(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画

2023年9月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

札幌大通地区に誕生するランドマークが、
地域を活気づける起爆剤となる

札幌市有数の繁華街である大通地区。その交差点の一角で大規模再開発「(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画」が進行している。同開発は、この地で若者文化を牽引していたファッションビル「4丁目プラザ(4pla)」跡地での開発事業となる。今回の取材ではプロジェクトの背景やコンセプト、特長、将来的なマネジメントなどをお聞きした。

高橋 浩人 氏

鹿島建設株式会社
開発事業本部 事業部
課長代理

高橋 浩人 氏

小林 大祐 氏

鹿島建設株式会社
開発事業本部 事業部
札幌プロジェクト事務所
主任

小林 大祐 氏

民野 裕介 氏

鹿島建設株式会社
開発事業本部 事業部

民野 裕介 氏

村中 祥子 氏

鹿島建設株式会社
開発事業本部 事業部

村中 祥子 氏

若者文化を支えてきたファッションビルが
商業+高機能オフィスの複合ビルへと生まれ変わる

札幌市は、ライフスタイルの多様化や超高齢化社会の到来といった社会環境の変化に対応するために、2013年に「札幌市まちづくり戦略ビジョン」、2016年に「第2次札幌市都市計画マスタープラン(以下マスタープラン)」を策定している。マスタープランには「魅力的な都市の実現」を目的に、高い都市機能の集約や魅力ある都市空間の創出、エネルギーネットワークの形成などが記されている。その指針に基づいて、札幌都心部を「都心強化先導エリア」「都心商業エリア」「すすきのエリア」「創成イースト北エリア」「創成イースト南エリア」「大通公園西周辺エリア」と分類。地区ごとに異なる特性に合わせた街づくりの方向性を示した。

その中で、古くから商業を中心に発展してきたのが大通公園を中心とした「都心商業エリア」となる。

「市営路面電車の停留駅に面し、最寄駅である『大通』駅には札幌市営地下鉄南北線、東西線、東豊線の3線が乗り入れています」(高橋氏)

「南1西4スクランブル交差点(4丁目十字街)」に面したファッションビル「4丁目プラザビル(以下4pla)」は、先駆的な商業施設として多くの若者から支持を集めてきた。また、4plaの正面エントランス部分は、待ち合わせ場所としても利用され、年齢を問わず市民から愛着を持たれていたという。

4plaの竣工は1971年。ピーク時には110店舗のテナントを擁していたが、札幌市の調査で耐震強度を満たしていないことが判明。20221月に閉館した。

マスタープランでは、①質の高いオープンスペース整備 ②地区ごとのまちづくりルール策定 ③高機能オフィス整備 ④ハイグレードホテル整備 ⑤景観資源配慮 ⑥敷地外のまちづくり貢献 ⑦脱炭素化推進 ⑧防災性向上 ⑨交通施設整備による良好な歩行環境形成 ⑩重層的な回遊ネットワーク形成 ⑪既存建物活用、と評価軸を増やした。達成した評価項目の内容によって容積率ボーナスが加算される仕組みだ。鹿島建設株式会社は、新たな賑わいの創出を目指して同地にて「(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画」の開発に着手した。

開発コンセプトは「Sapporo 4th place」。
自由な価値観やライフスタイルを育む場の創出

「本プロジェクトは、『オール鹿島』で企画・開発・設計・施工を実施します。地下2階地上13階建、延床面積約5,700坪の大規模再開発計画で、20233月に着工しました。2025年春頃の竣工を予定しています」(小林氏)

「大通公園を中心としたエリアは、古くから多様な活動を受け入れてきた寛容さがあります。そして4plaは長年にわたって若者文化を牽引してきた商業施設です。本開発では、歴史を継承しながら札幌大通地区のランドマークを誕生させたいと考えました」(高橋氏)

同ビルの開発コンセプトは、「Sapporo 4th place ~自由な価値観・ライフスタイルを育む新しい活動の場へ~」。生活の場「1st place」、働く場「2nd Place」、交流・休憩の場「3rd place」を厳密に区分するのではなく、個人から企業まで自由な価値観・ライフスタイルを育める新しい活動の場「4th place」を創出する。

外観イメージ

外観イメージ

「『区分』の既成概念に捉われない、「公園のような場所」を目指しています。例えば、オフィスフロアの従業員が、商業フロアで仕事をしたって良い。商業の中心地に立地するビルとして、生活や仕事、趣味などで場所を分けるのではなく、街の活気に人が集まるということをポジティブに捉えて計画を進めています。おかげさまで、そんなコンセプトに共感していただけるお客様からの引き合いが増えてきました」(小林氏)

駅前通外観イメージ

駅前通外観イメージ

1階まちのリビング イメージ

1階まちのリビング イメージ

二つの表情を持つ外観デザインと自由な働き方を支えるフロア構成

外観デザインは緩やかな凹凸のある「プリーツ・ファサード」を採用した。

「見る方向により建物の表情に変化をもたらします。本計画地は札幌市第2次都心まちづくり計画における『都心商業エリア』だけでなく『都心強化先導エリア』にも含まれており、2つのエリアが重なる場所であることを意識しました。大通公園側からはガラス面を主体とし、透明感のある表情でビジネスエリアのイメージを醸し出します。そして、反対方向の狸小路側からは壁面とガラスのパターンにより、連続する街の賑わいを想起させます」(高橋氏)

それでは各フロアを見ていこう。地下1階~地上3階は商業施設となる。

「地下1階はさっぽろ地下街『ポールタウン』と接続させて利便性を高めます。地下鉄『大通』駅とも直結しますので、天候に左右されることなくアクセスできます。また、個性豊かな飲食店舗を誘致する予定で、新たな地下空間を誕生させます」(村中氏)

「フードホールのように一体的な空間で多種多様な飲食店舗を集めるアイデアもあります」(高橋氏)

1階と3階には、誰しもが気軽に過ごせるスペース「まちのリビング」を設ける。

1階の『まちのリビング』は札幌市電『西4丁目』駅の停留所前に設けますので、電車の待合場所として使っていただければと思います。そして待ち時間を少しでも楽しめるようにカフェを併設し、寒い冬でもくつろげる空間をつくります」(民野氏)

「地上1~2階部分の商業施設は、物販を中心とした店舗展開を予定しています。本エリアの主要道路である『南1条通』と『札幌駅前通』側に配置します」(村中氏)

4plaは若者をメインターゲットとしたテナント構成でしたが、本計画ではより幅広い年代の方に楽しんでもらえるような店舗誘致を進めています」(高橋氏)

3階の『まちのリビング』は商業エリアの一部分に設けます。木材や植栽の温かみを活かして気分転換やリラックスできる空間を生み出します。3階の外周は半屋外テラスとします。さまざまな使い方ができる空間を提供するとともに、交差点をイメージさせた賑わいを表現させます」(小林氏)

3階まちのリビング 北側イメージ

3階まちのリビング 北側イメージ

「完成イメージは開放的で公園に近いものになります。3階はオフィスフロアへのサブエントランスの役割もありますので、入居テナントの皆様がリフレッシュを兼ねてテラスで休むといった使い方もできます。『自由』『心地良さ』『緑』といったキーワードをコンセプトにしています」(村中氏)

3階まちのリビング 東側テラスイメージ

3階まちのリビング 東側テラスイメージ

3階まちのリビング 南側イメージ

3階まちのリビング 南側イメージ

「視認性が高く、アクセスしやすい抜群の立地ですので、施設に訪れた方々がそれぞれに自分に合った居場所を見つけていただければと思っています」(民野氏)

地上4階から最上階の13階までがオフィスフロアとなる。ハイスペックを求めるビジネスユーザーの期待に応えられるようなグレードの高いオフィス機能を提供する。

1フロア面積約300坪、延床面積約3,000坪と札幌大通地区では最大級のオフィスプレートを提供します。さまざまなビジネスニーズにお応えできるように最大7区画に分割可能です。その場合の最小面積は約27坪でご提供します」(民野氏)

 そのほか、天井高2,800mm、OAフロア100mm、床荷重500/㎡(ヘビーデューティゾーン800/㎡)、電気容量60VA/㎡、と標準以上のスペックを揃えている。

平面図 4-5階

平面図 4-5階

平面図 6-10階

平面図 6-10階

平面図 11-13階

平面図 11-13階

カーボンニュートラルに向けた環境配慮への取り組みとBCP対策で

「建築物省エネルギー性能の向上を目指し、オフィス執務室ではLED照明や昼光センサーによる適正な照明照度補正を行うほか、CO₂濃度による外気量自動制御機能などを有する高効率空調システムを導入します。また、オフィス外装には、開口部にLow-E複層ガラスを採用し、外気や日光の影響を受けやすい窓際スペースの熱負荷を低減します。これらの効果により、同水準の標準的な建物と比べて、一次エネルギーの年間消費量を50%以上削減が可能です。また、本ビルでは、オフィス部分を対象に『ZEB Ready認証』を取得しました」(民野氏)

そのほか、再生材カーペットの利用、緑化計画、節水型トイレの採用など、総合的に環境面の配慮を行う。

「既存地下躯体の一部利用や什器への道内木材利用など、建物計画におけるCO₂削減にも取り組んでいきます」(高橋氏)

同社ならではの取り組みは採用する工法にも表れている。

「建物の構造には、制震構造とともに鹿島式ストレート梁工法を採用します。それは鉄骨梁の耐力・変形性能を大幅に向上しつつ、柱際の設備設置スペースを確保できる工法です」(村中氏)

さらに施工にあたっては、鉄骨溶接工事に溶接ロボットを使用するなど、工事の自動化や機械化を可能にするという。

BCP対策としてはオフィス執務室などに連続72時間給電可能なビル用の非常用発電設備の設置や非常時の利用を考慮した受水槽・排水槽の容量確保を計画しています。加えて、大地震発生直後の建物被災状況を即時に把握し、建物内にいる方の避難要否を迅速かつ的確に判断できる建物安全度判定支援システム『q-NAVIGATORⓇ』を導入します」(村中氏)

竣工後は自由な価値観とライフスタイルを育む場を提供する

「開発コンセプトの通り、本計画はオフィスと商業の複合ビルであり、自由な価値観とライフスタイルを育む場の創出を目指します。現在、札幌都心部のビジネスの中心地となっている札幌駅前の雰囲気とは全く異なります。商業地としての立地を活かした当社ならではの開発にしていければと思っています」(小林氏)

「現在、札幌市と大通りまち会社と一緒に協議を進めています。今後は、近隣とも連携しながら計画を進め、街全体に貢献していければと思っています」(高橋氏)

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