将来に不安を持つ女性のためにキャリアアップカレッジを開校した

2020年8月取材

本当の自分らしさを認識し、自分自身に必要なキャリアやライフプランを学ぶためのオンラインカレッジ「ワタシル大学(カレッジ)」が開校する。当面は「転職を絶対に失敗したくない」と考える女性に向けた講座を展開していく予定だ。今回の取材では、ワタシル大学を運営するワタシル合同会社CEOの山口奈生氏とCHROの海保和美氏に創業のきっかけ、将来的な展望についてお話をお聞きした。

山口奈生 氏

ワタシル合同会社
CEO 山口 奈生 氏

1982年岩手県生まれ。学校卒業後、損害保険会社で営業や社員教育部門を経験したのち、配偶者の留学に伴い米国テキサス州へ。帰国後2014年に国家資格キャリアカウンセラーを取得し人材紹介会社に転職。大学生から社会人まで広くキャリアカウンセリングに対応。2017年に配偶者の転勤により米国ボストンに。その後、人材系ベンチャー企業での新規事業でフルリモートの事業部責任者として勤務。2019年にキャリア支援プロジェクトを立ち上げ、2020年7月ワタシル合同会社を設立。

海保和美 氏

ワタシル合同会社
CHRO 海保 和美 氏

1975年大阪府生まれ。学校卒業後、物流、広告、医療業界など複数社を経験。2005年に人材サービス業界へ。結婚を機に上京。2007年2社目の人材会社となるパーソルテンプスタッフ株式会社へ入社。これまで求職者面談5,000人以上に対応する。2017年アドラー心理学をベースにしたコーチングスクールを卒業。2019年、副業として学生や企業人事の担当者を対象としたコーチングサービスを開始。社会貢献活動で参画したキャリア支援プロジェクトをきっかけに2020年7月ワタシル合同会社を設立。

女性が満足できるキャリア形成をサポートするオンラインスクール

ワタシル大学は20代から30代前半の女性を対象とした個人向けのオンラインキャリアスクールとなっている。しかし同スクールのゴールは受講生を転職に導くことではない。それが多くの人材育成系スクールとの大きな違いとなる。

「今まで数千人におよぶ女性のキャリア相談に応じてきました。特に、20代の女性から寄せられる相談の多くが『転職』についてです。しかし『転職』を希望して相談に来られたにも関わらず本当に転職する方ってほんの1割程度なんです。カウンセリングの中で、『転職したい』という言葉の本当の意味は『今の会社で活躍したい』『職場の人間関係を改善したい』『安心して妊娠・出産できる環境が欲しい』だということが分かることも多い。それならば『転職』だけをゴールとしない、女性にとって満足できるキャリア形成をサポートするスクールを立ち上げたいと考えたのです」(山口氏)

「一方、30代後半の女性のキャリアカウンセリングにおいては、『やりがいのある仕事がしたい』という相談が多いのです。でも、『子育てのために自分がやりたい仕事をあきらめてきた方』とか、『専門性を身に着けられずに歳を重ねてしまった』という方が多くて。家庭とか子育てとかたくさん肩に背負った状態で、その状態からやりがいのある仕事に向かっていくのは非常に大変なのが現実なのです。その方々の支援を行う中で、ライフイベントを迎える前の20代の方々に、自分のやりたい仕事を考え、将来を見据えたキャリア構築を広める必要性を感じました」(海保氏)

もともとは別の人材関連会社での新規事業として計画されていたが、その想いに共感した多くのメンバーがプロボノ(社会貢献を目的とした無報酬での活動)で参加。最終的には本事業に特化した法人をつくることになり、2020年7月にワタシル合同会社が設立された。現在のメンバーは13名(2020年8月現在)。キャリアカウンセラーやコーチング、心理カウンセラーといった専門資格を持つ精鋭メンバーが集結した。

ワタシル大学のカリキュラムは自分自身を知ることから始まる

「ワタシルとは『自分らしい人生を歩むためには、自分の価値観を掘りさげて知ることが重要』との考えから名付けました」(山口氏)

「ワタシル大学は『今の会社での活躍を目指すコース』『転職コース』『副業・パラレルワークコース』の3つのコースで構成しています。受講の最初にカウンセリングを実施。自身のキャリアプランを明確にし、脳科学をベースにしたパーソナリティ診断を行うなどして自分自身を知ることから始めます。企業ビジョンは『ワタシが笑えば世界も笑う』としました。一人ひとりの『ワタシ』が幸せになる。それによって世界はもっと自由で楽しいものに変わる。そんな願いを込めました」(海保氏)

そしてミッションは「ワタシを知って、アシタを生きる。」とし、自分自身を客観的に見つめ、自分を再発見するうえで自分の未来(明日)を描いていく。これこそが同スクールが目指していく姿だという。

副業での運営だからこそ時間と個人の特性、リソースの効果的な活用が重要

同社の最大の特長はメンバー全員が副業で業務を行っていることだ。
「私はパーソルテンプスタッフという人材派遣会社で営業促進を行っています。残業もある部署ですが、業務を工夫し、会社に理解いただき定時で帰らせていただいています。副業が認められている会社がそれほど多くない中でとてもありがたい環境だと思っています。ワタシルで得た経験や知識が、社内や個人の活動に活かされています。私は会社員として日中活動していますが、ワタシルでのオンライン経験を生かしてお客様との商談に役立てました。経験や知識をどこでも使えるポータビリティなものとして役立てることで活動全体にシナジー効果が生み出されるのです」(海保氏)

「副業での運営だからこそ注意していることが3つあります。
1つは「それぞれの立ち位置で意見を言う」こと。
打ち合わせは基本オンラインです。録画機能を使って、当日参加ができない人は録画を見て、後日冷静な目で意見を出すのですが、ときには違った角度からの意見で新たな発見につながることがあります。当日の参加・不参加関係なく全員が貢献できる仕組みにしています。

2つ目が「特性を生かした仕事をする」こと。
私達は精神医学をベースにしたパーソナリティ診断によってお互いの思考や得意分野を共有しています。特性に合った業務を引き取ることで高品質の成果物が生成されることが多いです。

3つ目は「リソースを相互間で生かす」こと。
ワタシルで得た経験や知識を、社内や個人の活動に活かそうと言うものです。私は会社員として日中活動していますが、ワタシルでのオンライン経験を生かしてお客様との商談に役立てました。経験や知識をどこでも使えるポータビリティなものとして役立てることで活動全体にシナジー効果が生み出されるのです」(海保氏)

将来的にはオフィスを持ち、よりコミュニケーションを高めたい

いずれは法人向けの事業展開も念頭に入れているという。事業拡大に伴って必然的にメンバーは増える。そこで将来的には全員が集まれるオフィスを持ちたいと語る。同社が考えるオフィスの役割は「アイデアとアイデアが化学反応を起こす」ことだという。

「リアルの中で生まれる『斬新なアイデアの創出』や『意思決定の迅速さ』といったプラスの効果は顔を合わせるからこそ可能になるのだと思っています」(山口氏)

「オフィスは人と人とを結びつけ、帰属意識を高めるための空間です。また、お客様の中にはオンラインに不慣れの方も多く存在します。そういった方々も含めてリアルに繋がる『場』は今後も必要だと思っています」(海保氏)

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。