株式会社CloverWorks

2024年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

一般に公開されていない空室情報の提供が
移転プロジェクトを成功に導いた

株式会社CloverWorksは、ソニーグループ傘下でアニメーション制作をしている株式会社A-1 Picturesから分割する形で設立。以降、さまざまなジャンルの作品を制作してきた。事業拡大による増員を都度行ってきたが、ビル内増床は難しく、近隣エリアにオフィスを求めるといった施策で対応していた。しかし、オフィスの分散は業務効率を悪化させる要因となることから、以前からオフィスの統合を切望していたという。今回の取材では、オフィス統合の背景と新オフィスに構築した新たな機能についてお話をお聞きした。

倉澤 太一 氏

株式会社CloverWorks
業務グループ
業務部 部長

倉澤 太一 氏

髙村 江美 氏

株式会社CloverWorks
マーケティンググループ
マーケティング部 部長

髙村 江美 氏

谷脇 凱登 氏

株式会社CloverWorks
業務グループ
業務部

谷脇 凱登 氏

Contents

  1. 会社分割によって、個性的なアニメーション制作会社が誕生した
  2. 分散オフィスの統合はかなり以前から切望していた
  3. 中長期的に移転先を探していたが条件に合う物件が見つからなかった
  4. コミュニケーションを活性化させるための多様な場を構築した
  5. 対面コミュニケーションの文化が作品のクオリティを高めてきた

30階 リフレッシュエリア

30階 リフレッシュエリア

会社分割によって、個性的なアニメーション制作会社が誕生した

株式会社CloverWorksの新設分割元である株式会社A-1 Picturesは、自社単独での元請制作を開始したことで制作本数を大幅に増やしていた。

「当時は阿佐ヶ谷スタジオと高円寺スタジオを使用していましたが、多様化が深まるアニメーションに応えるため、高円寺スタジオをCloverWorksと改称して制作特性を明確化し、それぞれのスタジオが独自性を持った制作現場になることを目指してブランド化したんです。それから201810月に会社分割をして正式に株式会社CloverWorksが誕生しました」(髙村氏)

分散オフィスの統合はかなり以前から切望していた

同社は採用活動も順調で、本社としていた高円寺スタジオは増員するごとにスペース不足が課題となっていた。しかし近接エリアは空室が多くないため、しかたなく同一沿線上のオフィスビルを借りていく。

「一ヵ所に集約したい気持ちはもちろんありましたが、このエリア付近ではそれだけのまとまった空室を見たことがありません。オフィスを統合するためには、新築ビルの竣工を待つほかなかったのです」(倉澤氏)

「当社の作品は、他のアニメーションスタジオやクリエイターさんとの連携があるからこそ、質の高さを誇っています。その連携を考えると、どうしてもオフィス立地は杉並区か中野区といったエリアに限られてしまいます。仮に別のエリアで大量な空室が確保できるとしても、移転候補にはならないでしょうね」(髙村氏)

移転直前、同社のオフィスは荻窪、中野坂上、高円寺に立地する3棟のビルに分散していた。その総面積は約600坪。300人超で使用していたが、さらに翌年には50名の入社が決まっていたという。

「次第に小さな空室の確保さえできなくなっていきました。しかし採用を止めるわけにはいきません。そこで、リフレッシュルームや会議室をできる限り縮小し、無理矢理つくったスペースを執務に割り当てるという対応でしのいでいました」(倉澤氏)

「移転するならば単に面積を広げるだけではなく、快適に働くための多様な要素を組み入れたいと考えていました」(谷脇氏)

中長期的に移転先を探していたが条件に合う物件が見つからなかった

中長期的に探してはいたが、条件に合った物件がなかなか見つからない。思い悩んでいたときに三幸エステートを紹介され、定期的な情報提供が始まった。

「限定的な立地条件でしたが、空室情報の提供をお願いしました。このエリアの物件は空室が出たとしても、すぐに埋まってしまいます。そんな経験を何回も繰り返していましたので、半ば諦めの気持ちもありました」(倉澤氏)

そうした状況の中で三幸エステートから至急の連絡が入った。希望エリア内で大量の空室が発生するかもしれない。いろいろなネットワークを駆使した中での、まだ表には出ていない情報だった。

「一般に出回る前の空室情報を提供いただいたことで、社内のコンセンサスをスムーズにとることができました。また、早い段階から根回しをしていただいたおかげでビルオーナーさんとの条件交渉も問題なく進めることができました」(倉澤氏)

コミュニケーションを活性化させるための多様な場を構築した

2023年6月、経営陣の迅速な判断もあり無事に賃貸借契約を締結する。移転先は東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」駅直結の大規模オフィスビル。9階と2730階を使用する。同社が入居を希望するフロアから優先して退去いただいたことで内装デザインも早い段階から準備することができた。オフィス構築プロジェクトの参加メンバーは、設計デザイン会社と同社の業務部が中心となった。

内装デザインミーティングの一環で、ワーカーを対象にした「働き方アンケート」を実施した。アンケート結果を見ると「リフレッシュエリアの充実」や「長時間座っても疲れない椅子の導入」といった要望が多かったという。

「アンケートはあえて手書き方式にしました。業種柄、何かを伝えるにあたっては普段から手書き文字やイラストを用いる人が多いんです。ですから、手書きにした方がより彼らの伝えたいことを正確に受け取れると考えました。一枚一枚オフィスに対する熱量や期待感が伝わってきました」(谷脇氏)

オフィスコンセプトは、設計デザイン会社からの提案もあり「To the world」となった。

「日本のアニメーションは急速に海外市場で普及・拡大しています。そんなアニメーションの未来や当社の目指すべきものとして『世界』というオフィスコンセプトが生まれたと聞いています」(髙村氏)

新オフィスの主な特長は、コミュニケーションを活性化させるための場をたくさん構築した点にある。

「以前のオフィスは本社でも会議室が5室しかありませんでした。会議室が予約できないがために打合せ日を変更する、といった本末転倒なこともありましたね。その反省を活かし、新オフィスには13室の会議室を用意しています」(谷脇氏)

また、リフレッシュルームはフロアごとに設けられている。

「フロアによって面積やデザインは異なりますが、どのフロアのリフレッシュルームも開放感あるデザインになっています。一日中デスクに向かって過ごすワーカーが多いので、少しでも気分転換ができる空間が必要だったのです」(倉澤氏)

それでは詳細をフロアごとに紹介していこう。

9階はグループ会社のワーカーも使用する。

「このフロアのリフレッシュルームが一番広いかもしれません。デザインテーマは世界経済の中心地『マンハッタン』。広々とした世界観に、ソファ席とファミレス席を組み合わせて構成しました」(髙村氏)

9階 リフレッシュエリア

9階 リフレッシュエリア

28階は会議室を集中させたエリアとなる。

「受付エントランスは『地中海』、リフレッシュルームは『北欧』のイメージになっています。会議室には全ての部屋に大型モニターを設置したことで、画面を使いながらのミーティングがよりスムーズになりました。部屋の名前は、『Sahara』『Peak』『Forest』といった自然をイメージさせる言葉を用い、名前とリンクしたデザインをしています」(倉澤氏)

30階 受付エントランス

30階 受付エントランス

28階 会議室①

28階 会議室①

28階 会議室②

28階 会議室②

29階はクリエイターのためのフロアとなる。グループごとに高いパーテーションで囲み、個別作業に適した環境を提供している。

「室内を落ち着いた色調でまとめ、間接照明やダウンライトを採用するなど、集中力を高めるための工夫をしています」(谷脇氏)

29階 クリエイターエリア

29階 クリエイターエリア

同フロアには「ラッシュルーム」が併設された。完成前の映像をチェックするための部屋で、大小4室が備えられている。

「ラッシュルームの奥にリフレッシュルームを用意しています。イメージは、『森』や『裏庭』。キャンプ場のようにアウトドアの楽しさが伝わってくるデザインになっています」(髙村氏)

29階 ラッシュルーム

29階 ラッシュルーム

29階 リフレッシュエリア

29階 リフレッシュエリア

最上階である30階は、制作関連の部門が使用するフロアとなる。

「電話やWeb会議を頻繁に行うことを想定して、このフロアだけフォンブースを設置しました。予想通り、稼働率はとても高いですね。また、フロア内には試写室もつくりました。試写室は、かなり前から必要な機能だと考えていました。関係者が集まって、完成後の作品を鑑賞しています。24名が座れて、防音対策も万全。まさにミニシアターですね」(倉澤氏)

30階 フォンブースエリア

30階 フォンブースエリア

30階 シアタールーム

30階 シアタールーム

その他、フロアの一部に特別応接室を配置している。眺望が良く、壁面にはこれまでの作品やグッズがずらりと並び、取材や特別な面談に最適な設えになっている。

30階 特別応接室

30階 特別応接室

対面コミュニケーションの文化が作品のクオリティを高めてきた

オフィス移転後は、部署を超えたミーティングが容易になった。それだけでも業務効率は格段に向上していると語る。

「コロナ禍で在宅勤務を推奨したことがありましたが、その分、ワーカー同士のコミュニケーションは大きく低下してしまいました。やはり当社は、コミュニケーションを取ることでクオリティを高めるというやり方をしていますので、今後も対面で仕事をするという文化は継続していくと思われます」(倉澤氏)

「オフィス出社の利点は、意思の疎通が図りやすいことですね。チーム力や結束力が深まることに繋がります。移転前はオフィスが分かれていたため、異なる部署同士が対面で話をするのは容易ではありませんでした。数字で表わせるわけではありませんが、きっとそのことによる損失は大きかったのではと思います」(髙村氏)

「同じ内容であっても、メールと対面では伝わり方が大きく変わってしまいます。特にメールの場合は、感じ方が相手に委ねられてしまいますので、直接話ができる環境を充実させることは間違いなくプラスの影響を与えるでしょう。今回、そんなオフィスづくりに関わることができて、とても満足しています」(谷脇氏)

「どんなに優秀なクリエイターでも、一人で考えるアイデアには限界があります。当社のようなアニメーション制作会社の場合、1つの作品に対してどれだけ意見を出し合い、どれだけの熱量を費やしたかがとても重要になります。だからこそ新オフィスにはさまざまなワーカー同士が集まれる場を構築したのです」(倉澤氏)


株式会社CloverWorks
2018年の設立以来、「より良い作品をつくり続ける」を目標に、事業を拡張してきた株式会社CloverWorks。その達成のために「人材の確保と育成」「働きやすい環境の構築」を唱える。今回のオフィス移転はまさに目標達成に向けた大きな改善策となっている。今後もワーカーの働きやすさを考えながら改善を行っていくという。


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