サテライトオフィス事例

サテライトオフィス構築事例

2018.3.26

総務省

2018年2月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

2年間の「お試しサテライトオフィス」プロジェクトで見えてきたものとは。

総務省では現在、関係府省と連携してテレワークの推進等による「働き方改革」を推進しています。省内でも複数の部局が並行してさまざまな取り組みを進めていますが、その一つが地域力創造グループ地域自立応援課が平成28年度よりこれまで2年度にわたって実施している「お試しサテライトオフィス」です。同プロジェクトの成果や今後の課題について梶原清氏にお話を伺いました。

 

総務省
地域力創造グループ
地域自立応援課
課長補佐

梶原 清氏

 

都市部から地方への人の流れを創出するための「お試し」プロジェクト

総務省の地域力創造グループは、「地域力の創造と地方の再生」をキーワードに掲げ、地域資源を生かして、人や資金の自立と域内循環を促し、活力ある地域づくりのためのさまざまな施策に取り組んでいる部局です。その活動の一環として「チャレンジ・ふるさとワーク」があり、地域自立応援課では平成28~29年度の2年度にわたり、「お試しサテライトオフィス」プロジェクトを推進してきました。これは、都市部企業等のサテライトオフィスの誘致に取り組んでいる自治体を採択し、それぞれの取り組みを支援しようというものです。

「平成28年度には10団体(=地方公共団体)、平成29年度には8団体を採択しています。初年度については2017年9月末までに各団体からの報告書をもとにデータを集計して調査報告書をまとめておりますが、10団体合計で延べ300社以上の企業等が『お試しサテライトオフィス』を利用されており、2017年10月時点でこのうち10社が正式にサテライトオフィスの開設を決定しています」(梶原 清氏)

地域自立応援課が同プロジェクトを実施した背景には、「都市部から地方への人の流れを創出しよう」という目的があります。そのために、企業誘致のノウハウを持たない地方公共団体が、プロジェクトを通じて企業側のニーズを把握し、具体的な誘致戦略を構築できるようにすることが狙いだと言います。その後、実際の誘致活動については、各地方公共団体がそれぞれの判断で行うことになりますが、同プロジェクトはそのためのモデル事業と位置づけられています。

「受け入れる側の地方公共団体にも誘致の仕組みづくりなどが必要になりますが、進出する側の企業にとっても、いきなり地方へ乗り込んで都心部と同じように仕事をするのはハードルが高いものです。そこで、各自治体の用意したサテライトオフィスの施設を使って実際に仕事をすることで、企業側の心理的な障壁を取り除くという目的もあります」(梶原氏)

株式会社えんがわ(徳島県)のオフィス:総務省Webサイト「おためしサテライトオフィス」より

人口減少に歯止めをかけたい自治体側と優秀な人材を確保したい企業側

モデル事業では、行政のスタンスにより「お試し勤務」の期間やサテライトオフィスの設備などの面で地方公共団体ごとに違いがありました。短いところではできるだけ多くの企業に体験してもらえるように1泊2日・2泊3日程度の日程を組んでいる自治体もあり、長いところでは数週間から数ヵ月単位で入居して実務の一部を実際に行ってもらうというケースもありました。

「短期間の日程の場合は、メンバーを替えながら何回か利用したリピーター企業もあります。お試し期間中の施設使用料は原則として自治体が負担するため、企業側は宿泊滞在費などの実費負担のみでこれらの施設を利用することができます。誘致する側の目的や予算の都合もありますから、今回のモデル事業では、特に施設環境やお試し期間について基準を設けるようなことはせず、現場の自主判断を尊重しております」(梶原氏)

前述の通り、平成28年度には採択10団体合計で延べ300企業等がお試し勤務を利用しましたが、各団体平均30社前後ということではなく、企業からの問い合わせが殺到した団体もあれば、意図的に受け入れる企業を数社に限定した団体もありました。

「自治体によって企業を誘致する目的はさまざまですが、共通しているのは『人口減少に歯止めをかけたい』という期待です。地方での人口減少は都市部への流出が主な原因ですが、その根底にあるのは『地元に仕事がない』という悩みです。地元に働ける場所があれば、都市部へ出て行った地元出身者が帰ってくるUターンや、地縁のない外部の人間が新たに移住してくるIターンなどの人口流入が期待できるからです」(梶原氏)

実際にお試し勤務を利用した企業の中には、「経営者などが地元出身者」や「移住者から紹介された」というきっかけによるケースが多く見られました。ただし、自治体側では、誘致した企業の人員に対して、地域産業である農業や観光業とのデュアルワークなどの展開を期待しているところも一部あったのですが、残念ながらこちらの面では期待していたような成果には結びついていないというのが現状です。

「一方で、企業側の目的としては『人材の確保』を挙げているところが目立ちます。近年は都市部での人材採用が難しい状況が続いているため、地方志向のある優秀な人材を確保したいと期待している企業は予想以上に多いようです」(梶原氏)

執務スペース

株式会社アラタナ(宮崎県)のオフィス:総務省Webサイト「おためしサテライトオフィス」より

2年間の事業を通じて得られた成果と、見えてきた今後の展開への課題

地域自立応援課がまとめた調査報告書には、平成28年度の採択10団体のモデル事業の概要や分析などが詳しく記載されています。たとえば、「実態調査結果」という項目を見ると、行政担当職員やお試し勤務事業者などを対象に行ったヒアリング調査の結果が詳細に綴られています。ここには、現場からの生々しい声も多数寄せられています。

「特に地方では『サテライトオフィス』と『コワーキングスペース』が混用されている感がある。施設としてのセキュリティ要件も大きく異なる」(お試し勤務企業A)

「業務実施において電話応対時に声が漏れてしまうことがセキュリティ面で気になる。また、機密文書の保管場所がないことも問題」(お試し勤務企業B)

もちろん、すべての施設がこうした問題を抱えているわけではありませんが、自治体側のノウハウやセキュリティの認識不足も、今後解決すべき課題の一つと言えそうです。

「お試し勤務の実績は市街地の施設に偏重。郊外の公共施設は市街地から離れていることもあり、利用するお試し勤務企業等はほとんど見られない」(行政担当職員A)

自治体としては、ターミナル駅前などの市街地よりも、土地が余っている郊外に企業を誘導したい思いがあるのでしょうが、企業にとっては魅力を感じられないのでしょう。

「勤務環境のみならず、宿泊環境まで一体的に提供していることもお試し企業を確保できている大きな要因」(行政担当職員B)

「現状の主な課題は、お試し勤務企業に提供する住居が不足していること(空き家はあるもののオーナーがなかなか手放さない)」(行政担当職員C)

これらもまた、誘致する側としてクリアすべき重要な課題を示しています。

今回のお試し勤務を経て、将来的にサテライトオフィス開設を検討中の企業からは、こんな声も上がってきています。

「東京勤務の要員におけるサテライトオフィスでの勤務ニーズは低い。サテライトオフィスを開設する場合、要員は地元で雇用することになる」(お試し勤務企業C)

「一足飛びに現地人材の獲得は困難であるため、当面は東京本社の要員が地方拠点に移動し、ある程度軌道に乗った段階で、現地人材の確保に着手する考えである」(お試し勤務企業D)

なお、「お試しサテライトオフィス」モデル事業は今年度で終了しますが、地域自立応援課では次年度以降、お試し勤務の受入れを通じたサテライトオフィス誘致の取り組みに対して特別交付税措置を講じます。それととともに、「サテライトオフィス・マッチング支援事業」により、引き続き企業とサテライトオフィス誘致に取り組む団体とのマッチングの機会の創出を図る地方公共団体を支援していくことになります。

「『自然が豊か』『ラクラク通勤』『ストレスフリーな環境』などの魅力をアピールしてくる自治体も多いと思います。しかし企業にしてみればどこも同じようなものですから決め手にはなりません。むしろ、地域が抱えている課題や特性を比較した上で、『自分たちならその課題を解決できるノウハウがある』と考えることこそ、企業にとって『その土地にサテライトオフィスを開設しなければならない必然性』につながるものなのではないでしょうか」(梶原氏)


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