JARVISどうぶつ医療センター Tokyo
(アニコムグループ/アニコム先進医療研究所株式会社)

2026年2月取材

この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ペット向けの高度な医療をより身近に
先進的な医療機器を揃えた動物病院

ペット保険国内最大手のアニコム損害保険株式会社を中核とするアニコム ホールディングス株式会社。同社は2025年10月、グループ傘下のアニコム先進医療研究所株式会社を中心に、ロボット手術を含む高度な獣医療に対応する動物病院「JARVISどうぶつ医療センター Tokyo」を開院。保険事業のみならず、予防・診療・研究領域まで視野に入れた取り組みを進める中で誕生した、同院の開院に込めた想いを聞いた。

アニコム先進医療研究所株式会社
堀江 亮 氏

代表取締役社長
薬剤師 博士(薬学)
堀江 亮 氏

アニコム損害保険株式会社
尾形 裕樹 氏

総務部長
尾形 裕樹 氏

小谷野 昌彦 氏

総務部 課長
ファシリティ担当
小谷野 昌彦 氏

宮崎 裕 氏

IT推進部 部長
宮崎 裕 氏

三幸エステート株式会社
横山 大輔

第一営業部
横山 大輔

牧野 功幸

プロジェクトマネジメント部
牧野 功幸

齊藤 勇

プロジェクトマネジメント部
齊藤 勇

Contents
  1. 生まれてから最期まで飼い主とペットを支え続けてきた
  2. ペットと飼い主の安心のために利便性の高い立地で、質の高い医療の提供を目指して
  3. プロフェッショナルの連携により短期間での構築を達成
  4. ヒトにも動物にも優しい透明性と明るさを意識したデザイン
  5. 地域に根ざし、さらには世界へ。さらなる獣医療の発展の第一歩

2階 メイン手術室

2階 メイン手術室

生まれてから最期まで飼い主とペットを支え続けてきた

アニコム ホールディングス株式会社は、パーパス(存在意義)として「世界中に『無償の愛』を伝え、平和を取り戻し、維持発展させる。」を掲げ、ペットが生まれてから亡くなるまでのさまざまな局面のサポートを行っている。犬・猫のペット保険国内シェアNo.1のアニコム損害保険株式会社をはじめ、飼い主・動物病院支援事業を展開するアニコム パフェ株式会社、ブリーディング事業を手がける株式会社フローエンスなど、5社を傘下に持つ。

今回のプロジェクトの中心となったのは、同傘下のアニコム先進医療研究所株式会社。2014年に設立され、動物医療分野における基礎研究の推進、先進医療の開発・研究発展を目的として活動している。全国53ヵ所(20263月現在)の動物病院の運営に加え、ペット保険事業が保有するビッグデータの分析や医療機器の開発・販売など、幅広い業務で動物たちの健康を支え続けている。
※シェアは各社の契約件数から算出。(株)富士経済発行「2025年ペット関連市場マーケティング総覧」調査

ペットと飼い主の安心のために
利便性の高い立地で、質の高い医療の提供を目指して

「ヒトの医療同様、獣医療も高度化が進む中で、やはり高度医療は費用が高額になりがちです。適切な医療をできる限り負担なく受けていただきたい一方で、当社はペット保険を扱うグループですから、高度医療の受診増加は財務面で課題になり得ます。そうした状況を鑑み、当社も高度医療分野へ進出していこうという構想は以前からありました」(堀江氏)

日本国内の犬・猫飼育頭数は約1,595万頭。これは15歳未満の子どもの数(約1,366万人※2025年現在)を上回る。家族の一員ともいえるペットも、年齢を重ねればがんや泌尿器系疾患などの病気が増える。そうした病気に向き合い、質の高い医療を提供する病院の構築は、同社が持ち続けていたビジョンの一つだった。

「数年前から話は出ていたものの、動物の出入りが可能であり、かつ『山手線内側という立地で、CTMRIの設置が可能』という条件を満たす物件は、一般的なオフィスビルでは多くありません。そのため、適した物件になかなか巡り合えませんでした。三幸エステートの横山さんには、以前から支店等の移転のご相談をする中で、この件についてもお話ししていました」(尾形氏)

さまざまな可能性を模索する中で、横山は一棟貸しのある物件を紹介した。

「ご希望面積よりは大きいものの賃料は比較的抑えられ、一棟で借りることで内装も自由に変更できます。何よりJR線・京急線『品川』駅から徒歩数分の好立地。これはご紹介に値する物件だと思い、すぐ尾形様にお声がけしました」(横山)

初回の内見には尾形氏をはじめ、財務部のメンバーなど5名ほどが参加。物件を見た尾形氏は「ここしかない」と感じ、役員会議で報告したという。

「その後、当グループ代表の小森も内見に伺うことになりました。一目でピンときたようで、ほぼ即決に近い形で契約が決まりました」(尾形氏)

新たに入居するビルは8階建てで、前テナントの内装や空調等をそのまま引き継ぐ「現状渡し」での契約となった。まずは12階を動物病院として使用し、他フロアに関連施設を構築することが決定した。

プロフェッショナルの連携により短期間での構築を達成

2024年10月、病院の構築フェーズに移る。ビルの現況を整理しながら、新たに構築する要件を取りまとめることは容易ではない。尾形氏のもとには、各方面からの問い合わせが殺到した。

「私は専門家ではないので、全く判断がつきません。横山さんに相談したところ、プロジェクトマネージャーに協力を仰ぐのが良いでしょうとのことで、三幸エステートさんのプロジェクトマネジメント部をご紹介いただきました」(尾形氏)

数社を比較したうえで、事情をよく把握している三幸エステートへの依頼を決定。牧野功幸と齊藤勇の2名が参加し、牧野は全体工程とコストの管理・調整を、齊藤は技術サポートや現場の調整を担当した。

「医療機器の開発作業場や薬局の案件は過去に経験がありましたが、動物病院は初めてでした。ヒトと動物の病院の違いは何か、どのようにフォローしながら進めていけるか。ワクワクしながらプロジェクトを推進しました」(牧野)

最初のハードルは、設計会社の選定だった。病院としての専門的な設備設計は、他院で実績のある1社に監修を依頼。さらに意匠面を含めた全体設計者として、将来を見据え、ビル全体を複合的に設計できる会社を選定する必要があった。

「できる限り早期に開院したいという代表の意向もあり調整は難航しましたが、私たちの描く世界観や将来ビジョンを理解し、その想いに応えてくださるパートナーに参画いただくことができました」(尾形氏)

タイトなスケジュールを実現するため、事務局側も役割を明確に分担した。医療機器の選定や意匠面など、病院としての要件定義は堀江氏を中心とした先進医療研究所チーム、コスト管理を含めた事務的なやり取りや施工側との調整は尾形氏・小谷野氏の損保チームが担当。また、院内ネットワークおよびネットワーク配下で利用される機器類については、宮崎氏をはじめとした情報システム部門が担うこととなった。

「ここで勤務する獣医師が決まっていない中で、誰が働いても快適に使える病院をつくらなければなりません。しかし私自身は獣医師ではないため、細かい使い勝手までは自分では判断できません。非常に難しい挑戦でした」(堀江氏)

病院のコンセプトは「世界水準を目指した日本の獣医療」、そして「透明性の高い、開かれた獣医療」。まずは基本的な病院としての要件と、導入予定の手術支援ロボットやMRIなどの医療機器を設計チームに図面に落とし込んでもらい、そこからブラッシュアップを重ねていった。プロジェクトには多数の専門業者が参画し、定例会には最大で20社超、計50名ほどが参加した回もあった。

「全体スケジュールと照らし合わせながら、どう進めれば協力各社それぞれが目的のスケジュールを達成できるか。そのハンドリングに注力しました。先回りしてヒアリングを行ったり、分科会を開催したりすることで、定例会が事務局様の確認・承認の場となるよう努めました」(牧野)

「ネットワーク面では、各医療機器に必要なものはメーカーさんに部材の用意から施工までお任せし、当社は実施内容の把握のみに専念しました。その分、一般インターネットや院内配線の全体調整・確認に時間を割くことができ、非常に助かりました」(宮崎氏)

「定例会が長時間に及ぶことも多く、数時間の会議の中で発言は10分もない業者様もたくさんいらっしゃいました。それにも関わらず、最後までチームとしてご協力いただけたことには感謝してもしきれません」(尾形氏)

こうして、定例会の開始からわずか1年後の202510月。JARVISどうぶつ医療センター Tokyoは満を持して開院日を迎えた。

ヒトにも動物にも優しい透明性と明るさを意識したデザイン

それでは、院内を紹介しよう。1階エントランスの全面ガラスの自動ドアからは暖かな光があふれ、動物と飼い主を優しく迎え入れる。受付・待合室は、間接照明をふんだんに用いた明るい空間だ。リードを留めるフックの設置や受付台の角に丸みを持たせるなど、訪れる動物たちに配慮した設計となっている。

1階 エントランス

1階 エントランス

1階 受付・待合室

1階 受付・待合室

右手の通路を進むと、広い窓面から大きな機械が目に入る。ここはMRI室で、手前のソファに座りながら室内の様子を見学することができる。

「機械の使用中以外は、歩道に面した窓の外からも中を見ることができます。透明性の高い医療を目指したJARVIS Tokyoの目玉の一つとも言える部屋です」(堀江氏)

1階 MRI室

1階 MRI室

その奥には超音波検査室、X線検査室などの個室が並び、救急対応を行う検査処置室の奥にCT室と手術室を設けた。診察室は14室、26室の計10室。部屋番号のサインはオリジナルで作成し、扉のハンドルと同じ木目調デザインを採用している。

1階 CT室

1階 CT室

エレベーターで2階に上がると、天井のライン照明と光沢のある壁面パネル、その継ぎ目に走る黒いラインで構成されたエレベーターホールが現れる。さながらSF映画に登場する宇宙船のようだ。

「代表の思い描くデザインを形にするため、何度も協議を重ねたエリアです。壁面パネルの納期が厳しく、施工側には度重なるスケジュール調整へのご協力をいただきました」(齊藤)

2階 エレベーターホール

2階 エレベーターホール

正面のガラス扉からは、その先の手術室まで見通せる。扉の先には見学室エリアがあり、手術を見学することが可能だ。直接視認できない手術室は、壁面のモニターを通して様子を確認することができる。

「ここから見える手術室には、最新鋭の手術支援ロボットを導入しています。大切なペットの手術を見守ることができるとあり、見学希望の飼い主様は想定よりも多くいらっしゃいます」(小谷野氏)

2階 左-手術室/右-見学室エリア

2階 左-手術室/右-見学室エリア

このフロアには、リハビリに使用する理学療法室や手術器具の洗浄を行う洗浄滅菌室のほか、犬・猫それぞれの入院室とICUが設けられている。フロアの奥にはスタッフ用の休憩室も用意した。

2階 洗浄滅菌室

2階 洗浄滅菌室

2階 スタッフ用休憩室

2階 スタッフ用休憩室

「ほかのエリアとは異なり、柱をレンガ調にしたり、ブラインドのカラーリングを変更したりしてデザイン性を強く打ち出しました。獣医師や看護師の方からも好評です」(堀江氏)

地域に根ざし、さらには世界へ。さらなる獣医療の発展の第一歩

開院以来、売上は順調に推移。紹介症例を含む幅広いケースに対応し、高難度の手術も頻繁に行われている。

「飼い主様だけでなく、訪れるさまざまな方からお褒めの言葉をいただきます。スケジュールは本当にタイトで大変でしたが、振り返ってみると楽しかったなと思います」(小谷野氏)

「今回この拠点ができたことで、投資家様やお付き合いのあるペットショップ様、関連業者様にもアニコムの施設をご覧いただけるようになりました。アニコムグループとしての新しい姿勢を示すにふさわしい拠点ができたのではないかと思います」(堀江氏)

「病院フロアではありませんが、飼い主様向けのセミナーも開催しています。日常のケアや病気について知っていただくことで、より健康に長生きしてもらいたいという考えにもとづくものです」(尾形氏)

今後数年の間に月間200250件程度の手術実施を目指し、一次病院とも連携したより良い獣医療の提供を行うのが目標だ。合わせて、教育面や地域貢献にも力を入れていきたいと語る。

「平時だけでなく、災害時にも地域の役に立つべく何かできないか。これから考えていくべき課題だと考えています」(尾形氏)

「獣医療は人間がいなければ成り立たない事業です。獣医師を目指す若い方々が夢を描ける、経験のある獣医師の方はさらに新しい技術を身につけられる。そんな拠点にしていきたい。将来的には国内の別地域、さらには海外展開も視野に入れ、日本だけでなく世界の獣医療の発展に尽くすべく、今後も挑戦を続けていきたいと考えています」(堀江氏)

JARVISどうぶつ医療センター Tokyo(アニコムグループ/アニコム先進医療研究所株式会社)

病院名の「JARVIS」は「Journey with Anicom in Robotics & Various Intelligent Services」の頭文字を組み合わせたもので、「アニコムと共に歩む、ロボティクスおよび多様な知的サービスによる旅路」の意。ビルの残りフロアにはペットに関するさまざまな機能や施設を設ける予定で、今後も、人とペットが笑顔で過ごせる社会の実現を目指していく。


この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード