ディップ株式会社 大阪オフィス

ディップ株式会社 大阪オフィス

2018年6月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

共通のオフィスコンセプトをベースに
独自要素を加えて誕生させた拠点オフィス

アルバイト求人情報サイト「バイトル」や総合求人情報サイト「はたらこネット」の運営で全国展開を行っているディップ株式会社。2017年3月、「日本一コミュニケーションが取りやすいオフィス」をコンセプトに本社の拡張移転を行った。その当時の内容は前回まとめた取材記事をご覧いただければと思う。
(https://www.sanko-e.co.jp/case/dip)

今回はその1年後に実施した大阪支店での移転事例をお届けする。多くの経営課題をどのように解決したのか? 移転のポイントは? その詳細を伺った。

藤川 淳 氏

ディップ株式会社
総務部
ファシリティ・マネジメント課
課長

藤川 淳 氏

渡邊 展信 氏

ディップ株式会社
総務部
ファシリティ・マネジメント課
チーフ

渡邊 展信 氏

エントランス

Contents

  1. 働き方を大きく変えるためにはハード面の改善が不可欠となる
  2. 大阪近郊の不動産物件は需要が多く供給がない状態。
    そこでめぐりにめぐって出会った未公開物件
  3. 新たな出会いを演出するために大阪オフィスだけの機能を加えた
  4. 移転当日は驚きとともに自分の席選びから始まった
  5. 「より良い環境づくり」のためにファシリティ担当が全国を駆け回る

1. 働き方を大きく変えるためにはハード面の改善が不可欠となる

ディップ株式会社の本社移転を本コーナーで取材したのは2017年7月のこと。その約1年後に大阪支店の移転計画が始まった。メインで動いたのは本社ファシリティ・マネジメント課の藤川 淳氏と渡邊 展信氏。加えてステアリングコミッティとして人事部門 取締役と総務統括部長、計4名がプロジェクトを担当した。

大阪オフィスは同社の西日本側で一番大きな拠点となる。総面積も244坪。当時約180名が在籍していた。しかしオフィス環境については大半のワーカーから不満の声があがっていたという。

「使用フロアが6階と9階に分散していました。フロア間の移動はエレベータを使うなど、同じビル内でありながら行き来が不便で、その分コミュニケーションも分断していました」(藤川 淳氏)

「また何よりも狭くて。共用部からオフィスの入口を開けるとすぐ目の前に座席が並んでいる状況でした」(渡邊 展信氏)

会議室は大小合わせて9室。その他に社内用の打ち合わせスペースがなかったので、会議室は毎日が飽和状態だったという。

「2017年3月に本社移転が終わり、名古屋オフィスも同時期に移転してオフィス環境が整備されました。次は大阪オフィスを改善させなければという使命感もありました。しかし今のままの状態では物理的にも改善は不可能でした」(藤川氏)

「せっかく働き方の改善案を立案しても、現状の窮屈なオフィスのままでは実現できません。そこで働き方変革を実施するために、まずハード側を整えることが急務だと考えました」(藤川氏)

2. 大阪近郊の不動産物件は需要が多く供給が無い状態。そこでめぐりにめぐって出会った未公開物件

そうしてオフィス移転の検討に入る。候補ビルの条件は大きく3つ。大阪オフィスは営業部門が主体となるため「交通アクセス」の良さは大前提となる。その他、「割安の賃料」であること。そして何よりも「1フロア内にまとまって入居できる面積」という点。それだけは妥協したくなかったと語る。

「当初かなりの数の移転候補ビル情報を見ていましたが、条件に合う物件がなかなか見つかりません。要望に応えられないのならば移転する意味もありませんので、そのまま『旧オフィスビル内で増床』という選択肢も考えていました」(渡邊氏)

ちょうどタイミングよく(三幸エステートから)一般公開前の空室情報が届いた。

「1フロアの一部に解約が出るという情報がちょうどタイミングよく入ってきました。フロア内のすべてが空くわけではありませんが、使用できる面積は375坪。それだけの面積があれば今まで分かれていたフロアを集約することができ、立地も良くビル自体のグレードも問題ないという事で急速に話を進めました。使用開始も2018年4月からということでスケジュール的にも無理がなく、本当にめぐり合ったビルと思いました」(藤川氏)

「オフィスマーケットに出る前の貴重な情報がキャッチできたのが本当によかったです。三幸エステートさんに提案いただいたビルで本当に感謝しています。このビルに出会えなかったら大阪オフィスは移転せず、社員のモチベーションも下がったままだったかもしれません」(渡邊氏)

移転計画のスタートが2017年5月、空室情報がはいったのが7月、実際に内見をすませ条件面を交渉。役員会などの社内承認を得て11月に契約。そこから4月の入居に向けて内装デザイン計画がスタートした。

3. 新たな出会いを演出するために大阪オフィスだけの機能を加えた

内装デザインのパートナー会社選びは12月の段階で決定していた。

「今回、デザインの新鮮さやコスト削減を目的としたため早い時期から5社コンペを実施しました。結果は本社オフィスを手掛けたデザイン会社に決まりました。デザイン一つひとつに今までのコンセプトを踏襲するという根拠や意味がある点が選ばれた理由でした」(藤川氏)

「もちろん見た目の美しさもあるのですが、しっかりとしたロジックで組み立てられたオフィスの収容効率などの数値を主体として、デザイン重視ではない設計されたオフィスになっています」(渡邊氏)

キックオフミーティングでは、将来的な採用計画のことやフリーアドレスの導入、オープンエリアの可能性など、多くのことをじっくりと話し合った。東京本社のオフィスコンセプトは「日本一コミュニケーションがとりやすいオフィス」。そのコンセプトでつくられた本社オフィスが海外の団体のデザインアワードを受賞したのもかなり自信になったという。もちろん大阪オフィスのコンセプトも同様とした。

「当社は1年ごとにテーマが変わります。今年のテーマは『新』と決まりました。新しい働き方を、新しいオフィスで展開させるきっかけになるかもしれない。そんなことを考えながらオフィスづくりに挑みました」(藤川氏)

新オフィスでのクローズの会議室は8室。旧オフィスよりも1室少ないが、その分オープンスペースを充実させているため、全く不足感は生じていないという。

「振り返ってみると、過去に行ってきたミーティングは必ずしも閉ざされた環境である必要はなかったといえますね。ちょっとした相談事項や軽い打ち合わせであっても個室を予約していたことが多かったと思います。今回、本社で採用した『人数:個室』の比率を大阪オフィスでも同じように計算しました。実際、足りないという声は届いていません。きっと適正数だったのだと思います」(藤川氏)

大阪オフィスでは、日中は営業が出回っているため在席率はかなり低い。そこで完全フリーアドレスという方法を選択した。

「旧オフィスでは完全固定席でした。今は、出社すると個人ロッカーから自分のノートPCや必要な書類等を手にし、自分の業務に合ったワーキングスペースに座る。そこでアウトプットを生み出し、業務の終わりは自分の個人ロッカーに荷物を収納して会社を出る。そのように今までにない働き方に変わりました」(渡邊氏)

「フリーアドレスを導入するまでの準備期間として約3年かけました。最初のステップはフリーアドレスデスクを導入し、まずは働き方のイメージを掴んでもらいました。次の年は個人ロッカーの使用テスト。そして今回、フリーもしくはグループアドレスでの実践となったのです」(藤川氏)

「フリーアドレスといっても、現場は細かいユニットで動いていますので一定期間にわたって同じ場所を確保して仕事をすることもあります。そのため細かいルールを決めずに現場の判断に任せるようにしました」(渡邊氏)

オフィス内の基本機能は総じて東京本社と同じとなる。エントランス周りにはクローズなMeeting room、窓際にソファ席の「ブレストbox」を配置し、執務室に入ると三角形の植栽がセットされた「オープンテーブル」を中心にさまざまな形状のデスクが配置された。オフィスステーションである「マッチ箱」が距離を置いて2つ。窓際には集中スペース「こもルーム」が4つ。その他スタンディングMTGができる「Talk Stand」、多機能の「dip cafe」などが用意されている。

ブレストbox

ブレストbox

オープンテーブル

オープンテーブル

マッチ箱

マッチ箱

こもルーム

こもルーム

Talk Stand

Talk Stand

dip cafe'

dip cafe'

「大阪オフィスではデスクの配置に気を配りました。今まではどの拠点でも一定方向にデスクが並べられていました。ここでは縦、横、斜めに配しています。それだけでなくデスクの高さにもバリエーションを持たせています。そうすることでコミュニケーションの変化を演出し、新たな部門間の相乗効果などが生み出せると考えました」(藤川氏)

「さらに新たな試みとして電話機も大幅に減らしました。営業が主体のため、本来1人1台が求められていました。大阪オフィスでは電話機があるテーブルを限定し、そこに座らないと電話が使用できないようにしています。これも働き方を変革するチャンスと捉え、思い切って変えてみたのです」(渡邊氏)

その他、大阪支店の管轄エリアである5拠点間、または本社との遠隔ミーティングがいつでも行えるようにTV会議システムを持つ部屋を3室つくった。そのうちの1室はセミナーもできるConference roomとなる。

「Conference roomでは採用説明会やセミナーなども行われます。用途によってデスクの配置を変えながら多機能に使用できる部屋です。今までは大きなイベントを開催するたびに外部会場を手配していました。それに比べ、時間や費用、多くの手間が削減でき、人事担当者も喜んでいます」(藤川氏)

TV会議室

TV会議室

Conference room

Conference room


4. 移転日当日は驚きとともに自分の席選びから始まった

移転前の準備として、まず強制的に書類の廃棄を告知した。

「本社移転の際にも大幅な書類の廃棄を行っています。すでに本社でも実践できたことなので自信を持って進められました。また社員がペーパレス化の動きに共感を得ていたこともスムーズに進められた要因だと思います」(藤川氏)

移転当日は新オフィスに驚きこそあれ、特に混乱はなかったという。

「元々営業はノートPCで仕事をしているので慣れもあったと思います。社員の反応を見ていると三角形のテーブルに興味を持っていましたね。実物とパースでは全然違うこともあり、楽しそうに席を選んでいました」(渡邊氏)

「フリーアドレスは柔軟性があるのがいいですね。今までは新入社員の配属のたびに増席などを行っていました。その手間が省けるのが喜ばしいです」(藤川氏)

フリーアドレスの導入でゴミ処理の方法も変わった。個々の席に置かれていたゴミ箱を一斉に排除。2ヵ所のオフィスステーション内にゴミ箱を集約した。

「ステーション内には、ゴミ箱のほかに複合機、シュレッター、ワードロープなどが置かれています。集約することでみんながそこに集まってきて、偶発的なコミュニケーション効果を生み出します。また打ち合わせやポスターなどの掲示もできるようにホワイトボードも取り付けました」(渡邊氏)

5. 「より良い環境づくり」のためにファシリティ担当が全国を駆け回る

新しくオフィスが変わることで、社員への説明を随時行っていた。

「フリーアドレスの本格的な導入が初めての試みでしたので、図解や総務統括部長にモデルになってもらい、イメージ優先で資料を作成して説明を行いました。それを繰り返し行うことで理解が深まったように思います」(渡邊氏)

またPJを統括する取締役も全社員が集まる社員総会で今回の大阪オフィスの告知を行う。

「全社員が集まる社員総会の中で、大阪オフィスの素案が出た時には、一瞬でしたが歓声が上がりました。オフィスの変革が社員のモチベーション向上につながり、結果として営業成績にも良い結果が出てくればいいと思っています」(渡邊氏)

「オフィスは自宅よりも長くいる場合があります。ですから機能面、環境面を考えた居心地の良いものをつくりたいと思っています」(藤川氏)

ちょうど入居から1ヵ月が経過(インタビューが6月のため)。それなりに課題も見つかっているという。オフィスに関する意見や要望は、大阪オフィスの窓口を通して本社ファシリティ・マネジメント課へ連絡がくるようになっている。そして時には現場で聞き取り調査を行い、改善の可否を見極めることもある。

「改善内容については、場合によっては見送ることもありますが、その場合でもむやみに断ることはしません。まずは妥協点を探ります。あくまでも目的は一つ。『より良いオフィス環境づくり』です。そのため、気軽に相談できるように全国33拠点にアンテナを張っておく必要があります」(藤川氏)

「中にはビル側だけでは解決が難しい場合もあります。その場合は、当部署で専門的に判断して、現地での確認と場合により現地作業を行う(依頼する)場合もあります」(渡邊氏)

実務的には細かい作業が多い。作業する中で心掛けているのがワーカーへのレスポンスの速さだ。ファシリティ・マネジメント課の全員が自らのミッションとして課しているという。

「スピード感や達成感は僕らのノウハウになります。そこで培った経験値をベースにして拠点のオフィスをもっと改善していきたいですね」(渡邊氏)

「オフィス改善に膨大な予算があるわけではありません。工夫をしながら改良を重ね、かつコストダウンも考えなくてはならない。アイデア勝負だと思います。今回採用したデスクですが、実はカフェテーブルを連結することで安価にフリーアドレスデスクをつくっています。その他必要な什器・家具や電話機を削減した情報通信工事に至っても、多少の工程は増えましたが、コスト抑制に成功しています。今回かけた手間はすべて会社のナレッジとして蓄積され、今後もさらなるオフィスづくりのために活かしていきたいと思っています」(藤川氏)

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