(仮称)淀屋橋駅東プロジェクト

2023年9月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

大阪・御堂筋の玄関口に誕生する高さ約150mのランドマークビル

大阪・御堂筋の玄関口という好立地で進行している大規模再開発計画「(仮称)淀屋橋駅東プロジェクト」。淀屋橋駅直結という抜群の利便性でワーカーの働き方をサポートする。今回の取材ではプロジェクトの概要や背景についてお話を伺った。

能海 達宏 氏

中央日本土地建物株式会社
都市開発事業第一部
次長

能海 達宏 氏

湯浅 敬太 氏

中央日本土地建物株式会社
都市開発事業第一部
リーダー

湯浅 敬太 氏

髙橋 優衣 氏

中央日本土地建物株式会社
ビル営業部
リーダー

髙橋 優衣 氏

古くから大阪の商業を支え、歴史と景観、
そしてビジネスが共存するエリア「淀屋橋」

2025年の大阪・関西万博開催を控え、国際都市として進化を続けている大阪。その大阪を代表する幹線道路「御堂筋」の玄関口となるのが淀屋橋エリアとなる。淀屋橋は、大阪市を流れる土佐堀川に架かる橋名で、その周辺の地域名でもある。

「もともと大阪の商業のルーツともいえる場所です。現在も大手企業や金融機関が集積し、大阪屈指のビジネス街を形成しています」(能海氏)

「淀屋橋は、土佐堀川に面し水都ならではの美しい景観が広がるエリアです。川の対岸には、日本銀行大阪支店や大阪市役所、大阪市中央公会堂といった多くの歴史的建造物が立ち並んでいます」(湯浅氏)

そんな歴史と景観、ビジネスが共存する、類まれな立地で進められている大規模再開発が「(仮称)淀屋橋駅東プロジェクト」である。同プロジェクトは中央日本土地建物株式会社が所有する「日土地淀屋橋ビル」と京阪ホールディングス株式会社が所有する「京阪御堂筋ビル」の一体での建て替え事業となる。

中之島・御堂筋周辺地域は2002年に大阪市から『都市再生緊急整備地域*1』と『特定都市再生緊急整備地域*2』に指定されている。

*1 都市再生緊急整備地域
都市の再生の拠点として、都市開発事業を通じて、緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域のこと
*2 特定都市再生緊急整備地域
都市再生緊急整備地域の内から、都市の国際競争力の強化を図る上で特に有効な地域として政令で指定する地域のこと


「これらは、高規格なオフィスの実現を通じて、多様な機能を持つビジネス地区の形成を目的とします。この地で当社が所有していたビルの竣工は1961年。すでにかなりの築年数が経過していました。それで、安全面や新たな機能の付加を考えて、本格的に建て替え計画を検討することになったのです」(能海氏)

淀屋橋駅直結の立地を活かした街づくりにも貢献するプロジェクト

同プロジェクトは202010月に既存建物の解体が始まり、20227月に工事を着工。竣工を20255月に予定している。開発コンセプトは「Life Connecting Oasis. ようこそ、生きる歓びをつなぐ都会のオアシスへ」とした。

「ワーカーと来街者、ビジネスと生活など、建物を通じてさまざまな人と人とのつながりを高めたいという期待を込めました」(能海氏)

ビルの外観に関しては景観形成による都市再生を目指す「御堂筋デザインガイドライン」に基づいた。そのため、ビル単体ではなく御堂筋沿いに建つビルのスカイラインと連なる統一性のある景観を意識したという。その結果、この地の歴史を継承したデザインが生まれることになった。

「ガラスと柱型の石壁がグリッド状に並ぶデザインを採用し、約50mの高さに合わせた軒線は街並みの連続性を表現しています」(能海氏)

外観

外観

機能性と快適性を両立させたオフィスビル

建て替え前の「日土地淀屋橋ビル」は地上9階、「京阪御堂筋ビル」は地上10階の規模であった。建て替え後は、地下3階地上31階建に。高さ約150mと淀屋橋エリア最高のランドマークビルとして生まれ変わる。各フロアも来街者やビジネスユーザーとの連携を考えた機能が多く取り入れられている。

地下2階は駐車場。役員や特別なゲストを出迎える車寄せも完備する。地下街の商業店舗は地下1階~地上2階に集約。京阪本線およびOsaka Metro御堂筋線「淀屋橋」駅とは地下1階で接続。計画敷地外の地下通路も一体的にリニューアルを施し歩行環境を改善する。そして、地上部も壁面後退を行い利便性の向上を目指す。

「駅改札からはダイレクトに当ビルへアクセスすることが可能です。地下1階~地上2階は吹抜け空間の多目的広場を構築。そこでは多様なイベントを企画するなど、新たな賑わいを演出します」(髙橋氏)

地下接続広場

地下接続広場

多目的広場

多目的広場

立体の多目的広場とともに商業施設の誘致も行う。また、観光ステーションを整備し、駅利用者や観光情報の提供・発信を行っていく計画だという。

アクセス図

アクセス図

3階のオフィスロビーは、低・中・高層階ごとの専用エレベーターを用意しています。そのためピークタイム時でもストレスのないスムーズな移動を実現します」(能海氏)

「オフィスロビーには、ラウンジ空間も併設します。カジュアルな打ち合わせから商談までを可能にするハイグレードな空間とする予定です」(湯浅氏)

オフィスロビー

オフィスロビー

4階~29階がオフィスフロアとなる。1フロア面積約480坪。基準階専有部はアウトフレーム工法により無柱空間を実現。入居テナントにフレキシビリティと眺望を提供する。

「オフィスの集約・統合ニーズに応えるワンフロアレイアウトはもちろん、上下階をつなぐテナント専用内階段の設置も可能です。また、最小30坪まで分割対応が可能であり、どのフロアの窓面からも大阪の街を一望できます」(髙橋氏)

基準階平面図

基準階平面図

専有部内の窓枠には自然換気装置を設けるほか、エレベーターシャフト上部を活用した吹抜け空間内の重力換気により約2/時間の自然換気を行う。

「手動換気装置を組み合わせた自然換気システムです。執務内に居ながら屋外の新鮮な空気に触れることができます」(能海氏)

そのほかにもLow-Eペアガラスによる熱負荷の低減、昼光センサーによる調光制御、雨水再利用水の雑用水利用、コージェネレーションシステムによる排熱利用など充実した環境性能を備え、建物全体で省エネルギー化を実現する。今後は、「CASBEE Sランク」と「CASBEE-WO Sランク」「DBJ GreenBuilding認証」「BELS認証」「ZEB認証」の取得を目指していく。

「中層・高層階の共用部には吹抜け空間を設け、光や風、緑を感じられるインナーテラスを設置します。ワーカーのリフレッシュスペースとなるように計画しました」(髙橋氏)

10階~11階はビジネス活動をサポートする「ビジネスラウンジ」を整備する。最大100名超を収容する大会議室、少人数を対象にしたオフィス、コワーキングスペースなどで構成する。

インナーテラス

インナーテラス

コワーキングスペース

コワーキングスペース

11階では、一般オフィス階の最小分割面積30坪よりも、更に小さい面積の少人数対応オフィス空間を計画しています。当社の想いはお客様と一緒に成長していくこと。このビルから新たなビジネスを一緒に創造していければと思っています」(湯浅氏)

「近年では賃貸スペースを効率的に使うために貸会議室など外部施設を有効活用するケースが増えてきました。オフィスビルの共有空間の充実度は、これからのオフィス選びに必要な条件になりつつあると感じています」(髙橋氏)

貸会議室

貸会議室

最上階となる30階は展望テラスとなる。ここは一般の方も利用可能だ。

「検討を重ねる中、最上階は通常の貸室とはせず、共用の空間としました。このフロアでは、中之島や御堂筋の新しい観光や文化を発信していきます。ギャラリーや展望ホール、商業施設を整備して、街全体の賑わいを創出します」(能海氏)

眺望テラス

眺望テラス

BCP対策を充実させて地域の災害対策拠点の役割を担う

BCP対策も万全だ。震度6強程度の大地震でも損傷が少ない上級グレードの制震構造を導入し、入居テナントの安全を確保する。さらに信頼性の高いスポットネットワーク3回線受電方式を採用。万が一の災害時でも、非常用発電機とコージェネレーションシステムなどで、専用部へも72時間の電力供給を行う。エレベーターも各バンクで少なくとも1台は稼働する体制を確立。災害時での業務継続をサポートする。

建物内には、災害時の帰宅困難者などを想定した一時退避場所や防災備蓄倉庫を整備する。

「帰宅困難者の受け入れも想定しています。行政との連携の中で、地域の災害対策拠点としての役割を担います」(湯浅氏)

この一時退避場所は、大阪市の「御堂筋周辺地域 都市再生安全確保計画」に位置づけられている。

地域全体の活性化を実現。大阪・御堂筋の新たな名所に

「御堂筋沿いの歩道と一体になったオープン空間には、キッチンカーやマルシェの誘致や各種イベント活動のためのスペースとしての活用を計画しています。国土交通省が推進する『WALKABLE(ウォーカブル):街路を車中心から人中心の空間に再構築すること』を意識した空間づくりを目指します」(髙橋氏)

「御堂筋には、景観のあり方やエリアマネジメント、賑わいの創出などを考えていく『一般社団法人 御堂筋まちづくりネットワーク(通称みどねっと)』という街づくり団体があり、当社も旧ビルを運営していた時代から正会員となっています。新ビルが竣工する前ではありますが、早くも賑わい創出のための検討が始まっています」(湯浅氏)

「今回のプロジェクトでは、『働く』機能だけに目を向けるのではなく、『賑わい』や『成長』も支援する空間づくりを目指しました。その実現のためには、竣工後のエリアマネジメントも重要な意味を持ちます。今後も多様なオペレーションに挑戦していきながら、地域全体の活性化に貢献していければと思っています」(能海氏)

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