豊洲再開発

2010年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

広大な再開発エリアが広がる豊洲は都心に近く職(オフィス)、住(住宅)、遊(商業)、学(文化、教育機関)、緑が融合した新しい街へ

10年後にお勧めの街は? 2007年に日本経済新聞社が首都圏1都3県の在住者6000人に街のイメージ調査を行ったとき、丸の内・大手町や横浜、新宿などを抑えて第1位に輝いたのは江東区の豊洲だった。造船所の跡地を利用した計画的な街づくり、特に大型の複合商業施設とウォーターフロントの高層マンションという組み合わせが話題を呼び、高い人気につながったものとみられている。それから3年、オフィスビルの建設が次々と進み、この街はビジネスエリアとしても大きな注目を集めるようになってきた。立地は都心から地下鉄で10分以内と近く、しかも広さは全体で約100ヘクタールにも及ぶ広大な地域にオフィス、住宅、商業、教育機関の4つの機能をバランスよく配置した未来志向の街が誕生している。そんな豊洲の魅力と、この夏竣工の2棟の大規模オフィスビルの概要を紹介しよう。

「大丸有」の広さに匹敵する100ヘクタールのエリアが生まれ変わる

再開発が進む豊洲の魅力を説明するとき、最初のキーワードとなるのが立地と広さだ。

東京メトロ有楽町線豊洲駅から
銀座一丁目駅 6分(直通)
有楽町駅 7分(直通)
永田町駅 11分(直通)
東京駅 10分(有楽町駅でJRに乗り換え)
新橋駅 8分(有楽町駅でJRに乗り換え)
品川駅 16分(有楽町駅でJRに乗り換え)
新宿駅 21分(市ヶ谷駅でJRに乗り換え)
池袋駅 27分(直通)

※乗車時間だけを記載しております。乗換え時間は含まれておりません。(Yahoo ! 路線情報参照)

立地についていえば、上表のように主要駅との移動時間は10分以内と、オフィス立地としては申し分のない条件だ。さらに、その「近さ」を実感するために東京駅からの直線距離を比べてみよう。すると次のようになる。

豊洲駅 約4キロメートル
新宿駅 約6キロメートル
品川駅 約6.5キロメートル
渋谷駅 約6.5キロメートル

豊洲といえば、以前は造船所や工場、流通施設などが建ち並び、一般の人があまり多く足を踏み入れるエリアではなかった。そのため「遠い」イメージがあったのだが、実際、東京駅からの距離でいえば六本木や上野と同等である。
そして注目すべきは地域の「広さ」だ。さまざまな開発プロジェクトが進行している豊洲1~5丁目の総面積は約100ヘクタール。大手町、丸の内、有楽町のいわゆる「大丸有」再開発事業の対象地が約120ヘクタールだから、それらに匹敵する広さの土地が新しい街に生まれ変わっているのである。

ららぽーと、超高層マンションに続き大規模オフィスビルが林立する街に!

現在進行している再開発の一つが豊洲駅から北西に続く江東区豊洲2~3丁目だ。このエリアは株式会社IHIの事業所だった土地が大半を占めていたが、1980年代後半から東京都との間で晴海地区などと一体となった開発の方向性が話し合われるようになり、2002年までに造船所や工場をすべて横浜地区に移転・集約することが決定する。そして開発を担当する企業などによる豊洲二・三丁目地区開発協議会(現、豊洲2・3丁目地区まちづくり協議会)が発足し、地域の合意に基づく計画的な街づくりが始まった。以下、主な動きを並べておく。

2006年3月 ゆりかもめ、豊洲に延伸
2006年4月 豊洲IHIビル稼働(本社移転)
芝浦工業大学豊洲キャンパス開校
2006年9月 豊洲センタービルアネックス稼働
2006年10月 アーバンドック ららぽーと豊洲開業
2007年9月 NBF豊洲ガーデンフロント竣工
2008年3月 アーバンドック パークシティ豊洲竣工
2008年4月 KDX豊洲グランスクエア竣工
2009年3月 ザ・トヨス・タワー、シティタワーズ豊洲ザ・ツイン竣工
2010年8月 豊洲フロント竣工
SIA豊洲プライムスクエア竣工

目玉となったのは2006年10月のアーバンドック ららぽーと豊洲開業だろう。約6万2000㎡の売場面積を持つ巨大なショッピングセンターは、物販店や飲食店だけでなく、こどもが社会体験をできるキッザニア東京や浮世絵美術館のような文化施設、造船所のドック跡地を活かした海を感じられる散策スペースなどが人気を集め、現在でも高い集客力を誇っている。さらに隣接して建設されたアーバンドック パークシティ豊洲は、ウォーターフロントの眺望が楽しめる地上52階建ての超高層高級マンションとして話題になり、豊洲のイメージを一新した。
そしてこれらの動きに続いて始まったのがオフィスビルの建設である。豊洲センタービルのある1街区とIHI本社(豊洲IHIビル)のある5街区に挟まれた3街区には3棟の大規模ビルが建つが、晴海通りを挟んだ2街区、4街区も将来的にはビルの建設が予定されており、一大ビジネスエリアを形成していく計画だ。
また北西側の豊洲1丁目では2~3丁目の計画と連動して賃貸マンション、シ
ニア住宅、自動車ショールーム、店舗などの開発が進み、隣地に芝浦工業大学が開校したこともあって賑わいを見せている。

緑化、景観整備、タウンマネジメントでいつまでも魅力を高めていける豊洲に

豊洲駅の南東側でも江東区が発表したマスタープランなどに基づいて都市計画に沿った開発プロジェクトが次々とスタートしている。豊洲4~5丁目は、中央の晴海通り沿いがオフィス・商業集積エリア、そしてウォーターフロント沿いは住宅集積エリアとおおまかな機能分割がされている。そして2~3丁目のエリアと同様に、こちらにも多くの企業が本社機能を移転しようという動きがある。
そしてもう一つ、豊洲6丁目の動きにも注目したい。ここは築地市場の移転
が予定されているだけでなく、2016年の完成を目指して東京電力がオフィスビルや住宅の開発を計画している。交通としては、ゆりかもめの新豊洲駅と市場前駅があるほか、首都高速道路豊洲インターチェンジが新設されたため、交通の便も改善された。ちなみに6丁目までを含めれば「豊洲」の開発エリアは200ヘクタール近くにまで拡大し、これは「大丸有」に銀座(1~8丁目)を加えたくらいの広さになる。
豊洲全体で住民や行政と一体となった街づくりを目指す。新築ビルは敷地内に緑地を設置。いわゆる公開空地として、一般の人も利用できる広場や歩行者空間としての活用を検討している。さらに建物の高さにガイドラインを設けて海側からの景観を楽しめるよう、より魅力ある街を目指している。10年後、20年後にはさらにレベルアップした「お勧めの街」になっていることだろう。

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(2010年7月19日 撮影:尾関弘次)

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