豊洲フロント

2010年7月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ワンフロア1500坪超の大空間で多様な組織ニーズに応える
豊洲ビジネスエリアのシンボルとなる大規模オフィスビル

村井厚則氏

株式会社IHI
都市開発セクター
アセットマネジメント
グループ
部長

村井厚則氏

大野郁夫氏

三菱地所株式会社
豊洲開発推進室
室長

大野郁夫氏

「豊洲のIHI」が開発を手がける本社移転を可能にした広いオフィス

豊洲1~3丁目の再開発事業の中核となる株式会社IHIが、「大丸有」のプロジェクトなどで多くの実績のある三菱地所株式会社と共同で開発を進めてきたのが、大規模オフィスビル「豊洲フロント」だ。

「豊洲フロントが建つ3-1街区は、駅から直結する街の入口の一つとなるだけに、豊洲ビジネスエリアの新たなシンボルとなるビルを建てるつもりでした。規模の大きい事業ですから、オフィスを中心とした複合的な機能の街づくりで実績を持つ企業にご協力をいただかなければ質の高い開発はできません。経験豊富な三菱地所さんは心強いパートナーだと思っています」(株式会社IHI都市開発セクター アセットマネジメントグループ部長・村井厚則氏)

新築ビルの企画を始めたとき、最初に考えたのは、大手企業が本社を移転できるようなグレードの高いオフィスビルにすることだったという。

「再開発事業が始まった初期の段階でIHIは新しい本社ビルを豊洲に建てると発表し、実行しました。これは、自ら開発を手がけるエリアがオフィスに最適な立地であることを証明するためです。実際、私も現在、ここに通ってきていますが、交通の利便性に問題がないどころか、非常に便利な場所だと気づきました。だからこそ、もっと多くの企業に本社機能を置いていだだき、ビジネスエリアとしての認知度を高めていきたいのです」(村井氏)

そんな要望に対し、三菱地所のスタッフたちが出してきた答は、ワンフロア1500坪以上、幅約111メートルという広大なオフィス空間を実現するプランだった。

「最大でワンフロア645人を収容できる広さは、大手企業の本社オフィスとして魅力的な空間と言えます。通常、この広さになると奥行きが長くなって閉塞感を感じるものですが、このビルではそうならない仕組みを考えました」(三菱地所株式会社 豊洲開発推進室室長・大野郁夫氏)

その仕組みというのは、1階ロビーから15階の屋根部分まで貫く吹き抜けだ。

「大規模ビルではコア部分が中央に来るため、どうしても暗くなってしまいます。そのため廊下は1日中照明を点けているのがあたりまえでした。しかし今回のビルのように吹き抜けを設けることで自然光があふれ、明るい空間になる。もちろん、広い敷地が確保できる豊洲だから、このような設計が可能になったのです」(大野氏)

明るい廊下はリフレッシュ効果も期待できる。そしてコアの周囲に執務スペースが「ロの字」状に広がることでレイアウトのしやすいフロアが実現した。

「最近では全体が見通せる開放的なフロアレイアウトの人気が高まっています。豊洲フロントであれば最大で長さ111メートルの無柱空間を利用できますので、大組織の執務スペースとしては申し分ないでしょう」(大野氏)

2010年5月には株式会社マルハニチロホールディングスがこのビルへの本社移転計画を発表するなど、多くの企業が高い関心を示している。

「いろいろ話を伺ってみると、やはり豊洲という街の将来性に期待している企業が多いようです。ビジネスエリアとして発展が望めるだけでなく、商業地、住宅地としても魅力がある。そこでグレードの高いビルを供給していけば、東京を代表するオフィス集積地の一つになると確信しています」(大野氏)

「豊洲フロント」外観(完成予想パース) ワンフロア面積1500坪超の「豊洲フロント」外観(完成予想パース)
オフィス専用エントランス 吹き抜けが開放的な建物正面のオフィス専用エントランス

緑あふれる歩道でつながる一体化した多機能都市へ

豊洲駅で地下鉄を降り、改札口を抜けると、そのまま地下通路でビルまで移動できる。(※下部に完成予想パース)エスカレーターを上がった先が1階エントランス目の前のピロティだ。
1階には飲食店を中心とした商業施設を設置。賑わいの空間となる。

「オフィスワーカーや近くにお住まいの方がランチやディナーに気軽に利用できるグルメゾーンになります。またカフェやコンビニエンスストア、保育所などもビル内に設けることで、使いやすいオフィスビルを目指しています」(大野氏)

オフィスへはセキュリティに配慮した専用エントランスから直行できる。そのほか設備スペックについてもトップクラスのレベルを持つ豊洲フロントだが、それ以上に関係者が強調するのは、建物周囲の環境の良さだ。

「晴海通りを挟んだ2丁目には複合商業施設アーバンドック ららぽーと豊洲があり、品揃え豊富なスーパーマーケットやスポーツクラブを始め、多様な物販店や飲食店、映画館などが徒歩数分の圏内に揃っているのです。オフィスも生活の場の一つだと考えれば、これほど便利な場所はないでしょう」(村井氏)

「豊洲では自然環境に配慮した開発が進められており、このビルも敷地面積の約36パーセントを緑地にして地域への貢献を図っています。他の街区とも連動し、晴海通りには街路樹の茂る広い歩行者空間が完成し、豊洲運河側にも緑の歩行者空間が続く。その結果、周囲の住宅地や商業地と一体化した賑わいと憩いの感じられる街が形成されていくのです」(大野氏)

晴海通りの歩行者空間は屋根も設置され、駅のある1街区から豊洲IHIビルのある5街区交差点まで雨に濡れずに移動できる。このような地域一体となった街づくりが豊洲の大きな魅力になっているのはいうまでもない。

「一体感といえば、街を彩るオブジェとして屋外に飾られるアートも、豊洲の歴史や土地柄を象徴したものにしました。IHIの事業所と共に成長してきた豊洲ですから、それを感じさせる街並みにしていこうという話で、衆議一決したのです」(大野氏)

都心の代替地ではなく、豊洲という街の個性に新たな価値を加えていくことで永続的な発展を目指していく。豊洲フロントはそんなムーブメントを象徴するビルの一つになるはずだ。

「3街区には豊洲フロントを含めて3棟の大規模ビルが並ぶ予定ですし、向かいの2街区、4街区も、今後の進展を見ながらビジネスエリアの拡大と発展につながる開発を進めていくつもりです。その結果、豊洲地区全体でかなりの規模のオフィスが供給され、集積による利便性の向上も期待できるでしょう。そんな変革をこのビルから始めていきたいですね」(村井氏)

「豊洲」駅と直結する連絡通路 東京メトロ有楽町線「豊洲」駅と直結する連絡通路。
敷地面積の約36%を緑化 敷地面積の約36%を緑化し、四季の豊かさが感じられる外構空間。

【豊洲フロント】 建築概要

所在地

東京都江東区豊洲3丁目2番20号

事業主

株式会社IHI、豊洲3の1特定目的会社

開発業務受託者

三菱地所株式会社

構造

地下:鉄筋鉄骨コンクリート造
  (一部鉄筋コンクリート造)
地上:鉄骨造

規模

地下2階、地上15階、塔屋2階

敷地面積

約13,700㎡

建築面積

約7,200㎡

延床面積

約106,200㎡

設計・監理

株式会社三菱地所設計

施工

鹿島建設株式会社

竣工

2010年8月

基準階平面図 基準階平面図

※本特集は、7月に行った取材を基に記事をまとめています。

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