- 増員対応と立地改善を図り契約更新のタイミングで東京支社を移転
- 「社内外のエンジニアが交流できる場にしたい」。社員からの思いを込めて設計
- 旧オフィスから継承したスペースと新たに設けられたファシリティ
- 社員と経営陣から寄せられた要望を可能な限り実現したオフィス
- 新築同様のきれいなビルに入居し社員からの満足度も高いオフィス
増員対応と立地改善を図り契約更新のタイミングで東京支社を移転
情報システムの開発や構築、パッケージの開発、コンピュータおよび周辺機器の販売、ソフトウェア開発技術に関するコンサルティングを軸に事業を拡大してきた株式会社永和システムマネジメント。同社は1980年の創業以来、福井県福井市で成長を続けてきた。多くの顧客が首都圏に集中していたため、早い段階から東京への拠点進出を検討していたという。そうして2002年、港区田町(三田)に東京事務所を開設。当初は本社からの出張メンバーが中心であったが、徐々に現地採用の比率が増えていく。以降、社員数の増加に合わせて移転を重ねる。2003年品川、2005年芝浦、2009年に台東区上野のオフィスビルに移転を行なった。
「上野に移ってからも社員数は順調に増えていき、最終的に60名を超えました。こうなると福井本社から出張で来た社員用スペースの確保も困難になってきます。さらに入居ビルが2015年に契約更新の時期を迎えるというタイミングもあって、2014年の夏頃から本格的に支社移転を検討するようになりました。本社のある福井との交通の便も考えて、新幹線からのアクセスの良い上野・東京・品川周辺で移転先を探していました」
「移転では三幸エステートさんのことを前任者から聞いており、今回お世話になることにしました。前回の移転では一緒に仕事が出来なかったのですが、移転後も色々な資料の提供や相談に乗っていただいたのが大きな理由です。当社をよく理解していただいている分、細かい要望にも迅速に対応してくれましたね」
希望面積は最低150坪以上。ただしあまり広すぎても困る。これに立地改善と予算面、階数、さらに天井高や最寄り駅からの距離といった諸条件を加えながら物件を探していった。しかし、折しも都心部では空室不足の傾向にあり、条件に合う空き物件はそれほど残っていない。そこで、飯田橋や新橋周辺までエリアを拡大し、ざっと20棟近い候補物件を検討。それでも、なかなか希望する条件に合致する物件は見つからず、一時は移転を諦めて現ビルでの契約更新も視野に入れていたという。
「もし契約を更新するのであれば、期限までに前もってビル側に通達しなければなりません。そのため物件探しのための時間は実質約3ヵ月しかありませんでした。かなりタイトなスケジュールになってしまいましたが、三幸エステートさんにもご尽力いただき、『ベストの物件』にめぐり合えました。当初、現在入居しているこのビルの空室は2階のみでした。しかし『7階に入居予定の会社が急遽キャンセル』という未公開情報をいち早く教えていただき、そのままスムーズに7階で契約することができたのです」
「社内外のエンジニアが交流できる場にしたい」。社員からの思いを込めて設計
物件選定後、2015年1月中旬には移転プロジェクトチームの人選に着手する。取締役東京支社長である小山氏以下、東京支社の事業部長2名、各事業部から男女6名が選出され、計9名がプロジェクトメンバーとなった。
「メンバーは社歴や年齢・性別とは関係なく、発言力と実行力のある社員を中心に人選しました。プロジェクトは2月初めには本格的に始動し、約3ヵ月間かけてメンバーが定期的に集まって、オフィスのコンセプトや業者の選定などの打ち合わせを重ねていきました」
旧オフィスの原状回復工事の完工期限は7月末であり、そこから逆算して移転実施時期は5月末から6月初頭というスケジュールとなった。1月中に社内の調整をとりまとめ、2月から業者を交えての話し合いが行われたという。
「内装工事業者の選定には、当初3社ほど候補がありました。旧オフィスの内装を手がけた会社と、移転先ビルから紹介された他のフロアなどの内装を手がけている会社、それと、インターネットで見つけたIT企業のオフィスを数多く手がけているという会社です。このうち、旧オフィスでお世話になった会社は繁忙期のために条件が折り合わず、残る2社でコンペを行いました。その結果、最終的には移転先ビルから紹介された会社にお願いすることになりました」
移転にあたっては、顔の見えないアンケートではなく、メンバーが直接社員にヒアリングを行い、広く意見を募ることにしたという。これにより集められた意見やアイデアは膨大な項目に上ったが、それらをすべてリスト化して業者に手渡し、「これを実現するようなオフィスにしてほしい」と伝えたという。
「東京支社で受託しているソフトウェア開発プロジェクトの多くは、社外のエンジニアとの人と人とのつながり、すなわち口コミや紹介がきっかけでいただいている仕事です。そこで、新オフィスは、こうした社外のエンジニアが集まってきて、社内外のエンジニアが交流できる場にしたい、という思いでレイアウト設計しました」
旧オフィスから継承したスペースと新たに設けられたファシリティ
社内からプロジェクトメンバーに寄せられた意見・アイデアは、旧オフィスでの問題点の指摘から、新オフィスに期待するものまで、多岐にわたっていた。たとえば、「今のオフィス(=旧オフィス)で困っていること」としては、「移動しづらい」「全体が見渡しづらい」「そのため、電話がかかってきたときに誰がいるのかがわからない」「オフィスが汚く見える」などがあり、その原因として「本棚やホワイトボードが多く、視界を遮っている」「個人の机の上が整理されておらず、全体に統一感がない」などの点が指摘されていた。
「この業界の中で一歩先を行く内装、レイアウトにしたいという思いがありました。その上で『見栄え良く、効率的なレイアウト』『シンプルで清潔感があり、飽きのこないもの』『社内外の人に当社のマインドセットが伝わるような本棚』といった社内からの要望を拾い上げ、全体的なオフィスのイメージを構築していきました」
社員からの要望 (抜粋)
- 業界の中で一歩先を行く内装、レイアウトにしたい
- 見栄え良く、効率的なレイアウト
- シンプルで清潔感があり、飽きのこないもの
- 社内外の人に当社のマインドセットが伝わるような本棚
- 再利用できるものは積極的に利用する
- 一時的に映えるだけのデザインは特に必要ない
- 社員全員が利用する物や場所にこだわって重点的に費用をかけたい
- ビル自体のコンセプトに合わせた凛とした雰囲気のあるレイアウト
- カラーバランスを考えて明るく軽快な感じの色遣い
「そのほか、『社内部門間の交流を図ることのできるオープンスペース、カフェテリア的な空間をつくりたい』などのリクエストがありました」
オープンスペースについては、上野の旧オフィス時代には存在しなかったため特にリクエストが多く、移転を機に新たに「コワーキングスペース」として設けられることになった。このスペースは新オフィスの一番の特長となる。オフィスのセキュリティレベルも、L字型をしたフロアの形状に合わせて区画。短辺部分をオープンゾーン、長辺部分をセキュリティゾーンとしてセキュリティレベルを切り替えている。ちなみにオープンゾーンとセキュリティゾーンの間はガラス張りにし、透明性を維持しながらセキュリティを保っている。
「このコワーキングスペースは、10時から17時までは当社の社員から招待された方であれば誰でも利用できるようになっています。昼間はフリーランスのエンジニアの作業スペースとして、また夜は社内外のエンジニアのミートアップの場として活用されています。今後、コワーキングスペースでの人と人との出会いや会話がきっかけで、多くのアイデアやビジネスが生まれることを願っています。そのほか、昼食や休憩、非喫煙者にとっての息抜きの場としても使われており、多目的スペースとして重宝されているようです」

コワーキングスペース
旧オフィス時代から人気のあった畳敷きの打ち合わせスペース「和じゃ」は、新オフィスにも継承されることになった。
「『和じゃ』は、オープンかつカジュアルに打ち合わせができる場として、社内からも残してほしいという要望が根強くありました。『東京支社のシンボルにもなっている気がしていますので、なくなると寂しい』という声もあり、新オフィスでもほぼ同サイズのままで受け継ぐことにいたしました」
「現在、キャリア採用、新卒採用ともに力を入れています。旧オフィス時代はエレベーターを上がったらすぐに受付という形で、エントランスも1階のロビーもないビルでしたが、今回はそれらの要素を備えているため、会社としてのブランディングやイメージアップにもつながり、ここで働きたいと思ってもらえるようなオフィスにしていきたいと思います」

畳敷きの打ち合わせスペース「和じゃ」