株式会社エレクトロニック・ライブラリー
2020年12月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
オフィス移転で新たな機能を構築。旧オフィスの課題を解消した
100紙以上の新聞や1,500を超えるWebコンテンツまで幅広いメディアからのクリッピング、記事データベース検索などを提供している株式会社エレクトロニック・ライブラリー。業務効率の改善を求めて2019年7月に本社移転を行った。移転後1年半が経過した今、プロジェクトの概要と移転効果を中心にお話を伺った。

株式会社エレクトロニック・ライブラリー
執行役員(経営管理部長兼務)
大村 弘一氏

株式会社エレクトロニック・ライブラリー
経営管理部 管理課長
渡辺 雄一郎氏

株式会社エレクトロニック・ライブラリー
経営管理部 管理課 参与
平松 保久氏
Contents
- 時代に先駆けたクリッピングのデータ提供で事業を拡大してきた
- 旧オフィスは情報発信の街「銀座」とのアクセスの良さを考えて選んだ
- 旧オフィスでの課題は大きく4つ。一気に解決するためにオフィス移転を実施した
- 移転経験がないため、移転プロジェクト全体をマネジメントしてもらえる会社が必要だった
- 新オフィスには事業を象徴する都内でも希少なスペースを誕生させた
- リモートワークが進んだとしても社員同士がつながるハブ機能は必要

執務室全景
時代に先駆けたクリッピングのデータ提供で事業を拡大してきた
当日の朝刊記事からお客様の要望に応えた情報を届ける「モーニングクリッピング」をはじめ、クリッピングサービスの分野で事業を拡大してきた株式会社エレクトロニック・ライブラリー。提供する記事情報は著作権侵害を気にせず安心して利用できるのが大きな魅力だ。同社は常に新たなシステムや機能を導入することで事業を拡大してきた。現在のユーザー数は全国の企業、官公庁を中心に約1,300社超。コロナ禍の中、在宅ワークであっても営業活動に欠かせない記事情報をPC、携帯端末などから確認可能なこともあり各企業や団体などの担当者から高い評価を得ている。
会社設立前は発起人である大手メディア各社との共同研究のために銀座に準備室を設けていたという。
「当時、他社で行われていたのは切り抜いた記事を台紙に貼ってFAXで送るというもの。時代に先駆けたビジネスのあり方を考えて情報の提供方法や著作権法に則った事業展開についてさまざまな議論を重ねました。そうして現在の事業の原型となるクリッピング記事のデータ提供というサービスを確立させたのです」(大村氏)
旧オフィスは情報発信の街「銀座」とのアクセスの良さを考えて選んだ
そして約半年の準備期間を経て1986年に会社が設立された。
「設立の翌年、西五反田のオフィスビルに本社を構えました。多くのメディアや広告代理店が集積している銀座周辺で見つけられれば良かったのですが、条件に合った空室が確保できなくて。そこで銀座との鉄道路線や国道との利便性を考えて西五反田が選ばれたのです」(平松氏)
「当社の事業は深夜に出来立ての新聞を入手することから始まります。それからスキャナでデータを取り込んでクリッピング作業をしていく。ですから各新聞社との交通アクセスは重要なファクターなのです」(渡辺氏)
「旧オフィスの1フロア面積は74坪。当時は2階から7階までを使用していました。スキャニングやクリッピングの業務をフロアごとに分けて。まるで一つの工場のようでしたね。4階には多くのサーバやストレージ設備を設置していました」(平松氏)
「2006年に記事データの入力拠点を沖縄県那覇市に移行し、その後もデータサーバを外部に移設するなど、順次オフィススペースのスリム化を促進してきました。オフィス移転計画を本格的に検討する前に、どこまでスペース削減が可能になるかを把握しておきたかったのです」(大村氏)
旧オフィスでの課題は大きく4つ。一気に解決するためにオフィス移転を実施した
旧オフィスでは、「営業効率の悪さ」「スペース効率の悪さ」「快適な職場環境の形成」「コミュニケーションの低下」と大きく4つの課題を抱えていた。
「退去直前は3フロア185坪を45人で使用していました。部署ごとにフロアを分けていたこともあって社員同士のコミュニケーションはあまり活発ではなかったですね。また、年に数回、ビジネスセミナーを開催しているのですが、その会場費や手配に要する時間を以前から改善したいと感じていました。さらに30年以上も同じオフィスだったため、私物の量や資料の重複も増えてきて。それらを一気に解決するためにはオフィス移転が最も有効と皆で話し合いました」(大村氏)
そうして2018年に移転計画を立案。同年3月に計画が承認された。そして平松氏がプロジェクトリーダーとなり、大村氏が主幹部門の責任者、渡辺氏が運用リーダーとする体制がつくられた。
「全社横断のプロジェクトとしました。第一フェーズとして社員からの意見や要望を聞き、それに対する解決案を明示していく。それを半年以上繰り返しながらありたい姿に近づけられるオフィスの構築を目指したのです」(平松氏)
新オフィスに加える機能を確定させ、書類の廃棄やデジタル化によって削減できるスペースを算出。新オフィスに必要な面積を割り出した。そうして2018年10月から本格的に移転先探しを始める。
「移転先の条件の中で最優先させたのは利便性でした。それは営業先への行き来を容易にするだけではありません。当社に多く訪問していただくことで当社への理解を深めてもらいたいと考えたからです。さらにセキュリティレベルの高いビルへの移転によって企業価値や企業ブランドも高めようと意識しました」(大村氏)
「100棟以上の候補ビルの中からは条件に合うビルがなかなか見つかりません。それでも今回の移転プロジェクトは当社の課題解決を目的としたものですから中途半端に妥協はしたくありませんでした」(渡辺氏)
「それで条件としていたエリアを少し広げてみたのです。結果的にはそれが功を奏しました。タイミング良く希望条件通りのオフィスを見つけることができたのです。銀座線と都営浅草線が利用でき、JR東京駅にも徒歩圏内。銀行の支店がテナントとして入っていたこともあって堅牢なセキュリティも保っている。予算面もクリアしていることもあり、すぐに賃貸借契約締結へ向けての準備を始めました」(大村氏)
新オフィスビルの2階と3階を使用する。面積は174坪。2階42坪は応接専用のフロアとし、3階132坪に執務室をまとめた。旧オフィスより少し面積は縮小したが、デッドスペースの削減をしたため、無駄のないレイアウトが組めたという。
「どこでも仕事ができるようにノートPCと無線LANを採用。固定電話を廃止してスマートフォンに移行しました。個人用デスクから長デスクに変更してペーパーレスに。資料は共有キャビネットに保存するルールとしました。それらの施策がスペースの効率化につながったのです」(平松氏)
移転経験がないため、移転プロジェクト全体をマネジメントしてもらえる会社が必要だった
今回のオフィス移転では三幸エステートがプロジェクト全体のマネジメントを担当した。
「今まで当社はオフィス移転の経験がないため、何から始めればいいのか全くわかりませんでした。ですからどんなに些細なことでも気軽に相談できる専門会社の力が必要だったのです」(大村氏)
「デザイン会社との打ち合わせでも、当社側に立って色々な交渉をしていただきました。社内メンバーだけでは見落としてしまいがちなこともプロの視点での助言をいただきとても心強かったですね」(平松氏)
「提案も的確でした。役員説明が何度かありましたが、理詰めで説明していただいて。おかげでプロジェクトの推進がスムーズにできました」(渡辺氏)
新オフィスには事業を象徴する都内でも希少なスペースを誕生させた
オフィスのデザインコンセプトは「オープンで効率よく働けるオフィス環境」「オフィス改革による業務の共有と見える化の実現」「共用スペースの確保とコミュニケーションの活性化」「オフィススペースの利用効率を高めコストダウンを図る」とした。
「執務室を1フロア内にまとめることで社員同士のコミュニケーションを向上させ、新たな機能を付加させることで働きやすいオフィスづくりを心掛けました。全体のイメージでは、爽やかで、開放感のある『海』を感じるようなデザインでまとめていただきました」(大村氏)
それでは2階フロアから特長的な部分を紹介していこう。
「受付は、2016年に刷新したコーポレートロゴをうまく組み合わせて新たな会社の誕生を予感させるデザインイメージとなっています。そこを過ぎると応接室エリアとなります。応接室は4室。旧オフィスよりも増室しました。会議室の1室にはTVチューナーを取り付け多目的な使い方ができる部屋も用意しました」(渡辺氏)
社員からの要望も参考にしながら会議室兼用のセミナールームも新設した。

受付

セミナールーム
「ここは新オフィスの重要なポイントの一つとなります。プロジェクタとスクリーンを天井に備え付けて、来訪されるお客様向けのセミナールームとしての利用を想定しました。もちろん防音壁で装備し、音漏れの対応も万全です。現在、コロナ禍の中で対面式セミナーの開催が困難になっていますので、ここを「スタジオ」として動画を制作し、配信するなど別の使い方ができています。新型コロナウイルスの発生を想定して構築したものではありませんが、結果的にコロナ禍の状況の中でも慌てることなく運用できています」(平松氏)
3階には同社を象徴する「107紙ギャラリー」をオープンさせた。全国紙のほか、47都道府県の地方紙や業界紙、専門紙を一堂に並べたギャラリーで、社内外との交流の場でもあり、一種の営業ツールでもある。ここまで全国の新聞紙を集積させたスペースは都内でも極めて希少だという。

107紙ギャラリー
「当社は新聞を扱う業務をしていますのでそれを表現したかったのです。新聞もただ飾っているわけではなく、備え付けのデータベース端末で記事検索も可能です。100紙以上を取り扱っているといっても中々イメージはわかないもの。それを一望できるとても有効的なスペースになりました。また、実際に新聞を手に取ることでその質感が全く異なるといった驚きや発見もあるみたいで会話のきっかけづくりにも有効です。このギャラリーをご覧いただいた方は皆さん本当に驚かれますね」(大村氏)
「執務室内には思いついたときにすぐに打ち合わせができるように、『ハイカウンター席』『ファミレス席』などいくつもの打ち合わせスペースを用意しました。机の配置もただ机を並列させるのではなく、斜めに配するなど単調さの解消も意識しました」(平松氏)

執務室

ハイカウンター席

ファミレス席
「ペーパーレス化もコスト削減だけでなく、業務効率化にプラスに働いています。紙書類のスキャンにより、過去の書類の検索が容易で、業務効率が改善できました。また個々で抱え込んでいた書類や資料を共有したことで意見交換も活発になっているように思えます」(渡辺氏)
「現在も新型コロナ感染予防対策は継続していますが、実際にオフィス移転がなければ全社員のノートPC化もデータベース化も実現が難しかったかもしれません。やはり適したタイミングってあるんですね」(大村氏)
リモートワークが進んだとしても社員同士がつながるハブ機能は必要
「オフィス移転を実施して1年半が経過しました。今は、将来的な働き方を考えてリモート会議専用ブースの機能を充実させる予定です。今後も働きやすい環境のために柔軟に社員からの要望に応えていきたいと思っています」(平松氏)
「コロナ禍の中でリモート会議の便利さを知ることができました。ですから今回構築した機能や働き方は継続していくと思います。しかし会社は個人事業主の集まりではありません。コミュニケーションをとりながら業務を進めていく。その交流のハブとなるオフィスはとても重要な役割を果たすと思っています」(渡辺氏)
「移転後は採用活動時の応募も増えました。オフィスの持つ価値をあらためて感じています。将来的にデジタルでの働き方が進化しても、人と人をつなぐ場としてのオフィスがなくなることはないでしょうね」(大村氏)
