ONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)

2023年9月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

天神中心部に誕生するランドマークで
街のさらなる賑わいに貢献する

九州最大級の商業地でもあり、主要ビジネス街の顔を持つ「天神」エリア。その地では、現在も多くの再開発計画が進行している。その中の1棟が、「ONE FUKUOKA BLDG.」だ。同ビルは、近接の大規模商業ビルとの一体開発となる。今回の取材では、プロジェクトの背景や開発コンセプト、将来的なエリアビジョンなどを伺った。

田川 友理恵 氏

西日本鉄道株式会社
天神開発本部 福ビル街区開発部

田川 友理恵 氏

天神は創造的なビジネス街と九州一の商業エリアが交じり合った場所

アジアの国々とのアクセスに優れ、九州を代表する国際都市「福岡市」。2014年に国際戦略特区として指定。その後、「グローバル創業・雇用創出特区」として、創業支援や雇用創出に取り組んできた。その福岡市の中心となるエリアが「天神」である。総務省の調査『物価が安く住みやすい街』では、トップに選ばれたこともある。そして、福岡市地下鉄空港線で福岡空港から11分、博多駅からはわずか5分と利便性も高く、九州最大級の商業エリアとなっている。

その賑わいの理由には、福岡を代表するメインストリート「明治通り」と「渡辺通り」が縦横に伸びていることも関係していると語る。

「どちらかといえば、『明治通り』はオフィスビルが立ち並ぶビジネス街。『渡辺通り』は物販や飲食といった商業施設が中心になっています。異なる要素を兼ね備えることで、さまざまなニーズの人たちが訪れる街を形成してきました。そして、それを要因に街全体の創造性を高めてきたのです」

天神では、福岡市が主導する「天神ビッグバン」によって、多くの再開発が進行している。天神ビッグバンとは、天神エリアがアジアの国々の拠点としての役割を果たせるように、街の機能を高め、新たな空間と雇用を創出することを目的としたプロジェクトのこと。2015年からスタートし、20233月末時点での竣工棟数は52棟となっている。(参照:福岡市ホームページ)

注目度の高い大規模な一体開発で天神の賑わいに貢献できると考えた

「明治通り」と「渡辺通り」が交差する立地が「ONE FUKUOKA BLDG.」の開発地となる。「天神ビッグバン」の中心に位置し、敷地面積約2,600坪の大規模再開発プロジェクトだ。西日本鉄道株式会社が事業主となる。

「本プロジェクトは、『天神ビッグバン』によって生まれた計画と思われがちですが、実はその構想は2008年頃から始まっていました。立地していた福岡ビルはかなり築年数が経過していた物件です。その安全性を含めて、今後のビルのあり方についての検討が行われていました。その検討を進めている中で、『天神ビッグバン』構想が発表されて。建て替え計画の追い風になったのです」

もともと、福岡空港と距離が近いエリアでの建築物は、航空法によって高さ制限が設けられていた。

天神交差点側 外観イメージ

天神交差点側 外観イメージ

「しかし、福岡市が主導する「天神ビッグバン」では、その高さ制限が大きく緩和されることになったのです。当時の福岡ビルの高さは50mでしたが、建て替え後は97m。約2倍の高さでの開発が認められました」

それから同社の計画が一気に加速をつける。1棟だけの開発ではなく、近接の「天神コア」「天神第一名店ビル」も合わせた一体開発となった。

「両ビルとも1970年代半ばに建てられた商業施設です。長い期間にわたって天神の若者文化や商業を支えてきました。『天神コア』は当社が保有していたファッションビルでしたが、『天神第一名店ビル』は所有者が異なります。一体開発へ向けての調整には時間を要しましたが、202112月に工事の着工を始めることができました」

計画がまとまる前はさまざまな企画案があったという。

「収益性や管理面だけをみると、オフィスビルに特化した機能の方が望ましいと考える案もありました。しかし、『街づくり=天神らしさ』と考えたときに、多種多様な要素を持つ大規模複合ビルの開発が適しているという結論になりました」

同プロジェクトの開発コンセプトは「創造交差点 meets different ideas」。「アジアと福岡」「働きと暮らし」「来街者とワーカー」。この地にさまざまな交差点をつくる。そんな強い思いが込められている。

「天神を訪れる人々を常にワクワク・ドキドキさせ、新しい価値を生み出し続ける場所にする。それは『交じり合う』に優れたこの立地ならではコンセプトだと思っています」

国際コンペで生まれた特長的な外観。まさに福岡の新たなシンボルとなる

外装デザインは国際コンペの結果、米国の大手建築設計事務所「Kohn Pedersen Fox AssociatesKPF)」が選ばれた。国際的に高い評価を受けているデザイン設計会社で、機能の最適化や環境を意識したデザインに定評がある。今回のKPFからのデザインコンセプトには、3つのテーマがある。

一つ目は「アーバンルーフ」。建物を包む大きな屋根は、さまざまな用途を内包するONE FUKUOKA BLDG.の象徴である。デザインモチーフの日本の伝統的な格子柄は西鉄グループを象徴する電車のレールや鉄の素材感をイメージさせている。二つ目は「アーバングリッド」。低層階にあえて凹凸をつくり、さまざまな要素が交じり合う様子を視覚的に表現する。そして三つ目が「アーバンオアシス」。緑化による憩いの空間を低層部で可視化することで賑わいを創出する。

「幅約100×奥行約80mの圧倒的な規模感とこれらのデザインが組み合わさることで、新たなランドマークが誕生するのです」

渡辺通側 外観イメージ

渡辺通側 外観イメージ

多様な機能を揃え、快適な働く環境を提供する

ここからは各フロアの紹介をしておこう。

「地下2階~地上5階は賑わいのある大規模商業ゾーンとなります。ここにしかない業態の店舗や地域一番の旗艦店を取り揃えるほか、食の都福岡の魅力を最大限に生かしたフードゾーンを展開する予定です」

1階商業イメージ

1階商業イメージ

67階にはスカイロビーを設ける。そこは開発コンセプトである「創造交差点」の魅力を最も発揮するエリアとなる。ここからさまざまなヒト・モノ・情報が交わる空間を提供する。

6階のテーマは『開放的な交流空間と緑豊かなビジネス発信の場』。パブリックスペース、カンファレンス、バンケットといった開放的な交流空間を設けます。ここから新たなビジネスが発信できる場になればと思っています。7階のテーマは『創造的で健康的なビジネス環境』。世界トップクラスのイノベーションキャンパスの運営者であるCICと共同で、サービスオフィス、コワーキング、会議室などの設備が揃うイノベーションキャンパスを開設する予定です。そのほか、フィットネスジムを設置して、ワーカーの健康面をサポートします。これは今までのオフィスビルにはあまりなかった機能といえるでしょう」

コワ1階商業イメージ ーキングスペースイメージ

コワーキングスペースイメージ

817階がオフィスゾーンとなる。1フロア面積1,400坪は、西日本最大級の広さを誇る。広いだけではなく8区画の分割も可能に。最小面積は約130坪。入居するテナントニーズに合わせた対応を行う。

「本社ニーズにも、統合ニーズにも、営業所ニーズにも応えていきます。複数階を利用するお客様は内部階段の設置も可能です」

天井高は3,000mm。OAフロア1,000mm、床荷重500/㎡(ヘビーデューティゾーン1,000/㎡)、コンセント容量60VA/㎡。自動調色・調光付きのLED照明など、国内最高水準のスペックで執務空間を構成している。また、設計途中で「感染症対応シティ」に向けた安全・安心なビルへ計画変更を行ったため、感染症対策も万全だ。

基準階平面図

基準階平面図

「自然換気を可能にするダブルスキンを導入しました。常時、窓を開けた換気ができます。また、ダブルスキンは2枚のサッシ間に設けた空気層でつくられているため、断熱性や省エネ効果にも高い効果を発揮します。さらに非接触エレベーターシステムを採用しました。これはセキュリティゲートと連動させ、その通過時に自動で行き先階を判別するものです」

1819階にはハイクオリティなライフスタイルホテルを誘致する。福岡市街を一望できるルーフトップバーやレストランなど、商談にも、宿泊自体も楽しめるコンテンツを揃えていくという。

ダブルスキンイメージ

ダブルスキンイメージ

19階ホテルイメージ

19階ホテルイメージ

BCP対応や環境配慮も実現。ワーカーに安全・安心な空間を提供する

BCP対応や環境性能にも触れておこう。BCP面では最先端の制震装置を導入する。

「免震構造と同等の制振効果を発揮する高性能制震システムを採用しています。また、平常時でも3回線受電で電力を供給し、災害時でもガス+重油での発電が可能ですので安心した事業継続をお約束します」

環境面では、環境に配慮した設備導入によるCO₂の削減を実現するとともに、各種評価制度を取得する。具体的には、「DBJ Green Building認証★5ランク(プラン認証)」だ。これは「国内トップクラスの『環境・社会への配慮』がなされた建物」として評価を受けている。その他、「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」で最高クラスの5つ星、オフィスフロアでは「ZEB Ready」や「LEED GOLD」予備認証を取得している。

地域に寄り添ったエリアマネジメントで福岡全体を盛り上げていく

「ビルの竣工後もエリア全体のマネジメントを行っていきます。当社は、『天神明治通り街づくり協議会(MDC)』という官民連携の組織と街づくりをサポートしています。MDC2008年に設立し、その目的は『天神をアジアで最も創造的なビジネス街とする』ことです。今後も、MDCの会長会社として継続的に安心できる賑わいの街づくり実現のために尽力していきます」

加えて、ソフトな部分での街づくりを目的とした「We Love 天神協議会」という組織への参画も行っている。

「これは、天神の街づくり活動のために『オープンカフェの運営』『ベビーカーの貸し出し』『エリアの清掃活動』といった、人に優しい快適環境の形成を行っています」

今後も同社は、ハード、ソフトの両面から街づくりのアプローチをしていく。

「当ビルには緑を多用した公開空地を複数設ける予定です。まだ計画の段階ですが、ベンチを設けた休憩スペース、モニュメントによる待ち合わせ場所、イベントによる賑わいの場。そうしたバリエーションを持たせながら、街全体の賑わいに貢献していきたいと思っています」

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