「食」の最適化を図ることで、企業や生産者、メーカーの価値を最大化させる

2018年9月取材

「食」の最適化を目的とした事業を準備中の株式会社tsukumo。

それは近年社会問題になっているフードロスの解決だけを見据えたものではない。
「美味しい」「楽しい」「健康」をベースとし、「食べ物の価値を再評価する環境づくり」を当面の目標に設定している。今回は、同社が考える「食」に対する考え、具体的なビジネスモデル、将来的な展開についてお話をお聞きした。

金子 隆耶氏

株式会社tsukumo
代表取締役 金子 隆耶氏

大学時代にインターンで農業に携わったことをきっかけに、「食」への関心が高まる。休学をして起業に向けて調整をしていたが、諸事情で会社登記直前に断念する経験を持つ。大学卒業後、オーガニック製品の製造・卸の会社に入社するも、どうしても自分なりの「食」への追求を目指して退社。現在、年内中の会社登記に向けて準備を進めている。

大学を休学してまで行った農作物づくり。その体験が事業の原点となっている

もともと大学では経済やマネジメントを学んでいた。たまたまインターンで農作物づくりを体験したことが起業の原点だという。

「何しろすべてが初めてのことでした。何も知らないまま石やゴミを手で拾って、農耕機で畑を耕して。挙句の果てに大量の種を埋めてしまう始末。その結果、野菜が出来すぎてしまい多くを廃棄することになりました。農作物の大部分は流通に乗せることができなかったんです」

出荷量を調整することは価格を安定させること。農家にとっては当たり前のことでも、何か違和感を覚えていたと語る。しかし単に異を唱えるだけではなく、別の方向からのアプローチができないものかを模索していた。大学卒業後、食品メーカーに入社したあとも、その気持ちは変わらなかったという。

「数年前と違ってパソコンで『食』を調べると、オーガニックやフードロス、健康経営など、さまざまなキーワードが検索結果として表示されるようになりました。そんな時代に変わっても、日頃から食に対して問題意識を持っていたため、予定より早まった起業にも無理なく対応できたのです」

企業の「食」の最適化を目的にマネジメントしていく

「同社が目指すサービスの一つは企業にこの本サービスを通して健康経営を提案すること。まずはメーカー企業で発生するフードロスになってしまうオーガニック・ヘルシースナックの置き菓子販売からスタートさせます。そして徐々にランチや朝食用のスープなどをデリバリーで提供していく計画です。またそこから取れる購買データと健康データを活用することで働く人の健康管理と福利厚生の充実を図るきっかけになればと思っています」

オーガニック食品を売りさばくことが目的ではない。あくまでも企業のパフォーマンスを高めることが重要だと語る。

「最近、フードロスという考え方が多くの方から支持されています。しかし『もったいないから食べてください』とか『安くするから購入してください』というのは間違ったアプローチではと常々思っていました。僕らは、たとえフードロスの商材であってもそこから新しい商品を生み出して、違う価値に変換させて提供したいと思っています。それが生産者やメーカーの価値を最大化させる足掛かりになると信じています」

*フードロス:まだまだ食べられるにも関わらず廃棄されている食べ物

2名で創業。今までにない、食に関するプラットフォームの構築を目指す

「もともと何から何までをすべて自社で調達しようとは思っていません。資本も少ないのでスタートアップから多くの社員を採用することもできません。そこで外部のパートナーさんと共存していく方法を考えました。両者が持つ違う価値を交換し合う、というのが理想ですね。幸いなことにベンチャー企業に席を置いていたこともあるので多くのネットワークを保持しているつもりです。当面の目標は100社の企業と実績をつくること。土台づくりですね。土台ができればイニシャルセールスに切り替えて。現在サブスプリクション型での提案をしています」

*イニシャルセールス:顧客の注目を集め、それをトリガーに既存のセールス手法と違った促進を行う手法
*サブスプリクション型:単体で支払うのではなく、利用期間に応じて料金の支払いをする方式

最初はコミュニティづくりから。まずは無理のない環境からスタートする

現在は、渋谷駅新南口にあるコワーキングスペースで業務を続けている。

「コワーキングスペースでの業務は協業も生まれやすくとてもいい環境です。偶然立ち寄ったメンバーが交わることで、違った視点で物事を考えることができ、より良い解決策が生まれることもあります。また、今後活発になる促進活動をイメージしたときにここの交通アクセスはとても魅力的です。もちろん事業を拡大したときには自分たちのオフィスを構える必要があるのでしょう。しかし最初は無理をせず、この環境からのスタートで正解だったと思っています」


※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。