シニア世代が抱える不安や事情を理解して自分らしく生きられる環境をサポートする

2019年5月取材

2018年11月に創業したアライアンサーズ株式会社。シニア層を対象にしたライフサポート全般業務を展開している。そして2019年3月、創業当時から熱望していたLGBTシニアシニア向けのサービスも開始した。今回の取材では、起業の背景、今後のビジョンについてお話を伺った。

久保わたる氏

アライアンサーズ株式会社
代表取締役社長 久保わたる氏

大学卒業後、大手上場企業に入社。経営管理部門(主に人事総務畑)を渡り歩く。サラリーマン時代にアライアンスという営業手法(他社の強みを自社の企画力でwin-winにする)を知る。アライアンス手法で社会課題(特に高齢者の生活問題と高齢者施設の職務に従事する若手職員の処遇問題等)を解決する決意をし、2018年11月、アライアンサーズ株式会社を設立。現在に至る。

大学時代から漠然とした中で、世の中のための会社をつくりかった

大学時代から漠然とした中で、世の中のための会社をつくりかった
サラリーマン時代は管理部門でデスクワークが中心だった。

「会社の根幹に関わる部署で新たな知識や会社の経営の仕組みを得られるといった部分で魅力ある仕事でした。その一方で、デスクワークが中心のため外部の方との接触や出張など見聞を広げるチャンスが少なかったこともあり、もっと外に出て仕事をしたいと考えていました」

漠然と将来は会社をつくることを考えていた中で「ゲイの親友が自分の老後を含めた将来を悲観したことによる自殺」が起きた。本事件は、私自身も胸がナイフでえぐられるような経験でした。

「私は社会問題こそ、ビジネスで解決すべきとずっと考えていました。理由は永続的に困っている方のサポートをするためには、サポートをする組織(会社)の存続が必須です。

そしてその組織で働く方たちがしっかり経済的に自立することで会社が成り立つと考えています」

後悔しない「終活」のためにアライアンスを使ったビジネスを展開する

(*注1)シニアに限らず、多くの方は老後の生活に大きな不安を抱えています。相続とか、医療とか、介護とか。それらの不安に対して専門的に特化してサポートを行うサービスはあるのですが、それらをトータル的にマネジメントする企業は多くありません」

「また、よく(*注2)LGBT当事者同士でも、老後について話題にあがりますが、あまり明るい話にはなりません。なぜなら皆、漠然とした不安があるだけで、『ゲイライフのお手本となる先輩と当事者が不在』なためです。LGBT高齢者自身もどう老後を過ごして良いかわからず、手つかずで、孤独死、自殺、エイズなどの病気の発症、相談相手のいない孤独な環境に陥っている方は沢山います」

それらは法整備の問題もあるが、同社ではそもそも民間のサービスがないことが原因と考えている。

「それで『LGBT高齢者もそうでない方も、気楽に相談が出来、終活をパッケージ化することでトータルの解決策を掲示する』コンシェルジュサービスを立ち上げることにしました」

これから増え続けるシニアライフをサポートする。その内容は多岐にわたる。例えば、相続手続きだけでも、精神的、肉体的、経済的な負担と訴訟リスクは大きい。原因は法律の不知と「相続金が低いから」等の思い込みによるものが多いという。そこで専門家の叡智を結集(アライアンス)し、シニアコンシェルジュサービスの提供を主業務とした。

「本サービスは、既存のサービス同士を組み合わせて新たな価値を生み出す事業だと思っています。そのサービスを受けた高齢者が安心な備えが出来、少しでも豊かな老後を送れたらどのような社会変化が起きるでしょうか? その人生の先輩たちの行動や姿勢を見た 若い現役世代が『歳を取ってからも安心だ!』という前向きな考えになる方はいらっしゃると思います」

「老後がイメージ出来れば『介護やお葬式の備えの保険に入ろう』『パートナーや配偶者のために遺言書を準備しよう』『毎月いくら貯金が必要だから節約。貯金以外は旅費で使おう』など、行動も変わるはずです。死生について考えることに恐怖する人は大勢いますが、それを前向きに考えられたら幸せだと思いませんか? 終活の第一歩として、面白おかしくつくれる自分史DVDづくりを商材にしているのもそのような思いから始めたのです」

そうして事業計画書の作成に取り掛かる。会社設立後はアライアンス先となる提携企業との正式契約を急ピッチで進める。会社登記や銀行口座の開設も予想以上の時間を要したが、なんとか年内の設立に間に合わせることができた。

「シニア世代の安心とそれを見た現役世代への希望をつくる」という同社の熱い理念に賛同してもらえたことで、シニア世代とシニア世代の親を持つ子供世代のお問い合わせも増えてきたという。

*注1 総務省「国税調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年4月推計)
老年人口のピークは2042年で3,935万人と予測されている。
*注2 Lesbian(女性同性愛者)・Gay(男性同性愛者)・Bisexual(両性愛者)・Transgender(性別越境者)の略。
電通ダイバーシティラボ2018年10月調査:日本全国の6万人に調査。LGBT該当者は8.9%だった。

サービスを永続的に成長させていく。そのために「共感」を増やしていく

「今後も、しっかりと寄り添ったサービスを提供していきます。そのためには当社の成長は欠かせません。ですから斬新な考えや独創的なアイデアを持っている方を積極的に採用していきたいと思っています。社会問題を解決する会社として資金調達を考え、いつかは株式上場も考えています」

現在、同社は新宿区営のオフィス(新宿区立高田馬場創業支援センター)に入居している。

「やはり毎月のランニングコストを考えると軌道に乗せるまでは、安価で信用力の高い施設の活用をお勧めします。新宿エリアを選んだのは昔から馴染みがあった場所だからです。交通アクセスが優れていることも選んだ理由の一つですね」

「2019年1月にフジテレビの『ザ・ノンフィクション マキさんの老後』というドキュメンタリー番組で、当社を紹介して頂きました。おかげさまでその反響が予想以上に大きく、当社のサービスを欲している方や共感してくださる方の多さを実感しました。これからも着々と行動を続け、色々な方からの『共感』を増やしていきたいと思います」

会社公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC1ghnyluyZx8ZLzO-KBsO4w/featured

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。