株式会社マイネット

2015年7月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

"旅するオフィス"をコンセプトに採用強化を目指すマイネットの新本社

「どこでもドアの実現」をビジョンに掲げ、ネットとリアルの融合を通じて「会いたいときに会いたい人に会える社会」の実現を目指す株式会社マイネット。
2006年7月に銀座で創業後、二度の事業転換を経て、現在はスマートフォン向けオンラインゲームの開発・運営を主幹事業とする。2015年6月、業務拡大に伴う採用活動の強化を目的として北青山の大規模ビルに本社を移転。新本社のオフィスコンセプトに関するお話をまとめた。

プロジェクト担当

金田 幸枝氏

株式会社マイネット
人事・広報
マネージャー

金田 幸枝氏

仁木 俊輔氏

株式会社マイネット
コミュニケーション
プロデューサー

仁木 俊輔氏

エントランス

エントランス

はやわかりメモ

  1. オンラインゲームのセカンダリーマーケットでトップシェアの座を狙う
  2. 増員と増床をくり返してきたが遂に限界。創業の地・銀座からの移転を検討する
  3. ダイレクトリクルーティングに繋がるオフィスづくりを意識
  4. コンセプトである"観光案内所"を具現化した3階の応接エリア
  5. 執務エリアは快適環境を提供するためにパーソナルスペースを広く確保した
  6. "人に暖かく、ハートは熱く、仕事はスマートに"を具現化

オンラインゲームのセカンダリーマーケットでトップシェアの座を狙う

2015年7月1日に創業9周年を迎えたマイネット(旧社名マイネット・ジャパン)の創業当初の主幹事業は、ソーシャルニュースサイト「newsing」の運営であった。その後、フューチャーフォン向けのモバイルサイト構築サービス「katy」に主幹事業をシフト。2012年以降は現在のスマートフォン向けオンラインゲームを主幹事業に、2015年7月現在13タイトルのゲームを提供。今後も積極的にタイトルを増やしていくという。

「現在の主力となる事業は、他のゲーム開発会社から買い取ったタイトルや、他社との提携により開拓したオンラインゲームの提供です。買収事業は2014年にスタートしました。これに伴い、過去に手がけていた『newsing』はサービス終了、『katy』はすでに売却しており、ゲーム一本に集中できる体制を整えました」(金田幸枝氏

過去2回の事業転換では、サービスの内容やデバイスなどは一変しているが、創業から少しも変わらないものがある。

「『どこでもドアの実現』というのが当社のビジョンです。"どこでもドア"は皆さんご存知の通り、藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』に登場する"ひみつ道具"の一つですが、ネットとリアルの融合を通じて『会いたいときに会いたい人に会える社会』を実現する、という意味で使っています。すなわち、人と人とが繋がるサービスをオンラインで提供する仕事であり、これは創業以来一貫して当社の企業理念となっています」(金田氏

ちなみに、時を経ても色あせない同社のカルチャーを以下に抜粋する。

クロスリスペクト

イノベーションは多様な価値観の交わるところで生まれる。
職種や生き方に根ざした価値観を互いに尊敬しあえることがマイネットの風土。

仕事って楽しい

仕事ってそもそも楽しいもの。
ビジョンを共有した仲間と役割を分担し、困難を乗り越え成長を実感しながら同じ船によって一つのゴールに向かう。それがマイネットにおける仕事。

驚きと喜びとわかりやすさ

これからの価値はモノより体験。
マイネットはどこでもドアのような驚きと喜びとわかりやすさを味わえる体験を世の中に生み出していきます。

大事な人を大事にする

人にとって最も大切なものは人。
マイネットのメンバーは家族、友人、仲間といった大事な人を大事にすることが人生の幸福だということを知っています。

100年続く会社

マイネットは生まれたときから100年続く会社を志向しています。
メンバーは理念と経営方針を支柱にして、成長し続ける会社を作り続けています。

ソーシャルニュースサイトでは、ユーザー同士がネット上で出会い、掲示板を介して意見交換を行う。モバイルサイト構築サービスを使って飲食店や美容室などが店舗のモバイルサイトをつくり、"お店の人"と"お客様"とがリアルの世界で出会う。オンラインゲームの世界でユーザー同士が出会い、協力プレイをしたり、ゲームキャラクターのファンクラブサイトに参加したり、さまざまな形で交流する。
時代の変化やデバイスの進化に合わせて事業転換してきた同社だが、「人と人とが繋がるサービス」という意味では、少しも軸がぶれていない。

同社では、他社からのゲーム買取りを「ゲームのグロース事業」と呼び、その市場を「ゲームのセカンダリーマーケット」と称している。どちらも耳慣れない用語だが、前者はゲームの運営を同社が行うことでプラットフォームや課金システムの変更などにより収益を上げる事業を指す。また、後者は一般に「既に発行された株式や債券などの有価証券の取引市場」を指す金融用語として知られているが、ここでは「他社によって既にリリースされたゲームの取引市場」といった意味で使われている。

「このセカンダリーマーケットでのトップシェア獲得が当社の目標です。代表の上原は『市場の中で圧倒的No.1になる』と常々話しています。ゲームのセカンダリーマーケットは、2年後には年間売上1000億円規模に成長するものと見込まれており、今後は大手ゲーム会社の市場参入も予測されます。競争が激化する中でトップシェアを獲得するためには、もっと多くの仲間が必要です。だから採用活動には力を入れていますし、本社移転もその一環です」(仁木俊輔氏

増員と増床をくり返してきたが遂に限界。創業の地・銀座からの移転を検討する

同社は、銀座8丁目の飲食店の上のフロアを借りて6名のメンバーで創業。1年後に社員が20名に増えて近隣のビルへ移る。同ビルではワンフロア面積50坪の広さからスタートし、増員と増床をくり返す。最終的には4フロア計230坪を使用していた。

「移転直前は物理的に限界に達し、その狭さは社内を普通に通れないほどでした」(金田氏

このため、2014年夏頃から移転を検討するようになり、年末には本格的に計画がスタートする。移転先には同業他社の多い渋谷・六本木・恵比寿エリアなどが検討された。

ダイレクトリクルーティングに繋がるオフィスづくりを意識

移転先エリアの選定と同時進行で、旧本社オフィスの現状分析が行われた。社員から意見をヒアリングした結果、スペースの手狭さの他に、次のような問題点が浮かび上がってきた。

  • 最寄駅からの距離( 駅から徒歩7~8分を要する)
  • 建物設備の老朽化 (特に空調、トイレなど)
  • 分散されたフロア( コミュニケーションが取りにくい)
  • 不十分な会議室( 3つしかなく、業務に支障がでている)
  • 情報管理が不適切 (事業部門と管理部門が背中合わせに近接)

「新本社ではこれらの課題を解決するため、十分な会議室スペースの確保とともに、事業部門をワンフロアに集約してコミュニケーションの取りやすい環境づくりを目指すことになりました」(金田氏

新本社の候補として4棟のオフィスビルが提案された。そのうち、150名超の社員をワンフロアに収容可能なビルは1棟のみ。しかも、最寄駅から徒歩4分、2008年に全面リニューアルされて各種設備も新しく、予算的にもスペック的にも同社の条件と合致していた。

2015年1月末、北青山の現オフィスと契約を締結。社内外に向けて本社移転が正式発表された。2月には、3名のプロジェクトメンバーを中心に新本社のオフィスコンセプトや内装デザインの検討に入り、3社のデザイン会社から提案を受ける。このうち2社でコンペを行い、最終的に1社に決定した。

「結果として現ビルオーナーについて熟知しているデザイン会社にお願いすることにしました。こちらの要望や旧本社の課題についてお伝えし、先方から提案されたのが、"旅するオフィス"というコンセプトでした」(金田氏

このコンセプトに基づいて提案された内装デザインは、同社の要望を過不足なく体現するものだった。ほとんど新たに注文をつけることもなく、5月末に完成したオフィスは、このとき提出されたCGパースをほぼそのまま再現したものになったという。

1階と3階の2フロアを使用。1階が事業部門の執務エリア、3階が応接エリアと管理部門の執務エリアとなる。事業部門を1階に集約したことで、社員同士のコミュニケーション量も増大した。
それまでお互いあまりよく知らなかった相手と話す機会も増え、公私ともに社内の交流が活発化したという。

「当社は、知名度という点では、残念ながらまだそれほど高いとは言えません。そこで、現場で働く社員が、自信を持って自分たちの会社を見に来てもらえるような、知り合いを呼びたくなるようなオフィスにしたいと考えました。実際にオフィスを見てもらうことで、訪れた方に『ここで働きたい』と思ってもらえる。そんなダイレクトリクルーティングにつながるオフィスづくりを強く意識しています」(仁木氏

同社では旧オフィス時代から外部の見学希望者を迎え入れる「オフィス見学」を実施しており、2012年には『るるぶ スゴいオフィス見学 首都圏版』にオフィスが紹介されたこともあって、地方から修学旅行生が見学に訪れたこともあったという。

「新本社へ移ってすぐ、Facebookの写真をご覧になったと仰って、それまでまったく知らなかった2社の会社から、早くもオフィス見学を申し込まれています」(金田氏

コンセプトである"観光案内所"を具現化した3階の応接エリア

3階の応接エリアは透明なガラスの壁で仕切り、エントランスの正面中央に「トラベルカウンター」をイメージさせる円形のカウンターを設置した。〈写真①〉

このカウンターは、"マイネットの文化の観光案内"というコンセプトを端的に具現化したもので、訪れた人に同社のカルチャーを伝えていく役割を担っている。カウンターを中心とするホールは「ラウンジ」と呼ばれ、グリーンのカーペットに囲まれた中央部の床とその真上の天井、フロア内に設置された丸テーブルと椅子、円形カウンターの天板など、随所に木目の鮮やかな木材を使用することで、暖かみを感じさせるデザインに仕上げた。〈写真②〉

ラウンジは、社員が多目的な用途で使用できるマルチスペースだ。もちろん昼食や休憩だけでなく、チームミーティングなどにも活用されるという。ここは「何でもできる場所」という意味を込めて「四次元ポケット」と名づけられている。

①円形カウンター

①円形カウンター

②応接エリア

②応接エリア

また、合計6つの会議室3には、それぞれ「ほんやくコンニャク」「タケコプター」「通りぬけフープ」「タイムマシン」「スモールライト」「ビッグライト」と、いずれもドラえもんの"ひみつ道具"の名前が付けられている。〈写真③〉

「これらのネーミングは、誰でも知っている有名な"ひみつ道具"から選んでいます。適当につけたわけではなく、それぞれ意味があり、『ほんやくコンニャク』なら『外から来た人と円滑にコミュニケーションできる場所』、『タケコプター』や『通りぬけフープ』なら『行ったり来たりして、何度でも人に会える場所』という具合です」金田氏

その他、3階には、各100人を収容可能なセミナールームが2室設けられている。ここでは週1回程度、社外向けに勉強会などのイベントが開かれているという。社外向けのイベントは、採用やブランディングが目的のため、基本的に誰でも無料で参加可能だ。〈写真⑤〉

③会議室

③会議室

⑤セミナールーム

⑤セミナールーム

「今までは、セミナーを開催する場合、日程調整を重ねた上で、外部の施設を予約する必要がありました。その分の手間が省けただけでも有り難いですね」仁木氏

「セミナー後に懇親会を行うときは、ラウンジへ移動していただきます。こうすれば、セミナールームの机をわざわざ片づけることもないし、雰囲気が変われば気分も変わり、会話も弾みます」金田氏

セミナールームは可動式パーティションで仕切られ、扉を開放することで200人以上収容可能な大広間に変身する。移転直後の6月5日と19日には、移転パーティが2回にわたって開催された。

「移転パーティには、ゲーム業界の皆さんをはじめ、パートナー企業の方、いつもお世話になっているゲームのイラストレーターさんやユーザー様などをご招待しました。特に5日のパーティでは300人近いお客様にお越しいただき、会場がすし詰めになるほどの大盛況でした」仁木氏

「今後は社外向けイベントをもっと増やしていこうと思っています。また、他社からも勉強会などの会場として場所を貸してほしいと言われているので、そこで新たなシナジーが生まれるかもしれません。そういった二次的な効果にも期待しています」金田氏

執務エリアは快適環境を提供するためにパーソナルスペースを広く確保した

1階の執務エリアでは、派遣社員・アルバイトを含めて約200名が働いている。すべてチームごとの固定席。PCモニタは1人2台用意され、作業しやすいように幅120㎝の机でパーソナルスペースを広く取っている。この机は旧オフィスからの持ち込みだが、椅子は今回の移転を機にすべて新しい物に買い替えた。〈写真④〉

「椅子については社員の要望も多く、一番こだわって良い物を選びました」(仁木氏

そのほか、その場でミーティングが出来るようにボックスシートを2席用意している。

「ファミレス風のボックスシートで、『もしもボックス』と名付けています」(金田氏〈写真⑥〉

④執務エリア

④執務エリア

⑥もしもボックス

⑥もしもボックス

"人に暖かく、ハートは熱く、仕事はスマートに"を具現化

「 "人に暖かく、ハートは熱く、仕事はスマートに"、この言葉が当社を表す言葉です。新本社は、この言葉を形にしたようなデザインで、社員が『ずっとここで働きたい』『新しい仲間を呼んできたい』と思えるオフィスになっていると思います」(金田氏

しかし、本社移転後も順調に増員を重ねる。予想以上のハイペースのため、3階のバッファ部分として用意していたスペース部分の改装も視野に入れはじめているという。

「とはいえ、せっかく働きやすい環境を構築したのですから、あまり崩したくはありません。休み明けでも、出社したくなるようなワクワク感を持つオフィスを維持していきたいですね」(金田氏

「そのためには社員の要望を常にキャッチできるように、積極的にコミュニケーションをとっていかなければと思っています」(木氏