サテライトオフィスは、
「働き方改革」を成功に導くための有効な手段の一つ

国が主体となって取り組んでいる「働き方改革」。現在、総務省や厚生労働省、内閣府などの関係省庁が足並みを揃えて様々な試みを推進しています。その中でも、テレワーク・リモートワークは、導入までの道筋が比較的整備されているといえるでしょう。そして、テレワーク・リモートワークを制度として職場に定着させる有効な手段と考えられているのが、「サテライトオフィス」なのです。このコーナーでは、サテライトオフィスの概要から役割、導入効果をまとめてみました。導入をご検討の際の参考にしていただければ幸いです。

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はやわかりメモ
  1. サテライト(satellite)は「衛星」、「本体を離れて存在するもの」の意
  2. 歴史的に見たサテライトオフィスの立地傾向と求められる役割
  3. 企業と社員。その双方にとって導入効果が期待されるサテライトオフィス

サテライト(satellite)は「衛星」、「本体を離れて存在するもの」の意

今や、サテライトオフィスの用語としての認知度は非常に幅広いものになってきています。「サテライトオフィス 開設」とキーワード検索を行なえば、ヒット件数は膨大なものになります。しかし、個々の事例を一つひとつ見ていくと「サテライトオフィス」と呼ばれてはいても、さまざまなバリエーションがあるようです。

まず、支店・営業所・出張所といった、「遠隔地にある(半ば独立した)営業拠点」としてのサテライトオフィス。これを仮に「タイプA」としておきます。

次に、人員増員や新規事業立ち上げなどの目的から、主に本社オフィスの近隣などに設けられたオフィス。これを「タイプB」とします。

企業に属するワーカーが通勤の便の良い自宅周辺やターミナル駅周辺などに仕事場所として確保するサテライトオフィスもあります。これを「タイプC」とします。

そして、総務省の「お試しサテライトオフィスプロジェクト」のように、国や自治体による地方創生のために設置されたサテライトオフィスがあります。これを「タイプD」とします。

これらのうち、狭義のサテライトオフィスといえるのが「タイプC」および「タイプD」であり、「タイプA・B」は、これまで「営業所」や「分室」として区別されてきました。しかし、今日では、これらも広義のサテライトオフィスに含む傾向があります。

そもそも、サテライトオフィスの語源は「衛星」を意味するサテライト(satellite)であり、その意味は「本体を離れて存在するもの」。すなわち、本社から分離して存在する施設はすべてサテライトオフィスと呼称しても差し支えないということ。ここでは工場や物流倉庫、店舗などを除いたものを、ひとまずサテライトオフィスと総称しておきます。

歴史的に見たサテライトオフィスの立地傾向と求められる役割

 もちろん、厳密にいえば営業所は営業所、分室は分室であって、サテライトオフィスと完全にイコールではありません。そこを敢えて総称するのは、今日のビジネスでは営業所や分室の持つ役割が、狭義のサテライトオフィスと重複する部分が大きくなってきているからです。

狭義のサテライトオフィスの日本第1号とされているのは、1988年に埼玉県志木市の東武東上線柳瀬川駅前に開設された「志木サテライトオフィス」といわれています。これは大手企業数社の共同による実験施設で、都心から在来線で1時間前後の距離に立地する「郊外型サテライトオフィス」となります(現在は株式会社化し、起業家向けのスタートアップオフィス、インキュベーションオフィスとして存続)。それから約30年を経て、サテライトオフィスの範囲は大きく拡がりました。現在では「郊外型」に加え、「地方型」「都心型」のサテライトオフィスが存在しています。そして「地方型」には前述のA・D、「都心型」にはBが含まれます。

かつて地方営業所は、人員の現地採用と地元密着型の展開をビジネスの基本としていました。札幌営業所なら札幌市内、または北海道内の顧客に対応できれば十分役割を果たせていました。しかし、近年は県外や海外からの顧客への対応が必要な場面も増えており、これに伴い、地方営業所でも本社と同等の顧客対応やサービスの提供が求められています。

また、クラウド化の発展に伴い、地方からの出張者が東京本社で、本社の出張者が地方営業所で、それぞれ本来の業務を遂行することも可能となっています。かつては出張先からいちいち持ち帰って処理していた案件を、出張先で処理できるようになったのです。これは業務の効率化と処理のスピードアップを実現するタッチダウンオフィスとしての機能で、この機能を持つ営業所や分室ならサテライトオフィスと呼称しても問題ないでしょう。なお、こうした地方営業所では本社採用者がUターン・Iターンで配属されるケースも珍しくないそうです。

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企業と社員。その双方にとって導入効果が期待されるサテライトオフィス

 現在、官民一体となって推進中の「働き方改革」において、サテライトオフィスが重要な位置を占めています。総務省が2017年1~2月に三大都市圏の企業約6万社を対象に実施した調査(有効回答約1万960社)によれば、サテライトオフィスを「導入済み」が8%、「検討中」から「興味がある」まで含めると計28%が導入に前向きな姿勢を示しました(※1)。それでは、サテライトオフィスの導入が何故、働き方改革につながるのでしょうか?

例えば――「営業所」と「支店」ではどこが違うのでしょう。それは規模の大小が関係していると思われます。企業によって基準は違うのでしょうが、一般に、「営業所」は規模が大きくなれば「支店」に格上げされるようです。さらに規模が大きくなれば「支社」に。逆に、営業所より小さな規模のものは「出張所」と呼ばれることもあります。つまり、規模の大小によって呼称が変わり、位置づけや役割も変化していることがわかります。

これに対して、サテライトオフィスでは規模の大小は関係ありません。理論上は本社より大規模なサテライトオフィスがあっても不思議ではないのです。仮にそんなことがあったとしても本社に格上げされることはありません。何故なら、サテライトオフィスとは、本社―支店―営業所のような会社組織上の「業務分掌」に基づく位置づけではなく、個々の構成員の「働き方」に基づいた位置づけだからです。

2017年7月24日(月)、「働く、を変える日」をキャッチコピーとする「テレワーク・デイ」が施行されます(※2)。これは厚生労働省や内閣府など関係省庁が経済団体と連携。東京五輪開催を契機とした「働き方改革」の国民運動を展開するべく、交通機関が混雑する始業から10時半までの間、一斉テレワークの実施および効果検証を行うというものです。

この取り組み自体は、2017年2月24日に実施されている個人消費喚起キャンペーン「プレミアムフライデー」(※3)や小・中・高の長期休暇の一部を別の時期に分散して、親世代の有休取得促進効果を狙う「(仮称)キッズ・ウィーク」(※4)と同様、行政によるトップダウンという色彩が強く、実効性を懸念する声もあります。しかし、民間企業の中にはこうした行政主導の「働き方改革」の取り組みが始まるずっと以前から、「在宅ワーク」や「ワークシェアリング」など、主にワークライフバランスの実現などを目的として独自の施策に取り組んできた事例も少なくありません。サテライトオフィスの導入はその典型例なのです。

サテライトオフィスの導入効果として、企業側が期待するのは、「働き方改革」や地方創生事業に貢献することで得られる「企業イメージの向上」があります。加えて、補助金・給付金等の受給、本社オフィスの賃借面積縮小による賃料削減や社員の通勤交通費などの圧縮によって得られる「コストメリット」などもあるでしょう。

一方、社員側から見ると、「働き方改革」による「業務効率の改善」、通勤時間短縮など「利便性の向上」。そして、サテライトオフィスの立地によっては「プライベート時間の充実」などが考えられます。

参照)

※1 『日本経済新聞』2017年5月24日 電子版URL
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO16747870T20C17A5L71000/

※2 テレワーク推進フォーラム テレワーク・デイ特設サイトURL
http://teleworkgekkan.org/day0724/

※3  プレミアムフライデー推進協議会公式サイト
https://premium-friday.com/

※4  首相官邸公式サイト
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201705/24kyouiku.html


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