都心東西再開発

2010年4月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

東京の西と東で進行する超大規模開発事業が目指す未来

世田谷区の二子玉川では駅の東側を中心に総敷地面積約11.2ヘクタールという東京でも屈指の複合再開発事業が進められている。第1期はそのうちの約8.1ヘクタールで、大型ショッピングセンターと5棟のマンション群、そして2010年12月には約6000坪の貸床面積を持つオフィスビルが誕生する。一方、墨田区の業平橋押上地区に建設中の東京スカイツリーは、最高高さ634メートルの自立式電波塔として2012年春の開業を目指す。そして業平橋駅と押上駅をつなぐ東西長さ約400m、広さ約3.7haにおよぶ敷地には、オフィスビルや商業施設などが建設され、駅と直結する巨大な複合施設が誕生する。それでは「東京で最後」ともいわれる2つの超大型開発プロジェクトの全容を紹介していこう。

東京の西と東に誕生する新しい名所がオフィス立地の常識を大きく変える

現在、東京急行電鉄二子玉川駅の周囲では二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(以下「二子玉川ライズ」)の第1期事業施行地区の工事が展開されている。東武鉄道伊勢崎線の業平橋駅と東武鉄道および京成電鉄、都営地下鉄、東京メトロの押上駅に隣接するエリアで進められているのが業平橋押上地区開発事業(以下「Rising East project」)だ。
この2大プロジェクトは、いくつかの面において共通点を持っている。

1. 鉄道会社が推進する開発事業

「二子玉川ライズ」は地元権利者の組織である二子玉川東地区市街地再開発組合が事業主体であり、東京急行電鉄及び東急不動産も組合員及び参加組合員として当再開発事業に参画している。その内容は、地下で駅の東西を結ぶ広大なショッピングセンターと駅直結のオフィス、さらには約1000戸のマンションが第1期工事で誕生するというものだ。
一方、「Rising East project」は、東武鉄道グループが自らの社有地に東京スカイツリーと商業施設、オフィスビルを建設するプロジェクトである。業平橋駅・押上駅の2駅4路線の利用が可能となる強力なターミナルが生まれる予定だ。
どちらも「駅」という資産の価値を最大限に活かした開発事業であり、利用者にとっても交通アクセスの利便性は重要な魅力である。

2.「オフィス立地」の常識を変える

これまで、両エリアともに大規模な賃貸オフィスビルはなく、ビジネスエリアとしての認知が無いに等しかった。しかし今回のプロジェクトでは「二子玉川ライズ」に約6000坪、「Rising East project」に約7600坪の貸室面積(オフィス部分のみ)を持つ大規模ビルが誕生する。「二子玉川ライズ」は渋谷まで11分、大手町でも26分と好アクセスを誇る。「Rising East project」も東京駅までわずか10分、新宿駅にも20分と、デスクからの移動時間であれば都心の駅から離れたビルよりも利便性は高い。

3.集客力のある名所としての強み

「二子玉川ライズ」は新たに約9600坪の売場面積を持つ「二子玉川ライズ ショッピングセンター」が2011年3月に開業する予定。広域エリアからの集客が期待されている。「Rising East project」は、世界屈指のランドマークとなる東京スカイツリーを中心とした「タワーのある街」づくりにより、間違いなく「東京で最も有名なエリア」になるはずだ。これからのオフィスは商業施設と一体化した複合開発が効果的であることを考えると、今回の2つのプロジェクトは成功が期待できそうだ。

地域に根ざした再開発事業として「まちの個性」をさらに伸ばしていく

この2つのプロジェクトは、それぞれ地域の特性を活かした「まちづくり」を進めることで、個性的な存在を目指そうとしている。
「二子玉川ライズ」周辺は、商業エリアとしての魅力を広げていくとともに「水と緑と光」をコンセプトにしたまちづくりをさらに進めていく。住宅地として人気があるのも多摩川を中心とした豊かな自然環境によるものだが、オフィスビルの窓からもそんな風景を楽しめるのは魅力だろう。さらに開発地の東側では、世田谷区によって約6.3ヘクタールもの公園を整備する計画もある。ある意味、これほど贅沢な「オフィス環境」はないだろう。
「Rising East project」は、浅草・両国・向島・錦糸町をはじめとした下町エリアに立地することから、商業施設のコンセプトの一つに「新・下町流」を掲げている。東京スカイツリーへの観光ターゲットに加えて、沿線・地域ターゲット、アーバンツーリズムターゲットに向けての開発を進めていく予定だ。「おでかけショッピング」をする人の層をターゲットに加えることで何度でも足を運んでいただける魅力ある施設づくりを目指している。
両開発ともに、敷地総面積、オフィス面積、商業施設面積のすべてにおいて、これほどの規模の開発プロジェクトはしばらくないだけに、完成が近づくにつれますます注目が集まりそうだ。

二子玉川ライズ オフィス

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業全景(完成予想CG) 二子玉川東地区第一種市街地再開発事業全景(完成予想CG) オフィスフロアとリバーサイドビュー (完成予想CG) オフィスフロアとリバーサイドビュー (完成予想CG)
所在地

(地番)東京都世田谷区玉川二丁目5000番2

構造

鉄骨造一部鉄筋コンクリート造

規模

地下2階・地上16階建
(オフィス区画:6階~16階)

敷地面積

13,416㎡ *Ⅰ-b街区全体

建築面積

11,070㎡ *Ⅰ-b街区全体

延床面積

約106,750㎡ *Ⅰ-b街区全体

施行者

二子玉川東地区市街地再開発組合

設計

株式会社アール・アイ・エー、
株式会社東急設計コンサルタント、
株式会社日本設計

施工

東急建設株式会社

竣工予定

2010年11月末

(仮称)ライジングイーストプロジェクトオフィスタワー

業平橋押上地区開発事業全景(完成予想CG) 業平橋押上地区開発事業全景(完成予想CG) 全体敷地配置(完成予想CG) 全体敷地配置(完成予想CG)
所在地

東京都墨田区押上一丁目

構造

鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(※オフィス部分)

規模

地下3階・地上31階建

敷地面積

36,844.39㎡

建築面積

31,832.56㎡

延床面積

229,410.30㎡

設計・監理

株式会社日建設計

施工

大林・株木・東武建設共同企業体( ※オフィス部分)

竣工予定

2011年12月末

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