テレワーク事例 株式会社カヤック
2020年7月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
カヤックが取り組んだWithコロナでの働き方。
「NO密オフィス」を構築し「出社」を推奨する。
創業以来、面白コンテンツの制作を主軸に事業を拡大してきた株式会社カヤック。型破りな人事評価制度や一定期間、働きたい場所にオフィス兼住居を借りて、そこで仕事をする"旅する支社"という自由な働き方など、既成の枠にとらわれない社風やワークスタイルは多くのメディアで紹介されてきました。しかし今年に入り新型コロナウイルスが発生。多くの企業が感染予防対策としてテレワークを推進する中で、同社ではあえて「出社」を推奨することに。その意図はどこにあるのか? 今回の取材では広報部・人事部の梶陽子氏にお話をお聞きしました。

株式会社カヤック
広報部・人事部
梶 陽子 氏
早わかりメモ
- 起業時から「面白い」にこだわり、その延長線で鎌倉に本社を移した
- リアルに人と会うことがオフィスの価値。そのために「NO密オフィス」を構築した
- リモートワークが増えたとしても「人と交わる」重要性は変わらない
起業時から「面白い」にこだわり、その延長線で鎌倉に本社を移した
面白法人カヤックの設立は1998年8月のこと。大学の友人であった創業者3名の名前、貝畑(KAihata)、柳澤(YAnasawa)、久場(のあだ名のCap)の頭文字をとってKAYACという名前になりました。起業時から「面白い」にこだわるため「面白法人」と名付け、面白いものを生み出したり、世の中に面白がる人が増えたりするにはどうすればいいのかを考え、経営理念は「つくる人を増やす」としました。
「当社は2002年9月に神奈川県鎌倉市に本社を移転しました。その理由は多様性や個性を生かした企業にしたいから。以前から東京に企業が集中するのではなく、企業ごとにそれぞれの地域で特色を生かした方が多様で面白いという考えを持ち続けていました。当社では創業者が大学時代からなれ親しみ、好きだという鎌倉に本社を置こうと創業時から決めていたと言います。鎌倉は豊かな自然と文化、そして『多種多様な価値観を受け入れる土壌』を持ち、『新しい文化を生み出す力』を備え、『世界に向けて発信する力』を有しているのも魅力です」
それから約18年。今では、「まち全体が、ぼくらのオフィスです。」を合言葉として、JR鎌倉駅を中心にオフィスを配置。景観法で高い建物が立てられない、広い土地がないことから、9ヵ所に分散しています。それを利点と捉え、点在するオフィスを社員が行き来することで地域の人たちや地元のお店との関係を深めて、まちの地域活性につなげてもらいたいと考えています。
「当社はもともと『職住近接』を提唱してきました。そのため仕事だけではなく、鎌倉での生活も楽しんでもらうために鎌倉近郊に住む社員に住宅手当をつけています。そんな施策も実り、現在約4割にあたる120名の社員は鎌倉近郊から通っています。そして多くの社員は徒歩や自転車、江ノ島電鉄を利用し、満員電車のストレスから解放された生活を手に入れています」
しかしながら、今年2月からは、コロナの影響のため約9割の社員がテレワークとなっていました。
「会社の出退勤システムはかなり前からPCで管理していますし、書類の決裁も電子申請システムを導入しています。ですから全面的にテレワークに移行したとしてもシステム上で混乱することはなかったですね」
リアルに人と会うことがオフィスの価値。
そのために「NO密オフィス」を構築した
コロナ禍においてテレワークでの混乱はないものの、自宅用の机や椅子は機能も劣るため、「腰が痛い」「集中できない」という社員の声もあり、自主的に出勤する社員もいました。また、オンラインだと気軽に雑談したり、相談したりすることも難しくなり孤独感を感じる社員もいました。
今まで当り前のように使用していたオフィスですが、その利便性にあらためて気づく社員が増えてきました。
「昔からブレストや偶発的な出会いから斬新なアイデアが生まれることが多い会社でしたから、テレワーク中心となることでコミュニケーションが低下することを危惧していました。しかしコロナ禍の中で、簡単にオフィスへの出社推奨を唱えることはできません。そこでまずは新型コロナウイルス感染への万全な対策を整備することにしたのです」
それから3密を避けることを目的としたオフィスリニューアル計画の舵が切られることになります。対象となるのは、社員が執務スペースとして利用する「ぼくらの会議棟」「研究開発棟」と「元銀行棟」。チャットアプリを効果的に活用し、社員間の意見交換を行いながら進めました。6月1日から順次、「NO密オフィス」となり、出社の推奨が始まりました。
リニューアルオフィス「NO密オフィス」の概要は以下の通りです。
1.NO密閉空間
・執務スペースは定期的に窓を開けて換気を実施する。
・各会議室にはCO2濃度計を設置。内外の差が600ppm以上は換気を行う。
2.NO密集場所
・デスクを横並びからクラスター型に変更。お互いが顔を合わせないようにした。
・各オフィス、各会議室の定員を厳守するため明確なサインをつけた。
・会議室は4名をMAXに。同じ内容の会議であっても部屋を分けることにした。
3.NO密接場面
・前面に鏡を設置することで全員が壁を向いてオンライン会議できる会議室を設置した。
・階段での動線は一方通行の上り専用と下り専用とに分けた。
4.その他
・座席を340席から170席に削減した。
・社員には週に2~3日の分散出勤を推奨。
「もちろん感染者の増加状況や感染力の変化によっては、安全性を考えてテレワークへ切り替えていくかもしれません。その場合は社員の評価方法も採用方法も変わってくると思いますが、まだその段階ではないと考えています」
オフィスレイアウトや社内ルールについては社員からの意見を随時受付けているという。
「その都度、検討しながら改善していくのが当社の文化なのです」
リモートワークが増えたとしても「人と交わる」重要性は変わらない
同社ではタスク管理のような効率の良さが求められる業務はテレワーク、打ち合わせをしながらブラッシュアップが必要な作業は対面。そんな使い分けをしていきたいとのこと。
「時代とともに価値観は変わっていきます。テクノロジーの発達次第ではテレワークへ移行できる業務も大幅に増えていくでしょう。しかしその根底にある『人と交わる』ことの重要性はいつまでも変わることはないと思っています」

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