株式会社ビーグリー

2025年10月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

多様なワークスペースを持つオフィスで
進化したエンターテインメントの創出へ

コミック配信サービス「まんが王国」の運営をメインに事業展開する株式会社ビーグリーは、20258月に本社移転を行った。今回は移転の背景と、オフィスに構築した新たな機能についてお話を伺った。なお、本案件は三幸エステートが物件の仲介とオフィス構築のプロジェクトマネジメントを担当した事例となる。

吉田 仁平 氏

株式会社ビーグリー
代表取締役社長

吉田 仁平 氏

山田 彬裕 氏

株式会社ビーグリー
執行役員
経営管理本部 本部長

三吉 達治 氏

山田 彬裕 氏

株式会社ビーグリー
総務部 総務インフラチーム

山田 彬裕 氏

稲原 雄二

三幸エステート株式会社
法人本部

稲原 雄二

黒澤 知也

三幸エステート株式会社
プロジェクトマネジメント部

黒澤 知也

Contents

  1. 「創る」「選ぶ」「届ける」で心を動かすコンテンツサービスを展開
  2. 「立地×グレード×コスト」、バランスに優れた物件との出会い
  3. ビーグリーの世界観を保ちながら誰もが行きたくなるオフィスへ
  4. 「遊び心」と「探究心」、開放感が具現化された新オフィス
  5. このオフィスで人と人との関係性を深め、組織全体の効率を高めていく

エントランス

エントランス

「創る」「選ぶ」「届ける」で心を動かすコンテンツサービスを展開

株式会社ビーグリーは、200410月に創立されたコンテンツプロデュースカンパニー。「Beaglee」という社名は、「進化論」で知られるチャールズ・ダーウィンが世界航海に使用した船の名「Beagle」号に由来している。その名が示すように「固定観念にとらわれる事なく、新しい発見と進歩を求め続ける」を企業理念に掲げ、従来の出版・配信ビジネスにデータ分析・AIレコメンド・自社ビューワー(Next Viewer)開発などの技術を融合。コンテンツとファンの最適なマッチングを実現している。コミック・小説などのデジタルコンテンツの提供や、子会社を通じたコンテンツの企画・制作など、作品を「創る」から「選ぶ」「届ける」まで一貫した体制でサービスを提供している。

同社が運営する「まんが王国」は、徹底した広告オペレーションなどによってコストの最適化を図り、ユーザーへの還元につなげている。それにより多くの人々に支持され、2025年には会員数900万人超、累計ダウンロード数24億冊以上を記録。また、作者と読者をつなげる小説投稿サービス「ノベルバ」の投稿作品数は2万件を超え、出版社との協業によるコンテストも開催。さらには「まんが王国」と連携し、投稿作品を原作としたコミカライズの制作・配信を行うなど、クリエイターの創作活動を多角的に支援している。

「立地×グレード×コスト」、バランスに優れた物件との出会い

旧オフィスは港区北青山に立地するオフィスビルに2014年から入居。200坪弱のスペースに、約120名の従業員が在籍していた。全員出社を前提としていたがコロナ禍で在宅勤務推奨となり、その後は出社とリモートのハイブリッドワークを採用。出社率は最大でも4割程度だったため使われないエリアが目立ち、「スペースを有効活用できていない」という課題があった。

「旧オフィスは最寄り駅に近く、コストパフォーマンスも高いビルでした。しかし、契約更新のタイミングでもあり、良い物件があれば移転を検討しても良いのではと考えていました」(吉田氏)

「そこで、以前からさまざまな情報提供をしていただいていた三幸エステートの稲原様に、移転先候補の提案をお願いしたのです」(三吉氏)

法人本部の稲原雄二が迅速に対応していく。まず、新宿や渋谷、外苑前、溜池などのエリアを中心に、資料ベースで約50棟をピックアップした。

「もともと非常に良いオフィスビルにいらっしゃったこともあり、ビルグレードや立地の良さを重要視しながらご提案しました」(稲原)

そこから20棟ほどに絞って内見を行ったが、ある1棟の物件に強い魅力を感じたという。旧オフィスと同じ約200坪の広さと駅直結というアクセスの良さはもとより、何より「赤坂」というエリアが同社には特別な場所だったからだ。

「千代田区は、子会社のぶんか社を始め、当社と関係の深い出版社が多く立地しております。また、大株主の日本テレビホールディングス様とも近くなり、理想的といえる場所でした。当社は若い従業員が多いため、出社するモチベーションを高めてくれるようなグレード感も重要と考えていました。それでいてコスト面も想定通りで、あらゆるバランスが優れた物件でした」(吉田氏)

ビーグリーの世界観を保ちながら誰もが行きたくなるオフィスへ

そして202411月末の取締役会で移転が決定。すぐに内装デザイン会社選定フェーズへ進んだ。三幸エステートからはプロジェクトマネジメント部の黒澤知也が参加し、同社と内装会社との間に入ってスムーズな進行に努めた。

2社に参加いただき、コンペを実施しました。両者ともに素晴らしいデザイン案でしたが、工事期間が短かったこともあり、同規模ビルの施工実績も考慮して選定しました」(三吉氏)

20251月からは4名のプロジェクトチームが組まれ、毎週定例会を開催した。重視したのは「開放感のある空間」「ハイブリッドワークに最適な設計」、そして「会社のイメージに合うデザイン」だった。

「我々の事業イメージと通ずる空間にしたいと考えていました。とはいえ、華美になるのは避けたい。世界観を保ちながら、誰もが行きたくなるオフィスを目指しました」(吉田氏)

席数やインフラなどの機能面はプロジェクトチーム主体で進め、デザインについては要所で吉田氏が判断。新オフィスのデザインコンセプトは社名の由来となった船「Beagle」とした。さまざまな箇所に船舶を想起させるモチーフを散りばめ、色調や素材、椅子、照明など、一つひとつにビーグリーらしさを反映していった。その結果、非常に短期間だったにも関わらず、理想的なオフィスが完成した。

「意思決定が非常に早く、毎週の議題を事前に決めたうえで進行できたことがスピードアップにつながりました。設計定例と工事定例を同時並行で行った点も、時間短縮に大きく寄与したと思います」(黒澤)

「遊び心」と「探究心」、開放感が具現化された新オフィス

それでは、新オフィスを紹介しよう。エントランスに足を踏み入れると、淡いベージュを基調とした壁に青いカンパニーロゴが輝いている。レセプションカウンターは船の甲板を思わせるデザインで、奥の壁には丸窓のようなミラーを設置。右奥に見える、深いブルーで彩られたゲスト用会議室の扉には雰囲気のある丸窓とランプが取り付けられ、まるで船の中にいるような空間だ。「遊び心」と「探究心」が具現化された、まさに同社を象徴するデザインといえる。

ゲスト用会議室は、12名用と8名用をそれぞれ1室と、6名用2室を設けた。それぞれの部屋は「Altair(アルタイル)」「Deneb(デネブ)」といった、かつて航海の指針となった星の名前が付けられている。

6名用会議室

6名用会議室

8名用会議室

8名用会議室

会議室名「Altair」

会議室名「Altair」

エントランス左側の従業員用扉から入室すると、その先には執務エリアが広がる。間仕切りを極力減らしたことで、奥の社長室からでも見渡せるほど開放的な空間となっている。常時出社している従業員の比率を考慮して固定席は35席に絞り、フリー席は25席設けた。他にも、カウンター席やファミレスブース、ソファブースに集中ブースと多様なフリースペースを用意。カフェカウンター休憩用ソファも設けられており、全ての席を合わせると全員が出社しても問題ない席数だという。また、新たに個人ロッカーも設けられた。新オフィスは以前と変わらない約200坪の面積ながら、自由度と機能性が大幅に向上。誰もが快適に仕事ができるバランスを実現している。

執務エリア

執務エリア

ファミレスブース

ファミレスブース

フリースペース

フリースペース

カフェカウンター

カフェカウンター

休憩用ソファ

休憩用ソファ

自由に使えるスペースが増えた新オフィスだが、運用に際し厳密なルールは設けていない。それでも席の独占や設備などに関して大きな不満の声はなく、自然に秩序が保たれているという。

「最初は人気席ができて取り合いになるかもしれないと懸念しましたが、皆譲り合って使ってくれています」(三吉氏)

「個々にお気に入りの場所、居心地の良い場所を見つけているようです。私もフリースペースを使うことがありますが、気分転換ができ新鮮な気持ちになりますね」(吉田氏)

このオフィスで人と人との関係性を深め、組織全体の効率を高めていく

「ゲストの方からは、『御社らしいデザインですね』との声をいただくことが増えました」(吉田氏)

従業員からも、評判は上々だ。出社率こそ大きな変化はないものの、オフィススペースの活用度は高まり、コミュニケーションの質も変わってきている。

「カジュアルな会議は、フリースペースでできるようになりました。会議室数は旧オフィスと変わりませんが、このスペースが増えたことで、会議室の予約も取りやすくなっているようです」(吉田氏)

「業務の内容や部署によって出社率は異なりますが、出社してコミュニケーションが増えるのはやはり良いことだと感じています。業務の話だけでいえば、オンライン会議や進捗表の確認などで事は足りますが、何気ない会話がアイデアを生むきっかけになることも多くあります。それは対面の方が生まれやすい。オフィスは、そういう関係性を深めるための場だと考えています」(吉田氏)

リクルーティングについても効果が期待できそうだという。

「面接に来られる方は新旧両方のオフィスを見るわけではないので比較はできませんが、企業としてのブランド力は間違いなく向上していると思います」(三吉氏)

また、新旧ともにほぼ同じ面積でありながら、新オフィスの方が広く感じるという声が多いという。開放的かつ無駄のないデザインで、オフィスの使われ方が変わったことによるものだろう。これを生かし、今後は社内イベントなどの交流の機会を増やしていきたいと語る。

「年末の納会以外にも、コミュニケーションの活性化を目的としたイベントを増やしていきたいと考えています。柔軟性のあるオフィスだからこそ、いろいろな使い方を試すことができそうです」(吉田氏)

コロナ禍以降、オフィスの必要性が議論され、より自由な働き方が広がっている。そんな中、今回の移転を機にあらためてオフィスの重要性を実感しているという。

「業務の都合もありますが、私は出社することで仕事が捗るタイプです。家で集中できる人もいれば、会社の方が効率が上がる人もいます。会社が両方の選択肢を提供することが、今の時代の『働きやすさ』につながると思います」(山田氏)

「入社後すぐに完全リモートにしてしまうと、誰に相談すれば良いか分かりません。まず従業員同士の関係性を築いた上で、徐々に移行していくべきだと思います。対面で話した方がお互いの納得感が高いように感じています」(三吉氏)

「人間関係が築けていれば、リモートでもいろいろなコミュニケーションが取れるかもしれません。ですが、リモートがマイナスに働くことも有り得ます。まずは人と人の関係性を構築する。そのための『場』として、やはりオフィスは必要です。何かあった時に、集まれる場所があるということが大切なのです。今後もさまざまな工夫をしながら人間関係を深め、コミュニケーションをより円滑にすることで、組織としての効率を高めていきたいと考えています」(吉田氏)

株式会社ビーグリー

オンライン動画サービス「Hulu」において、電子コミックの提供を開始した株式会社ビーグリー。「ノベルバ」では有名タレント原案の作品も登場するなど、新たなコンテンツを次々と生み出している。「まんが王国」の運営を中心にコンテンツプロデュースを行ってきた同社は、エンターテインメントの進化と多様化に向けこれからも尽力していく。


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