創業者インタビュー

Vol.12 エピテみやび株式会社 代表取締役 田村 雅美 氏

身体の一部を失った方に明るい未来への一歩を提供する

2020年2月取材

事故や病気、生まれつきにより身体の一部をなくされた方が、外見を取り戻すために使う装身具の人工ボディ「エピテーゼ」。義手や義足とは異なり、機能面ではなく外見を重視したものとなる。エピテみやび株式会社は「エピテ―ゼ」の専門会社で、オーダーメイドで製作を行っている。同社の特長は、エピテーゼを医療器具といった重苦しいものではなく、ウイッグのようなファッションアイテムとして考えていること。今回の取材では、起業を決意した背景や将来的な計画についてお話をお聞きした。


田村 雅美 氏

エピテみやび株式会社
代表取締役 田村 雅美 氏


歯科技工士として経験を重ねている中で、自分自身の技術力向上を目的に渡米。渡米中、エピテーゼによる「外見回復の効果」に感銘を受ける。帰国後は歯科医院にて直接患者さんと接する業務に。並行してエピテーゼの技術を習得する学校に通い始める。その後、友人の乳がん手術後の苦しみを知りエピテーゼに本格的に取り組むことを決意する。2018年女性起業チャレンジ制度に応募し、グランプリを受賞し賞金を頂いたことをきっかけにエピテみやび株式会社を設立する。


自分の技術を高めるために渡米。初めて出会ったエピテーゼに感銘を受ける

元々、歯科技工士として活動していた田村雅美氏。毎日を過ごす中で、自分の歯科技工としてのレベルを確かめてみたくなったという。それで歯科技工の水準が優れているといわれている米国で学ぶことを決意。米国カリフォルニア州の会社に一定期間お世話になることとなる。その研修期間中、縁あって近くの大学病院を見学する機会に恵まれた。そこでエピテーゼの存在を初めて知ったという。

「戦争で顔の半分を失った方が受診されていました。最初は笑顔がなかったのですが、顔のエピテーゼを貼り合わせていくことで徐々に顔が復元されていく。装着や色合わせを終え、最終的な姿を鏡で見た本人と間近で見ていた家族はとても嬉しそうでした。その瞬間、彼が二度目の新しい人生を手に入れたようで。とても感動的でした」

研修はとても有意義で歯科技工士の技術を高めるという本来の目的は十分に達成できた。しかし、それ以上にエピテーゼによる「外見回復の効果」が鮮明な印象として残った。

「帰国後は歯科医院で従事しながら、国内でエピテーゼの技術を学べるところを探しました。そして少しずつ技術を習得しました」

そんな中、乳がんで右胸を全部失った友人に再会する。

「友人の話では医師からエピテーゼの提案は一切なかったそうです。病気になる前から知っていたら精神的なショックは少なかったのかもしれません。きっと同じような悩みを抱えている方は他にもいるだろうと。地元群馬を中心にヒアリングを試みました。すると生活の範囲内に農業用機械があることもあって、意外と乳がんや欠損事故で悩んでいる方が多いことを知ったのです。それならと一念発起して。まずは個人事業主からのスタートでした」

起業して約3年。今はまだ存在を知ってもらうことが重要と考えている

2018年に女性起業家を対象にしたビジネスコンテストに応募。見事グランプリを受賞する。

「個人事業主として活動していた時に全国ネット局の首都圏ニュースで紹介されまして。テレビの影響って大きいですよね。北海道から鹿児島まで、多くの方々からご相談をいただくようになりました。それで受賞を機に東京に活動拠点を移して会社登記を行ったのです」

現在、荒川区・日暮里にオフィスを構える。地元群馬との移動が容易なこと、空港までのスカイライナーとの接続性、新幹線駅とのアクセスの良さなどを優先して決めたという。

「モノづくりの街でもあるので自分の業務にマッチしていると思いまして。やはりオフィスを構えることで信頼感が違うのでしょうね。ご相談件数は増えています。またお客様との距離感も近くなった分、業務効率も良くなっています」

現在のミッションは、エピテーゼの存在を広く知ってもらうことだと語る。

「身近なものとして感じてもらう。これが私に課せられた最初のハードルだと思っています。そのために定期的に『見て』『触れて』『着けて』もらうための展示会を開催しています。最近は、実際につくってみたいという方も増えてきました。常々、後進を育てることも必要だと思っていましたので、2019年11月から女性限定のスクールを開講しています」

個々のライフスタイルに合わせてファッションアイテムとして使い分けてもらう

現在、エピテーゼの製造に関しての定義やルールは明確に決められていない。田村氏の考えているエピテ―ゼはあくまでもオシャレの延長線上。気軽な外見ケアを目指しているため、今後もサロン形式の展開を考えていくという。

「エピテーゼは医療器具のように見えますが、大分類をするとウイッグと同じ雑貨扱いになるんです。素材に関しても、当社のように海外から医療用シリコンを輸入してつくっているところもあれば、合成ゴムを使用している会社もあって。エピテーゼに対する考え方も千差万別ですね。とはいえ一定のルールは不可欠だと思いますので、2019年11月にエピテーゼ協会を設立しました。これによって他団体同士の技術交流やコラボレーションが可能になると思っています」

着け指

同社が提供するエピテーゼは大きく3つに分けられる。一つは事故や病気などで指先を失くされた方への「指」、もう一つが乳がんで胸を失くした方への「胸」。そして性同一性障害の方への「陰茎」だ。どれもが強い粘着性の樹脂で装着するため、お湯につかっても外れることがない。今まで人の目を気にして温泉や公衆浴場に入れなかった方からの感謝の声も多いという。

「使用者のライフスタイルに合わせて取り外していただければと思います。特に『着け指』の場合は仕事用、プライベート用と使い分けている方も多いですね」

日本の繊細なエピテーゼは、医療でもあり美容でもあり、そしてアートでもある

「身体の一部を失くされたことで本来の笑顔を失ってしまった方が想像以上に多いことを実感しています。きっと同じような悩みを抱えている方は世界中に存在するのでしょう。ですからいつの日か同様のモデルケースを海外でも展開したいですね。それも自分たちが赴任するのではなく、現地スタッフに技術を教える仕組みをつくって。そうすることで雇用を生むことになり、現地の活性化につながるはずです。そして医療でもあり、美容でもあり、アートでもある日本の繊細な技術を使ったエピテーゼを世界中に広めていきたいと思っています」

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

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