大阪梅田ツインタワーズ・サウス

2020年10月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

日本を代表するビジネスエリア「梅田」に次世代のオフィスビルが誕生する

日本を代表するビジネスエリアへと成長を続ける大阪・梅田。超高層ビル群を擁するエリアに最先端のスペックを持つ大規模オフィスビルが竣工する。事業主は阪神電気鉄道株式会社と阪急電鉄株式会社。今回はプロジェクトの概要や背景について、事業主代行の阪急阪神不動産株式会社の開発担当者にお話を伺った。

加藤 類氏

阪急阪神不動産株式会社
開発事業本部
技術統括部
課長補佐

加藤 類氏

南 圭祐氏

阪急阪神不動産株式会社
開発事業本部
開発推進部
課長補佐

南 圭祐氏

門谷 和哉氏

阪急阪神不動産株式会社
開発事業本部
開発推進部

門谷 和哉氏

外観全景

外観全景

梅田の発展に携わってきた企業が計画した大規模再開発プロジェクト

近畿圏のビジネス・商業の中心地である大阪「梅田」。その一等地で進行している大規模再開発が「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」である。本開発は、阪神百貨店(阪神梅田本店)が入居する大阪神ビルディングと道路を挟んで隣接する新阪急ビルを、道路上空を活用しながら一体的に建て替える計画だ。

201410月に新阪急ビルの解体工事に着手後、順次工事が進んで20184月に期棟が竣工しました。同年6月に阪神百貨店が部分開業し、20196月から期部分の新築工事に着手しています。今後は2021年秋に新百貨店の全面開業、2022年春にオフィスゾーンを含めた全体竣工を予定しています」(南氏)

本開発の事業主である阪神電気鉄道株式会社と阪急電鉄株式会社は、これまでも沿線を中心に暮らしを豊かにする多彩な施設の開発・運営を行ってきた。オフィスビルとしても本開発や梅田阪急ビルを代表に数多くの開発事業に携わっている。

「近年、再開発によって梅田の北側ににぎわいが広がっていますが、当社では本開発を南側の活性化への先導的なプロジェクトと位置付けており、最終的には梅田全体の活性化に向けた起爆剤となることを目指しています」(南氏)

3つのコンセプトを掲げた西日本最大級のオフィスビル

同ビルが竣工すると、地下3階、地上38階建、延べ面積約260,000㎡、高さ約190mの大規模複合ビルとなる。周辺の7駅と至近の好立地に位置し、オフィスエントランスは地下1階と地上1階に設置。各ターミナル駅からスムーズにアクセスできる快適な動線を確保する。

1階エントランス

1階エントランス


用途構成としては地下2階から9階が百貨店ゾーン(阪神百貨店)、オフィスロビーを11階に配し、その上層38階までがオフィスゾーンとなる。

ビルゾーニング断面図

ビルゾーニング断面図

「新しくなる阪神百貨店(阪神梅田本店)は、快適な売場環境や品揃えの充実にこだわった店舗づくりとともに、さまざまなイベントを通じてライフスタイルの提案を行い、都心の一等地に相応しい存在感と競争力のある施設を目指しています」(南氏)

高層部分(地上11階~地上38階)は最新の設備を備えた1フロア当たり貸室面積約3,500㎡の西日本最大級の賃貸面積を誇るオフィスゾーンとなる予定だ。

「オフィスゾーンは、『つながる梅田の中心』『おもてなしサービスのあふれるビル』『ウェルビーイングを実感』の3つのコンセプトを掲げ、一人ひとりに快適なオフィス環境を提供し、ワーカーの創造性や生産性を向上させるサポートをしていきたいと考えています」(門谷氏)

それらのコンセプトがより具現化されたフロアが11階と12階である。11階は、オフィスロビー階としての顔の他、大小2つのホールを備えた最新鋭のカンファレンス施設「梅田サウスホール」を擁する。1,000人超を収容できるホールを完備し、企業研修や国際会議、展示商談会といったMICEイベントを通じて、ビジネス情報を発信していく。また、本エリアは災害時の帰宅困難者の一時滞留スペスとしての機能も有し、周辺地域の防災機能の強化をサポートする。

大ホール

大ホール

12階にはオフィスワーカー専用フロア「WELLCO」(ウェルコ)を設置。適切な休息やオフィスワーカー同士の交流を通じた学びが心身の調和と活力の向上をもたらすと考え、多様な働き方を支援する機能を集めた。「よく休み、よく働き、よく学ぶ(=Well)」と「ワーカー同士のコミュニケーションやコラボレーション(=Co)」が生まれるようにとの思いから名付けられたという。

12階ラウンジ

12階ラウンジ

カフェ

カフェ

「具体的には、栄養士が監修する健康的な飲食などを提供する『カフェ』、ミーティングから個人ワークまでの多様なニーズに応える『ラウンジ&ワークスペース』、リフレッシュや運動不足解消を目的とした『フィットネス』などの機能を備える予定です。また、利用者のお困りごとを解決する『コンシェルジュ』も常駐する予定であり、「WELLCO」を中心としてビル全体で新たなワークスタイルをサポートしていきます」(南氏)

さらに緑地が広がる約1,000㎡の屋上広場からは、梅田の眺望が楽しめ、オフィスワーカーに憩いと潤いのあるリフレッシュ空間を提供する。

フィットネス

フィットネス

ワーカーに安心・快適な働きやすい環境を提供する

オフィスフロアは1フロア貸室面積約1,058坪(約3,500㎡)の無柱空間、天井高は2,900mmとなり、開放感あふれる大空間は、ビジネスニーズに合わせた効率的で柔軟なオフィスレイアウトを可能にする。

フロア平面図

フロア平面図

設備では640mm角のシステム天井、LED照明、個別照明制御システムによりきめ細やかな照明制御を可能にし、また最新空調システムの導入や自然換気システムの採用、外装による日射負荷の低減など、ワーカーに快適な湿温度環境を提供する。

BCP対応も万全で、先進の制震構造の採用、地震時にビルの健全性を測定する「構造ヘルスモニタリングシステム」を導入、津波対策としては重要基幹設備を9階以上に、防災センターを2階に計画している。また、3回線スポットネットワーク受電方式の採用、非常時でも72時間の電源供給が可能などの安定した電力供給設備で事業の継続をサポートする。その他、水源確保として耐震性高架水槽を設置し、非常時に地下水の利用を可能にしている。

国土交通省所管「サステナブル建築物等先導事業」に採択され、建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の大阪みらいSクラスを達成。日本政策投資銀行「DBJ Green Building認証」最高ランク(5つ星)を取得している。

『毎日が幸せになる百貨店』を具現化した斬新なビル壁面デザイン

当ビルの外観は、低層(百貨店)部分をアルミパネルで包み込むデザイン手法を採用している。これは、阪急うめだ本店が入居している梅田阪急ビル(当ビル竣工と同時に「大阪梅田ツインタワーズ・ノース」に改称予定)との差別化を図りながらも相乗効果をもたらすデザインを目指したものだ。

「梅田阪急ビルが、阪急うめだ本店のコンセプトである『劇場型百貨店』を具現化した重厚感ある外観デザインであるのに対して、大阪梅田ツインタワーズ・サウスでは阪神梅田本店のコンセプトである『毎日が幸せになる百貨店』を具現化するため、アルミパネル内側のガラス越しに百貨店内部のにぎわいを外部に滲み出させることで、何気無く立ち寄ってしまうような親しまれるデザインとしています」加藤氏)

竣工後も地域と一体となった快適で質の高い街づくりを推進していく

本プロジェクトでは再開発と同時に周辺公共施設整備も行っている。地下では、大阪駅前地下道の拡幅整備、敷地周辺のバリアフリー化、地上では、敷地周辺歩道の拡幅・美装化及び、計画地西側における敷地内広場空間の整備、デッキレベルでは梅田新歩道橋の美装化・耐震性の向上及び敷地内通路(2階レベル)の整備などを実施している。意匠的にも、都市貢献として整備した敷地周辺歩道や歩道橋は、単に美装化で終わらせるのではなく建物との相乗効果を生み出すデザインとした。

「具体的には、百貨店前などのにぎわいを生み出したい歩道エリアに、暖色系舗装材を敷き詰め緑陰に人が集えるような植栽の配置や、歩道橋に建物内デッキとの連続性を感じる床材や回遊したくなる照明を採用しました」加藤氏

そして当ビル竣工後も、阪急阪神グループは地域と一体となった快適で質の高いまちづくりを推進していく。

「私どもは梅田の街をさらに進化させていきます。『なんでもある街から、なにかが起きる街へ。』を合言葉に、グループ全体の力を活かして、地域と一体となった快適で質の高い街づくりを推進していきます」(南氏)

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