(仮称)仙台駅東口オフィス

2019年10月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

街の活性化につなげる新たな「仙台の顔」を創出する

東北の玄関口であるJR仙台駅。その駅東口で駅直結となる大規模オフィスビルの開発が進行している。先進スペックを備えた同ビルの竣工予定は2020年度冬。完成後は地域イベントなどを定期的に開催し、街のにぎわいに寄与していくという。今回の取材では、その開発の背景やコンセプト、具体的な概要についてお聞きした。

清水 道雄 氏

仙台ターミナルビル株式会社
上席執行役員
ショッピングセンター事業本部
企画開発部 部長

清水 道雄 氏

加賀美 圭二 氏

仙台ターミナルビル株式会社
ショッピングセンター事業本部
企画開発部 担当部長

加賀美 圭二 氏

亀谷 健 氏

仙台ターミナルビル株式会社
ショッピングセンター事業本部
企画開発部
エリア事業推進グループ
マネージャー

亀谷 健 氏

外観全景

外観全景


仙台駅ステーションルネッサンスの最終ステージとなる開発

東北の玄関口であるJR仙台駅東口で進行している「(仮称)仙台駅東口オフィス」。事業主体は東日本旅客鉄道株式会社、運営は仙台ターミナルビル株式会社が担当する。同開発は、仙台駅東口で行われてきた一連のプロジェクトの最終ステージとなる。

「第Ⅰ期工事の完成は2016年3月でした。JR仙台駅東西自由通路にて、通行量の増加と通路の老朽化に伴った改修工事を実施し、通路幅員を6mから16mに拡幅しました。また同時開発として商業施設『エスパル仙台東館』を開業しました。続いて第Ⅱ期工事として、2017年6月に宿泊施設『ホテルメトロポリタン仙台イースト』の開業と『エスパル仙台東館』の増床を行いました。そして現在第Ⅲ期として工事が進んでいる『(仮称)仙台駅東口オフィス』は2020年度冬の竣工を予定しています」(清水氏)

ハイスペックなオフィスグレードでビジネスシーンをサポートする

同ビルは地下1階・地上13階建て。1フロア約430坪(1,415㎡)と仙台では久しい大規模オフィスビルの新築となる。ビルスペックも充実しており、天井高2,800mm、OAフロア100mm、床荷重は500㎏/㎡、ヘビーデューティゾーン800㎏/㎡を備えている。

1・2階には商業店舗を誘致する計画だ。2階にオフィスエントランスを設け、JR仙台駅東西自由通路と直結。天候が悪い時でも安心して入退館を可能とする。

「オフィステナントや周辺の皆様の利便性を考えると店舗部分には飲食店に入居いただくことがベストかと思っています。竣工までに東西間の回遊性が高まるような飲食店の誘致を慎重に進めていきます」(清水氏)

そして3階から最上階である13階までがオフィスフロアとなる。

「オフィス用エレベーターは乗用5基、非常用2基。フロア形状は整形の無柱空間のため自由度の高いオフィスレイアウトの構築が可能です。もちろんフロア単位ではなく分割での使用ニーズにも対応いたします」(亀谷氏)

「仙台市が取り組んでいる企業立地促進助成制度にソフトウェア業・デジタルコンテンツ業・データセンターを対象にしているものがあり、徐々にIT企業の進出が増えてきました。しかも市内には理系の専門学校が多いこともあり人材採用の面でもプラスの側面を持ちます。それにも関わらず今まではフロア面積の大きい、かつハイスペックを確保したオフィスビルの供給が十分でありませんでした。当ビルの存在は、間違いなく仙台の活性化につながるものと思っています」(清水氏)

基準階貸付平面図

東日本大震災の経験を生かして高い安全性とBCPを提供する

同ビルの特長は何といっても先進のBCP性能を備えているところにある。建築基準法の1.5倍に相当する制振構造を採用。東日本大震災クラスの地震が起きたとしてもほとんど被害を受けない設計となっている。

また、本線と予備電源の2回線受電方式を採用し、停電リスクを低減する。仮に予備線も喪失した場合でも、非常用発電機から各テナントへ72時間にわたって15VA/㎡の電力が供給可能だ。

「このスペックは都心のSクラスビルと比較しても遜色のないレベルだと自負しています。さらに環境面では省エネ性能に優れたLow-e複層ガラスを採用し、環境負荷低減に貢献します。加えて最適な明るさを自動調整する昼光センサー調光式LED照明の採用で、照明エネルギーの低減につなげます」(清水氏)

「セキュリティ面ではSuicaを使った入退室システムを導入します。普段使用しているSuicaがICカードとして利用できるため、実用的なオフィス環境の構築が可能です。また1階には防災センターを設置し、館内を24時間で監視。万が一のトラブルにも迅速に対応する体制を整えています」(清水氏)

一体感のある外観デザインで新たな「仙台の顔」を演出する

同ビルは、すでに完成している建物群と親和性の高い外観デザインを目指す。

「当開発は用途の異なる施設の集合体ではありますが、統一感を意識して新たな『仙台の顔』を演出します。今回、事業・運営主体が同じということで実現できました」(亀谷氏)

「各建物の2階部分は共有デッキで結びます。そして3階レベルで一体的に植栽による賑わいと癒しを生み出す予定です」(加賀美氏)

1階には吹き抜けのエントランスホールを設置。地域イベントを行う他、同ビルを訪れる方のためのフリースペースも設けるという。

「竣工後は、地域の方々と連携してさまざまなイベントを定期的に開催していく予定です。現在仙台駅西口でも定期的にイベントを行っていますが、どちらかといいますと物品販売を目的とした内容になっています。ですから西口とは違ったイベントやサービスを提供しなければと。イベントのキーワードは『集まる』『楽しめる』『文化を感じる』を考えています。そうしたイベントを含めて新たな『仙台の顔』を演出します」(加賀美氏)

吹き抜けのエントランスホール

吹き抜けのエントランスホール


竣工後は全施設を一体で管理。効果的なエリアマネジメントを展開する

「JR東日本グループは、首都圏において利便性の高いオフィスビルを開発・運営してきました。その経験やノウハウを仙台でも活かしてよりよいビル運営を目指していきます」(亀谷氏)

「一般的には一体の建物であっても用途が異なる場合、それぞれの得意分野の会社が各々で施設運営を行うものです。しかし当プロジェクトでは施設の全てを同社が一体で運営管理を行います。その目的は複数の建物を総合的にマネジメントし、駅周辺の価値をより上げていくこと。そして効果的なエリアマネジメントの展開を目指していきます。将来的には多種多様なビジネスシーンを支え、仙台市全体の街づくりに貢献していきたいですね」(清水氏)

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