊島区では、池袋駅の東西南北に位置する公園整備を進めており、これらは地域住民やオフィスワーカーの癒しの空間として、また非常時の防災拠点として機能する公共施設として完成されつつある。従来の池袋の街といえば、雑然としたイメージも確かにあった。だが現在進行形で変わりつつある。

「若い人たちだけでなく、老若男女あらゆる年齢層、さらには海外からも多様な人が集まる街というのが現在の池袋の姿です。そんな池袋らしい多様な業種の企業が集まれば、さらなる相乗効果が生まれます。あの『Hareza Tower』にある会社、ということで企業の採用戦略にも有利にできると思います」(半田氏)

「エリアの環境も整備され、今後、池袋には『Hareza Tower』があるといわれるような存在にしていきたいと考えております。ビルを建てて終わり、テナントが入居して終わり、ではなく、入居後も一緒になって街を盛り上げていけるような形に持っていきたい。さらにいえば、『Hareza Tower』内のテナントだけでなく、周辺のビルに入居している企業の皆様とも協力して、地域全体で池袋の街の成熟を目指していく方針です」(君塚氏)

「Hareza Tower」の7階がオフィスロビー、8階から32階がオフィスフロアとなる。池袋エリアでは希少な1フロア面積約500坪と広大なスケールメリットを有している。

「エリア内からの需要だけでなく、エリア外からの流入需要も多く見込まれています。テナントの皆様の多様なニーズに対応すべく、たとえば、専有部に社員食堂を設ける場合には給排水・排気ダクトを設置するとか、複数フロアを使用される場合には内階段を設けるなど、フレキシブルな仕様変更が可能となっています」(君塚氏)

このほか、ビルの共用部には、入居企業の従業員であれば誰でも自由に使用できる支援施設を設置する計画も構想中だという。

商業イメージ

商業イメージ


断面図

断面図


武蔵野台地の堅牢な地盤を活かし、安全で快適な環境づくりに取り組む

多くの企業が注目しているのが、ビルの安全性となる。特に2011年の東日本大震災以降、防災性能やBCP機能に対する関心が高まりつつあり、近年頻発している自然災害の脅威と相まって、企業がオフィス立地を選定する上で重要なポイントとなっている。

「池袋は堅牢な武蔵野台地の地盤にあります。液状化リスクも低く、地震に対しての危険度が非常に低いという特長があります。また、湾岸部に比べて海抜も高く、仮に荒川の堤防が決壊したとしても洪水の影響はほとんど受けません。東京都の調査によれば、『Hareza Tower』のある東池袋1丁目地区は地震による建物倒壊危険度、火災危険度、災害時活動困難度および総合危険度において、災害危険度の最も低い『ランク1』に分類されています」(半田氏)

もちろん、ビル自体の耐震性能も高く、構造計算基準で定められた地震動の1.2 倍に耐える性能を確保している。さらに、世界初の振動エネルギー回生システムVERS(Vibration Energy Recovery System)を搭載した新世代制震オイルダンパーを採用。風揺れから震度7の巨大地震までカバーしている。近年都市部で増加しているゲリラ豪雨対策としても時間最大雨量210mmに耐え得る排水性能を確保するとともに、豊島区洪水ハザードマップ上の浸水深に対応する防潮板も設置する。

さらに、被災時の電力供給については信頼性の高い3回線同時受電スポットネットワーク(SNW)方式を採用しているほか、非常用発電機により共用部へは約72時間の電力供給が行われる。また、オプションでテナント専有部への電力供給(15VA/㎡×72時間)も可能であるほか、テナント自身が自社の専有部用に非常用発電機を設置できるスペースも確保している。

「安全性とともに求められるのが快適性の確保です。働き方改革の実現において、ビル内のオフィスワーカーが快適にストレスなく過ごせる環境は生産性向上のカギとなっています。そこで、1フロアに最大82ゾーン分割のきめ細かい個別空調を採用し、最大34台の加湿器を設置しています。これらの機能は、特に社内で過ごす時間の長いITエンジニアや寒暖に敏感な女性社員が多い企業などから関心が高く、高い評価をいただいております」(遠藤氏)

そのほか、天井高2,900mm、OAフロア100mm、600mm角のグリッドシステム天井と働きやすさを考えたスペックを揃える。加えて、全館LED照明を採用。明るさセンサーによる自動照度調整も可能としている。窓面はLow-Eペアガラスを使用し、日射遮熱・断熱効果を向上させる。屋上部には太陽光パネルの設置や雨水再利用システムの導入など、環境への配慮も十分に行う。

「ビルの竣工後、『Hareza 池袋』全体のグランドオープンは2020年の夏を予定しております。東京五輪開催直前の時期ということもあり、池袋は大いに盛り上がることは間違いありません」(君塚氏)

「アート、カルチャー、8つの劇場が一つに集まったビジネス空間は、他に類を見ません。『Hareza Tower』を中心に街が進化する。そして働き方も進化する。今後も地域の皆様との協力の中、池袋の進化に寄与できればと思います」(遠藤氏)

基準階平面図

基準階平面図


パークプラザイメージ

パークプラザイメージ

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