テレワーク特集 Vol.3~テレワーク事例 サイボウズ株式会社~

Vol.3 テレワーク事例 サイボウズ株式会社

2020年7月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

10年間のノウハウの蓄積で実現した、サイボウズの「100人100通りの働き方」。

2010年8月に初めて試験的にテレワークを導入してから、足かけ10年。機材の性能もまだ低く、社内制度も十分ではなかった時代にスタートしたサイボウズのテレワークは、10年かけて最大限の効率と効果を発揮できる環境を手探りでつくり上げてきました。2011年3月の東日本大震災や、今回のコロナ禍のように「社員全員、原則として在宅勤務」という緊急事態でこそ改めて注目される、サイボウズの10年間の経験値と培ってきたノウハウについて、チームワーク総研アドバイザーの小山素子氏にお話を伺いました。

小山 素子 氏

サイボウズ株式会社
チームワーク総研アドバイザー

小山 素子 氏

早わかりメモ

  1. 社員からの声で在宅勤務を導入。震災により社員全員在宅勤務体制に
  2. 「オフィス不要論」に対して社員の出した結論は「ハブとして必要」
  3. コロナ禍で改めて見えてきた「オンラインの可能性」と「リアルの価値」

社員からの声で在宅勤務を導入。震災により社員全員在宅勤務体制に

「Garoon」「kintone」などの自社製グループウェアの開発・販売・運用とともに、2017年11月には「チームワーク総研」を立ち上げ、チームワーク強化メソッドの開発・販売・提供を事業の柱としているサイボウズ株式会社。
同社が最初にテレワークを導入したのは、旧オフィス時代の2010年のこと。産休・育休中の社員から「在宅勤務できるようにしてほしい」という声が上がり、同社取締役副社長・山田理氏がブログで問題提起したのがきっかけでした。その後、「仕事Bar」(自由参加で、リラックスした雰囲気で真面目に仕事の話をする場=Bar。会社から飲食費補助あり)を開催し、3回にわたってテレワーク導入について議論され、同年8月から試験運用が開始されました。

「ただし、当初は在宅勤務を認められるためのハードルが非常に高く、運用ルールも細かく定められていたので、希望する人もそれほど多くはなかったと聞いています」

小山氏は2015年の入社なので、当時を知る先輩社員に聞いた話になりますが、最初期のテレワークでは、「事前に申請し、上司の承認を得ること」「事後に詳しい報告を上げ、上司の評価を受けること」「在宅勤務は1カ月に4日間まで」等の厳格なルールで運用されており、社員からは「オフィスに出勤したほうが楽だ」と思われていたようです。

「2011年2月から本運用を開始したところ、3月には東日本大震災が発生し、『東京オフィスの社員全員、原則として在宅勤務』へ移行することになりました。期間は1週間程度でしたが、『やってみたら、意外と何とかなった』という成功体験を得ることができ、それが今回のコロナ禍への対応にもつながっていると思います」

「オフィス不要論」に対して社員の出した結論は「ハブとして必要」

同社は2015年7月に東京オフィスを現在の日本橋へ移転しましたが、移転プロジェクトがスタートする少し前、同社代表取締役社長・青野慶久氏は「オフィスはもういらないのでは? 全部バーチャルでいいんじゃないか?」と考え、社員たちに意見を聞いてみたそうです。

「重要な案件がトップダウンでいきなり決まることはなく、必ず社員からの意見を聞いて、議論する場を設けるのがサイボウズ流です。この時も、社員から『やっぱり、リアルに顔を合わせる場所があった方がいい』と反対意見が多く、後に有志による移転プロジェクトチームが発足すると、『そもそも、何故オフィスは必要なのか?』という根本的な認識について、ゼロから議論されることになりました」

議論の結果、「オフィスはHub(ハブ)として必要だ」という意見が大勢を占め、新しい東京オフィスのコンセプトは「Big Hub for Teamwork」と決定されました。ここで言うハブとは、「拠点」であると同時に、「お客様とつながるための中継装置」という二つの意味があるといいます。

「当時、すでにテレワークは現状に近い制度で運用されており、すべての会議室でテレビ会議可能なシステムが導入済みでした。ただし、『オフィスとはリアルな出会いの場』であることを重視していたので、全面テレワーク移行などは想定していませんでした」

コロナ禍で改めて見えてきた「オンラインの可能性」と「リアルの価値」

震災直後の全社テレワークでは、自宅がオフィスに近い人の中には出社していた者もいたそうですが、2020年のコロナ禍では、5月下旬の緊急事態宣言解除後も在宅勤務を続ける者が多く、出社率は1割前後だといいます。

「震災後、テレワークに関するルールは段階的に緩和されていき、2012年7月からいつもとは異なる働き方を単発で行える『ウルトラワーク』の試験運用が開始されました。これは、在宅勤務を含めて働く場所と時間を自分で決めることができ、9時~18時以外の時間帯でもOK、自宅でもオフィスでもカフェでも好きな場所で仕事をすることができるという制度です」

その後、2013年7月にはウルトラワークの本運用、同年11月からは9分類から基本となる働き方を選べる「選択型人事制度」の本運用など、同社は引き続き働き方の多様化に取り組み、社員からのフィードバックを受けて社内にノウハウが蓄積されていきました。

「当社も最初から信頼ベースの考え方だったわけではありません。新しい制度を運用し始めるときは運用ルールをガチガチに定め社員からのフィードバックをこまめにききながら反映・改善を続け、徐々に緩和してきました。基本的に社員を信頼しているので、現在は細かく監視などはしていません。これが段階的に発展していったものが、100人100通りの働き方が選択できる現在の『働き方宣言制度』です」

同社の10年間のノウハウから、テレワークを効果的に行うポイントを伺ってみました。

「一つは在宅勤務で使用するPC等の機材です。以前は私物のPCを使用するケースもありましたが、パフォーマンスの低下やセキュリティ面の不安などから、現在は会社負担で高スペック・高セキュリティの機材を支給しています。もう一つは『信頼感』。監視や頻繁に報告を求められると、社員は『信頼されていない』と感じ、モチベーションが低下します。信頼感がなければ、在宅勤務を続けるのは困難です」

この信頼感のベースとなるのがチームワークです。コロナ禍による在宅勤務となってから、それまで定例ミーティングをしていなかったチームも、朝礼や3時のお茶会などを設けてコミュニケーションの場としています。上司と部下の週に1度の「ザツダン」も、対面からオンラインに切り替えて継続中。さらに、ネット上にバーチャルラウンジを開設し、そこに行けば誰かがいるかもしれない、という緩やかなつながりの場としています。

「個人的には、『オンラインの可能性』に気づくと同時に、改めて『リアルで人に会う価値』に気づけたと思います。リアルとバーチャル、それぞれの良い面を評価していきたいですね」

テレワーク年表

*今回の取材は「オンライン」で行いました。

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